人理修復 withウルトラマンネクサス&モルガン   作:グリッド無頼

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共に純物質である「フジマリウム」と「モルガニア」を1:1の割合で反応させると、快楽物質である「トウトシアニン」が発生する。また、反応時に触媒として「レンアイウム(ジュンアイウムとも表記)」を用いることでこれらの反応速度を高めることが出来る。
トウトシアニンは適量を摂取するだけであれば人体に大きな影響は及ぼさないものの、過剰に摂取すると中毒症状を引き起こし、人体に様々な影響を及ぼす場合がある。
余談ではあるがかく言う私もその中毒者の1人で、モルガン以外の推しが出来なくなったり、藤丸とモルガンのカップリング以外で燃えることが出来なくなってしまったりといった深刻な症状が出ている。
とにかく、

フジマリウム+モルガニア → トウトシアニン

という反応式はテストに出ます。覚えておくようにー


episode.10 夜襲 ─フレアアップ─

デッデッデッデッデレデレデンンネェクサァス……

 


 

【第10節】

生命の朽ちた荒野のようであり、未知なる生命の胎動のようであり、そして光と闇を内包する切り取られた空間で、2体の巨大生命体が対峙していた。

 

〘 シュアッ!!〙

 

その1つ、青銅白の巨人ウルトラマンは、もう1つの巨大生命バグバズンへと走り出し、バグバズンもまたそれを迎え撃つ。両者は取っ組み合いになり、ヴォークルールでの一戦と同様に互いを押さえ込む。

しかし、身体に甚大な負荷を抱えたウルトラマンと、捕食を繰り返し自己進化したバグバズンとでは、その力量差は逆転していた。

バグバズンは両足の鋭爪で地面を捉え、また両腕に備わった鉤爪でウルトラマンを突き刺して持ち上げる。そして頭上まで持ち上げた後、勢いよく地面に叩き付けた。

 

〘 グアァ……ッ!〙

 

「マスター!」

 

そしてうつ伏せに倒れたウルトラマンの上にバグバズンが馬乗りになり、その口に生え揃った牙でもって彼の首筋に噛み付いた。

両の脇腹を穿たれているため思うように動けず、傷口から彼のエネルギーである光が溢れ出していく。

 

「離しなさい、この糞虫ッ!!」

 

近くで支援のタイミングを図っていたモルガンは、そう叫びながら光の魔槍を撃ち出し、バグバズンの頭部に直撃させた。それは奴の顔の外殻にヒビを入れ大きく怯ませる。しかし怯んだ弾みでウルトラマンの両脇腹に突き刺さっていた鉤爪が彼の身体を裂いて外部へと飛び出した。

身体を切り裂かれる激痛に耐えながら、ウルトラマンは立ち上がる。そして転がっていったバグバズンが体勢を立て直すと同時に、両手の平を平行に胸の前に構え、ぐるりと一回転させた後に右腕を地面に向け鋭角に伸ばした。

すると大地から巨大竜巻”ネクサスハリケーン”が発生してバグバズンを飲み込み、奴の下半身を地中へと引きずり込む。抜け出そうともがく隙に、ウルトラマンは左腕にシュトロームソードを形成し走った。そして光の剣で一気にケリをつけようとした。

 

〘 ……フッ……!?〙

 

しかし砂塵の中に奴の姿は無く、ウルトラマンは周囲を見回す。

 

「まさか……地中に潜って……!?」

 

モルガンがそのことに勘づいた頃には、バグバズンは既にウルトラマンの直下に接近しており、彼女が警告を発する間もなく奴はウルトラマンを強襲した。

 

〘 ウァァッ……!〙

 

体を蝕む激痛は、彼を追い詰めると同時に本能を活性化させ、直撃こそしたものの受け身を取って体勢を立て直すことに成功し、追撃の難を逃れる。

 

「マスター、防御を!」

 

モルガンがそう警告した僅か後、バグバズンは口内に火炎を滾らせてそれを射出した。

彼女の警告によってそれを察知したウルトラマンは、両腕を曲げて引き、そして拳を開きながら前に突き出し円形のシールド”サークルシールド”を展開して火炎弾を防御する。

しかし火炎弾が有効では無いと悟ったバグバズンは、火炎弾の射出を止め、もう一度火炎のチャージを始める。

 

