シャドウガーデン結成から二年が経った。あれからアルファもベータからイータまでの六人の訓練に時間を取られたので、新しい悪魔憑きが拾われてくることはなかった。
そしてアルファを拾ってから三年が立ち、僕とアルファは十三歳、二つ上のクレア姉さんは十五歳になった。十三歳には大した意味はないが、貴族で十五歳には意味がある。王都の学校に通うことになるからだ。姉さんはあれからも強くなった。僕が徹底的に合理性を持って鍛えたアルファには抜かれたが、今鍛えてるベータ達には魔力量の差を技術でカバーして勝てるだろう。
そのため姉さんの王都行きはカゲノー男爵家が送別会を開くほどの慶事だった。だからその姉さんが王都へ行くその前夜に失踪、いや誘拐された時、カゲノー男爵家は上へ下への大騒ぎとなった。
「俺が部屋に入った時には既にこの有様だ。争った痕跡はないが、窓が外からこじ開けられている。寝込みを襲われたとはいえ、クレアも俺も気づけなかった、相当な手練れだな」
精悍な顔立ちの父さんが姉さんの部屋を調べ、渋いダンディな声で誘拐犯が出入りしたであろう窓の枠に手を添えて、遠くの空を見ながら自身の推測を語る。これで片手にウイスキーのグラスを持ち、頭頂部から広がるハゲがなかったらハードボイルドな探偵物の挿絵のようになるかもしれない。……ハゲで全て台無しだけど。
「で?」
そんなダンディ親父の背後から、凍えるような声がかけられた。
「相当な手だれだから仕方がない、そう言うこと?」
言い訳はそれで終わりか。目だけが笑っていない微笑の母さんの顔は、そう父さんに訴えていた。
「そ、そういう訳じゃなくてね、ただ事実を述べたまでで……」
冷や汗をかきながら、ダンディさなど消え失せた震える声で父さんが答える。
「言い訳してないでいいからとっとと探してこい、このハゲェェェエエエーーーー!!!」
「ひぃ、す、すいません、すいません!!」
両親のコントを内心では楽しみながら、姉を心配する表情で僕はその場を後にする。ちなみに僕に仕事は振られていない。家族の中で僕は期待も面倒もかけない、そんな立ち位置にいる。
犯人は運がいい。僕が家を抜け出してベータ以下、五名を鍛えている間に犯行に及んだんだろう。僕が家を出る前なら、僕に見つかって失敗していた。悪運の強い奴である。
えっ、鍛えるのは五人じゃなくて六人だろって? いや、五人で正しい。残り一人はちょっとした事情で、戦闘訓練には参加させなかったのだ。理由? またの機会にと言うことで。そんなことより、
「出てこい」
「はい」
僕の声に応じて僕が二番目に助けた銀髪エルフの少女、ベータがアルファ達全員に配った黒のスライムスーツに身を包んで、窓から部屋に入ってくる。
「アルファは?」
「クレア様の痕跡を探っています」
「さすがと言うべきか、行動早いね。姉さんまだ生きてる?」
「おそらく」
「助けられる?」
「可能ですが……シャドウ様の助力が必要です」
「アルファがそう言ったの?」
「はい。人質の危険を考えると万全を期すべきだと」
「へぇ」
僕が独り立ちできると確信してから更に二年で、アルファはもっと強くなった。単純な戦闘能力だけでなく諜報技術なども向上し、以前領内で盗賊騒動が起きた時、領主のカゲノー家を疎んだ悪代官が裏で盗賊と繋がっていたのを短期間で調べ上げたこともある。そのアルファがわざわざ僕の手を借りたいと言うことは、そこそこの実力者がいるらしい。
「久々に、狩りごたえのある獲物ということか」
「犯人はやはりディアボロス教団の者です。それもおそらく幹部クラス」
「幹部クラスか。失望せずにすみそうだ……。それで、教団はなぜ姉さんを?」
「クレア様に『英雄の子』の疑いをかけていたのかと」
