日間ランキング8位ありがとうございます!!!
ここまでの反響があるとは……うれしいです。
一晩で増えたお気に入り登録にテンションぶちあがりました。
「……呪霊についての知識は一通り夜蛾から聞き終わったようだな」
「ああ……呪霊と呪力、術式についての説明を終えたところだ」
私以外が沈んだ様子のままの室内を見て、承太郎さんは帽子のつばを指でなぞる、そして夜蛾さんの返答を聞いた直後、その手をポケットに突っ込んで歩み寄った。
「術式もか……? 珍しいな、お前がここまでスムーズに話を進めるとは」
「私ではない、彼女が想定以上に調べきっていたのだ。……お前の時と違って名称の訂正と補足の説明だけで済んでしまった」
「……やれやれだぜ」
「まったくだ」
そ、そんなにすごいことなのかな……前世の知識があったとはいえ、やっていたことは自由研究のバードウォッチングとほぼ変わらなかったよ?
「なんつーかよ、ずいぶん仲よさげだよなぁ」
「そうだな、ツーカーって感じがするぜ」
「あの、お二人って財団で知り合ったわけじゃあないんですか?」
親しげに話す二人にヒソヒソ感想を言い合う仗助さん億泰さん、それを受けて康一さんが質問をする。
うん、私も気になってた。財団経由で知り合っていたのなら少なくとも3部以降のはずだし、お互いの趣味もそこまで合うとは思えない人同士だ。
軽口を叩きあえるほどとなるといったい、いつ接点を持ったのだろう。
「夜蛾とは、俺がスタンドに目覚めてからの付き合いでな。当時高校生だった俺は、制御ができていなかったスタープラチナを悪霊と判断して留置場に引きこもった」
「そこへ、信心深い警官から連絡を受けた高専が、生徒だった私を派遣した。呪われた様子は一切なく呪霊も見えんというのに、怪現象を起こしてみせる彼に呪術の説明をするのは……なかなかに骨が折れたとも」
「結局、原因はスタンドだったしな、そりゃあ呪術だなんだと言われても信じないだろう」
留置場の単語で困惑する三人に対して、私は戦慄していた。
同年代だったのは、まあわかる。けどさあ、スタンドの覚醒に居合わせるとか、そんな奇跡あるもんなの!?
「そこから、彼の祖父とその友人がやってきて、カフェでスタンドと彼らの事情を知り、私は高専へと戻った」
「その後すぐ、空港で再会するとは思わなかったがな」
「こっちのセリフだ。結局なりゆきで二か月近くも海外で過ごすとは考えてもいなかった」
しかも
遠い目をして話す二人に仗助さんが質問をかさねる。
「ちょっと待ってくださいよ。承太郎さん達の旅って、確かスタンド使いがわんさか襲い掛かってきたんスよね? 夜蛾さんは呪術師なのに、なんで付いてったんですか?」
「本来は高専の任務でジョースター家の因縁とスタンドについて調書を書くために飛行機に同乗するだけで、エジプトで事の顛末を見届けたら日本に戻る予定だったのだが……トラブルがあって飛行機が墜落した」
ああ、目がさらに遠くを……。
同情的な視線が夜蛾さんに寄せられる中、承太郎さんが話の続きを引きうけた。
「その後、香港でDIOが差し向けた呪詛師を倒したことをきっかけに道中、呪霊と呪詛師に対するアドバイザーとして加わってもらうことになった」
「そうか、呪詛師はぶっとばせるけどよ、呪霊はスタンド使いには全然見えねえし効かねえもんなぁ~」
確かに、金で複数のスタンド使いを差し向けているDIOがこの世界で呪詛師を差し向けないのは不自然だよね……その場に居合わせて巻き込まれちゃったのか。
海外は出現数は少ないらしいけど呪霊もいるだろうし、その存在を知ったらジョセフさんは絶対雇う。
あれ? けど、億泰さん普通に呪霊シバいてたよね?