〘 ……! シャッ……!〙

 

「マスター、何を……!?」

 

バグバズンの狙いを直感的に理解したウルトラマンは、咄嗟にモルガンの前に飛び込み、身を挺して壁となる。その直後、滾る業火が火炎放射となり彼らを襲った。

シールドを再展開する猶予は無く、ウルトラマンは業火に身を晒す。

 

「……くっ、マスター、どうか耐えなさい!」

 

彼女は杖を地に突き立て、詠唱と共に魔力を送り込む。一帯は見る見るうちに黒泥うごめく湖へと姿を変え、そして拡大していく。

 

「消し止める!」

 

彼女が号令と共に杖を振り抜くと、水面が波打ち荒れ狂い、それは巨大な濁流となってバグバズンの業火を相殺していく。

やがてバグバズンの火炎放射が止み、魔力を大量消費したモルガンはその場に膝を着いた。

 

〘 フ───シュアッ……!!〙

 

そして、メタフィールドの維持限界を示すコアゲージが点滅が始まったウルトラマンが、長時間の火炎放射で体力を消耗し動きを止めたバグバズンへと、残る力を振り絞って走り出す。そして両足で地面を踏み切り、モルガンの攻撃によって損傷した顔面へと飛び蹴りを放った。

 

〘 ゼァッ!!〙

 

火花と共に砕けた外殻が宙を舞い、顔面の一部の筋肉を晒して悲鳴を上げながらバグバズンが転倒する。しかしウルトラマンにも追撃の余裕は無く、着地と同時に体勢を崩して地を転がり、受け身を取って立ち上がる頃には奴は地中へと潜り込んでいた。もう一度強力な攻撃を受ければ、彼は恐らくはもう立ち上がれない。

 

「はぁっ……はぁっ……、マスター! 奴を、こちらに……っ!」

 

モルガンが息を切らしつつウルトラマンに叫ぶと、彼はすぐに頷いて、地中を猛進するバグバズンを彼女が指定した位置まで誘導する。

そして彼がバグバズンに追い付かれそうになった瞬間に、

 

「飛べ、マスター!」

 

彼女の号令に合わせてウルトラマンが跳躍すると、突如地面が先程の黒泥の湖へと姿を変えた。モルガンの策にはまったバグバズンは、黒泥の呪いによるダメージと窒息のために水面へと急浮上し顔を覗かせた。

しかし彼女の用意した湖は深く、バグバズンをまるまる飲み込んでまだ余りあるほどで、奴は溺死しないようもがくのが精一杯の状態に陥る。

 

「今ですっ、トドメを!」

 

彼女の意図を素早く汲み取っていたウルトラマンは、彼女がそう叫ぶ頃には既にエネルギーを溜めていた。そして両手の平を体の左側で平行に構え、その間でエネルギーをスパークさせて右腕を縦に、左腕を横に交差させクロスレイ・シュトロームを放つ。

白色に輝く光線は、湖でもがくバグバズンの筋肉を露出した顔部を正確に撃ち抜き、そこから流れ込んだ強烈なエネルギーが奴の体内で炸裂する。

バグバズンは暗い湖の中へと静かに沈んでいき、そして爆発四散した。舞い上がった黒泥は雨となり、疲弊しきったウルトラマンとモルガンを静かに濡らしていく。

 

切り取られた空間に生き残った2人を、コアゲージの点滅音と雨音とが包んでいった。

 


 

「……はぁっ、はぁっ、ぐっうぅああ……!!」

 

変身が解けると、マスターはどさりとその場に倒れ込んだ。肩で息をし苦痛に呻き、玉の汗をかき、裂けた両脇腹と首から血が流れ出していく。その体に力は入らず、立ち上がることはおろか身を起こす事すらできないようだ。

 

「マスター!」

 

私は魔力の大量消費でずきずきと痛む頭のまま彼の元へと走り寄る。

 

「モル……ガン……っ、だいじょ……ぶ……?」

 

彼は私の方にを目だけで見ると、息も絶え絶えにそう言ってきた。

 

「馬鹿なのですかっ! どう見ても貴方の方が重傷でしょう!!」

 

私は怒鳴るようにして言い返すと、彼の服を切り裂いて体に触れ、傷を改める。どの傷も深く、放っておけば死は遅くないだろう。加えて、今彼は身体を微弱ながらに守っていた魔術礼装を身に着けていない。要するに、本当にただの人間でしかない。そんな者がこの傷を負っていては、そう長く持つはずがない。

治療の魔術も、傷を癒す魔術も、もう私は使えない……!

