お待たせしました。
お待たせしすぎたかもしれません。
見切り発車故プロットを書いたり消したりしながら書いてる作者です。
今回は4部高校生トリオ同伴の面談()です。
承太郎さんの宿泊していた部屋は、奥さんと娘の徐倫ちゃんが同室に宿泊していたこともあって、原作よりも数フロア高い階の広々とした部屋になっていた。
もはやモデルルームと言った方が良いような内装のリビングで、長テーブルに座り学長……じゃあなかった、夜蛾さんと私達は向かい合う。
夜蛾さんの対面に私、その右側に仗助さん億泰さん、左側に康一さんの状態で、承太郎さんが座る予定の席には夜蛾さんの懐から取り出されたネコにもネズミにも見える独特なデザインの人形が置かれた。
私たちの意識が人形に集まる中、何事もないように夜蛾さんは話しはじめた。
「改めて自己紹介しよう。私の名前は夜蛾正道、東京都立呪術高等専門学校に所属している」
「私は的場矢文です、こちらは東方仗助さん、虹村億泰さん、広瀬康一さんです」
「よろしくお願いします……高専ってことは、夜蛾さんは先生なんスすか?」
「いや、呪術高専には後進の育成の他に、各地から集められた呪霊の情報を依頼として振り分ける役割もある。私はその依頼を受けて事件を解決する呪術師だ」
聞きなれない学校名に仗助さんが質問をするが、答えにさらに知らない単語が混ざったことで首を捻る。
億泰さんなんかは、康一さんが「たぶん、オバケについて教えてくれる学校にオバケ退治の仕事が斡旋されてきているんだよ」とかみ砕いて説明して「お、おーなんとなくわかった!」とおそらくわかってない返事をしていた。
私は前世の知識でおおよそ理解できているけれど、それでは不自然なのでよくわからないという顔をしておく。
そんな私たちの様子を見て、夜蛾さんはテーブルに両肘をついて手を組んで眉を顰める。
いわゆるゲンドウポーズだけど、彼がやるとホントにその筋の人に見えて怖いのでやめてほしい。
「……君達も聞きたいことが多くあるだろうが、まずは矢文君、君が把握している……『オバケ』について、そして君がそれらにできることを教えてほしい」
「わ、わかりました。えっと私が『オバケ』を見るようになったのは―――」
どうやら、四人の中で唯一呪霊が見える私の知識の確認をしつつ、まとめて補足、説明をするつもりらしい。
さすがに前世で仕入れた知識を語るのは不味いということはわかるので、去年呪霊が見えるようになってから、自由研究のつもりで杜王町をあっちこっち歩きまわって手に入れたいわゆる生きた知識ってやつを披露していく。
私は仗助さん達の時と同じように子供らしい言い方で……『オバケ』は一般人に見えるのか、何を栄養としているか、どんな場所を好むか、放置しているとどうなるか、また、見たことのある範囲で人にどんな悪影響を与えているのか説明する。
また、自分の体から生み出せる呪力、を『オーラ』と称してその使い道に身体の強化、『オバケ』に対して有効であることも説明していく。
仗助さん達は私の説明に大げさなくらい興味を持って聞いてくれるので、つい説明に熱が入って、合間に検証中に起きたハプニングや『オバケ』のサイズ、形状による強さの差など挟んだりして、ひとしきり彼らのリアクションを楽しんで、ふと、夜蛾さんに視線を向けた。
……な、なんかさっきより顔がスゴイ険しくなってきている気がするんですけど!? そんなことより早く術式の詳細を言えってことかな!?
