ジョ術廻戦   作:春の綿雪

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 おまたせしました。


磯のアワビ、抱える紅玉

 

 波紋と呪力を駆使して横っ飛びに地面を転がる。

 その軌跡を追うように、パチパチパチィッ!()()()()()()()()()()

 その文字が回収される前に、私は腰にセットしていたシャボン銃を構えてトリガーを何度も引いた。

 

 ぷくぷくぷくっ! ぶわああああああ!

 

 術式で生み出したシャボン液が、波紋と銃が送り込んだ空気で一気に膨らみ殺到する。

 しかし、その泡が相手に到達する直前に文字が回収されてしまい、新たなオノマトペにつくり変わっていく。

 

 ジュジュジュジュジュウゥ~!

 

 変更した文字を飛ばさずに、そのまま尻尾を振り回してシャボンは蒸発させられてしまった。

 私はその間に距離を詰め、呪力を込めた拳を振りかぶる。

 

「もらいましたっ!」

 

「……いや、僕の勝ちだよ」

 

 ビタァ!

 

 突然金縛りにあったように体の動きがぎこちなく止まる。

 やられたっ、振り回しの最後に尻尾の文字を変えて私が来る方向を予想して、放り投げていたんだ!

 次の瞬間、緑の尻尾に腕を絡めとられて転がされた。

 

 

 

「勝負ありっ、康一の勝ち! そんで、賭けも俺の勝ちっスね~億泰」

 

「だあああっ! チクショウっ、約束だかんな。ジュース買ってくるぜ!」

 

 

 知らない間に勝敗が賭けの対象にされている……。

 近くの自動販売機に走っていく億泰さんの背中を地面に転がったまま目で追っているとそっと手を差し伸べられた。

 

 

「矢文ちゃん、大丈夫? そんなに勢いはつけないようにしたんだけれど、どこか痛かったかな?」

 

「平気です。康一さんも腕は大丈夫ですか?」

 

「うん……ちょっと痺れているけど、少し休めば大丈夫そうだよ」

 

 

 どこか立ち上がったアライグマに似たスタンド像が康一さんの周りをゆっくりと旋回している。その姿が突然、ピントが合わなくなったように見えなくなっていく。

 

 

 

 

 アヤシイせぇるすまんに手渡された目薬の効能は、本物だった。

 

 私は翌日、確認のために登校中に仗助さん達にスタンドを出してもらったところ、はっきりとそれぞれのスタンド象を見ることができた。

 出所が不透明な薬品の使用に心配されたけれど、これからのことを考えるとこの目薬は必要だ。

 

 効果時間の確認などの検証を行う中で、せっかくなので見えている時間を有効活用しようという意見があがり、比較的最近にスタンド能力を得たばかりの康一さんと、視覚のみスタンドを認識できるようになった私を中心とした組手?を定期的に開催することになったのだ。

 開催場所はその日によって変えているけれど、3回目の今回は河川敷にある芝の多いグラウンドだ。

 

 

 ルールは『一撃必殺となる方法での能力の使用はナシで、先に一撃をいれた方の勝ち』

 

 

 仗助さん、億泰さんにはずっと負け続けている。単純に私の持つ攻撃手段が一般人の肉眼でも見える攻撃であること、そして二人のスタンドがそれよりも素早く、力強く動けることが大きな要因だ。

 

 康一さんとの戦績は先日まで私が勝ち越していたけれど、つい数日前に彼が能力を成長させてからは、『音を張り付ける能力』の他に『音を現実化する』能力が加わって、攻撃的かつトリッキーな手札が一気に増えたので、接近戦での攻撃をいなされて反撃すらされてしまい、中距離に引き離されて攻めきれない間に、動きを止められて負けてしまうようになった。

 

 近距離パワー型のスタンド使いは()()()()()()()()()スタンドを使用することで疑似的に()()()高い身体能力を発揮できるが、それ以外の中距離、遠距離型のスタンド使いの本体は基本自身の身体能力や移動速度を底上げするような使い方は難しい。

 だから、いままで康一さんに私は呪力と波紋で速攻をかけることでごり押して勝利できていたんだけど、もう難しいみたい。

 

 

 

 何度か模擬戦をするうちに確信したけれど、呪術師はスタンド使いに対して比較的不利になりやすい。

 

 

 

『式神使いは本体を狙え』という勝ち筋のセオリーは、そもそも相手の式神が見えているから判断できる要素だから、スタンドが見えない呪術師には相手が謎の術式使いにしか見えず無防備な状態で攻撃を受けることになる。