 

「ごめ……モル…………。俺……もう……」

 

「喋るな! 別れの言葉なぞ聞きたくない!」

 

見る見る衰弱していく彼が掠れた声でそう言うのに対し、私はもう一度怒鳴りつけた。そして彼を助けうるあらゆる手段を模索する。

しかし何か物品を得ようとしても、まだ巨人の作り出した空間──やはり、固有結界なのだろうか──は完全には消滅しておらず、抜け出すにはもう少しかかる。その時間すら惜しい。

ならば……。

 

「これを……使うしかないか」

 

私はゾーイから渡された袋の中から、いつの間に入手したのかは不明だが小さな石を取り出す。私も詳しくはないが、これに彫られているのはルーン文字だ。であれば、これはルーン石というものだろう。そして記憶が正しければ、これは治癒の文字。希望があるとすれば、これだけだ。

 

「マスター、もう少し食いしばるように……!」

 

残された時間は少ない。かかっているのは、マスターの生死。そして扱わなければならないのは、少々苦手なルーン魔術。しかし、まごついている暇も無い。

私はルーン石に刻印された文字に触れ、その内部に記録された魔術回路を読み解く。やはり、私の扱う魔術とは構造も性質も、あらゆるものに差異がある。

 

───お前さん、魔術の腕はピカイチなのに、ルーン魔術はへったくそだよなぁ。ま、向き不向きってやつかねぇ───。

 

何故か頭に残っている、誰に言われたのかも覚えていないそんな台詞が私の頭で反響する。くそっ、こんなことならへそを曲げずにもう少し粘ってみるべきだった。……いや、今はそんな事を考えている場合ではない。

ルーン石の中枢回路を、私の使用する術式に適応するように書き換えていく。ただしこの変換作業においては、いかにルーン石の機能……オリジナリティと言うべきものを不用意に崩さないかが重要になる。

魔法陣には正確な描写が要求されるように、宝具の使用には一定の動作や詠唱が必要であるように、ウルトラマンが技を発動するのに一定の動作を要するように、魔術ではその”形”が重要なのだ。故に、下手に変換してしまうと別の魔術になったり、そもそも発動しなかったり、予期せぬエラーが発生したりとロクな事がない。もちろんそれが偶然良い方向に働くこともあるが、余程の奇跡でもない限りは有り得ない。

 

そして、私には奇跡を起こす事などできない。奇跡というものが私の身にも起こりえたのなら、私は───。

 

「……っ、はぁっ、はぁっ、あと……少し……」

 

苦手とはいえ、私は魔術においては他の追随を許すつもりは無い。それくらいのプライドはある。そのプライドにかけて、魔術の事で失敗するなど許しはしない。そして。

 

「モル……ガン……、がん……ばって……」

 

貴方が死ぬことも、許しはしない……!

 

「出来たっ……! マスター、じっとしているように!」

 

私は書き換えが完了したルーン石を彼の身体に押し当て、その効力を発動させるための言葉を唱えた。そして私の魔術回路を通してルーン石に魔力が流れ込み、輝き出す。

すると、彼の傷が少しずつ塞がっていき、出血量が減っていく。送る魔力量が多くなればそれだけ効力が増すため、私はノンストップで大量の魔力をルーン石に流し込んでいく。彼を死なせないためには、そうでもしなければ間に合わない。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、まだ……まだっ……!」

 

バグバズン戦での大技の連続使用、即興のルーン石書き換え、そして治療の為の魔力消費で、頭が割れるように痛み心臓の鼓動が加速する。それでも、私は止めない。

 

信じてみよう、と思ったのだ。

信じたい、と思ったのだ。

なのに、このまま死んでしまったら、もう何も出来ない。まだ何も出来ていない。

そんなのは……嫌だ。絶対に、認めたくない……!

