ブルーアーカイブ/LORD OF SPEED   作:ケツデカ・ルーズベルト大統領

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過去の意志は嘘では欺けないので初投稿です


#01 先生男

 

「おはようございます、先生」

「………おはよう?」

 

鋭い声に気付いて、俺は身を起こす。最初に飛び込んできたのは、タブレットを持った切れ目の女の子と、窓の先に広がる見たこともないような近未来的なビル群の景色。明らかにタイでも日本でも無いだろうし、少なくともバンコクの蒸し暑い安宿ではなさそうだった。

 

「少々お待ちくださいと言ったのに…お眠りになるほど、おつかれになっていたのですね。中々起きないほどに熟睡されるとは」

 

切れ目の彼女はそう言って俺の目の前にやってくる。

 

「もう一度、改めて今の状況をお伝えしますね」

 

彼女は首から下げられている生徒証?を俺に見せながら話を続ける。

 

「私の名前は七神(ななかみ)リン、学園都市「キヴォトス」の連邦生徒会幹部です」

 

学園都市…なるほど、そういう場所ならこんなふうに近未来的な風景が広がっていてもおかしくはないだろう。ただ、「キヴォトス」という名前は聞いたことが無かったが。

 

「そして、おそらくあなたは私たちが外部から呼び寄せた先生…のようですが」

「ようですがって、どういう事だ…?」

 

なぜ推測なのか。俺は、この「キヴォトス」の連邦生徒会とやらに呼ばれてやって来た「先生」では無いのか?

 

「推測系でお話したのは、私たちも先生がここに来た経緯を詳しく知らないからです」

「そんなアホなことが…」

「考えられませんよね。混乱する気持ちも分かりますが、とりあえず今は私に着いてきてください」

 

リンはエレベーターの方へと歩いてゆく。俺もそれに着いていこうとして、ハッとあることに気付き彼女を呼び止める。

 

「えっと…七神でいいのか?」

「?はい、構いませんが…どうかされましたか?」

「黒色のボストンバッグ、どっかに無いかな」

「黒色のボストンバッグ、ですか?確かどこかに運び込まれていたような気が…」

 

そう言ってリンは棚のところをゴゾゴゾと漁って俺のボストンバッグを探してくれる。俺も手伝おうと横に並ぶ。ボストンバッグ自体はすぐに見つかったので、俺はすぐに中身を確認する。

 

「ちゃんとあるな…」

 

中に入っていたのは、銀色のバックルだけ。横から覗き込んできたリンが、バックルに首を傾げる。

 

「それは一体……」

「なんて言うかな、俺が”やるべきことをやるため”の道具って言うか…とにかく探してくれてありがとうな」

「いえ、先生が気にするようなことではありません。気を取り直して、私に着いてきてください」

 

リンに着いて行ってエレベーターに乗り込むと、「キヴォトス」の全景と言ってもいいくらいの広大な摩天楼が一望できた。

 

「この”キヴォトス”は数千もの学園自治区が集まっている巨大学園都市です。外の世界とは色々勝手が違うこともあるでしょうが…先生なら、上手く溶け込めると信じています」

 

なんか、リンは随分と俺の事買ってくれてるんだなとちょっと気恥ずかしくなる。真っ直ぐさだけが取り柄だなんて言われ続けてきたからだろうか。

 

エレベーターはあっという間に目的階に着いたようで、リンに先導されエレベーターから降りると──青い髪色の女の子が、声を荒らげて来た。

 

「ちょっと待って!代行、ようやく見つけたわ!連邦生徒会長を呼んできて!」

 

いきなりの出来事に俺がビックリしていると、なんかウンザリした顔のリンが青い髪の女の子ほかと話し始める。リンたちの会話には、やれ連邦生徒会長がどうだのやれヘリコプターの取引がどうなのと俺の頭じゃパンクしそうな単語がポンポン出てくる。

 

──しっかし皆えらく顔が整ってるな……

 

話の内容を理解するのを放棄して、しょうもない事を考えていると、リンがこちらを向いた。

 

「そのファクターとなるのが、こちらの先生です」

「せ、先生…!?ちょっと待って、そういえばこの方は一体どなた?」

 

ダメだ、余計なこと考えてたから話の流れが読めない。生徒たちは一斉に俺の方を指さしたりして困惑した顔をしている。どうすればいいんだ、この状況…!