「え……えっと、今度は私が使える『超能力』の詳細を説明しますね!」
慌てて今度は自分の術式を『超能力』と言い換えて、実演を交えて説明しようとした辺りで、意外にも夜蛾さんからストップがかかった。
「いや、ありがとう、十分だ……まずは君が言う『オバケ』と『オーラ』と『超能力』の正式な名称を教えよう」
夜蛾さんはゆっくりとしわの寄った眉間を揉みこんでから立ち上がり、備え付けてあった冷蔵庫から人数分の缶の飲み物を配り、補足の説明をはじめた。
「『オバケ』は正しくは『呪霊』、人類創成より人間から発生してきた悪感情『オーラ』……我々は『呪い・呪力』と呼んでいるエネルギーが積み重なり形を得た存在だ。日本国内の行方不明者、怪死者のほとんどの原因でもある」
空いた席に置かれた人形を手に呪力を纏わせて掴み、テーブルの上に置く。すると突然内部に骨格ができたかのように柔らかな手足をカクカクと動かして人形が立ち上がる。
「そして呪霊は、自らの負の感情を呪力に替えて操り、攻撃を行う才能を持つ者、そしてその呪力を生まれ持った術式に注いで発動する『超能力』、『術式』による攻撃で祓うことができる」
シュババッ、バシュッ、ズダダダダッ!
「さ、さっきまでふにゃふにゃだった人形が、K1選手なみのキレでシャドーをしだしたぁー!?」
「すげぇっ! 空気をぶっ叩いてるだけなのに、強にした扇風機みてえな風がこっちに届いてるぜ!?」
「これが夜蛾さんの『術式』って奴っスか……」
「術式は十人十色、生まれつきの才能だ。呪術師はそれを解析し、より使いやすく、より強く鍛え上げていく。それ故に、不可解だ」
仰天する3人に説明を続けながらもその視線は私を捉えて離さない。
「君の持つ術式はおそらく物質を生み出す術式の類だろう。私の術式同様、呪力の操作ができる人間の間では比較的見かける術式だ。つまり、術式の運用にどれほどの知識や負担が肉体に必要なのか、おおよその見当がつくということでもある」
原作で彼は傀儡操術の権威と呼ばれていた。つまり、原作登場キャラ以外の術師達に学派ができる程度にはポピュラーな術式であったということだ。
私の構築術式は作中では真衣ちゃんしか使い手がいなかったけど、戦闘で利用するには負担が大きすぎて術式を使うくらいならその呪力を身体の強化に回した方が良いし、戦闘に向いているとは言い難いから、きっとこの術式を持っていても補助監督になる人間が大半で登場していたとしても披露する理由がなかったんだろう。
「1階ロビーで見た術式の行使で構築した物品に被りは無く、それぞれの造りに不自然な箇所もない。……それぞれの組成を把握し構築するために、どれほどの時間の研鑽が必要か、立ち振る舞いもすでに呪術師の入り口に片足を突っ込んでいる」
人形の動きが止まり、倒れ室内に静寂が戻る。いつの間にか、全員の視線が私に注がれている。
「今一度、聞こう。何が君を突き動かす?」
え~……どうしよう。馬鹿正直に『悪魔合体した漫画の世界に生まれて強くならなきゃ不安で眠れない』とか言えないしなぁ……。
「……私は去年はじめて、呪霊を見た時に『良くないもの』だと、必ず自分に危険が及ぶと……最初は身を守るために術式を調べながら、奴らの観察をしました」
呪霊の存在は人に害を与える。どれだけ低級であろうとそれは事実で、それによる被害、不調がさらに呪霊を活性化させ数を増やす。
「……結局は自分のためです。私は、私が周囲のため息や悲鳴を聞いて、不快になりたくないから、何よりそれこそが呪霊の生まれる原因だと知ってしまったから、呪霊を祓うことに躍起になっているんです」
理由はこんなところでいいかな? ちょっと自己中心的なイカレてるムーブを強調したけれど、全部本心からの発言で嘘は一切ない。
近いうちに国内は呪霊と呪詛師で大変なことになるし、強くなっておかなきゃあ苦しんで死ぬのはまず間違いないし、生き残る過程で知り合いを見捨ててしまえば心が死ぬもの。
私の答えに、夜蛾さんも他の皆も何を思っているのか、目を瞑って動かなくなってしまった。
……私、何かやっちゃいました?
その後実に5分近く、承太郎さんが部屋に戻ってくるまで沈黙は続いたのでした。
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