 

「……塞がった、ようですね」

 

やがて、彼の身体に刻まれていた傷はその姿を消し、彼の顔から苦痛の表情も消えていた。

私は大きく息を吐いて脱力し、彼の手をそっと取った。まだ、その手は暖かかった。確かに繋げることが出来た、生命のぬくもりだ。

 

「っぶはぁ、いっててて……。モルガン、大丈……うぐっ」

 

彼はガバッと勢いよく身を起こすと、塞がった傷も完全では無いため多少は痛むようで、脇腹を押さえてうずくまった。傷が治った途端に飛び起きるなど、いきなり随分と元気になったものだ。

 

「焦りすぎ……ですよ、マスター。私なら、平気……ですから……」

 

「いやっ、全然そんな風には見えないけど!? どう見たって重症じゃん!!」

 

「……ふ、少々魔力を使い過ぎただけです。しばらく待てば、治ります。ですが、そうですね──」

 

魔力供給は、マスターとの物理的距離が近ければ近いほど効率が良くなる。彼の場合は、それが顕著に現れる。もちろん悪い方で、だが。

ともかく、魔力をより多く得るとしたら……。

 

「もう少しこのまま……。手を握っていてください」

 

「へ? 手? っていうか、俺裸!?」

 

彼はその時初めて、私が彼の手を取っていること、そして上半身裸になっていることに気付いたようだ。……いくら何でも、焦りすぎです。彼はそのことに気付くと、一気に顔を真っ赤に染めた。

 

「ててて手を、握るって……!? あの、その……えっと……」

 

「たかだか手を握るくらいが何だと言うのです。まさか、私のマスターともあろう者がそれすらも出来ぬ腑抜けな訳がありませんね?」

 

それとも、手を握ることに何か思うことでもあるのだろうか。ともかく彼はほんの少しの間躊躇するような素振りを見せた後、恐る恐る私の手を取り直した。

 

「……えっと、これでいい……かな?」

 

「ええ、そのまま」

 

彼の両手が私の右手を包み込む。

男性らしく私よりも大きく、少しばかりゴツゴツとして、そしてとても暖かい。

2人互いに苦しみから助け合って、こうして互いのぬくもりに触れて。

ああ、これではまるで───。っと、何を考えているのだ私は。とにかく今は2人ともボロボロだ、早く村に戻って休まなければ。

 

「もうすぐこの空間も収束するでしょう。村に戻り次第、休息を──」

 

 

 

しかし、ウルトラマンの空間が完全に姿を消した瞬間、燃え盛る炎の匂いが辺りを包み込んだ。そして、その火の手が上がっているのは───。

 

「……え? 何で……!?」

 

マスターが疑問の声を上げる。

そう、火の手が上がっていたのは、先程まで私たちが滞在していた村だったのだ。

 

「まさか、もう攻めてきたのか……!? ならバグバズンは、囮……!!」

 

私はさっと立ち上がろうとしたが、まだ魔力の回復が十分ではなく力が抜け、その場に片膝を着いてしまう。霊体化させていた杖を実体化させ、それを支えにもう一度立ち上がると、体の左側を持ち上げられた。

 

「肩貸すよ、モルガン!」

 

持ち上げたのはマスターで、彼は私の左腕を取ると肩に組ませた。

 

「……無理をするな、マスター。私1人でも──」

 

「一緒に戦うって、約束しただろ」

 

「──。そう、でしたね。私としたことが、とんだ失言を」

 

「とりあえず急ぐよ、キツかったら支えるから無理せず言って!」

 

……ふふ。傷が治った途端に凛々しいものですね。一丁前に共闘者のような振る舞いをするとは。けれど、不思議と悪くない。それに、これだけ密着していれば魔力供給の効率も良くなることでしょう。極めて合理的な判断です。

 

「ええ、行きましょう」

 

私は彼が火傷をしないように、彼の上半身に先程アニーに着せた外套を被らせた後、彼と共に火の手の上がる村へと歩み出した。

 

「うぉっ、思ったより重」

 