「ふん、勘のいい奴らめ……いや、運が悪いというべきかな」
「こちらの資料を見てください。我々が集めた最新の調査の中にクレア様がさらわれたと見られるアジトが……」
と言われてもベータ君、暗号なのか半分ぐらいは読めない古代文字だし、数字の説明もないしでさっぱりわからないのだが。
「ベータ、結論を簡潔に述べてくれ。あいにく古代文字は読めん」
そう言うとベータは慌てて申し訳ございませんと言いながら、可能性が高い順に各アジトの位置を指さし始める。だが、資料の説明中に急に地図と資料を交互に見て、隠しアジトがある可能性に気づいたという。
「見事だ、ベータ」
「ありがとうございます」
僕に褒められてベータは満更でも内容だ。
「アルファに話して、裏付けを取れ。確証が取れたら、今夜、仕掛けるぞ」
「はい」
そして夜、今日も今日とてひっそりと家から抜け出し、隠しアジト前でアルファ達と合流する。
「来たのね、シャドウ」
そこには今までアルファと僕で助けた元悪魔憑きであるシャドウガーデンの全員がいた。うん、全員がいた。
「ガンマも連れていくのか?」
「あー、酷いです、主さま。私を仲間外れにするなんて」
「仲間外れにしたいわけではないが、何もないところでさえ転ぶお前には、今回の仕事は向いてないのではないかと思ってな」
ガンマ。僕とアルファがベータの次に助けたエルフの少女。長い藍色の髪で高身長の美少女……だが、その頭の良さに反比例して凄まじい運動音痴だ。昨日の特訓でも一人だけアルファの監督で素振りをさせていた……のだが、一分間に一回くらいしか止まっているはずの的に当たらなかったらしい。更に一晩のうちに何もないところで三回ほど転んだらしい。
最初は僕もみんなと同じように剣を指導していたが、一人だけまるで改善の見込みが見られず、マンツーマンでも効果がなかった。僕の教えをきちんと理解しているのに、他のみんなと同じくらい身体能力を強化できるのに、ある意味才能なまでの運動音痴が全てを台無しにしている。そのため運動音痴が改善されるまで、戦闘訓練は延期ということになっている……今のところ無期限。
ガンマを連れて行っても戦果は期待できない。むしろ足手纏いにならないだろうかと心配していると、
「大丈夫なのです、ボス。デルタが、ガンマの分まで敵を倒すのです」
ガンマの隣にいる獣人の少女が発言した。黒い犬耳と黒いフサフサの尻尾を持った狼の獣人の彼女はデルタ。いつも明るく、能天気な子だ。彼女はガンマとは逆の意味で不安がある。とにかく頭が悪い。前にお使いをアルファが頼んだ時も、メモまで持っていたのに騒動に巻き込まれて買い忘れたものがあったらしい。
元気で体を動かすのが大好きだが、大雑把で頭を使う事にとにかく不向き。身体能力及び五感は七人の中でもトップクラスだが、獣人の中でも特に力の信棒者で、自分より強いと認めた僕とアルファ以外は自分より格下だと思っている節がある。
彼女もガンマと同じく指導を諦めた相手で、ガンマが教えを実行できないのに対して、デルタはそもそも教えを理解も記憶もできない。結果、スライムゼリーの扱い方を教えた後は徹底的に実戦形式で戦い方を改善させるしかなかった。
「いざとなったら私がフォローしますから、心配しないでください、主様」
「でも主の心配もわかる。私もバカ犬が余計なことをしないか心配」
「実験台……たくさん……フフフ」
今それぞれ声を出したのが上からイプシロン、ゼータ、イータだ。
