ジョ術廻戦   作:春の綿雪

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 UAが10万を超えてました。

 ありがとうございます。



暴君の修業③

 

 

 格上を祓うための新技、シャボンコイル。

 

 

 結局その威力は近距離ならコンクリの壁を貫通する程だが、20メートル程でシャボンによる攻撃と同じレベルまで落ちてしまう中距離攻撃となった。

 

 正直、通常の攻撃が即死技になる格上に近づかなければ致命打を与えられないのはかなり勇気がいるけれど、少なくとも逆転ができたのは大きな進歩だと思う。

 

 

 

 3級の呪霊がいた以上、このまま校舎にいたら戦闘の余波で建物が倒壊しそうなので校庭に移動することにした。

 首に掛けられた呪霊を引きつける()()()が入った袋のおかげで、的は向こうからやってくる。

 呪力消費もそれなりで威力すら落ちるとはいえ、狙った方向へまっすぐ飛ばすことができ連射能力も高い新技のおかげで4級の呪霊は余裕をもって倒せる相手となった。

 

 それでも3級に近づいた個体や4級でも速度に特化している個体はツララの弾幕を越えて攻撃を仕掛けてくる。

 この技の利点は複数あるが、一番は砲身がシャボンであること。波紋によるスムーズな形状変化によって盾を形成して攻撃を受け流し、そのまま拘束、反撃に転じることができる。

 

 

 囮として放り出されてから30分。

 

 

 近づく呪霊を祓い続けているうちに射程を学習されてしまって、いくら連射できてもどうにもならない数の呪霊が私を囲み始めた頃ようやく、それらを一瞬で蹴散らして甚爾さんが迎えに来た。

 

 

 

 ヘラヘラとにやけながら歩いてきた彼は、私が負傷らしいものもなく比較的身ぎれいなままなことを確認するとなんだかつまらなそうな表情をうかべた。

 

 

「思ったより余裕そうじゃねえか、心配して損したぜ」

 

「また心にもないことを……それより、依頼の呪物は回収できたんですか?」

 

「ほらよ、無くすんじゃねえぞ」

 

 

 無造作にポケットから取り出した小さなそれを放るので、慌てて受けとめる。

 

 手の平には小さな扇形の板のようなもの。しかし、そこにこもっている呪力は今までに見てきたものの中では群を抜いて多かった

 

 

「……ピックですか?」

 

「それ使って弾けば楽器が輪ゴムでも東京ドームに行けるらしいぜ?」

 

「なにそれ、こわい」

 

 

 もうそれは感動させるとかじゃなくて魅了とか洗脳じゃないかな。

 

 暴発って言っていたし放送室でもジャックして弾き語りでもしたんだろうか、スピーカーに乗せて広範囲に音をばらまいたら、辺り一帯の人間をファンにすることは簡単だったろうけど、そのせいで呪霊もこんなに集まったんだろうなぁ。

 

 

 私が使い方次第で効果の規模がとんでもないことになるその呪具に戦慄している間に、校門のそばに置かれた公衆電話を使っていた甚爾さんが受話器を戻した。

 

「受け渡しはすぐそこの喫茶店だってよ。チャレンジメニューの巨大ホットケーキが旨いらしい」

 

「ならそれ注文してもらっていいですか? たぶん子供は断られるので」

 

「……半分よこせよ」

 

『クリームはこっちが多めね!』

 

 

 はす向かいにある喫茶店へ二人で歩きながら注文するメニューの相談をして、年季の入った木製のドアを開ける。

 

 カラコロとドアベルの音が響くと、ラジオの歌謡曲をBGMに黄色味がかった室内のテーブル席で一人、コーヒーとチョコレートサンデーを楽しんでいる男性の背中が見えた。

 ぽっちゃりとしたシルエットの横には黒いハットと上着、そして大きめのビジネスバッグ。

 

「おやぁ、おひさしぶりですね矢文さん」

 

 振り向いて三日月のようなイイ笑顔を浮かべたのは、喪黒福造(笑ウせぇるすまん)だった。

 

 

 

