季節は5月に突入した。
日差しは暖かく、芽を出した草木は葉をより大きく広げはじめる。しかし、夜の帳が降りればしぶとい冬の気配を感じ取れるだろう。
日本の東北に位置する杜王町もそれは同じことだ、日が落ちはじめると住人は這い寄る寒さを避けるように各々の家路についていく。
仙台のベッドタウンとして発展したものの、それは駅周辺の住宅街が中心で、ほんの少し足を延ばせば、辺りは低い戸建てと農地、牧場ばかりになって、道を照らす街灯までも間隔が広くなり人の気配は感じられない。
つとつと、つとつとと軽く素早い、私の小さな足音が夜道に反響していく。
呪力で脚力を強化し、身体の疲労を波紋で癒す、余った波紋は地面を伝わせ落ち葉や砂利や小石等、踏みつけたものにくっつく性質を与えて音を殺す。
首に巻いていた
そして、また波紋を流して、まるで雑巾を絞るようにして漉し潰す。
ぎゅちぃっとマフラーが音を立て、繊維に名状しがたい汁が滲む。
腕時計の時間を確認する。花の形状をした子供らしいデザインのそれに示されている時間は02:58分、丑三つ時もすでに終わり草木も夢を見ている時間だ。
『石仮面』が何者かに回収、修復されていると分かってすぐ、私は通学時、土日の呪霊退治に加えて、毎晩深夜、杜王町のパトロールを日課に追加した。
すでに
できれば使用後に負うデメリットを知らずに、昼間に使用して勝手に灰になっていてほしいところであるがそれは高望みだ。
それに、呪術師が持っていると勝手に予想しているが、スタンド使いが偶然に手にした可能性もないわけではない。
その場合、相手のスタンド像を認識できない私は圧倒的に不利。
スタンドを五感で認識する方法はいくつかある。
まず、『
次、夜蛾さんが使っていた『
呪力を持たせずに作ることもおそらく可能だとは思うが、基本厄ネタアイテムであろうそれらを作って検証することはしない。
最後に、今後登場するトニオさんや、岸辺露伴のように『何らかの技術を極限まで高める』こと、無理。自分に合った才能を見つけて、その界隈の上澄み以上になるとか絶対無理。時間も才能も足りません!
つまり、楽をしてスタンドを認識するのは無理。……というわけで私は波紋を鍛えている。
一見、スタンドと波紋に関連性はないように思えるだろうけれど、第3部でジョセフ・ジョースターは、自らのスタンド『ハーミット・パープル』に
スタンドは波紋と併用でき、スタンドは生命力のヴィジョンだ。そして波紋は生命力を探知できる。
スタンドも波紋を鍛えれば見えずとも探知可能となる!
これは杜王グランドホテルで、
吸血鬼もそれに生み出されるゾンビも実体をもち、波紋に弱い。
相手のスタンドが自動操作型や遠距離操作可能なものでなければ、波紋の探知は本体にも有効であるため、可能な限り肉体を苛め抜いて、波紋を短時間で強く練り、ついでに低級の呪霊を倒しながら、マフラーで生命を探知するのが今の私にベストな修行!
何の生命を探知するか? 基本は夜間巡回のおまわりさんと、酔っ払い、あと、家の中で夜更かししている人。10才の少女が世紀末感あるマスク(波紋矯正用)とマフラー巻いて消音ダッシュしている光景は、もうただのホラーだから見つからないようにしないと、ね。
けれど、どれだけ波紋と呪力の操作を鍛えても、私には戦闘経験というものが圧倒的に不足している。この修行以外でも呪霊を見かければ祓うことはしているけど、結局は格下で人型でもない。スタンド使い以前に、対人相手の戦闘は完全に未経験、波紋を叩きこむ前に迎撃されてオシマイということも十分に考えられる。
だから、
電線をぐいぐいと揺らして昼間に切れるように細工に励む呪霊を発見する。位置は地上から約8メートル、悠長に電柱を登っていれば先制攻撃をくらいかねない。
私は呪霊に向けて両腕を構える。シーザーのポーズだ。
そして術式を発動する。作り出すのは、シャボンを生み出す拳銃型のオモチャ。
波紋と呪力を十分に込めて、引き金を引く!
バシュウウウ! バチッ、バリバリバリッ!
勢いよくシャボン玉が噴出して連なり、呪霊を包み、締め上げ炸裂し、撃ち落とす。
見た目ほどのダメージは受けていないようだが、一般男性の蹴りくらいの威力は出ている。コンクリート目がけて落下する呪霊をマフラーで追撃し仕留めた。
……なぜそこはシーザーのグローブを装備しないのか?
サイズが合わなかったの。しかも波紋を流していないと意外にシャボン液があちこち垂れるし、小学生がゴツイ指ぬきグローブ装備していたら目立ってしょうがないのよ。
携帯できない時点で問題だけど、べたつくから家に置いておくのも絶妙に難しくて。子供らしい道具でシャボンランチャーを再現するのはこれくらいしか思いつかなかったよ……。
夜の杜王町をほぼ一周し、両親がちゃんとベッドで眠っているのを波紋で探知して2階の自室に窓から戻る。
流れる汗を、ペットボトルで濡らしたタオルで拭い、そのタオルの水分を波紋で集め、窓の外にそっと流し、就寝。
朝、波紋により強制的に回復させた肉体を引きずって登校する。
波紋は、
細胞が波紋で丈夫になり回復力もあがっているから
つまり、
……かわりに、睡眠中も波紋の呼吸が必須となり、その間も成長痛に襲われる。
授業? 前世で習った記憶があるのに少なくとも小学校の範囲で躓いていたら笑いものだからね、半分聞き流していてもなんとかなるよ。
給食のメニューを男子の3倍は食べて、新たなマジック!? 等と驚かれながら昼休みの時間に仮眠をする。あくまで体は10才の少女なので夜は普通に眠くなる、だから今のうちに寝てリズムを調整しておかないと夜のパトロールに響くのだ。
「『恐怖の大王』だってさー! 怖くねー!?」
クラスメイトの男子が持ち込んだオカルト雑誌片手に騒ぐ声が聞こえてくる。
そういえば、1999年は空前の終末ブームに沸いていたのだった。
日本人の何割かはすぐそこまで迫るの世界の終わりに恐れ、嘆き、悲しみ、怒り、自暴自棄になり、対策を立てたり、散財したりと結構な混乱を齎した社会現象だ。
正直10年以上前、親の世代からのブームであること、自分は前世および未来の知識でこの先も世界は続くことを知っているから、あまり興味はない。
でも、これだけの不安や恐怖が日本中にあふれているなら、案外どこかで本当に
「けどさ、『恐怖の大王』をどうにかしてくれる『別のもの』ってなんだろうね~?」
「宇宙人とか?」
「地底人とかかもよ?」
「神様みたいな究極の生き物とか?」
「なんだよそれ? どんなやつだよ~!?」
「へへへ、言ってみただけ~!」
後に2つの作品が絡み合った結果おきたバタフライエフェクトで、その『別のもの』と遭遇した瞬間、恐怖の疼きを味わうことになるとは、眠気に支配された頭では想像することもできなかったのだ。
『恐怖の大王』
預言者ノストラダムスが予見したとされる正体不明の厄災。
引き起こす世界の破滅は『別のもの』が登場する場合、回避されるともいわれいるとか。
第4部終了後のストーリーどこから見たいですか? 選ばれなかったのは閑話やら回想やらでたぶん細切れで書きます。
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呪術、高専(玉折前)から
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ジョジョ、第5部から
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第4部と第5部の間のオリジナル
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すっ飛ばして呪術原作1巻から