私は彼の耳を思いっきり引っ張った。

 


 

──少し前──

 

「いやぁ、行く先々全部ハズレとか清々しいなぁ!」

 

「ほんとどうなってんのよ……。もう回ってないのこの近くの村しか無いわよ?」

 

「もしや、どなたか極端に不運な方がいらっしゃるとか……? (幸運C)」

 

「冗談が上手いなマシュ。だがこのメンバーの中にそう不運が収束する者がいるとは思えん(幸運E ←犯人)」

 

「いやどうでしょうね、案外馬鹿にならなそうな気も……? (幸運C)」

 

ラ・シャリテで夜を明かした後、わたしたちは藤丸を探してまだ襲撃を受けていない村を回り、そしてそのことごとくを外していた。オルレアンから距離があって且つまだ無事そうな村なんて、もう次がラストよ? 仮に運が悪いやつの仕業なら、呆れを通り越して同情しちゃうわ……。

それに日が暮れてしばらく経つから、深夜に村に訪問して不審者集団として騒がれる、なんてことにもなりかねないから面倒だし。というか、どこに行こうが100%不審者扱いされるのが1人いるのよね……。

うぅ、頭が痛くなってきたわ……。

 

「もー、どこ行っちゃったのよ藤丸ー……」

 

状況が状況、そして結果的に事態が好転したとはいえジャンヌと契約しちゃったし、マシュも騙し騙しでやってるけどそろそろキツいだろうし、早いとこ合流して魔力を供給しないとマズい。道中で何度か竜の群れと遭遇したけど、ほとんどがシグルドに任せっきり。この調子じゃ、竜の魔女や手下のサーヴァントとは到底やり合えっこない。

まだ第1特異点だってのにこの体たらく……。わたしの指揮系統にも問題があったのは認めるけど、それでもあんな無茶は想定外。というより、わたし的にはモルガンが突貫してしまったのが意外だったというか……。

マスターにとってサーヴァントと良好な関係を築くことは超重要事項、もしまだギスギスしてるようだったらわたしからも2人に一言言っておかないといけないわね。藤丸はともかく、モルガンが聞いてくれるかどうか甚だ疑問だけど……。

 

「ん、ちょっと待って! ロマニ、これって霊基反応じゃない?」

 

わたしがそう思考に耽っていると、センサーが魔力反応を検知した。

 

「ああ本当だ! でも、モルガンの反応じゃない……っていうか2つありますよ!?」

 

「なっ……と、とりあえず皆警戒しなさい! もしかしたら昨日の連中がまた──」

 

「いや。ようやく当たりだ、所長殿」

 

わたしの言葉を遮って、シグルドがそう言った。どういう事かと一瞬首を傾げるも、その隙には彼は接近してくる2つの霊基反応に対して堂々と歩いていく。そして、

 

「おや……シグルドじゃないか! ははっ、相変わらず暗くて見づらいな君は!」

 

「まぁ、シグルドおじさま! ご無事でよかった!」

 

「そちらも変わりないようで何よりだ、アマデウス、マリー殿」

 

数日前に行動を共にしていたという話は本当だったようで、3人は少しくだけた雰囲気で再会を喜んでいた。

その2人のうちの片方、可憐な花のようにとても可愛らしい女性が、わたしたちの方を見て不思議そうにしていた。そのことに気付いたシグルドが言う。

 

「ああ、彼らは訳あって協力関係を築いた者たちだ。敵ではない、安心してほしい」

 

彼がそう言うのに合わせて、わたしは彼女に話しかけた。

 

「再会を喜んでるところを邪魔して悪いんだけど、あなたたち”藤丸立香”っていう少年を知らないかしら?」

 

わたしがつい、はやる気持ちで名乗りもせずにそう尋ねると、2人は顔を見合わせた後、女性がパァッと明るい笑顔を浮かべて答えた。

 

「リツカを知ってるってことは、貴女たちがカルデアなのね!」

 

彼女はその笑顔のままスクリーンに近付いてきて、丁寧にお辞儀をした。突然のことなのもあり、思わずわたしもぺこりと頭を下げてしまった。そして顔を上げると、彼女が言った。

 