 

 

「今回は助かりました。こちらの後始末にご協力いただいて」

 

 甚爾さんが注文を済ませた後、対面に座る喪黒さんがお礼を言って話を切り出した。

 

「しかし、意外です。甚爾さんは矢文さんのような術式を持った方とは仕事をしない主義だったかと思っていたのですがね」

 

「ただの気まぐれだ。気にすんな……それより、わざわざ突発の依頼を受けてやったんだ。わかってんだろうな?」

 

「ええ、ええ! もちろんです。 どのようなものをお望みで?」

 

 

 椅子の背もたれに寄りかかり、足を開いて座っていた甚爾さんが格納呪霊に腕を突っ込んでテーブルへいくつか指輪を転がす。

 黄金色に輝くそれは『振り向いてはいけない小道』で私が彼との交渉に使ったものだろう。

 

 

「こいつが創ったコレを換金してくれ、全部で16億はあるらしいが……お前ならもっと高く捌けるだろ」

 

「ホッホッホ! 宝飾品、それも貴金属の構築ですか!! いいですねぇ、お任せください。 二倍まで保証しましょうとも」

 

 

 二つ返事で了承した喪黒さんがビジネスバッグの口を開くと、甚爾さんは呪霊の頭をそこへ突っ込んでギュっと端から残った歯磨き粉を絞るようにして残りの宝を吐き出させはじめた。

 

 明らかに体積以上の荷物が詰め込まれているのにバッグの外見には変化がない。

 呪具だろうか?

 不思議な光景に見入っていると、喪黒さんが小声で私にささやいた。

 

 

「ところで矢文さん、市場が乱れる高級品の構築はくれぐれも慎重に……ウカツに行うと各方面から狙われますからねぇ」

 

「っ!! は、はい。 以後気をつけます!」

 

 

 注意を受けて、今更に行動のリスクを自覚する。

 石仮面を構築してしまったことでかすんでいたけれど、確かにこれも十分他人から見れば金のなる木のようなもので多くの悪意を引き寄せかねないものだ。

 

 

「しかし、ここまでの質量を構築できる方は非常に稀、ぜひとも私の仕入れ先のひとつとしてご契約願いたいものですなぁ」

 

「わ、私、呪具は作れませんからね!」

 

「いやいや、呪具でなくとも商材には十分ですとも」

 

 絶対、アヤシイ契約に使われる気しかしないんだけど!!

 

 私の視界に入らないどこかでのこととはいえ、人の不幸のきっかけには進んでなりたいとは思えない。

 

 

「呪具のつくり方がわからないようでしたら、今度手本になる術師をご紹介しましょ。 なに、あなたは筋がよろしい。 すぐ――」

 

「おい、そこまでにしとけ。 こいつはまだドブにつかるには早えだろ」

 

 

 迫る喪黒さんの勧誘をどうやって断ろうか思考を巡らせるが、いい案が思いつかないでいると、サクッと彼の(ひたい)へ甚爾さんがフォークを突き立てた。

 

「……ふふふ、わかりました今回は引き下がりましょう。 ですが、矢文さんならいつでも歓迎しますよ。 もちろんそちらの()()()()()()()

 

 ではワタシはこれで、と額をおさえた喪黒さんは、伝票をもって会計を済ませると夕日傾く杜王町を歩いて行った。

 

 

 

『アイツの前にアタシ出てないのに……』

 

「……そういえば私、名前も術式のことも言ってない」

 

「おい、巨大ホットケーキ来たぞ」

 

 

 自分の情報はもっと大切にしよう。呆然としながらも私たちは誓い合った。

 

 ホットケーキは7割とられた。

 

 







 このセールスマン、勝手に動く……




 ここ好き、感想、評価お待ちしてます。

第4部終了後のストーリーどこから見たいですか? 選ばれなかったのは閑話やら回想やらでたぶん細切れで書きます。

  • 呪術、高専(玉折前)から
  • ジョジョ、第5部から
  • 第4部と第5部の間のオリジナル
  • すっ飛ばして呪術原作1巻から
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