イプシロンは水色の髪をツインテールにした小柄な美少女だ。元々はエルフのいいところのお嬢さんだったらしいが、悪魔憑きとなり全てを失い国を追われ、山の中を彷徨っているところを僕に拾われた。自尊心が高く器用貧乏なところがあるが努力家で、最近魔力の精密制御によってスライムスーツによって体型を盛り始めた。年齢の割に小柄なのでそこに劣等感があるのだろう。
ゼータは他のみんなとはいささか出自が異なる。獣人の英雄の末裔である金豹族で金色の髪と猫耳、尻尾を持つ獣人の少女だ。彼女が悪魔憑きになった時、彼女の両親は正しい英雄の伝承が伝わっていたため彼女の治療法を探そうとした。だが彼女の悪魔憑きを知ったディアボロス教団と思われる連中が、金豹族の分家を扇動して彼女の家族を襲った。結果、金豹族は彼女以外教団の手で全滅し、彼女も目の前で両親から託された弟を殺されたという。そのため一際ディアボロス教団への憎しみが強い。
アルファ以上の器用さと才能を持ち、一度見た技術を自分のものにできるのだが、飽き性なせいで模倣が不完全だったり詰めが甘いところがある。本人曰く「同じ獣人なのに、デルタがバカすぎて獣人の格が下がる」とデルタと仲が悪い、なのに息は合う。
最後の物騒な言葉がイータ。茶髪を無造作に伸ばしているエルフの少女だ。七人の中で一番好奇心が強く、前世の科学について少し話したらものすごく食いついてきた。ただ興味がないものにはとことん興味がないようで、普段は絶えず眠そうな態度である。本人曰く研究者だったという両親の影響か自身も技術に興味があり研究者と自称しているが、倫理観に欠けている節があり、僕やみんなを実験台にしたがるマッドサイエンティストだ。だが最後に入ったのとそのマイペースな性格でみんなからは妹のように扱われている。
この六人と僕とアルファが今のシャドウガーデンのメンバーだ。とりあえず大声でゼータに言い返そうとしたデルタの口を押さえて静かにさせる。危うく敵を警戒させるところだった。
「アルファとベータとイータ、イプシロンとゼータはツーマンセルで行動、抜け道があるようなら先に潰せ。ガンマとデルタは俺と共に来い。……行くぞ」
「「「「「「「はい」」」」」」」
「オルバ様、大変です! 侵入者です!!」
「侵入者だと!? 何者だ!?」
「分かりません! 敵は少数ですが、我々では歯が立ちません!」
「くっ、私が出る! お前たちは守りを固めろ!」
教団の命で悪魔憑きの噂があるクレア・カゲノーを誘拐し尋問して、彼女が悪魔憑きの兆候があったが治ったという興味深い話を聞き出した直後で襲撃だと。一体どこのどいつだと思いながら地下施設のホールにたどり着き、……その光景に絶句した。
この施設の護衛は決して弱くない。中に王都の近衛に匹敵するものもいる。なのに、その全員が殺されていた。総て一太刀。圧倒的な実力差によって斬り伏せられていた。そして目の前にそれを成したであろう三人がいた。全員が黒いボディスーツを身に纏い、体格からして少年と少女二人だ。
「貴様等が……!」
俺はその三人を睨みつけるが、体の震えが止まらない。少女二人も類稀な魔力コントロールで気配を操作している、自身に匹敵するだろう実力者。だが、その二人に挟まれた少年はより格が違う。魔力を完全に制御し、目の前にいるというのに気配が全く感じられない。本能が訴えている。逃げろ、戦うな、戦ったら死ぬぞ、と。一回戦でアイリス王女に負けたとはいえ、元近衛でブシン祭決勝戦に出場したこともあるこの私が!
「何者だ、何が目的だ?」
オルバは動揺を抑えて言った。 自身に匹敵、あるいは凌駕する実力者が不幸にも3人いるのだ。 戦闘は下策。 オルバは自身の不運に嘆きながらも、打開策を探る。
が、しかし。
血濡れの少女はオルバの言葉を聞いていなかった。
嗤った。
血濡れの少女は、血濡れのマスクの下でただ嗤った。
狩られる……!