「初めましてカルデアの皆さん。私はマリー・アントワネット、そしてあっちがアマデウス! 仲良くしましょうね!」

 

彼女はそう自己紹介をすると、再び花の咲くような笑顔を見せた。何故だか知らないけど、しきりに”TOUTOI”と呟きながら合掌をしているロマニの姿が印象的だった。

その勢いに、驚く暇もなく呆気にとられていると、アマデウス──ってことは、かの有名なモーツァルト?──がこちらに話しかけてきた。

 

「やぁ、話は彼から聞いてるよ。何でも、竜の魔女を倒して聖杯を回収するために戦ってるんだって? それも──」

 

彼がそこまで言うと、マリーが突然ジャンヌの元へと走り寄って行く。そして村を巡っていた時に、誤解を招かないようにと目深に被っていたフードの中を覗き込んだ。

きょとんとするジャンヌのフードを外して、マリーが続きを紡いだ。

 

「──それも、ジャンヌ・ダルクと一緒に! ああ、一度お会いしたかったの、聖女ジャンヌ!」

 

「えっ、あのぅ……?」

 

そう言うや否や、マリーはジャンヌの手を取る。未だに彼女の勢いに圧倒され、ジャンヌは目をぱちくりとさせていた。

 

「あ、あのっ! マリーさんたちが先輩を……藤丸立香さんたちを保護してくださったのでしょうかっ」

 

マシュGJ! 彼女らに飲まれかけた場の雰囲気を一気に引き戻したわ!

 

「君がマシュ、か。うんうん、立香の話通りに可愛い子じゃあないか! そうだね、僕らが彼とあの妖精じみたサーヴァントをこの近くの村に連れ込んだ張本人さ」

 

マシュは一瞬頬を朱に染めた後、顔をぶんぶんと降って気を取り直す。……よし、もう1つ藤丸に説教をする理由が出来たわね。どうせあいつのことだから、あくまで”かわいい後輩”みたいなニュアンスで言ったんだろうけど、純情なマシュを惑わすやつは許さない。ああもう、藤丸が帰ってきた時が楽しみで仕方がないわ。

 

うわぁ、かわいそうに藤丸君。所長のあの笑い方は……

 

わたしの脳内メモに説教の種が複数溜まった時にだけ、ついセーブできずに漏れてしまう笑みに、ロマニが少し身震いしていた。もちろん、わたしはそれに気付かなかったけども。

 

「では、我々を先輩の元に連れて行ってもらえませんか? どうしても早く合流しなければならなくて」

 

「オーケー、ちょうど僕らも村に戻ろうとしてたところさ。おーいマリ……、馬………てくれ……(ザザーッ)」

 

しかし、アマデウスが話している途中に、突然ノイズが走り出し、映像の画質と音質が荒くなっていく。ギリギリ通信途絶には陥ってないけど、この感じは……。

 

「ねぇロマニ、このノイズってもしかして──」

 

ヴォークルールの時と同じじゃないか。そう言おうとした直後、スクリーンの向こうから女性陣の甲高い小さな悲鳴とノイズ混じりの大きな音が響いてきた。そしてその音に紛れて、

 

「あれは……ウルトラマン!!」

 

という声が聞こえてきた。そしてそのすぐ後、ノイズが急に収まり映像が安定する。

 

「な、何があったの!?」

 

「所長! えっと、突然地面が揺れたと思ったら向こう側にバグバズンが出現して、そして遅れて出現したウルトラマンと一緒に急に姿を消して……! すみません、わたしも混乱しているみたいで……!」

 

急に姿を消した……。もしかして、特異点Fでわたしたちを飲み込んだあの固有結界みたいな空間に、バグバズン諸共引きずり込んだってこと? というか、なんでこのタイミングで急に通信が不安定になってすぐに復帰したのかしら……。もしかして──。

 

「あっちは……村のある方角だわ!! 大変、急いで向かわなきゃ!」

 

わたしの思考を遮るように、バグバズンが出現したという方向を見たマリーが慌て出す。

村の方ってことは、藤丸やモルガンも危ないかもしれないってことじゃない!

