人理修復 withウルトラマンネクサス&モルガン   作:グリッド無頼

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特異点F攻略後から第1特異点出発までの間にあった話。
今回はモルガンがメインの話です。
あくまで幕間のお話なので、プロローグや本編より短めです。


幕間の物語(F~1)

ロマン教授によるグランドオーダー宣言がされてから、カルデア職員たちは次のレイシフトへの準備や停止した施設の復興などで忙しなく廊下を右往左往していた。その一方で、怪我の療養と令呪の回復のために自室での待機を命じられ、オレはベッドの上で暇を持て余していた。皆が頑張っている中、自分だけ待機というのは何とも居心地が悪い。しかし所長から直々に、

 

「できること?ろくに魔術も知らない元一般人にできる仕事なんてカルデアにあるわけないでしょ!”国連承認の最高機密機関”って、わたしブリーフィングで言ったわよねぇ?分かったら、大人しく自室に戻りなさい!」

 

と皮肉たっぷりに言い渡されてしまった以上はどうしようもない。特異点Fで多少は仲良くなれたとはいえ、目を付けられていることには変わりなかったようだ。でも、レフ教授に裏切られたと知ってもいつも通りの所長でいてくれたのは素直に喜ばしい。所長曰く、

 

「いつか必ずひっぱたいて、わたしを見下したことを後悔させてやるんだから!」

 

とのことだった。管制室でオレに飛んだ平手打ちをレフ教授も味わうことが確定し、俺は同情ともざまあみろという感じともとれない苦笑いを浮かべた。それにしても、傷が完治するまで自室に籠ってろ、とまで言われるとは……。拉致・監禁だろこれ……。

 

「暇だよーフォウくーん……」

 

怪我人とはいえ、その傷の大部分が回復していたため、手持ち無沙汰にひたすらベッドで転がるしかやる事がない。街中で急に拉致られたから私物もほとんど持ち込めなかったし、いよいよもってオレは昼食に入っていたベーコンを盗んでかじっているフォウ君に話しかける以外の選択肢を失っていた。

 

「マシュもメディカルチェックでしばらく来れないし、モルガンも『ダ・ヴィンチ』って人とどっかに籠ってるし、やることないよー」

 

「フォウ…フォフォ…ンキュ」

 

オレの言葉を理解しているのかしていないのか、ベーコンを食べながらフォウ君が時折鳴き声を上げる。ついに耐えきれなくなり、呑気に食べているフォウ君を捕まえてそのモフモフに顔をうずめた。

 

「フォ!?フォーウ!」

 

無理矢理モフモフされたことに怒ったのか、食事の邪魔をされて不満なのか、フォウ君はじたばたと暴れる。見た目の割に力があり、フォウ君はオレの拘束を振りほどく勢いで抵抗する。フォウ君の激しい抵抗を受けている内に、懐から短刀が滑り落ちた。

 

「あ……」

 

それと同時にフォウ君に逃げられたため、オレは短刀を拾い上げてそれを眺めた。

夢の中であの巨人と出会った後、いつの間にかオレの手に握られていた、巨人に変身するための引き金。オレは特異点Fで2回変身し、敵と戦った。その信じ難い事実を事実だと自覚させるのはこの短刀の存在だ。

 

「そうだ……モルガンに説明しないとな……」

 

特異点Fにおいて、オレが巨人だと勘づいたのはモルガンだけだ。なるべく他の人には知られたくないし、モルガンには丁寧に説明しておきたかったんだけど……。部屋から出られない現状では無理なのがなんとも歯がゆい。そんなことを考えながら唸っていると、不意に部屋の扉が開いた。

 

「私の居ない間に呼び捨てにするとは感心しませんね、マスター」

 

オレの呟きを聞いていたのか、そう言いながらモルガンが部屋に入ってきた。噂をすれば影が差す、というのはこういうことを言うのだろう。

 

「モ、モルガン陛下!どうしたの急に?」

 