 

「先生、話はしっかりと聴いてください…改めて説明しますと、今このキヴォトスは行政制御権限を持つ連邦生徒会長の不在により行政機能がダウン、各自治区では違法な武器取引が横行し、治安維持に大きな障害が生じている状況です」

 

そもそも学園都市で合法的な武器取引が行われているのか…?と疑問に思ったが、よく見ると生徒たちの中には銃器を携帯しているものもいるので、この「キヴォトス」では銃の所持が当たり前なのか。

 

「…とにかく話を整理すると、今このキヴォトスはすごく不味い状況ってコトだよな?」

「えぇ、すごくマズイ状況です。その解決策となり得るのが、加賀美先生。あなたなのです」

 

「この先生が…?」と言う雰囲気を感じ取ったので、俺は自己紹介をする。というか今まで自己紹介もしてなかったのか、俺…

 

「えーっと、この度キヴォトスに赴任した加賀美新です。ここに来る前は、外国に友人を探しに行ってて…とにかくよろしく!」

 

そう言って俺は1番前に居た青い髪の女の子の手を握って握手する。

 

「え、あ、その、ここんにちわ先生!私はミレニアムス、スクールの早瀬ユウカと言います!」

「おう、よろしく!」

 

 

早瀬は男慣れしてないのか、顔を赤らめて早口に自己紹介をして引っ込んでしまった。…もしこの場に岬さんが居たら、小言を言われそうだ。他にこの場に居たトリニティ?とか言う名前の学校から来た羽川ハスミと守月スズミ、ゲヘナ学園という所の火宮チナツとそれぞれ握手を交わした。

 

「…先生は元々、ある部活の顧問としてキヴォトスに招かれました」

「ある部活?」

 

そんな早瀬に目もくれず、リンは再び話を続ける。

 

「連邦捜査部、シャーレ。便宜上部活と呼称しておりますが、一種の超法規的機関です。所属は連邦組織になりますのでキヴォトスに存在する全ての学園の生徒たちを制限なく加入させる事が可能です。更に各学園の自治区で、制約なしで戦闘行動も許可されています」

 

リンの説明に、思わず「ZECTみたいだな…」ともらしてしまう。

 

「ゼクト…?」

「いや、こっちの話だ。気にしないでくれ」

 

しかし、どうして「シャーレ」という組織はそんなに強い権限を持っているのだろうか?俺のような部外者が顧問の組織に、そんなに権限を持たせたら色々と面倒なことが起きそうな気もする。

 

「シャーレの部室はここから30km離れた外郭地区にあります。今は殆ど何もない建物ですが……連邦生徒会長の命令でその建物の地下にとある物を持ち込んでいます──先生を其処にお連れしなければなりません」

「結構遠いんだな…歩き?」

「いえ、ヘリコプターで行く予定です。…モモカ、先生をお連れするヘリなのだけれど」

 

リンが端末をタッチするとワンコールで通信が繋がった。

 

《シャーレ?あぁ外郭の…あそこの辺りなら今大騒ぎだよ》

「大騒ぎ?」

《うん。矯正局を逃げ出した停学中の生徒が騒ぎを起こして戦場になってるの。連邦生徒会に恨みのある生徒が巡航戦車まで持ち出して来て暴れてて…》

 

モモコと呼ばれた生徒の言葉に、俺が首を傾げるととんでもない返答が返ってきた。銃器の存在が当たり前な場所っぽいのは分かっていたが…生徒間の争いに戦車まで出てくるような場所なのか、キヴォトスは。

 

《それで、シャーレの建物を占拠しようとしてるよ。なにか大切なものでも隠してるの?まぁ元々滅茶苦茶な場所だし今更…あっ、お昼のデリバリー来たから切るねー》

 

モモコが一方的に電話を切ったのを他所に、俺ってもしかしてとんでもない場所に来たんじゃないか?と改めてキヴォトスの別世界さに圧倒されていると……俯いて難しい顔をしていたリンが何かを思いついたのか顔を上げる。

 

「ちょうど、各学園を代表する立派で暇な方々がいらっしゃるので安心ですね」

「えっ?ちょっとどういうこと?」

 

笑みを浮かべるリンをユウカが問いただす。どうやらリンの言葉に嫌な予感がしたようだった。

 

「どうもこうもありません。キヴォトスの正常化のために4人には協力していただきます。時間が惜しいです、行きましょう」

「ちょっとちょっと!どこに行くのよ!」

 

慌てた表情のユウカ。「戦闘モード」とでも言い表すべき表情でリンが言った。

 

「もちろん、騒動の中心地──シャーレにです」

 

 

 

 

 

「こりゃあ酷いな…」

 

《シャーレ》から大体5キロほど離れた市街地の大通り。俺は、目の前で繰り広げられる銃撃戦を見て顔を顰める。ひよりとそう変わらない年齢の少女たちが、銃火器を片手に撃ち合っているのはあまり良い感じがしなかった。

 

「代行たちの部隊が先行してくれてますし…先生、私たちも早いところここを突破しましょう」

「お、おぉ。そうだな……」

 

