毎度お待たせしてます。今回は気持ち長め。
仗助さんからは警戒と怒りに満ちた表情をしているのに対し、承太郎さんは冷静にこちらを見定めようとする理性を感じさせた。
「……誰かが『矢』によってスタンド能力に目覚めると、同時期にその血縁者がスタンド能力を発現させることがある。 だが、お前はあのネズミたちとは違う能力らしいな」
「待っていたよ、空条承太郎と東方仗助。そんな顔をしていたんだね」
「テメェの方は、矢文ちゃんの
「ハンッ、ドブネズミの顔を見たところで人間には区別も付かないでしょうが」
私の口が勝手に動き、挑発する仗助さんを逆に煽り返す。
私も仗助さん達も察しがついていたようだけど、私の体を操っているのはやはり彼らが倒したドブネズミの生き残りらしい。
きっと、挑発に乗って顔を出した瞬間に頭を潰して決着をつける作戦も考えていたのだろう。仗助さんが奥歯をギリリと軋ませるのがわかった。
「勝負はアタシと空条承太郎との一対一だ! 再起不能になった方の負けだ。そっちが勝てばコイツの体から大人しく出ていくよ、それなら誰が重傷だろうが仗助が治すんだから文句ないだろう?」
「待てやコラ、俺たちを呼び出す目的は達成したろうがっ、矢文ちゃんは関係ねえだろ!」
「確かに関係ないね、けどアタシは
「……良いだろう。仗助、さがれ」
「承太郎さんっ!!」
「さがれ」
ごねる仗助さんに対して、承太郎さんはあっさりとこちらの条件を呑みこちらに歩いてくる。
あと一歩でスタープラチナの射程圏内に捉える距離で立ち止まり、静かに構えた。
「アタシのスタンドは生物に憑りついて
私の体がじんわりと、次第に激しく熱を持ちボコボコと形を変えていく。
「時間が経つとその生物はドブネズミに変わり、ドブネズミに変えてきた生き物の力ならアタシはいつでも引き出せる!」
二人の表情がこわばっていくのが見える。まあそうだろう、今の私の姿は元の容姿とは似ても似つかないほどに変化していっている。
けど私的にはそれよりも時間経過でうんぬんが気になりすぎるんだけど!? なにドブネズミになるって!? 具体的には何時がタイムリミットなのさ!?
「ヤギ、ワニガメ、イノシシ、蛇、昆虫その他生物の特徴、長所を混ぜ合わせた……今のアタシが用意できる最高の組み合わせだっ! 喰らえっ!」
もはや原型を留めぬほどに変化し、キメラと呼ぶにふさわしい異形となって承太郎さんへ迫る。その攻撃は確実に人体へ致命傷を与えることのできる威力を持っていた。
当たれば、だけれど。
「オラァ!」
「ぐべらっ!?」
ローマの拳闘士を思わせる青く力強いヴィジョンが現れた瞬間、私の視界は明後日の方向に吹き飛び、そのまま三回転ほどスピンしてからドシャッ、と地面にたたきつけられた。
たぶん、直前まで引きつけてから右フックをお見舞いされたんだ。この子に憑りつかれている影響かかろうじて、その姿が私にも青い軌跡としてとらえられたが攻撃を受けた本人、いや本ネズミには全く分からなかったことだろう。
視界がグラグラと揺れているうえに吐き気もするし、明らかに顎にヒットしている。
少し休みさえすれば再起可能ではあるが、明らかな戦闘不能だった。
「お、おおおお……」
ボタボタと顔面から血が滴っている私の目の前で、承太郎さんはスタープラチナを出したままこちらを見据える。
「まだ…………やるか?」
「敵にぃ、聞く事じゃあねえだろうがあ!」
直後に繰り出された一撃は野生動物の戦闘センスによるものか、全身がガクガクと震えに支配されたままであっても承太郎さんの頬を引き裂いた。
しかし、同時にあしたのジョーよろしく繰り出されたカウンターが顔面に打ち込まれ転がっていく。
力の差は圧倒的、決闘などとこの子は言ったが、一方的な蹂躙という方が正しく見える惨状だった。
この子は、どうしてまた決闘なんて方法で彼に挑んだのだろう。
能力から考えれば無差別な人間へ憑りついて奇襲をかけるか、いっそ本人に憑りつく方がまだ勝利の可能性があった気がするのに……。
「だ、だってぇ……『正々堂々』がいいと思ったんだ」
『正々堂々』? 私が今日体育で言ったこと?