 

「皆さん馬車に乗ってください! 村まで全速力で───あぅっ……!?」

 

「その必要はありません。あちらにはもう我が主が向かっています、すぐにあの村は焼き払われるでしょう」

 

彼女の言葉を遮り、突如闇の中からガラスの薔薇が彼女の胸を刺し貫いた。

そしてそう言いながら闇の中から現れたのは昨日の一戦で見えた白百合の騎士で、その隣には心底嬉しそうな顔をした白髪の男性が立っていた。2人とも、竜の魔女のサーヴァントのようだ。

くっ、わたしもロマニも混乱してて霊基反応に気付かなかった……!

 

「マリー殿! 不覚、地震に乗じた奇襲に気付けぬとは……!」

 

突き刺さった薔薇を抜き取って片膝を着く彼女の前に、シグルドがそう言いながら赤剣グラムを構えて立ち塞がる。そして、襲撃してきた2人を見るとマリーは驚いたような顔をした後、とても悲しそうな表情を浮かべた。

 

「あなたたちは……。カルデアの皆さん、彼らの狙いはわたしのようです。ですからここは任せて、あなたたちは村に向かってください……!」

 

彼女は血の流れ出す胸を押さえながら立ち上がると、痛みに歪む顔のままわたしたちにそう言う。

 

「しかし、それでは貴女が……!」

 

「いいのよジャンヌ、それよりも村の皆とリツカを……! アマデウス、道案内をお願い!」

 

「……分かった。間に合うか分からないけど、とりあえず急いでぶっ飛ばすよ! 皆、こっちだついて来てくれ!」

 

「当方はマリー殿に加勢する。マシュ、聖女殿! 藤丸立香殿と村の者たちの安全の確保はお任せした!」

 

「マリーさん、シグルドさん……! ……っ、分かりました、お2人もどうかご無事で!」

 

そして、そう言い残してマシュとジャンヌはアマデウスの誘導に従って走り出す。既に空には黒煙が立ち上り、暗いはずの夜空が赤く燃え上がっているのが見える。そして空に渦巻く竜の群れが、村を襲う脅威の大きさをありありと伝えていた。

背後には、その脅威の配下であるサーヴァントが2騎。後戻りは出来ず、進んでも得られるのはきっと絶望。それでも、わたしたちにはここで立ち止まるという選択肢は無かった。

 

「さっきの奴の話が本当なら、村には竜の魔女がいるはずよ! 何としてもぶっ倒してやりなさい!」

 

「「はいっ!!」」

 

マシュにもジャンヌにも退去の兆候は無い。ってことは、まだ藤丸はしぶとく生きてるはず。あいつが無事なら、モルガンもきっと無事。もしかしたら、あっちに着く頃にはもう彼女が竜の魔女を討伐してるって可能性だってある。

そういう小さな希望にすがりついて、わたしとロマニはセンサーがキャッチするあらゆる反応に目を光らせる。

 

──その影に、こちらの混乱にほくそ笑む()()が忍び寄っているなんて、この時のわたしは露ほどにも気付いていなかった。

 


 

──同刻・村内部──

 

「……だめだ、もう、ほとんどの家が……」

 

私たちが村に着いた時、目に飛び込んで来たのは既に炎上し人の肉の焼ける臭いを放つ家々だった。悲痛な声を漏らすマスターを嘲笑うかのように上空にはワイバーンが旋回し、そして村の中心部の広場には人影が1つ。

 

「あら、もう終わってしまったのね。まあ、これだけ時間を稼いでくれたのなら上働きですか」

 

「お前は、竜の魔女……!!」

 

「やはり、バグバズンは囮でしたか……!」

 

私はそう呟きながら周囲を見回し、ゾーイの家を探す。

 

「……っ」

 

しかし、見つけたそれも既に火の手が回っており、昼間とはもう見る影も無かった。

 

「……1つ聞く、竜の魔女。ゾーイとアニーは……そこの家の住人は、どうした」

 

私はこちらを嘲るような顔で眺める竜の魔女にそう尋ねる。その表情の通り私たちを見下しているのであろう彼女は、ひどく愉快そうに答えた。

 

「ああ、あのトロい妊婦とうるさい子供のこと? そうねぇ──」

 

