はじめて重めの花粉症になりました。
花粉症の皆さんこんなにつらかったんですね……。
深夜の見回りに慣れてきた今日この頃、今のところ杜王町の中で吸血鬼やゾンビに関係のありそうな噂や、事件の話は耳にしていない。
『石仮面』の持ち主が
すべてそんな危険物を作ってしまった自分のまいた種だけれど、すでにスピードワゴン財団も、高専の呪術師も『石仮面』の足跡を追いかけている。
術式の秘密を話すわけにはいかず、未成年で行動が限定される今の私ができるのは、影ながら杜王町を守ることだ。
それはそれとして、学校は一学期のちょうどなかば、生徒は新しい環境に慣れてきて友人ができ、授業の内容をなんとなくであっても把握しはじめた頃。
つまり、先生が小テスト祭りを開催する時期だ。
「秀一すげーっ! 全部のテスト90点代だ!」
「ハハハハハ! 俺にかかればこんなもんよ!」
「かっこいいねぇ!」
小テストがすべて返還された直後、大きな声が上がり一人の少年にクラスの注目が集まる。
伊藤秀一くん、このクラスのいわばリーダー枠にいる子だ。
成績優秀、文武両道で学年全体でも男女ともに一目置かれている。
この世界の原作がジョジョと呪術でなかったら、青春系学園漫画の主役になっていそうなポテンシャルだ。
「おや、おやおやおやぁ? 的場ぁ、俺を称える声が聞こえないぞ?」
ただ、なぜか私にだけはやたらダルがらみしてくるんだよね、彼。
今回も遠巻きに見ていた私に向かって耳に手を添えながら、自ら歩み寄って声をかけてきた。
「さては今回のテストはボロボロだな? 最近居眠りしまくっていたもんなー!」
「いや、そういうわけじゃあ」
「それっ! 学校一のマジシャンガールの答案がどんな惨状か、みて、や……る?」
言葉を濁した私の態度からテストの点が悪いと決めつけて、裏返しで置いていた答案をサッと手に取ってクラス全体に見えるように掲げて見せる。
そして、蛍光灯の光で透かされて見えた点数を見て、固まった。
「わっ、矢文ちゃんのテスト全問正解だわ!」
「はなまるぴっぴだ!」
「すげー!」
女子を中心に歓声があがる。
去年、他クラスだった彼を運動会のリレーのアンカー勝負で私が負かしてからというもの、彼はテストや体育授業の度、絡んできては敗北するパターンを繰り返している。
今年は同じクラスになったので、せっかくなら仲よくしたいから、今回は誉めたら褒めたで絡んでくる彼のプライドを刺激しないように黙って成り行きを見ていたのに、結局彼は絡んできてしまった。
もう、そういう趣味なのかもしれない。
「……返す」
「うん」
難癖もつけないで潔く答案を返すあたり、けっこう好感が持てるんだけどなあ……。
肩を落として離れていく秀一くんが、他の男子生徒に肩を叩かれているのを見ながら私はあくびをした。
日暮れが遅くなりはじめた杜王町の放課後、秀一くんに挑まれた駅までの競争を軽く引き離して撒くと、仗助さんと康一さんが焦りながら駅へ向かって走っていくのが見えた。
どうやら、今日は原作でいうところの間田の『サーフィス』との話なのだろう。
駅周辺は人が多い分暗いイメージが集合することは比較的少ない。そのため漂っている呪霊は小物ばかりだ。
髪留めにしていたアメリカンクラッカーで遊ぶふりをして呪霊を祓いつつ、駅前の商店街をうろつく。
しばらくするとガラの悪そうな男たちが、ボロボロになった細身の少年をバイクにのせて走っていくのが見えた。
たぶん病院に連れて行って、『事故から助けた』
バイク乗りの交友は広い。きっと、彼はもう杜王町で悪さはできないだろう。
『スタンド使いはスタンド使いといずれひかれ合う』……ね。私はスタンド使いではないから、その法則に当てはまらない。実際、去年前世を思い出してからというもの、定期的に町の中で原作のキャラクターを探しても、結局見つけることはできなかった。
この町のほとんどのスタンド使いが、虹村形兆の『弓と矢』に今年に入ってから射抜かれて覚醒したものだとしても、4部原作の開始は約4月なので3か月は新米スタンド使いを探せるだけの時間があったのに、仗助さんとすれ違うこともなかったのだ。
実は呪術師はスタンド使いと、戦闘だけではなく運命的にも非常に相性が悪いのかもしれない。
折角のクロスオーバーなんだから、呪力でスタンドを見ることができたらよかったのに。
駅を通り過ぎて住宅街に入り、コンビニで働くお母さんに手を振ってから家に向かう。
今日お母さんは20時までの夕勤なので、私がカレーを作る予定なのだ。
前世で料理は普通にしていたが、今世でガス台の使用の許可が下りたのは今回がはじめて。野菜を洗ったり、切ったりとかの手伝いはしていたけどね。
付け合わせのサラダの内容を考えながら、ランドセルから家の鍵を取り出して玄関を見ると、見慣れない人影が見えた。