「どうしたもこうしたもありません。先日の巨人の件について尋ねるためにわざわざ足を運んだのです。本来であれば臣下たる貴方の方が来るべきところなのですから、感謝するように」

 

そう言いながらモルガンはベッドの近くの椅子に座って、オレの話を待った。フォウ君はどこかに行ってしまったから、オレはとんでもない美人と2人きり、しかも場所は自室という状況に陥りどぎまぎとする。加えて、モルガンは結構大胆な格好をしているため、目のやり場がなく顔から視線をそらすことが出来ない。そうこうしているうちにオレの顔は見る見るうちに赤くなり熱を帯びていく。

 

「あ、あの……えっと、えーーっと……」

 

そんな状態でまともに話せるわけもなく、オレは口ごもる。しかしモルガンはそんな反応に慣れている、或いは楽しんでいるかのように涼しい顔をしていた。オレは頬を叩き、深呼吸を数回繰り返してようやく落ち着きを取り戻してから、モルガンにことのあらましを伝えた。

 

「ふむ、来歴も目的も一切不明の光の巨人、か……」

 

モルガンは脚を組み、顎に手を当てて考え込むような仕草を見せる。そんな一挙手一投足にさえ、オレは目を奪われ見とれてしまう。

 

「体の主導権さえも譲渡する、というのも不可解ですね……。む、聞いているのですか、マスター」

 

モルガンに呼び掛けられ、俺はハッとする。

 

「た……たしかにそうだよね。オレを依代にして目的のために動くなら、体の自由までは……」

 

オレとモルガンは一緒になって考え込む。せめてあの巨人の意識が表面に現れてくれれば、モルガンの妖精眼で真意を見通せるのだろうが……。残念ながら、変身中も意識はオレのものだけだ。そこに別の意志が介入しているという感覚は、なかった。

 

「…………まぁ、現状ではマスターの体に害を及ぼしてはいないようですし、我々と敵対する存在ではないと考えてよさそうですね。戦力としても十二分に役立つでしょう」

 

「あ、それについてなんだけど……。オレ、なるべくあの巨人には変身しないようにしたいんだ。何でかは分からないんだけど、無闇にあの力を振るっちゃいけない気がして……」

 

あの巨人の力の源、()()()()()()()()()()()。そもそも、魔術回路が一般人なオレがあんな巨大な存在になるための魔力量をまかない切れるわけがない。いくら魔力がカルデアから来るとはいえ、オレの体に入る魔力量などたかが知れているからだ。だとすれば、恐らくはそこにあの巨人がオレを選んだ理由を知る鍵があるはず。

 

「なるほど。その巨人がマスターを選んだのは、貴方の在り方が関係している可能性があると踏んでいるわけですね。貴方らしさ、ということが重要であると思うならば、それに従うべきなのでしょう」

 

モルガンはオレの提案を素直に飲んでくれた。正直なところ、説得には苦労するだろうと思っていたから、嬉しい誤算だった。

 

「……ありがとう。それでなんだけど、出来る限り俺が巨人だってことは他の人に知られたくないんだ。皆がモルガン陛下みたいに分かってくれるとも限らないし、変身を強要されたりなんてしたら大変だ。それに、変な期待をさせるのも良くないと思うし……」

 

妖精眼で嘘を見抜くモルガンが、オレが巨人ではないと言ってくれればかなりの信憑性を帯びるはず。そういった意味でも、ここでモルガンを味方にしておきたかったのだ。打算的なところがあったのは、申し訳ないのだが……。

 

「構いませんよ。特異点の解決はあくまでマスターと私たちサーヴァントの責務。あの巨人の力を借りずにそれが出来ぬようでは、英霊の名が廃りますので。それに……」

 

そこまで言うと、モルガンは少し前屈みになってオレの体を眺め始めた。それによって存在を主張するむ…胸が……!おおおお落ち着けオレぇ!しかし心臓は再び早鐘を打つ。

 

「マスター、上着を脱ぎなさい」

 

「は!?」

 

そして突然とんでもないことを言い出すモルガン。ただでさえ超過運動をしている心臓が爆発しそうになる。

 

「は?ではありません。早く脱ぎなさい。女王の命令ですよ?」

 

「ままま待って!こっ、心の準備がっ!」

 

オレが顔から火を吹き頭から煙を上げている一方で、モルガンは至って真面目な顔で脱衣を迫ってくる。ええいままよ!もうどうにでもなれぇ!