オルバがそう思ったと同時、
「待てだ、デルタ」
少年の言葉で、血濡れの少女の動きが止まった。
「これから死ぬ罪人にも、我らのことを知り懺悔する時を与えてやるくらいの慈悲は示すべきだ。お前は他の奴らを狩ってこい」
「わかったのです、ボス」
その言葉と共に血濡れの少女の姿が消える。自分の目に止まらぬほどの速さで動いたのだとわかるが、そんな匙に気をかける暇はなかった。
「我らはシャドウガーデン。陰に潜み、陰を狩る……貴様らディアボロス教団の敵だ!」
いつの間にか手にしていた漆黒の剣がオルバに向けられる。その立ち姿は精巧な像のようにピクリともしない。わずかな動作と立ち姿だけでも、その実力を感じずにはいられない。どうやってこれほどの実力を、この若さで得ることが出来たのか。嫉妬と戦慄に震えた。
「貴様……どこでその名を知った?」
ディアボロス教団。その名はこの施設でも、オルバを含め数人しか知らないはずの名だった。
「我々は総てを知っている。魔人ディアボロス、ディアボロスの呪い、英雄の子孫、そして……悪魔憑きの真実も」
「な、何故それを……」
言葉の中には、オルバですら最近知らされた内容もあった。外部に漏れるはずのない、決して漏れてはいけない極秘事項だった。情報漏洩は許されない。だが、この少年達を始末し、秘密を守ることは不可能だ。何よりクレア・カゲノーから聞き出した情報もある。ならば、オルバのすべき事は……生存。生きて情報と彼らの存在を本部に伝えることだ。
「あああああぁあぁぁぁぁ!!」
前に、打って出る。オルバは気迫と共に剣を抜き、少年に斬りかかった。
「良い気迫だ。だが、……それだけだ」
切られた。まるで風のように自然に少年も自身へと切り掛かり、剣を躱しオルバを切った。それだけだが、その所作にオルバより遥かに高みにいる格があった。己の剣はいなす必要すらない、言外に突きつけられた事実を理解する。今のままでは撤退すら叶わない。
オルバは斬られた胸を押さえ跪き……何かを飲みこんだ。
「ほう……!」
突然、オルバの肉体が一回り膨張した。肌は浅黒く、筋肉は張り、目が赤く光った。 そして、何より、魔力の量が爆発的に増えていた。同時に予備動作なく薙払われたオルバの剛剣を、オルバの変化に意識が奪われていた少年は躱すことができず受ける。衝撃で少し後ずさる、だがそれだけだ。体勢は崩れず、双眸は油断なくオルバを見据えている。
「その波長、魔力暴走か。意図的に魔力暴走を起こし自らを強化する……先ほど飲んだ何かが鍵か」
「シャドウ様、大丈夫ですか?」
後ろの少女が、少年に声をかける。オルバは確かにその名前を記憶する。シャドウガーデンとシャドウ。必ず逃げて、この名を教団に伝えねばと。
「問題ない、ガンマ。単純な魔力ならアルファ以上だが、それだけだな。力なき技に価値はないが、技なき力は歪で醜悪なだけ。僕の価値観だが、それが事実だと証明してやろう」
そういう少年の体から魔力が溢れ出す。今までも魔力で身体強化はしていたのだろうが、魔力を掌握する余裕があったため感じられなかった。つまり少年はようやく本気になったのだ。
そこからは一方的だった。剣を振る、届かない。剣が振られる、躱せない。距離を取る、先読みされ追い付かれる。剣を握って間もない子供の頃、師と対峙した時のような圧倒的な差。オルバとの絶望的なまでの魔力差を、ただ技量によって覆している。オルバを襲うのは剣だけではない、圧倒的な敗北感。このままでは逃げることすら叶わない。自身の下にある隠し扉から逃げる隙すらない。
「なぜ……?」
敵対する、なぜ、それほど強い。
「陰に潜み、陰を狩る。我等はただそのために在る」
「貴様、あれに抗う気か……。たとえ貴様が、貴様等が、どれほど強くとも勝てはしない。世界の闇は……貴様が考えるより遥かに深い」
忠告では、ない。願いだ。この少年も無様に敗れ、総てを失い、絶望すればいい、そうあって欲しいと願った。そして、それが裏切られることを恐れた。つまらない嫉妬と羨望からの願い。
「ならば潜ろう、どこまでも、どれほど深くとも」
「容易くほざくな、小僧」
少年の自信と覚悟に満ちた言葉に最後の一線を越える覚悟が決まる。認められない。かつてオルバが目指し、砕かれたそれだけは、絶対に認められない。懐から錠剤を取り出すと、その全てを飲み込んだ。オルバはもう、このままでは自身が生き残れないことを悟っている。ならばせめて、この命を使って、この世界の闇を教えてやろうではないか。