頷く億泰さんの言葉に疑問を覚えて、私は声をあげた。
「あの、この前億泰さんのスタンドがした攻撃は、呪霊にダメージがあった気がするんですけど、スタンドの攻撃って呪霊には効かないんですか?」
「一般人がスタンドや呪霊に見えずとも触れることができるように、スタンドと呪霊は触れることはできても、互いにダメージを与えることは基本できん。ただし、例外もある」
私の質問に夜蛾さんはぬいぐるみを手に席を立ち、距離をとって承太郎さんと向かい合う。
そしてサングラスをかけ、新たに取り出したぬいぐるみと合わせた二体を承太郎さんへ突撃させる!
ズガガガガガガッ!!
「基本的な打撃が効くことは無いものの、一部のスタンドが持つ特殊な攻撃は、呪霊にダメージを与えることができる。対して呪霊、呪詛師がもつ術式はスタンドには効果がない、しかし、
両者の中空で乱打を演じるぬいぐるみ達が、何かをかいくぐり承太郎さんの至近距離に迫るが、一撃を加える直前に弾き飛ばされる。
おそらく、承太郎さんのスタープラチナが相手役なのだろう。半分見えていない私をよそに仗助さん達のテンションが留まるところをしらない。
正直めちゃくちゃ羨ましい、ぜったい『オラオラオラオラオラァ!!』とか聞こえてるでしょ!
「スタンドを認識できない呪術師は確かに不利になりやすいが、一代限りの才能が多いスタンド使いと違って千年近い歴史がある。呪霊を祓う過程や、儀式などの工程を経ることで呪力が篭り、特殊な力を得た道具で対応できるのだ。そういった道具を総じて『呪具』という。このサングラスは、DIOが部下に作らせたスタンドの視認を可能とする『呪具』だ」
手元にぬいぐるみが二つ同時に弾かれて戻ってきたところで、夜蛾さんと承太郎さんは再び席に着いた。
そして承太郎さんが一枚の写真を私たちに向けて差し出す。
写真には、補修したような跡のある石の仮面と見知らぬ人間の腕が写っていた。
「『呪具』には呪霊と戦い祓うため、スタンド使いとの荒事にも有用なものが多いが、逆に使えば多くの被害者を生むものもある……旅の後に判明したことだが、先日仗助と康一君に見せた、この写真に写っている『石仮面』も、その一つだ」
「て、ことは……その仮面にも、何か恐ろしい呪いがかかってるんですか!?」
「呪具としてはただ劣化に強いというだけの代物だ。だが、『石仮面』を使用したものは残虐性が増し日光で灰になる反面、肉体の再生と若返り、人を屍人に変える等吸血鬼としての術式、そして呪力の操作を可能にする恩恵を得る」
康一さんの言葉を夜蛾さんが否定し、『石仮面』の詳細を語るのが聞こえる。
けれど私の意識は、写真の仮面から離れない。だって、この仮面はどう見ても、私が最初に河川敷で砕いた『石仮面』なのだ!!
「どんな経緯で入手したのかはわからん。だが、破片を組みあげてでも直している以上、持ち主はいずれ『石仮面』の使い方に気が付くだろう。もし、この仮面を持っている人間を見つけたら、決して近寄らず、俺か夜蛾に連絡してくれ。日中であっても、そいつが呪詛師やスタンド使いではない確証はない」
『石仮面』の使い方は血液を吸わせること、一般人なら目の前で怪我でもしなければ気づくことはないだろうが、持ち主がそうとは思えない。
そいつはきっと、私が『石仮面』を破壊していた場面を見ていたはずだ。
そして、今となっては確認することもできないけれど、『石仮面』が呪具だというのなら、それに篭っていた呪力をきっとそいつは見ていたんだ。最初から『石仮面』の用途を知らないなら、小石にまで砕けた石の仮面なんて拾い集めるもんか。
「私は普段、呪術師として日本各地の呪霊を祓っているが、この一件が片付くまでは任務を東北に絞るつもりだ。極力、杜王町に立ち寄るようにする。『石仮面』以外にも呪霊らしき怪現象の情報があれば気軽に連絡をしてくれ」
そいつは、きっと呪詛師だ。
私のせいで、この町のどこかに呪詛師がいる。
倒さなければいけない。
できる限り早く。
そのためには、もっと……もっと力をつけないと。
それぞれの連絡先を交換し、杜王グランドホテルから出る。
私は、お母さんからお使いを頼まれていると嘘をついて、仗助さん達と別れ足早にその場を後にした。