彼女は顔をクイッと上げて下目に私たちを見ると、鋭くニヤリと笑う。

 

「もう、ワイバーンたちの餌にでもなってるんじゃないかしら!!」

 

そう言い放つと、ソレは声高に笑い声を上げる。息を飲むマスターの様子が気に入ったのか、ソレはニヤニヤとしながら彼を舐め腐った目で見ていた。

 

───つくづく、嫌気が差す。奇跡というやつは、いつも私を嘲笑う。この静かな感情の激動を、どこにどうして流し去ろう。

 

「この野郎……! って、モルガン?」

 

私は何も言わずにマスターから左腕を外し、静止するように指示すると、ケラケラと笑う竜の魔女に再度尋ねる。

どうしてだろう、感情は確かに昂っているというのに、頭はまるで正反対に落ち着いていく。

 

「もう1つ質問だ、竜の魔女。おまえの焼却は、ただの私怨、復讐で間違いないのだな?」

 

ソレは依然として愉快そうに顔を歪めたまま答えた。

 

「そうです、その通り! だからこそ虐殺を働くのは心が踊る!! 間抜けで愚かな裏切り者共を理不尽に踏みにじるのは胸が高鳴るッ!!!」

 

ソレは嬉々としてそう語る。その言葉に、マスターは顔に僅かに怒りを滲ませた。

しかし、どうしてか私は───。

 

「……く。くくっ、アッハハハハ……!!!」

 

「モル……ガン……?」

 

私は左手で顔を押さえて、堪えきれない笑いを溢れさせる。村を焼かれ、ゾーイとアニーを殺され激動する感情は、不思議と笑いへと昇華されていく。そんな私を訝しげに見る竜の魔女の目が、どうにも愉快でたまらなかった。

 

「くだらぬ! 何がジャンヌ・ダルクだ、何が魔女だ。おまえなぞ何の信念も中身も無いただの抜け殻、ただの卑しい人間もどきに過ぎぬ!」

 

そうだ。奴は()()()()()()()()()()()()()()。私の見たジャンヌは、どこまでいっても根っからの善人で、救いようが無いほどの……聖女だった。

そんな者が、これ程までに愚かで信念もクソもないゴミクズを内包するはずが無いのだ。

ならば、躊躇する必要も無い。ちょうど、あの顔に似た聖女には嫌悪感のようなものを感じていた所だ、思い切り発散させてもらうとしよう。

 

「ああ、虫ケラを踏み潰すのは、醜きものを殺すのは───なかなかどうして、血が滾る!」

 

私には、誰かの暮らしを踏みにじる輩に対して義憤を抱く資格など無いが。私には、アレの気持ちが理解出来ないでも無いが。

ただ、奴と私はどうしようもなく清々しいほどに()()だと、そう思う。

故に、ただ同類として引導を渡してやろうというのだ。

 

「……モルガン、あいつを……竜の魔女を、倒そう!」

 

「ええ、私も同じ気持ちです。任せなさいマスター!」

 

私はきっと燃え尽きてしまったであろう本来の服を、魔力で再生成して身に纏い臨戦態勢に入る。

 

「ただの人間、とは舐められたものね。その発言、すぐに後悔させてあげましょう……!!」

 

相変わらずこちらを見下したような目をしたまま、しかし侮辱されたのが癪に障ったのか苛立つような顔をして竜の魔女は武器を構える。それに対し、私は竜の魔女に杖を向け、左手で首切りのジェスチャーをして言った。

 

「後悔するのはおまえの方だ、竜の魔女。おまえは、おまえよりよっぽど価値のある人間を殺したのだ。……生きてここから帰れると思うなよ。ぶち殺すぞヒューマン(人間ぽっち)!!」

 

私は奴を英霊とは思わぬ。反英霊としても話にならぬ。そんな出来損ないが()()を名乗るとは、片腹痛いことこの上ない。

ならば、本当の反英霊(魔女)がどういうものか───存分に思い知らせてやる。

 


 

デッデッデッデッデレデレデンンネェクサァス……




あ、私事ですが9/1に水妃モルガンの絆レベルが10になりました。私としては異例のスピードですよこれは……。まぁ諸事情あっただけなんですけども
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