人間の限界を超え、その身に莫大な魔力を宿す。こうなれば最後、もう元に戻る術はない……代わりに絶大な力を得る。教団はこれを『覚醒』と呼んでいた。
「アアアアァァァァァァァァァァアッ!!」
『覚醒』して得た力の前に、少年は防戦一方になる。少女が悲鳴を上げる。
「シャドウ様ッ!!」
「遅い、軽い、脆い! これが現実だ小僧っ!」
オルバは攻め立てる、圧倒的な暴力とわずかな反撃をものともしない再生力によって。何度も剣を薙ぎ、圧倒的な力をもって漆黒の少年を蹂躙した。大剣をどこからか取り出し助太刀しようとしたが当たらず、一人で転んだ少女のことは眼中にない。なのに、なぜ。
「なぜだ……何故届かぬ……?」
「もういいか。……遊びは、終わりだ」
一振り。それだけで、オルバの剣も、膨大な魔力も、鍛え抜いた肉体も、総て纏めてただ一刀の下に両断された。
肉体が上下に切り分けられ倒れる中、オルバは理解した。漆黒の剣は圧倒的な技量のみの剣だと考えていた。それは半分正解。少年の剣は圧倒的な技量の剣で、濃密な魔力が、絶大な力が、圧倒的な速さもあった。漆黒は何もかも総てを持っていたのだ。ただ、使わなかっただけ。その力総てを出したその一刀に断てぬものはなかった。
「これほど……か……」
肉体はまだ再生しようとはしている。だが、もう取り返しようがないほど壊れていた。勝者が見下ろし、敗者が見上げる。
オルバは漆黒の剣から少年を理解した。真面目で愚直で、血が滲むほどの努力の末に鍛え上げられた凡人の剣。何も知らないはずの小僧は、全てを知った上でここにいる。
「ミリ……ア…………」
己の死を理解したオルバは、青い宝石の入った短剣に手を伸ばし、目を閉じた。薄れゆく意識の中でオルバの脳裏に浮かんだのは、かつて亡くした最愛の娘の微笑みだった。
その後の顛末は語るまでもない。ディアボロス教団は全滅し、手錠をはめられ牢中で気を失っていたクレア姉さんはアジトの外に放置した。なんだかんだでしぶとい姉さんならわざわざ屋敷まで連れて帰らなくてもいいだろうという判断だったが、予想通り半日でご機嫌斜めになりながら帰ってきた。一番酷い手の怪我も一晩で治ったが、事情聴取や療養で予定より一週間遅れて王都入りした。その一週間は普段以上にかまってきて大変だった。
アルファ達は教団の残党処理や、回収した資料の調査で忙しい日々を送っている。姉さんが旅立ち、しばらくした頃ようやくアルファ達の調査が完了したので報告しにきた。
それによるとディアボロスと戦った三英雄は全員女だった。悪魔憑きはそのため女性にしか発現しないらしい。更に英雄の血は世代交代するごとに当然薄れるが、その時悪魔憑きの発現率も低下するという。結果寿命が短く世代交代を繰り返した人間は発現率が一番下がり、次いで獣人、エルフが一番発現率が高いという。実際、うちの元悪魔憑きの種族比を見ると納得しかない。人間ゼロ、獣人2、エルフ5だからね。僕? 悪魔憑きじゃないからパス。
次にディアボロス教団だが、教団の規模は予想通り世界規模で、悪魔憑きが発現した人を適応者と呼び早期捕獲と処分を徹底しているという。
それに対抗するため、『シャドーガーデン』も世界に散るしかないと七人は結論したらしく、世界に散って悪魔憑きの保護や教団の調査・妨害をしたいとなった。もともとアルファ達が作った組織なので、僕もそれを了承した。力しか能がない名ばかりトップだから、アルファ達が僕の下から離れても思うところはない。これからも保護した悪魔憑きを助けて欲しいというので、次に悪魔憑きが保護された時にアルファ達に治療法を教えることにした。いちいち僕のところに運ぶのも手間だろうし、その場で治療できた方が色々と楽だろう……デルタだけはできる気がしないが。
餞別を兼ねて僕の今までの盗賊からの略奪品のうち、主に嵩張るものを中心とした資産の大半を彼女達に渡すことにした。盗賊はまた狩ればいいし、当座の活動資金はみんなも必要だろうからだ。定期的に報告しにきてくれるらしいし、大きな活動の時は僕にも声をかけてよとだけ告げておいた。
そして時の針は加速する。新拠点とか色々特筆することはあるが、次は僕が十五歳となり王都に行く時から話を始めよう。
こんな締めになりますが、実際はカゲマスの七陰列伝 第二・三章の古都アレクササンドリア編を挟みます。王女たちのファンはもう少しお待ちください。