ジョ術廻戦   作:春の綿雪

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 本編を待ち望んでくださる読者の皆さんには申し訳ありませんが閑話です。




閑話 1999,7

 

 何度挑戦したことだろうか。

 

 理論上無限に近い寿命と、宇宙空間でも生存可能な肉体を得たその人型生命は自らを放逐した母星へ舞い戻り、信頼し長い時間を共に生きた同胞の仇を血祭りにあげる様を頭の片隅で想像しながら歯噛みした。

 

 肉体を膨張させ、体表を硬質かつ透光性の高いエナメル質に作り変え、植物化により酸素を生成、そしてそれを吸い込み波紋を練る。

 

 そうして発生した余剰エネルギーで強力な生体磁気を発生させ宇宙を飛び回る飛来物を回収。 そしてそこから得た資材を用いてさらに肉体を拡張し、内部で乗り物を作り出す。

 

 それを用いて地球へ向かう。

 

 そのすべての工程は問題なく実行できた。

 

 だが、観測範囲外からの流星群や、地球からの人間による発射物、太陽から飛び出した波紋のエネルギーの余波など、地球へ突入する直前に毎回と言っていいほど問題が起き、地球から引き離されてしまうのだ。

 

 試行錯誤をくりかえしてすでに60年近く経つ、あの人間の男は波紋使いとはいえ既に年老いた爺、石仮面を被せ若返らせてからじわじわ喰らってやろうにも寿命で死なれてしまえばそれもかなわない。

 

 たとえ地球へ戻ることができたとしても、そうなってしまえば永遠にこの敗北感を覆すこともできなくなってしまうのだ。

 

 波紋を練り、地球へのルートを再計算しはじめたその時、引き寄せられる小惑星からあり得るはずのないものが現れるのを見た。

 

 それは、やわらかな黄金色に輝いた()()()()であった。

 

「カーズ、きこえますかカーズ」

 

「なにものだ……俺は忙しい。 どこかへ行ってしまえ」

 

「カーズ、あなたはもう地球へは戻ってはいけません」

 

「……なに?」

 

「あなたには役目があるのです」

 

「役目だと? そんなものはない。 俺は自由、どこまでも自由な存在となったはずだ」

 

「いいえ、あなたは大宇宙へ旅立って、太陽系とことなる新天地へゆかなくてはなりません」

 

「……新天地」

 

「そう、そこであなたは自由に生命を創造し、新世界をつくるのです」

 

「なぜ俺がそんなことをしなければならん」

 

「それがこの宇宙でくりかえされてきたことだからです」

 

 

 精神に直接的に送り込まれる言語を超越した意志の力。

 

説得するようにも、諭すようにも感じるそれに答えを返すように念じれば、今度は脳裏に膨大な情景(ヴィジョン)が送り込まれる。

 

 痩せた大地とすら言うこともできない礫と岩ばかりの星に、はるか空の彼方から自分が作り出した乗り物とほとんど同じ物体が降り立ち、見知らぬ意匠の服を着た女が現れる。

 

 女はあっという間にその身体を大地に溶け込ませると、そこを中心として鳥のような生物が生まれ、飛び立ち広範囲に移動していく。

 それらが降り立った場所で再び大地に溶け込み、さらに無数の小生物となって拡散する。

 

 女が溶け込んだ大地には次第に微生物が育ち、進化し、多様な生命が生態系を形作る。

 

 そのうちに恐竜のような生物が現れ、滅び、地上で猿が猿人へと変わりはじめたころ、地下空間にて自分が良く知る生き物が現れた。

 

 それは、まさに若き日の、過去の自分自身であった。

 

 

「地球にとって闇の一族はつぼみ、柱の男は花、そして、究極生命体は果実なのです」

 

「貴様ァッ……俺が石仮面を生み出して究極生命体となったことも、友を、家族を失うことまでも予定調和とでもいうのか!? なぜ貴様がそんなことを知っている!? キサマはいったい何なのだ!?」

 

「悲しいことですが実らぬ花は萎れるのは当然のこと。 ……ワタシはフェニクス、あるいは火の鳥とよばれる存在であり、生命の源泉。 全ての魂はワタシという存在に流れ着き、そして時を越えて新たな命として世界にちらばってゆくのです」

 

 淡々と語る鳥の形をとったナニカに怒りがこみ上げる。 他者に示された運命などまっぴら御免だった。

しかし、地球に生きていた生命として自分たちの種族が必要以上に高い能力を持ち得ていた理由にも得心がいった。

 

 

「……よかろう、業腹だが俺に役目があり次の星へ向かわなければならないということは理解した」

 

 小惑星が肉体と最接近する。

 

 それを、そこにとまる火の鳥ごと、()()()()()()()

 

「だが!! やはり俺は一度地球へ戻らねばならん。 太陽を克服した後すぐに宇宙へ放り出されたために俺の知識は昼間のことはほとんどが伝聞のまま……なにより、俺を出し抜いたジョジョをこの手で殺してやらねば気が済まんッ!!」

 

「そして、貴様と出会ったことで俺には新たな目標ができたぞっ! 貴様だ。 貴様の存在だ!! すべての魂を己の欲しいがままとするさらなる高次元に位置する概念にも似たその存在!!! その立ち位置こそ俺にふさわしい頂だ!!!!」

 

 

 太陽にも匹敵する力の奔流をはらわたで感じながら究極生命体は野望を叫ぶ。

 対してその力の持ち主はなお冷静に言葉を紡ぐ。

 

 

「なんて強欲な方かしら。 けれど、私をつかまえたままでアナタが自力で故郷へ戻ることは、不可能ではないかしら?」

 

「なぁに、貴様は俺に役目があると言ったが、俺の運命は未だあの星とつながっている。 見ろ」

 

 日の光を取り込むために透明度の高まった組織から共に虚空を眺めれば、そこには禍々しいエネルギーが収縮し一体の巨獣が誕生したところだった。

 

 それは、地球人類の終末に対する恐れと畏れが、史上最大級の呪いを生み出したのだ。

 

 その力は【落下】、すべての抵抗、障害を無視してどこまでも加速する破壊の大王。

 

 産声をあげ、究極生命体の背後に光る青い星へ向かってゆっくりと、次第に速く、疾く進みはじめた。

 

 滅びの具現であるがゆえにその存在には知能が無かった。

 本能に従って、落ちるべき場所に向かって前進するのみ。

 

 

 故に、進行方向にあるそれが触れてはならないものだと考えもしない。

 

 

 ぐにゅり、とまるで低反発のスクイズを踏みつけたかのように衝突する。 しかし、はなれることはなく、むしろそれの身体が液体でできているかのようにそのまま沈み込んで消えていった。

 

「これで俺は地球にたどり着く。 当然人間はコレを撃ちおとすだろうが、その時()()()()()()()()()それを気に留めるものはいまい」

 

「……あきれた。 あなたにとってすべてが道具と同じなのね」

 

「ふふふ……はたして、そうかな?」

 

「もう……いいでしょう。 つきあいますわ。 この()()()()()()にあきるまで」

 

 

 凶星は進む。 加速の果て、触れたすべて焼き尽くし青い軌跡を引きながら。

 

 

 






 たぶん、そのうち本編とつながります。

第4部終了後のストーリーどこから見たいですか? 選ばれなかったのは閑話やら回想やらでたぶん細切れで書きます。

  • 呪術、高専(玉折前)から
  • ジョジョ、第5部から
  • 第4部と第5部の間のオリジナル
  • すっ飛ばして呪術原作1巻から
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