お待たせしました。
花粉の呪霊がいるとしたら絶対特級だと思う今日この頃です。
颯爽と現れた花京院さんの活躍により、
「……たった数年でずいぶんと変わったな。 前までは街中に電線があったのに」
「おじさん、ジモトなのにひさしぶりなの?」
「うん、そうだね……すごく、久しぶりだ」
花京院さんはモンシロチョウがひらひらと飛ぶのどかな景色を見て懐かしむようにも、呆然としたようにも見える表情で徐倫ちゃんに答える。
「お仕事が忙しかったんですか?」
「いいや、仕事は非常勤の美術教師だからそれほど忙しくはないよ。 親族とは距離をとっていてね……このまえ従妹の方から『顔を見せろ』って電話がかかってきたよ」
杜王町は再開発によって駅周辺はより便利で近代的に、対してそれ以外の市街地や農地は電線などの人工物を地下へ隠し、樹木があちこちに植えられて、ぱっと見たかぎりでは数世代時代が巻き戻ったようにも思える状態。
その恩恵は景色を楽しみに来た観光客だけではなく、虫、鳥、ネズミなど多くの小動物にとって居心地のいい環境となり、生命力にあふれています。
きい、と自転車*1のスタンドを立てて道の端に止め、彼がチャイルドシートから徐倫ちゃんを降ろしている間に私は周囲に潜む動物の気配に注意を向ける。
予定通りなら
「ああーーっ!? キツネさんだ!!」
「向かってきているね……すこし距離をとった方が良さそうだ、おいで徐倫ちゃん」
はしゃぐ声に振り向けば、すぐそばの茂みから一匹の狐がひょっこりと頭を出してまっすぐに向かってきていた。
その額には、最近見慣れた夕闇色の毛。
それを認識した瞬間に狐は駆け出し、私も二人の間を抜けてとびだした。
「な、何をしているんだ矢文君!? 狐には寄生虫がついていることを知らないのか!?」
花京院さんが叫ぶのと同時に、細長いものがうごめきながら風を切って迫るのを感じる。 今の私には見えないが、きっとそれは瑞々しい緑の輝きを放っていることだろう。
しかし私は、あえて波紋と呪力による強化を駆使して、それを避け飛びつくように狐と触れ合った。
その瞬間、コップに注がれた水のようにするりと混ざりあうことで互いの勢いを相殺し、その場に着地。
振り向く動作に合わせて人間とネズミと狐の1人と2匹に分かれタイミングを合わせて一礼する。
「徐倫ちゃん、花京院さん……紹介しますね。 この子は『リンダリンダ』そして、現地協力の狐さんです」
「良ぉお~~しッ! よしよしよしよしよしよし待たせちゃってごめんねぇ、お腹へってない? ちゃあんとお礼は買ってきたからこの後もよろしく頼むねえ」
「ふわふわだぁ……!!」
「ほ、本当にさわっていいのかい……?」
徐倫ちゃんを迎えに行く2時間前、私は田園地帯でリンダリンダと別行動をとった。
彼女の能力は他者に憑りついている間ならば、肉体の持ち主の言語も操ることができるため、杜王町の動物たちに交渉をお願いした結果この狐の協力を得られたのだ。
現在3人で撫でまわしているが、最後には相手の肉体を奪いつくす能力を応用して寄生虫などを取り除いているため野生動物とは思えないほど美しい毛並みとなっている。
まるでシルクのような肌触りに、私につづいて徐倫ちゃんが陥落し、おそるおそる触れた花京院さんもあっという間にその虜になってしまった。
『矢文、そろそろ』
「……はっ! ありがとリンダリンダ。 徐倫ちゃん、いったん狐さんを放してあげようね」
「う~~……わかった!」
なごりおしいけれど、私は先に離れて2人と1匹を写真に収め、先ほど購入しておいたブロック肉を取り出して食べやすいようにトレーごと地面へ置いた。
「…………本当に柔らかいな」
「花京院さん……?」
「ああ、ごめんよ……お行き」
二人の手が離れてすぐに、狐は起き上がって肉を受け取り最初にあらわれた茂みへ向かっていく。
『3人とも、ついて行ってみな。 いいモンが見られるよ』
「?」
リンダリンダに言われるがままに狐の後を追って獣道に分け入る。しばらく進んだところで徐倫ちゃんがちいさく喜びの声をあげた。
「子狐だ……!」
親に食べやすくしてもらったのだろう。 その目の前でちいさな肉片をなかよく噛んでいる姿が見える。
子狐たちがひととおり食べ終えると、狐は残った肉を咥えてから1度こちらに振り向いたあと、茂みのさらに奥へ消えていった。
つい最近まで野生のドブネズミだったリンダリンダの案内で、道中魚を波紋で掴み捕ったり、シャボン玉を一緒に飛ばしたりしながらあちこちを歩き回り、様々な風景や動物の写真でカメラのフィルムをほとんど使い切ったころ、私たちは駅へ向かって歩きはじめた。
やわらかな風に草木が揺れ、花京院さんが押す自転車の車輪からカリカリと音が響く。
「リリちゃん、今日はありがとう!」
『お礼とかいらないし……てか、なにさリリちゃんって』
「いろいろ考えたけど、そうやってよぶのが一番カワイイかなって……イヤ、だった?」
『別に、ヤじゃあないけど……』
まっすぐな笑顔にぷいと顔をそむけるリンダリンダ、もといリリちゃん。たった数時間の交流ですっかりと仲が深まったようでまるで姉妹のようにも見えてお姉ちゃんはうれしいです。
「ね、徐倫ちゃんリリみたいにさ、私にあだ名はつけてくれないの?」
「矢文お姉ちゃんは、矢文お姉ちゃんだよ?」
『てか、矢文もアタシのことそう呼ぶんだ……』
「当~然ッ、私はあなたの親友だよ?」
「……実は僕、承太郎から『柿ピー』ってあだ名をつけてもらっているんだよね」
「「『ホント!?』」」
「ウ・ソ」
驚愕で固まる。 横を見れば同じくあんぐりと口を開けた徐倫ちゃんとリリと目が合い、誰ともなく笑い声があがった。
感想評価をしていただきますと作者が喜びで狂い悶えます。
第4部終了後のストーリーどこから見たいですか? 選ばれなかったのは閑話やら回想やらでたぶん細切れで書きます。
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呪術、高専(玉折前)から
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ジョジョ、第5部から
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第4部と第5部の間のオリジナル
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すっ飛ばして呪術原作1巻から