ジョ術廻戦   作:春の綿雪

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たのしい方向音痴①

 

 前回のあらすじ

 

 おせっかいやきのジョセフジョースターによる大量のおこづかいに困らされていた矢文達は、護衛として現れた花京院典明の助けによって無事杜王町の散策を再開する。

 合流したリンダリンダには新たに『リリ』という愛称が生まれ和やかな帰路についたのだった。

 


 

 

 

 

 

 ぱすんっ。

 

 軽い音が響いた後、花京院さんの自転車の両輪のゴムは自らの重みで潰れだした。

 

「おじさん、じてんしゃオナラしたー!?」

 

「あれ、パンクですか?」

 

「どうやらそうらしい。まったく、買ったばかりなのに……」

 

 不満げに呟いた花京院さんがその場で応急処置をはじめるのを見ていると、視界の端で小さな影が通り過ぎた。

 

 蠅頭だ。

 

 今日一日にも何度も祓った雑魚呪霊。 さっき、ちらりと見えた自転車のキズを見る限りこいつらの仕業だろうか。

 当然、見逃す理由もないので即座に呪力を込めた腕を振り消滅させる。

 

 けど、おかしいような。

 

 どうして自転車がパンクした瞬間、私はソレに気づけなかったんだろう。

 

 やわらかくあたたかな風にのって鉄と機械油の香りがする。

 自転車の修理にはきっともうしばらくかかるだろう。徐倫ちゃんを退屈させたら悪いし、今度は波紋を駆使してシャボン玉を今日見た動物に寄せて当てっこしようかな。

 

「よーしっ、徐倫ちゃ――」

 

 

 鉄の、ニオイ。

 

 

 振り向くと彼女の背中には前世の漫画で見た()()()が深々と、突き刺さっていた。

 

 

 

 

 

「な、なにいいいいッ!?」

 

 絶叫。

 崩れ落ちる徐倫ちゃんを慌てて抱きとめる。

 

 視線を巡らせるがそこには影も形もなく、呪力と波紋によって強化された五感をもってしても襲撃者の痕跡を見つけられない。

 ガシャリ、と自転車が倒れる音に振り向けば花京院さんの肩にも、刃物で切りつけられたような浅い傷ができていた。

 

「相手は隠れるのが相当に得意な奴らしい……辺りを展開していた僕のスタンドも、この攻撃を受けた瞬間に自動反撃こそしたが、それまで異常を感知できなかった……!」

 

 歴戦のスタンド使いである彼の警戒すら掻い潜るなんて……!

 

 徐倫ちゃんの意識は、すでにない。

じわじわと服の重みが増えていく。 彼女の小さな体に開けられた穴から生命が零れだしているのだ。

 

『オイッ、しっかりしろよ徐倫!!』

 

「待つんだリリ! 刺さっている場所が心臓に近すぎるッ……無理に引き抜くと悪化しかねないぞ。 矢文ちゃん波紋で出血を止められないか!?」

 

「……ダメ! 止まりませんっ、これ以上強い波紋を流せば彼女の身体が壊れちゃうっ!!」

 

 私を操って突き刺さった矢に手をかけたリリを花京院さんが押しとどめるなか、徐倫ちゃんに波紋を流しはじめるが大きな血管に傷があるのかその勢いはわずかに弱まる程度だ。

 

 このままじゃあ彼女は死んでしまう。

 心が焦りに支配されかけたその時、夕闇色が飛び出した。

 

『なら、アタシの身体で止血するッ!!』

 

 言うが早いか矢のつき立った身体に潜り込むと傷口を埋めるように融合すると今度はしっかりと出血がおさまった。

 

「よくやってくれた! これなら病院まで十分間に合う……!」

 

「仗助さんの家の方が近くにあります! 彼に治してもらえば傷も残りません!」

 

 徐倫ちゃんの身体が浮き上がり花京院さんの背中に括り付けられるように固定される。

 引き起こした自転車のタイヤの中が蠢いてパンク前のように膨らんだ。

 

 彼のスタンドが人型と不定形な紐状の形態を切り替えられるが故の即席の応急処置だが、スタンド像にかかる負荷は当然フィードバックされる。 車輪に掛かる重量を考えれば相当に無理をしているはずだ。

 

 この状況、杜王町の住人でそんなことができるのは写真に潜んでいるうえに『矢』を所持している吉良の親父だが、まだ吉良が探されていると知らないはずだから襲撃を受ける理由がない。

 

 

 となると襲撃者は別の人物であるということになるが、心当たりはない。

 

 

 突然、風が生ぬるく湿っている。 肉が腐敗したときに感じる、甘いようでツンとした臭いが鼻を衝いた。

 

 接近された感覚はない。だが攻撃の瞬間に生まれる複数の殺気は私にも感じ取れた。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()がする背後へと、波紋と呪力を込めたシャボンをお見舞いする。

 

『Gyhooooaa!!』

 

 ザフッ、と呪霊が消滅する音と共に絶叫が上がりジュウジュウと焼けつくような音を立てシャボンに包まれたそいつはバタバタと地面をのたうつ。

 

 苦し気な反応がなくなった瞬間、透明な肉体が浮かび上がる。

 

 その正体は、先ほどまで仲良く遊んでいたというのに、なにがあったのかすでに面影を失いかけるほどに腐り落ちた狐の一家だった。

 

「ゾン、ビ?」

 

 どこかでガシャリと骨針が伸びる音がしたような気がした。

 

 

 

 

 

 ジャコジャコジャリジャリと耳障りな音を立てながら自転車が農道を駆け抜ける。

 

汗で額に前髪が張り付くこともかまわずに花京院さんは懸命にペダルを踏む。

 背中では、ぐったりと青褪めた徐倫ちゃんが細い呼吸を繰り返している。

 

 そして私は荷台の上に立って、どちらも何故か接近されなければ探知することもできない状態となっている、本来陽射しで消滅するはずのゾンビの群れと、何かに誘導されたように現れる呪霊を迎撃していく。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()、どこまでもつづく田舎道。

 

やわらかい夕日が木々を照らし小鳥らのさえずりが聞こえてくる。

 本来おだやかな情景であるはずのこの場で、私たちは着々と追い詰められていた。

 

 

 







長らくお待たせしました。

今後も書きあがり次第投稿していきます。

第4部終了後のストーリーどこから見たいですか? 選ばれなかったのは閑話やら回想やらでたぶん細切れで書きます。

  • 呪術、高専(玉折前)から
  • ジョジョ、第5部から
  • 第4部と第5部の間のオリジナル
  • すっ飛ばして呪術原作1巻から
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