若干間の空いた俺の言葉に、ハスミが首を傾げる。

 

「どうかされましたか?」

「いや、”先生”って呼ばれるのなんか慣れなくてな…」

 

そうなのだ。俺はガタックになったあともZECTでは下っ端のような立ち位置だったし、小学生に呼び捨てにされるわ、「加賀美くん」とか「加賀美」って呼ばれるのが当たり前だったせいで、こうやって敬意を向けられるのに慣れてない。

 

「距離あるみたいでしっくり来ねぇし、呼び捨てとかでもいいんだけどなぁ…」

「先生相手にそんなことは出来ません!」

 

俺がそう言うとハスミが食い気味に言う。そうは言ってもしっくり来ないものはしっくり来ないんだよなぁ…

 

「でしたら、間をとって”加賀美先生”とお呼びするのはどうでしょうか?」

「おぉいいな!それで頼む!」

 

チナツの案に俺は大きく頷く。それならハスミも問題ないだろうし、俺も「生徒」たちとの距離を近く感じられて満足だ。

 

「では加賀美先生。本作戦の戦術指揮をお願いします」

「ああ、任せろ戦術指揮だな……戦術指揮ィ!?」

「はい、『そちらの指揮は先生に一任させてもらいます』と代行もさっきおっしゃってましたし…」

 

まずい、車窓から見えるキヴォトスの景色に夢中になってて話半分だったから全然覚えてなかった。というか戦術指揮ってどうすればいいんだ?射撃のタイミングとかどう動くかとか、そういうのでいいのか?そもそもシャドウの隊長になった時も指示は影山さんに任せきりだったし……

 

「──あれこれ考えても仕方ない、か」

「先生?」

 

いや、難しく考えるのはやめだ。

 

俺のここでの役目は「先生」で、生徒を傷つけさせないこと。もちろん暴れる生徒たちへのダメージも最小限に、だ。そうなら、俺が取るべき行動は無い頭を回転させて不確かな戦術を立てることよりも───

 

「…ユウカ、ハスミ、チナツ、スズミ。ちょっと離れててくれ」

 

困惑しつつも全員が俺から離れたのを確認して、俺は右手を掲げる。

 

「…なにか、こっちに向かってきてる?」

 

直後、スズミが銃撃戦の行われている場所の更に奥の方を睨んでそういった。それと同時に戦場を青い閃光が駆け抜け、暴れる不良たちの困惑の声と悲鳴が木霊する。

 

「なによコイツ!」

「すばしっこすぎて攻撃が当たらな……きゃあ!?」

 

そしてその青い閃光は俺の元へとぐんぐん近づいてくる。ユウカたちが俺の事を守ろうと前に出ようとしてくれるが、俺はそれを手で制す。

 

──さぁ来い、ガタックゼクター!!

 

強烈なスピードで手元に収まった「ガタックゼクター」と共に、俺は混乱から立ち直ろうとする生徒たちに向けて叫ぶ。

 

「変身!」

《HENSHIN》

 

機械音声と共に、戦車の砲弾すら受け止め弾く超合金「ヒヒイロノカネ」で作られた「マスクドアーマー」が瞬時に展開し、強化マニュピレーターが四肢を覆ってゆく。

 

───だが、変身はこれだけでは終わらない

 

「キャストオフ!」

《CAST OFF》

 

ゼクターの角を倒すと同時に、時速2000キロという速度でマスクドアーマーが弾け飛び、隠されたガタックの姿が顕になる。

 

───紅い瞳に、角を備えた蒼色の頭部装甲

 

───ライダーアーマーに取り付けられた二振りの神剣”ガタックカリバー”

 

──両手両足の動きを何倍にも強化する”インセクトリング”

 

──500mの高さから落ちても衝撃を吸収する”ライダーストンパー”

 

《CHANGE STAG BEATLE》

 

およそ「戦い」という場において無類の強さを誇る「戦いの神」へと、俺は変身した。

 

「…ユウカ、ハスミ、スズミ、チナツ」

「「「「はっ、はい!」」」」

 

4人とも、目の前に現れた変身ヒーローのような姿の俺に戸惑いながらもそれぞれの獲物を構える。

 

「俺が先陣を切って道を拓く。4人は後ろからサポートを頼む!」

「「「「わかりました!」」」」

 

ガタックカリバーを両手で握り締め、俺はその指示と共に駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 






「あら?あの”マスクドライダー”……」

華美な着物に身を包み、唐傘を差した仮面の少女が一人。加賀美たちが飛び込んで行った戦場の近くの屋上から、彼らを眺めていた。












「天道総司さま、でしょうか?」
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