誤字報告、お気に入り、評価ありがとうございます。
季節が原作に追い抜かされつつありますが、焦らず書き進めていこうと思います。
縛り。
呪術廻戦で登場する呪術のテクニックのひとつで、特定の制約を自身に科すことで制約中や達成後に呪術的要素の底上げをすることができる。
これは他者間で行う場合、制約を反故にした際のペナルティを指定しない場合その効果をさらに引き上げることもできる。
今回、私と甚爾さん、そして鈴美さんとの縛りの内容は以下の通りになった。
一つ、杉本鈴美を殺した『殺人鬼』が逮捕、討伐されるか、杉本鈴美が呪胎から呪霊として孵化しない限り、杉本鈴美を祓わず秘匿する。
二つ、甚爾は
三つ、的場矢文が甚爾に何かをお願いする場合。指定された報酬を用意する。
一つ目が私、二つ目が、鈴美さん、三つ目甚爾さんが定めた内容である。
視覚的には見つけられないようになっているものの、出入りが自由なために成立しているこの領域は『指定条件を破るとペナルティを与える』ような効果があるらしく、この小道の指定範囲で振り向くと、《魂以外のすべての権利を奪われる》っぽい。
肉体の権利を奪われた魂は現世との境界線にあるこの小道では、あっという間にあの世へ引きずり込まれてしまい、残った肉体は死を迎え、そのまま領域に分解されて一人と一匹の呪力の一部となる。
原作で康一さんが振り向いてしまった時に助かったのは、杉本鈴美自身が彼らを外に帰すつもりでいたことと、岸辺露伴が領域からはじき出したからだろう。
先ほどの目薬によってわかったことだけれど、振り向いたことで分解された呪霊の呪力が堆積したことが、禍々しい呪力を持つ原因のようだ。
私は『原作』の知識で今年の夏に、彼女の未練である『
鈴美さんは、自分達の現状を知った上でギリギリまで状況を引き延ばした私に恩を感じたのか、二つ目の縛りでかなり私に有利な内容にしてくれた。
最初は「できる限り」というかなり曖昧な条件を付けそうになっていたのだけれど、それだと条件が彼女の認識に依存するため、さすがに甚爾さんの行動に大きな制限がかかってしまうから、話し合ってプライベートに影響が出そうな時には断れる文言になった。
そして最後に私が調子にのって変なお願いをしないように、
この条件によって、私のお願いを甚爾さんは聞かなくてはいけないが、断りたい時に無理難題な報酬を指定することでお願いを取り下げさせることができるようになった。
結局、お互いに鈴美さんに手を出さないことが確約され、それ以外はギブアンドテイクな関係性に収まった形だ。
小道から出ると、閉め切った室内のような空気が涼やかな風にさらわれていく。
隣に立つ甚爾さんはここに入る前と変わらず、身軽なまま。
私が構築した財宝の数々は彼の胃の中の呪霊が飲み込んだ。呪術廻戦の原作で芋虫型の呪霊が登場した回数はそれほどないから正直、そのスペックの高さをなめていた。
どうやらあの呪霊は幼子の飢餓感を核に生まれたようで、術式は『底なしかつ消化のできない胃袋』といったものらしい。
お腹が空いているのに満たされず、糧にもできないという本霊にとっては地獄みたいな能力で、ちょくちょく泣き言が聞こえてくるらしいが、無限の収納として利用できることを考えると些細なデメリットなのかもしれない。
「あの、甚爾さん」
「なんだ」
「私、『強く』なりたいんです」
「……」
「できれば
『振り向いてはいけない小道』は隔離された空間。派手な音をたてて暴れようともそれが外部に伝わることは無い。
あの世に引きずり込まれる条件は『出口につながるポストから先の道で振り向くこと』であるから、それ以外の場所ではどのように動いても問題はなく、道幅も車2台分はあってそれなりの広さがある。
余計な人の目もない、絶好の修行場だ。
「ひとつ聞かせろ。お前、どうしてあの女が正気だと言った」
「……!」
「確信したのはその目薬をしてからだろ。ならその前は別の要素で判断したはずだ」
「それに答えたら考えてやる」
ああ、この人はなんてスルドイのか。しかも遠慮がない。
ウソを許さないまなざしを受けて私は一呼吸。半端に乾いた口の中のつばを飲み込んだ。
「突然、誰かから世界の運命を頭に流し込まれたって言ったら……笑います?」
「……下手に弄ると世界が滅ぶ、ねえ」
「もっともその記憶にいない私や甚爾さんがこの町にいる時点で、とっくに展開は未知数なんですけどね……」
『この世界は前世で見たフィクションの世界が複数交じって構成されています』なんて言えないので、『断片的に世界の命運に関わる人物の情報を2作品の漫画形式で頭に流し込まれた』として説明をした。
最初こそ、甚爾さんは馬鹿を見る目で私を見たけれど、彼の苗字を口に出し、
彼が辿る予定の運命は明言を避けたけれど、明るいものではないことは悟られてしまったかもしれない。
『石仮面を取り巻く運命の物語』と『千年に及ぶ呪術界の物語』と称して簡単に概要を語る。
前者は神父をどうにかしないと世界が終わる。後者は
それぞれの黒幕を止めなければ、私は安心して眠れない。
そして、前者には呪霊の描写が無いために、
後者は、そもそも
「わかった……指導はしてやる」
「だがよ、お前が今やってんのは自分で言った『半端な繰り返し』と一緒だろ」
「っ!?」
「どうせなら、思い切り引っ掻き回せ」
チェシャ猫のように嗤う甚爾さんの言葉に息を呑む。
確かに、私の知識はいわゆる神父の能力の『一週目』を体験した状態と似通っている。
違うのは、『一週目』に自分がいないコト、そして、自分が物語に関われるということ。
自分がいなくてもこの奇妙な物語は進行する。
億泰さんの家での出来事もなんだかんだ二人は呪霊を討伐しきっていただろうし、康一さんはあの日に靴を買えずとも一日は乗り切ったろう。
実際、あれから私は原作の出来事に関わっていないが、物語はつつがなく道筋をなぞっている。
しかし、私はすでに原作へ『石仮面』という特大の厄ネタのフラグを投入してしまっている。
とっくに原作をぶち壊してしまっているのに覚悟が、足りていなかった。
『原作の端役ではなく、主要人物となる』ことへの覚悟が。
きっとこの先、私の行動のしわ寄せが必ずやってくる。私はそれを来るに任せるのではなく、迎え撃ち打倒しなければならないのだろう。
空が白み始めた夜道で一人、甚爾さんがいつの間にか歩き去ってしまったことにも気づかず、私は思考の海へと深く、深く沈んでいった。
翌日、杜王町は大規模な停電にみまわれた。昼間であったこと、災害に備え役所や病院等には発電機があったことで人命に被害はなかったものの、後日ニュースで原因不明の停電として大きく取り上げられることになった。
そして、現地の中継のリポーターの後ろでは、杖を突いた外国人の老人と一昔前の不良のような髪型の青年がゆっくりと歩く姿が写りこんでいたという。
第4部終了後のストーリーどこから見たいですか? 選ばれなかったのは閑話やら回想やらでたぶん細切れで書きます。
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呪術、高専(玉折前)から
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ジョジョ、第5部から
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第4部と第5部の間のオリジナル
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すっ飛ばして呪術原作1巻から