Ghost of Inazuma   作:神秘放射ほしい

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続くみたいです
原神キャラと仁さんが喋るだけなら無限に書けそうなんですけど私以外の誰に需要が?


新たなお役目

 

「仁殿、少しいいでしょうか」

「九条殿」

 

 それは仁がこの現代の稲妻に来て少し経った頃である。雷電将軍の執務室から出てきた仁に声をかけたのは天領奉行の重役、九条裟羅その人だ。

 そのまま裟羅が移動して行くので仁も同行し、歩きながら話を進める。

 

「将軍様よりお聞きになられたかもしれませんが、今後仁殿には『将軍の懐刀』になって頂きます。しかし、稲妻幕府に所属する以上どこかの奉行に席を置いていただきたい。よって、仁殿は私たちの天領奉行の特別顧問役として就任していただくことになります」

「特別顧問とはどのようなお役目でしょうか」

「敬語……」

「何と?」

「いえ。……特別顧問にこれといった役職はございません。言うなればお目付役、と言ったところでしょうか。具体的な権限といたしましては将軍様に次ぐ決定権を持たせるものとし、直属の侍衆をお付けする予定です」

 

 明朗な説明に対し、疑問を浮かべたのは仁だった。天領奉行は今眼前にいる九条裟羅の父が管理する部署だ。明確な長がいるのにも関わらず特権を許して仕舞えば風紀が崩れる原因になりうる、そう考えた。

 故に仁はこう返した。

 

「ならばそのお役目、謹んでお断り申す」

「なっ!?」

「恐らくは私の過去の功績を鑑みての判断でありましょうが、かような立場、身に余りまする」

「いっ、いえ!そんな!仁殿に不足などありません!私どもはこれでも役不足な役職をお付けすることを心苦しく思って……」

「ありがたいですが、やはり向いているようには思えませぬ。……私とてかつては侍の身、人を率いることはできますが、危険の矢面に立つことこそ本懐と考えておりますゆえ」

「そ、そんな……。……いえ、わかりました。再度殿や父に相談してみます」

「かたじけない」

 

 本当に渋々、といった様子で頷く裟羅。

 ですが、とその言葉が続く。

 

「元々お願いするはずだった他の侍との稽古、それには変わらず付き合っていただくことになります。どのような結論になるかはわからないですが、役職によってはそれに加え町の警邏などの天領奉行のお役目もすることになりますが宜しいでしょうか」

「承知いたしました。誠心誠意お勤めしましょう」

「……それと、これは個人的なお願いになりますが――」

 

 事務連絡が終わり、てっきりこれで解散だと思っていた仁は思わず胡乱げな目を裟羅に向けていた。

 未だ現世に来てそう経っていないため大した交流などできていないものの、仁にとって裟羅の印象とは仕事人といったものだった。心の底から雷電将軍を尊敬し、支え、仕えようとしているのは少し話しただけでも察することができたし、実際そう行動していたからだ。天領奉行の役人としての模範であろうと普段から言動を律していることに、仁は尊敬と少しの憧憬で眺めていたのだ。

 

 そんな彼女が、今この時のような勤務時間真っ最中とも言える場で私語な入ることに驚きが勝った、それゆえの視線であった。

 

「――……もう少し言葉遣いを気の抜いたものにしていただきたいのです」

「それは……」

 

 それは仁にとってはだいぶ信じられない類の話であった。役職がどうあれ、仁と裟羅では『先輩と後輩』という明確な上下関係が存在するからである。侍と言うものは規律や年功に厳しい。それは御恩と奉公という勤務形態が原因のひとつではあるが、現代にあるこの奉行にとってメンツとは何よりも優先すべき財産であるからだ。

 民を庇護するお役目を将軍より頂いている奉行たちがナメられること、それ即ち将軍が侮辱されていることにもなる。そうなってしまえば幕府の威信が傷ついてしまうし、政治的にもよろしくない。

 