 

 もちろん、仗助さん達スタンド使いも基本呪力で構成された術式の攻撃や呪力そのものは認識できないので、お互いに初撃で行動不能になる一撃を浴びせられる可能性があるけれど、基本的に能力はお互いに認識できないが、『スタンドは術式の効果を無効化する』という性質から、本体の前にスタンド像を立たせているだけで強力な盾になる。

 

 しかも『スタンドはスタンドの攻撃でしか傷つかない』ため呪力で強化していた物理攻撃も、スタンドで受けられてしまうとダメージはほぼ無効化されてしまう。

 一度全力の呪力強化で仗助さんをクレイジー・ダイヤモンドごしに殴らせてもらった時でも、彼をほんの少しよろめかせることしかできなかった。

 

スタンド使いは呪力での身体強化をしてこないし、戦闘向きではない能力を持つ者も多くいるから一概に有利とも言えないけれど、相手の攻撃に明確な防御手段があるというだけで非常にやっかいだ。

 

 

 

 

 戻ってきた億泰さんが買ってきたジュースを全員で飲みながらしばらく世間話をして、解散する。

 飲み終わったジュースの缶を自販機横のゴミ箱へ捨てる。

 投げ込んでうまく入らなかったのか、周りにいくつか潰れた缶が転がっていたので、私はそれらを拾い上げ捨てなおす。

 こういった()()()()()()()()()()()()()()も負の感情の起点になり、呪霊の発生に関係するのだ。

 

「あ……こんなところにも」

 

 自販機の裏側に缶の頭が見えたので、私は身を乗り出してそれを掴む、そしてその先に()()()()()()()()()

 

 

あ な た、 康一君 の な に?

 

「ひえゃあああああ!?」

 

 

 整った顔に血走った目、ざわざわと蠢く白い髪の毛が手足を抑え、動きを封じられる。

 そして、血管がうきでた白魚のような指でガッシリと万力のように頭を鷲掴みにされて逃げられない!

 

 

コ タ エ ロ

 

 

「こ、康一さんは、お兄さんみたいに尊敬する先輩です! あなたが心配するような関係じゃあないです()()()()()!!」

 

 

 私の宣言で指の力が緩んだ直後。術式でヘアオイルを構築し波紋を駆使して拘束を抜け出す。

 なおも追いすがる白髪から2度、3度跳躍して距離をとり構えた。

 

 ゆらりと自販機の裏からホコリにまみれて姿を現したのは。

 予想通り、由花子さんだ。

 たぶん、私たちが組手をしている所から見られていたのだろう。

 そこに億泰さんがジュースを買いに来て慌てて隠れていたんだ。

 

「……あたし、アナタに自己紹介した覚えはないわよ」

 

「康一さんから話では聞いていたので」

 

 そういうと彼女は顔をゆがめて、それからうなだれた。

 

「彼、あたしのことひどくいっていたでしょう……? 当然のことよね……」

 

「……キレイだけど、思い込みが激しくって困った人とは言ってました」

 

「そう……」

 

「でも」

 

「不思議なことにひどい目にあったとは言うのに、『嫌い』とは一言も言わなかったんですよねぇ」

 

 

 康一さんからはスタンドが成長した経緯を聞いたときに、彼女のことを聞くことになった。

 仗助さんや億泰さんは結構ひどく彼女について言っていて、康一さんはそれを否定も肯定もしないで明言を避けていた。

 きっと、彼女に対しての感情は未だに戸惑いが多くを占めているのだと思う。

 

 

「私は、由花子さんがアプローチを変えれば康一さんとすぐにうまくいくんじゃあないかと思いますよ?」

 

「あなた、名前は? そこまでいうなら……何か考えがあるんでしょうね」

 

「的場矢文です。まずは、お互いの情報を交換しませんか? 作戦会議はそれからで」

 

「……いいわ、その口車に乗ってあげる」

 

 

 いつの間にか体についたホコリをおとしきった由花子さんは、背を向けて歩きだす。

 

 の、乗り切った……。

 気づかれないように大きく息を吐いて、私は彼女を追いかけた。

 

 

第4部終了後のストーリーどこから見たいですか? 選ばれなかったのは閑話やら回想やらでたぶん細切れで書きます。

  • 呪術、高専(玉折前)から
  • ジョジョ、第5部から
  • 第4部と第5部の間のオリジナル
  • すっ飛ばして呪術原作1巻から
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