「……何を言っていやがる」
「そウだよぉ、だって、
困惑する承太郎さん達をよそに、独白は続く。
「けどわからないんだ、なんでアタシは
ボロボロと零れだした涙で視界が滲み、ドスドスと地面が拳を受けて陥没する音が響く。
荒々しい動きに反して私の肉体は元の姿へ戻りはじめていく、スタンドは本体の意思が要となる力だ。この子の精神が揺らぐと共に肉体の感覚や制御が私へと戻り始めているのだろう。
「なんでアタシ以外でセキニンをとった気でいるんだよ! アタシだけ生きて、いったい何の意味があるっ、どうして……なんで……?」
納得した。この子は
「悪い、けど。そんなことに私は付き合ってらんない」
「ッ!? 矢文ちゃんか!?」
体中が痛い……仗助さんの声がする。けど、肉体の主導権を取り戻した私の中で悲しみに囚われた子ネズミの気配に集中する。
「あなた、そんな死に方してみんなとどんな顔してあの世で会うつもり!?」
立ち上がり、怒鳴りつける。
――だ、だって。
「だってじゃあない!! どうせ死ぬなら、かっこよく! ド派手にっ! 誇り高く散るのよ!!」
気に入らない。私はこの子が気に入らない。
この子にはジョジョの住人として、
「人間は、あらゆるものの美点を見習うことで世界で生き抜いてきた生き物よ。その人間である私がアナタを再定義するっ」
呪力が巡る。もう、何を言って何をしているのかよくわからないけど、きっとこれは大切なことだ。
「アナタの名は『リンダリンダ』!
呪力に重ねた命の波紋っ!
練り上げたエネルギーの奔流が全身から心臓へ流れ込む。あふれた波紋が暴風となり土ぼこりが巻き上がった。
「矢文ちゃん!!」
「待て、仗助」
「なに言ってんだ承太郎さんっ! あんたの攻撃であの子はもう虫の息なんだぞっ! クレイジーダイヤモンドでも失血はどうにもならねえんだ! 早く助けねえと!」
肉体の主導権を矢文が取り戻した途端に発生した砂嵐を前に、仗助は気が気ではない。
すぐにでも飛び込んで見つけ出して治療しなければ命が危ないというのに承太郎はそれを押しとどめる。
「彼女がさっき使っていたのは『波紋』だな? それならば見た目ほど消耗しているとは考えづらい」
「『波紋』~? なに言ってるかわけわかんねえっスよ!?」
眉間に皴が増えるのを感じる。また、
呪力の操作、術式を独学で習得、波紋の使用等、どれか一つならまだしも一般的ではない高等技術を複数修めた奇妙な少女。
すでに財団が調査を進めているが、いかに本人の性根が善良であっても
巻きあがった砂がおさまると、傷が最低限癒えた状態で肩に子ネズミをのせた少女の姿が現れた。
四つの目はまっすぐこちらを見据えている。
「承太郎さーん! 申し訳ないんですけどもう少しお付き合いお願いします!」
「……決闘か?」
「いいえ! ここからは
「……やれやれだぜ」
その後、都合4度にわたり手を変え品を変え突貫する一人と一匹を殴り飛ばし、最終的に治療を担当した仗助が音を上げた夕方になって、三人と一匹は帰路に就いた。
『リンダリンダ』
本体:リンダリンダ
破壊力 :C 持続力 :A
スピード :C 精密動作性:A
射程距離 :E 成長性 :B
本体ごと生命に憑りつき主導権を奪う。最終的にすべてを簒奪し、肉体にそれを反映させることが可能であり、これは簒奪前の生物の肉体へ憑りついている間でも可能である。サイズはある程度肉体に依存する。
感想評価は作者のやる気に直結するっ、というわけでぜひお願いします。
第4部終了後のストーリーどこから見たいですか? 選ばれなかったのは閑話やら回想やらでたぶん細切れで書きます。
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呪術、高専(玉折前)から
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ジョジョ、第5部から
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第4部と第5部の間のオリジナル
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すっ飛ばして呪術原作1巻から