黒い背広を着込んだ体は、雪だるまみたいにずんぐりむっくりという言葉がぴったりあてはまる。大きな頭には髪色と同じ真っ黒な帽子、手に持っている大きなバッグも真っ黒でまるで一足先に夜が人型を得てやってきたようだ。
このまま見ていても家に入れない。おそらく男性だろうその人に、私は思い切って声をかけた。
「あの! うちに何かごようですか?」
「……この家の方ですか?」
振り向いた男を見て息をのんだ。
無感情にも、興味にあふれているようにも読み取れるジットリした垂れ目。そして大きな口! 妙に良い歯並びが白く反射しているうえに唇の血色も良いせいでまるで三日月が赤い光を放っているようだ。
「こんにちは、お嬢さん。ご両親はご在宅ですか?」
「こ、こんにちは。今日はお父さんもお母さんもまだ帰ってきていません」
「そうですか、では出直すとしましょう」
不気味な見た目と裏腹に、男は紳士的で落ち着いた口調をしていた。
「あの、あなたが来たことを二人に伝えておくので、お名前を聞いてもいいですか?」
「それには及びません、ただのセールスマンですから……」
聞けばこの男性、自分の持つ商品の試供品やそれに伴なって築いた人脈の紹介で、人々の日常の何気ない悩みや不満を解消するためのお手伝いをしているんだそう。
半分趣味が入っているらしく、ほとんどの場合その後の契約にはつながらないそうだが、取引先には商品の改良点として報告するので問題はないらしい。
「どうやらお嬢さんも、なにやらお悩みを抱えておいでのご様子。せっかくです、ひとり言のつもりで話してみてはいかがでしょう?」
「え、えー……そんなこと言われても」
「サラリーマンとして世間を渡り歩いていれば、様々な経験をしているものです。たいていのことは驚かずに聞いてみせましょうとも」
営業職だけあって口のうまいこと、私はすっかり彼に警戒心を抱けなくなっていた。
そして、ずいぶん大きいことを言うので、いたずらごころが沸いてしまった。
「なら……目に見えないものを見えるようにする商品、ありますか?」
今一番困っているのはスタンドが見えないこと、波紋での探知で分かるのはスタンドを出しているかどうかくらいで、姿形や攻撃の予兆なんかは全く分からない。
感じ取れないものは避けられない。
まあ、それをこの人に言っても困らせるだけだろうけどね。
「ははあ、それはオバケや幽霊とか、超能力のことをおっしゃっていますか?」
「!?」
驚く私をよそに、彼はバッグをごそごそといじり、『ザ・千里眼!』と手書きで書かれたようなパッケージの目薬を差しだした。
「こちら、私も愛用しているんですがね。各国の秘境でとれた材料を煎じて作られているそうです。1回でだいたい30分くらいしか持続しませんが、効果は保証しますよ」
受け取って裏面の説明書きをじっ、と見る。原材料には聞いたこともない虫や植物の名前がたくさん書きこまれていてなんともアヤシイ感じ。彼も使っているとのことだが、信用できるのか。
警戒心が復活し、悩む私に彼が一言付け加える。
「ただし……その目薬は一日一度までしか使ってはいけません。さもないと、大変なことになりますので、使いどころはよく考えてくださいね。では、これで」
「あ!? ちょ、待って!?」
条件を付けられてますます怪しさを増す目薬。
私に一枚の名刺を手渡してから、見た目にそぐわぬ高い身体能力で、あっという間に走り去った彼の方角をしばらく呆然と見つめる。
そして、手の中の
ココロのスキマ♡お埋めします
喪黒 福造
「……いや、あんた別の作品のキャラクターでしょうが!?」
夕日が光る杜王町、「ホーッホッホッホ!」と独特な笑い声が響いている気がした。
杜王町の不思議 『謎のセールスマン』
2、3ヵ月ごとに現れる黒ずくめのセールスマン。
手渡してくる試供品はとんちきなものばかりだが、正しく使えば意外と悩みを解決してくれる。
たまに何もない場所に話しかけている時があるらしい。
とつぜんぬるりと湧いて出ました。
ので、タグに『たまに他作品とのクロス』を追加しました。
第4部終了後のストーリーどこから見たいですか? 選ばれなかったのは閑話やら回想やらでたぶん細切れで書きます。
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呪術、高専(玉折前)から
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ジョジョ、第5部から
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第4部と第5部の間のオリジナル
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すっ飛ばして呪術原作1巻から