ジョ術廻戦   作:春の綿雪

27 / 35

 


杜王町ぼうけんツアー②

 

 

 こんにちは、おそろいのお面を徐倫ちゃんへプレゼントしようとしたら『ダサいからいらない』って言われてちょっとヘコんだ矢文です。

 

 

 ホテルから出発してすぐに、私は大きな失敗に気づきました。

 

 

 現在の徐倫ちゃんは6歳、当然ながら身体能力は年相応で歩幅も1メートルに届きません。

 このまま並んで歩いていると、ホテルから駅前を往復するだけで一日が終わってしまうワケです。

 そんなつまらない一日を過ごさせるわけにはいかないので現在私は、彼女を背負ったまま町中を疾走しています。

 

 

「お姉ちゃんすごいっ!! はやーい!!」

 

 

 自動車やバイクの法定速度には一歩劣るとはいえ、一般人には到底出せない速度に達しているのに楽しんでくれている辺り、徐倫ちゃんも相当肝が据わっているよね。

 

 振り落とさないように足はきちんと支えているけど、手綱のように私のマフラーを掴んでわざと身体を反らしたりして完全にロデオ気分ではしゃいでいる。

 

 私が呪力で首を強化していなかったら、確実に気道が締まって波紋が練れずに倒れていたことだろう。

 

 あとで他の人にはやっちゃダメって言ってあげないといけないなぁ……。

 

 

 

 

 歩きであれば1時間近くかかる道のりを10分ほどで走破し、着いたのは『カメユーデパート』

 

 買おうと思っているのは、カメラと双眼鏡、そして徐倫ちゃん次第だが虫かごと虫取り網。

 このデパートなら観光客向けで自然観察に必要な道具はひととおりそろっているはずだ。

 自分だけの道具があるだけで深く思い出に残るだろうしね。

 

 最初に1000円ほどの使い捨てのカメラを購入して、双眼鏡のコーナーへ移動する。

 さすがデパートと言ったところか高額かつ高性能なものから安価で単純な造りのものまでショーケースの中にずらりと見本品が展示されている。

 

「これだけあると、逆にどれにするか悩むね……」

 

「じゃあ、店員さんにきいてみようよ! すいませーん!」

 

 徐倫ちゃん、判断が早い。

 

 私の一言に反応してすぐ、周囲を見渡してネームプレートを首に下げていたスーツの男性へ向かって声を掛けつつ歩いていく。

 

 うっすらと紫がかった色をした仕立ての良いスーツを着たその人は、商品管理の雑用をまかされていたのか書類の挟まったクリップボードを持っていて、その手首には子供であっても少なくとも安物ではないのは確実に理解ができる時計を付けた、なんとも職場での立場を想像しがたい雰囲気を放っていた。

 

「……どうかなさいましたか?」

 

「あの、私たちにぴったりな双眼鏡はどれか教えてほしくて……」

 

 くるりと、男が振り向いて映ったネームプレートには『吉良吉影

 

 この町で一番出会いたくないスタンド使い(殺人鬼)の名前だった。

 

 

「っ~~~~!! 徐倫ちゃん!!」

 

「? どうしたの矢文お姉ちゃん」

 

「いや……その、人……たぶんデパートの人ではあるけど、売り場の人じゃあないからわからないと思うよっ!」

 

 徐倫ちゃんには悟ることができない、ほんの一瞬『面倒ごとがやってきて面倒くさいです』という感情を瞳に浮かべ見下ろしている。

 

 すぐにでも彼女をこいつから引き離したい一心で、徐倫ちゃんに慌てて駆け寄る。

 

 だが無情にも、この殺人鬼はわたしの『わからない』という発言が気に障ったのか歩み寄ってきた。

 

 

「双眼鏡は何を見るためにつかうんだね?」

 

「えっとね。 鳥さんとか、ウサギさんとか!」

 

「ふむ……自然観察か、それならば」

 

 

 徐倫ちゃんの答えに対して、数秒考えこんでからショーケースの下に掛けられている商品札をいくつか手に取ってこちらへ広げて見せる。

 

 

「この辺りの商品なら2、300メートル先の動物をくっきりと観察できるだろう、値段も手ごろで丈夫な人気商品だ。 ちなみに……私のおススメはコレ、使い捨てカメラに重ねてやれば望遠レンズの代わりになる。 もう片側はカメラののぞき窓に重なるから狙いもぶれない。 かわりにチョットお高いがネ

 

「ホント!? お姉ちゃん、コレにしよ!!」

 

「う、ウン……」

 

 

 そつのないセールストークによって最適な商品が選びだされ、言われるがままにそれの札を手渡される。

 

「それじゃあ私はこれで、どうぞ観光を楽しんでくださいね……」

 

「おじさんありがとーっ!」

 

 

 速足に去っていく殺人鬼が見えなくなって2秒、全身から冷や汗がどろりと流れ出てきた。

 

 波紋による肉体の制御で相手に悟られないようにとった臨戦態勢を解除した反動である。

 

 私はスタンド像、否、本体であっても奴が徐倫ちゃんに触れるそぶりを見せるようであるならば必殺の一撃を叩きこむ心づもりでいた。

 

 

 先日に相対した二級相当の呪霊以上のプレッシャー。

 

 

 おそらくなりふり構わなければ本体を殺すことは不可能ではなかった。 だが、それをためらわせる異様な()()がアイツにはあった。

 

 

「お姉ちゃん……? 大丈夫、徐倫のお茶飲む?」

 

「うん、ありがとう。 これ、買ったらカフェに行ってちょっと休憩しようか」

 

「わかった!」

 

 不安げな表情をした徐倫ちゃんの頭を優しくなでてから、爆弾にされていそうで不安だったので商品札を入れ替えてお会計へ歩き出した。

 

 今後、この町で起こる戦いの黒幕との邂逅はこうして幕をとじた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 一方、花京院はデパート前でわき腹を痛めていた。

 

 










 感想、評価、ここすきをしていただくと筆者の精神的栄養になりますのでお待ちしております。

第4部終了後のストーリーどこから見たいですか? 選ばれなかったのは閑話やら回想やらでたぶん細切れで書きます。

  • 呪術、高専(玉折前)から
  • ジョジョ、第5部から
  • 第4部と第5部の間のオリジナル
  • すっ飛ばして呪術原作1巻から
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。