…………等と、云いつつ。恐る恐るといった風にしか上着を脱げないオレの心まじ聖晶片……。超絶的な美人に見られながら脱衣という異様な状況は、思春期真っ只中のオレには刺激が強すぎるのよ……。

そしてついに上裸になったオレを見てモルガンが言う。

 

「ふむ、やはりそうですか。マスターの傷跡とあの巨人が受けた攻撃の箇所が一致していますね。生身の状態では肉体的な傷を負っていなかったマスターが、帰還するなり大きく負傷というのは不自然でしたので、これではっきりしました」

 

「え……?」

 

「マスターとあの巨人は同期している、ということです。マスターの怪我は巨人に、巨人の怪我はマスターに、それぞれ相互に作用していると見て間違いないでしょう」

 

言われてみれば、たしかにその通りだ。左肩と右足にある深い噛み跡、そして背中と脇腹の大きなアザ。それらの傷は、あの巨人の時に受けたものだ。

 

「であれば、ますます軽々しく変身すべきではありませんね。私があのガルベロスと呼ばれた巨大生物に多少の痛痒を与えたように、全力を出したサーヴァントの攻撃であれば少なからず傷を負うでしょう。加えてあの巨体では、寧ろ良い的になります。特異点Fでは複数体のサーヴァントが出現しましたね?今後も敵対サーヴァントが束になって襲ってくることも十分考えられますから」

 

なるほど……。たしかにそういう考え方もできるな。そもそも、マスターが矢面に立つというのもおかしな話……か。

オレはモルガンが脱衣を迫ってきた理由が分かりホッとする。できれば、最初に言って欲しかったなぁ……。と考えつつシャツを着ようとすると、

 

「待て、マスター。肩の力を抜いて、もう少しこちらに寄りなさい」

 

ねぇ、なんでこの人オレの心臓を壊そうとするの?死んじゃうよオレ?しかし先程のやりとりで何を言っても無駄だと知ったため、言うことを聞かず大暴れする心臓とは正反対に大人しくモルガンに体を差し出す。するとモルガンは右腕を伸ばしてオレの左肩に触れた。ビクッとするオレを無視してモルガンが言う。

 

「思った通り、呪いの類が残っていますね。見た目には傷が治っていますが、なまなかには治癒出来ないようにする呪いです。ガルベロスの仕業でしょう。本体から切り離されていたためか、右足には付与されていないようですが」

 

「呪い…。たしかに左肩だけはまだ痛みが残ってる……」

 

「そうでしょうね。今から解呪しますから、そのまま力を抜いていなさい」

 

そう言うとモルガンは右手に淡い光を宿し、もう一度オレの肩に触れる。細く、柔らかいその腕と手。身の丈を優に超える巨大な杖や十字槍、黒い剣を扱う様子からは想像もつかないほどに華奢なそれは、オレにモルガンのことを”儚い少女”であるように感じさせた。モルガンが解呪をしてくれている間、しばらくその不思議な感覚に困惑することになるのだった。

 


 

「終わりました。もう服を着ても構いませんよ」

 

解呪が終わると、モルガンはオレの肩から手を離してそう言った。

 

「ああ、うん。ありがとうモルガン陛下。すっかり楽になったよ」

 

オレは左肩を動かし、痛みが無くなっていることを確認してから急いで服を着た。流石に用もなくモルガンに上裸を見られていればいよいよ心臓がぶっ壊れてしまう。

 