 民にはいい意味で畏れてもらわなければならない。そのためには身内から厳しくするのはある意味当然であるとも言える。

 それなのに、模範たろうとする裟羅からそれを蔑ろにしてくれというようなお願いをされるとは仁にとっては予想だにしなかったことだ。

 

「理由を聞いても?」

「……幼い頃より冥人のお話には親しんできました。その寝物語に語られる英雄に敬われることが、なんというか……違和感があります」

「……そう言えど我らは役人の身。上下は確りと付けなばなりますまい」

「そう、ですよね。無理を言いました。ですが心に留めておいていただけると幸いです。……では私は先ほどの仁殿のご要望を上申いたしますので追って知らせましょう」

 

 そう言って先ほど歩いてきた廊下を引き返していく裟羅。

 仁はその後ろ姿を少し確かめたあと、ひとつ息を吐いた。歩きながら話していたせいで気づけば窓のそばまで来ていたようだ。

 

欄干にもたれて城下町を見下ろせば様々なものが見える。数多くある食事処や宿の竈には煙がたなびき、鍛冶場からは鉄を叩く音がする。船着場からは威勢の良い船乗りたちの歌が響き、天守のすぐそばの広場では子ども達が笑いながら追いかけ合う。

 

 「活気がある。人が多く生きている証だ。俺のやってきたことは、このためにあったのだな……」

 

 万感のため息と共に吐き出すように呟いた。

 初めて今の稲妻をみた時は思わず涙ぐんでしまった仁だ。果てしない時が経っていると聞かされた時、いったいどれほどの惨状になってしまったかと身構えたのは仕様のないことであった。かつて仁が死んだ時、平和の兆しなど小指の爪ほども見えていなかった。それでも仲間達なら成し遂げてくれると信じて眠りについたのに、急に起こされて助けを求められたのだ。あれよりも非道くなっているものだと思いながら町を歩く人々を見た時の仁の驚きは察するに余りあるだろう。

 

「いかんな。町を見て泣いてはまた影に笑われる。……いや、将軍様か」

 

 軽く頭を振って再び歩き出す。このあとは仁のかつての武具を保管していると言う社奉行の頭に挨拶に行かないといけないのだ。

 軽い足取りのその背をさらに押すように、子ども達の笑い声と鳥の唄声が風に乗り流れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

「……とのことでございます」

「ならん!かの冥人を現場で働かせるだと!?それこそ幕府の威権に傷がつきかねん!」

「しかしそうさせた方が民にとっては良いことなのでは?知らせはしないとはいえ、誰もが知るような英雄に直接守られているとなれば――」

「では境井殿には何とお名乗りいただく?警邏の者が名を騙るなどあり得ていいことではない!」

 

 天領奉行、九条家当主の執務室には怒号が飛びかっていた。なぜなら今まさに九条孝行をはじめとする天領奉行の重役たちがある『上申』に頭を悩ませていたからだ。

それはまさに、目下最も重視すべきである人物よりの要望。

民に触れ合いたい、下級武士のように下働きをしたい───という。

 

「……全く、我らに何の相談もなく救国の英雄を復活させるなど将軍様も結構なことをなさるものだ。大体、あの境井仁ご本人かも定かでは……」

「おい」

 

 ある一人の役人のぼやきをまた誰かが窘める。それは今目の前にしている問題に疲れての発言なのだろうか。あろうことか一国の、そして彼ら自身の主人に対して苦言を呈したのにも関わらず不快そうにしている役人たちは驚くほど少ない。まさにこの稲妻幕府が一枚岩でないという証拠のような現場であった。そして、それを将軍自身が許しているということの。

 

「……」

 

 一段高くなった畳に座り、目を瞑って静かに話を聞いているのはこの部屋の主である孝行ではなかった。紫電色の着物に身を包む女性、雷電将軍その人であった。

 将軍自らこの場に来た時、先に集まっていた役人たち全てが驚愕に顔を歪めた。確かに最終的には将軍に判断を委ねることになる案件とはいえまさか会議の場に直々に訪れるとは誰も想像すらしていないことであったのだ。よもや何かしらの沙汰を下されるかと身構えた役人達とは裏腹に、議論に参加するでもなく静かに耳を傾けるだけの存在に、次第にいつも通りの場の温まり方になってきたところであった。

