LEGENDS to restart 未来からの来訪者と、再会を願う現代の子供達   作:natsuki

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第一話 ヒスイの地(前編)

 結晶により生み出された部屋。

 或いは……結晶を切り取ったような部屋。

 その中心にある人工物、その高台には一人の女性がいた。

 正確には、女性ではなく、その女性をモチーフにしたAIであったのだが。

 

「戻った……のか?」

 

 階下に立つ、彼女の子供が告げる。

 AIは、語りかける。

 

「ああ……、この結果は最高の科学力を持つAIにも、計算することは出来なかった。君たちならば……絶望の未来を乗り越えた君たちならば、自分が選んだ道を、胸を張って進めるだろう」

 

 踵を返す。

 

「ありがとう、アオイ。そして……子供達」

 

 だが。

 

「私がいる限り、タイムマシンは止まらない……。どうやら、私そのものがタイムマシンを復旧する、システムの一部と化しているようだ」

「何だよ、それ……! そんなのってあんまりちゃんだぜ……」

「済まないな。君たちの冒険を、見ていてずっと思っていた……感じていたことがある」

 

 それは、自由だ。

 その自由さが、素晴らしく、そして、羨ましい。

 

「仲間を思い徒党を組んだり、強さを求めて戦いに身を委ねたり、大事な物を守るために大きな敵に立ち向かったり、捕まえて戦って自分だけの宝物を探したり……」

「アギャ、アギャス!」

 

 アオイの前に立っている、白と青の鶏冠が似合う雄々しいポケモンは、言う。

 それを聞いて、女性は笑みを浮かべる。

 

「フフ……、その翼で大空を翔け回ったりも、したことだろう」

 

 一歩、前に進む。

 

「私も、君たちのように、自分だけの宝物を見つけたいと……そう思った。そしてそのために……私は今から、過去へと向かう」

「そんな! せっかく……、せっかく会えたのに!」

 

 アオイの隣に立つ、精悍な顔立ちの、背の高い少女は言う。

 

「これは、タイムマシンを止めるためでもある。このままではタイムマシンは、止まらない。きっと過去のポケモンをこのまま排出し続けることだろう。エリアゼロもいつまで耐えるか分からない……。ならば、過去に行く。何しろ、私自身が夢にまで見た古代の世界を、見たくてたまらない。冒険に胸を躍らせる……、やっと、やっと意味が分かった気がするよ」

「……そんなの、」

「ペパー、今まで真実を言えず……済まなかった。オリジナルを受け継いだ私には分かる。君の母親は……君を、本当に愛していたよ」

「今更言うんじゃねえよ! ……そんなの……、そんなのずりいよ……!」

 

 ペパーは、絞り出すように言った。

 

「そうだな、済まない。……ペパー、コライドン、アオイ。少し寂しいが、お別れだ」

 

 左手を挙げる女性に、ペパーは声を掛ける。

 

「……母ちゃん!」

「さらばだ、自由な冒険者達よ! ボン・ボヤージュ!」

 

 そして、そして……そこで、女性は過去へと旅立った。

 

 

 

 

 そう、そしてこれは今までの私のモノローグ。

 或いは、走馬灯のようなものだったかもしれないな……。

 人間であろうとロボットであろうと、過去から未来へ、未来から過去へ移動すると肉体が持たないだろうと言われている。過去のポケモンがその姿を保ったままエリアゼロにいるのは、ポケモンと人間とは違う、何か別の物質があるのだろう――確かオーリムはそんな研究をしていた。

 

 

 

 

 そして――目を覚ますと、そこは砂浜だった。

 パルデアとは違う、長閑な風景。

 空気を感じると、明らかに違うそれは――過去へと到着したという意味なのだろう。

 しかし――。

 

「ここは、何処だ?」

 

 いずれにせよ、私はこの場所が何処なのかを確かめなくてはならない。

 ポケモンが居るのか、人間が居るのか、どちらも居ないのか……。もし最後だったら、タイムマシンを使った意味など何一つなかった。今思うと、タイムマシンすら何処に行ったのか定かではないが……。

 ふと、空を見上げると、大きな山の上に真っ暗な穴が開いていた。

 

「あれは……あれは何だ?」

 

 一先ず、話が分かる人間に会いに行こう。私はそう思い、一歩また一歩と前に進むのだった。

 


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