「それにしても、呪いだなんて治療室でも言われなかったから全然気付かなかったよ。解呪なんてこともできるんだね、モルガン陛下」

 

「…………ええ。()()()()()()()()()()()()()

 

モルガンは、どこか遠くを見るような目をしてそう言った。考えてみれば、オレは彼女のことをほとんど知らない。アーサー王に仇なす魔女、という伝説上の事しか知っていない。目の前にいる彼女は、そんな情報の集合体ではなく、間違いなく1つの人生を生き、そして心を持った1人の女性なのだ。

 

「あ……ごめん。悪いこと聞いちゃったかな」

 

「いえ、問題ありませんよ」

 

それでも、相変わらずの切り替えの早さでモルガンはもういつもの無表情に戻っていた。

 

「今後も、ガルベロスのような敵が現れやむなく巨人へ変身するようなことがあれば、必ず私の元に来るように。…………ですが、巨人巨人と言うのも何だか味気ありませんね」

 

「そう…だね。あの怪獣にすらガルベロスって名前があったし、巨人にも呼び名くらいあった方がいいかも」

 

オレの返事を受けて、モルガンはいたって真面目な顔で言った。

 

「では……流星丸と名付けましょう」

 

「ぶはっ!」

 

オレは思わず吹き出してしまった。

 

「なっ……なにそっ……くくく…何それ……!船の…漁船の名前じゃん…、ぶふっ!」

 

本人が無表情でいたって真面目に言うもんだから余計にタチが悪い。

盛大に笑われたのが悔しかったのか、少し顔を赤くするモルガン。

 

「い、いえ。今のは冗談です。次が本番ですから…………いつまで笑っているのですか!」

 

流星丸がツボに入り、なかなか笑い止まないオレを見て悔しさが増したのか、モルガンは頬を膨らませる。

 

「ご……ごめん、笑いすぎた」

 

オレが笑い止む頃には、モルガンはすっかりご機嫌ななめになり、そっぽ向いていた。

 

「もういいです。用事も済みましたので、私は部屋に戻ります」

 

早口にそう言うと、モルガンは椅子から立ち上がって部屋から出て行こうとする。流石にこのまま別れるのは気まずいし、彼女を怒らせたままにするというのは嫌だったから、オレは焦ってモルガンを引き止めた。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!笑いすぎたのは謝るから、せめてその、本番を聞かせてよ」

 

モルガンは立ち止まり、少しの沈黙の後に溜息をついてから振り返って言った。

 

「…………『ウルトラマン』、です」

 

「ウルトラマン……すごく良いじゃん……」

 

流星丸からのギャップもあり、オレは口からお世辞でもなんでもなく本音を漏らす。妖精眼でそれを見抜いたモルガンは、ほんの少しだけ頬を赤らめていた。

 

「……そうでしょう。分かりきっていた反応ですが、良しとします。では、私はこれで」

 

「うん。ありがとう、楽しかったよ」

 

そしてモルガンは部屋から去って行った。ようやくオレは1人になり、どっと押し寄せる疲れに身を任せてベッドに横になった。ついさっきまでは暇を持て余して1人でいるのが嫌になっていたというのに、モルガンと2人きりの状況を経験した今となっては全く逆になっていた。いや、モルガンと2人きりというのが嫌という訳では決してない。だが、心臓が休まらない。さっきのことを思い出すだけでも少し鼓動が早くなるくらいだ。

───思い出す、といえば。

 

「モルガンの拗ねた顔……可愛かったな」

 

普段は大人びていて艶やかな魅力を放っている彼女だが、あの顔の時はなんというか、同年代の女の子みたいな幼さを感じて素直に可愛いと思ってしまった。まだまだ彼女については分からないことだらけだけど、それだけは明らかだった。

 

「また今度……いじってみようかな」

 

などと、まだ少し胸がドキドキと高鳴ったままでオレは考えていた。

 

 

 

幕間の物語(F~1) 【完】

 




第1特異点の投稿までには時間がかかると思います。気長にお待ちくだされ。
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