 

「将軍様」

「ええ」

 

 他の役人達と同じ畳に控える娑羅が雷電将軍に合図を送る。紛糾し始めたこの議場にまるで少しも動じていない二人。それはまさに、この展開が予想通りの物であったからだ。

 

「話をまとめる。境井仁の要望は概ね通したいが、幕府の威信を考えればそれは難しい。相違ないか」

 

 これまで目を瞑っていた雷電将軍がおもむろに立ち上がり、役人たちを睥睨しながらそう唱える。大きな声ではなかったが、荒れ始めた部屋を一言で落ち着かせるような、そんな凄みのある声であった。

 

「は、左様でございます」

「ならばよい。私が沙汰を下す。――境井仁を『奥詰衆』の相談役としよう。丁度『奥詰衆』を民たちと触れ合わせる試みを考えていた。境井仁にはこの役目をつけるものとする」

 

「───そして、境井仁の名は隠さない。むしろ積極的に流布するように」

 

 それを聞いて思わず奥歯を噛んだのは孝行であった。『奥詰衆』とは将軍直属の精鋭部隊のことだ。これを受け入れて仕舞えば境井仁に命を出すことが将軍以外にはできなくなってしまう。

 雷電将軍の武力に、降って湧いたような特大の権威の塊。これらを利用すれば()()もそう難しいことではなくなると思ったのに――。

 

「まあ、それなら……?」

「私はいいと思う」

 

 どうやら場は受け入れる雰囲気であることを読んだ孝行は表面上は周りに合わせて頷いておくことにした。将軍は変わった、少し前から感じていたことだ。以前ならそもそもこの会議にも参加していないはずだ。

 やはり冥人には何かがある、孝行はその疑念を強めずにはいられなかった。

 

「異論は……ないようだな。ならばこの場は終いとする。それぞれ、仕事に励め」

 

 

 

 ■

 

 

 

「ということで、仁殿のお役目は相談役――とは名ばかりの、職務の形態としては天領奉行の侍と大して変わりのないものになりました。なるべくご希望に沿ったものになったことだと思います」

「ええ、相違なく」

 

 後日、また仁と娑羅が話し合っていた。元は仁のわがままとも言えるような発言によるものであるためか、少し恐縮気味に見える。

 

「……その権力はともかく、肩書では私よりも仁殿の方が上になられましたね」

「……はい、有難いことです」

「――ならば!私を敬うような言葉遣いは改めた方がよろしいかと!」

「また、そのような……。いや、言う通りだ」

 

 はじめは嫌味の類かと思われた娑羅の言葉が予想もしないところに着地して。窘めるつもりだった仁は思わず小さく吹き出してしまった。意思は固そうだと察した仁は折れることにした。もはや言葉を崩したとて顰蹙を買うような身分でもなくなってしまったのだと力説されて仕舞えば面白さが勝ってしまったのだ。

 少し相好を崩したその態度に、ならばと言いかけた娑羅を仁が遮った。

 

「俺だけが敬われるのもおかしな話だ。どうだ、九条殿……いや、娑羅。ここは()()と行かないか」

「そっ、そんな……!いや、そうです――そうだな、仁。今後とも、我らで将軍様をお支えしよう」

「ああ、よろしく頼む」

 

 稲妻城天守。国の行く末を左右するようなその場所で、場違いとも思えるような笑い声が響き合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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新たなお役目

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浮世草なので短め
口調エミュレートが不安でなりません。違和感があれば教えていただけると幸いです
早いとこ原作稲妻編終わらせて仁さんには旅に出てほしいですね
あと多分この世界の演武伝心では最後に仁さんが出るんでしょうね。綾華と旅人が力を合わせて仁さんと戦う姿が見たいです。

演武伝心(綾華&旅人vs.仁さん)を

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