人理修復 withウルトラマンネクサス&モルガン 作:グリッド無頼
デッデッデッデッデレデレデンンネェクサァス……
【第2節 挟撃】
「酷い有り様だ……。本当に戦争の休止中なのかな……?」
たどり着いたその街には、どこからか逃れてきたらしい難民たちと負傷した兵士たちとが集まっていて、陰鬱な雰囲気に包まれていた。
マシュの話によると、この時期は”百年戦争”の休止期間で、比較的穏やかな時代だと聞いていたんだけど……。
「恐らくは、特異点化の影響により戦争が終わらないまま時代が進んでいるのでしょうね。大勢の難民に負傷兵がおり、加えて自然災害等の痕跡が見られないとなれば、まず間違いないでしょう」
街の状況を見たモルガンがそう推測を口にする。確かに、ここは特異点なんだから歴史がおかしくなっていても全くおかしくないだろう。
しかし、何が起きているのかを知るために街にいる人々から情報を聞き出そうとしても、みんな何かとても恐ろしいものを見てしまったかのように、酷く怯えて口を開いてくれない。
無理に聞き出すのも憚られ、聞き込みは中々進まないままだったが、粘り強く調査を続けていると、負傷兵の1人が声をかけてきた。
「あんたら、さっきから何してる。そんな変な格好してウロウロされると、みんな不安がっちまうんだよ」
「あ……すいません。オレたちこの国に来たばっかりで、何が起きてるかを知りたくて。戦争の休止中だって聞いてたんですけど……」
「…………はぁ、あんたら本当に何も知らないんだな。確かに王は休戦条約を持ち出そうとしていたさ。でも、殺されたんだよ」
「殺され……!? な、一体どうして!?」
「”魔女”さ。蘇った『
ジャンヌ・ダルクが蘇って、人を襲ってるだって……!? しかも、竜の大群を率いて……!?
あまりにも意外すぎるその言葉に、オレたちは(珍しいことに、モルガンもだ)驚きを隠せずにいた。そして負傷兵は続けて言う。
「それだけじゃない。最近、あちこちで竜とは違う”異様に巨大な怪物”が目撃されてるんだ。竜の魔女が乗りこなす黒い竜も相当デカいが、それよりもデカいらしい。俺はまだ1度も出会してないが、地獄に仏ってやつかねぇ」
異様に巨大な怪物……! もしかして……!
「その巨大な怪物って、どういう奴なんですか? 何か知ってれば、教えてください!」
「……俺も聞いたことしかないんだが。昆虫じみた見た目で、空を飛んで移動する。そして、竜やら人やらを襲って食っちまうんだとさ。食い終わったら、地中に潜って消えちまうらしい。俺たち兵隊の間じゃ、『バグバズン』って呼んで警戒してる所だ」
バグバズン、か……。竜ですら襲ってしまうのなら、多分ジャンヌの率いる存在ではないのだろう。というより、そんな戦力がいるなら積極的に利用するはずだ。
とすれば、ほぼ間違いなくスペースビーストの一種のはず。人理焼却に直接関与しているかは分からないけど、レフ教授が使役していた以上は恐らく無関係じゃない。いつかは討伐する必要があるだろう。
……そいつの居場所が分からない以上は、どうしようもないのだけど。
オレは話をしてくれた負傷兵に礼を言い、その場を離れる。彼から得た情報をカルデアに伝える為だ。
「あっ、藤丸君! どうだい、何か収穫はあったか?」
「はい、色々と。というか有りすぎてちょっとパンクしかけてるところです」
「そうか、じゃあゆっくりでいいか………詳細に………報こ………(ザザーッ)」
通信状況が悪いのか、ノイズが酷くロマン教授の声が上手く聞こえない。
「ちょっとドクター、通信が……」
そしてついにプツリと通信が途絶えてしまった。おかしいな、ここに来るまではそんなこと無かったのに……。
「通信、切れちゃった……。モルガン陛下、何か魔力的に変なとことか無い?」
特異点Fの空洞内で通信が繋がらなかった時みたいに、何か魔力場が狂ってるのかもしれないと思い、オレはモルガンにそう尋ねる。しかし、彼女は辺りをよく見回してから言う。
「いえ、特に異常はありませんね。機械の故障なのではありませんか?」
「うーん、変にいじったりはしてないんだけど……。仕方ない、とりあえず直るまであの人から聞いた事を整理しようか」
オレたちは、負傷兵から聞いた事柄を1つずつ整理していく。
1つは、戦争は終わらず、最悪の形で継続しているという歴史の歪み。
1つは、聖女ジャンヌが処刑から蘇り、竜を率いてこの国を焼却して回っていること。
1つは、バグバズンという暫定スペースビーストが潜んでいるということ。
「蘇ったということは、ジャンヌ・ダルクはサーヴァントとしてこの地に顕現しているのでしょうか。それにしたって、まさか、彼女が殺戮の限りを尽くしているなんて、信じられないです……」
マシュが暗い顔でそう呟く。
「オレも同感。前に見た黒いアーサー王といい、今回のジャンヌといい、聞いた事のある話とは全然違ってなんだか混乱するなぁ……」
俺も彼女の意見に賛同する。
特異点の影響を受けた英霊、特に歴史の歪みに大きく影響を与えているものは得てしてそうなっちゃうのかな……?
「…………無理のない話でしょう。ジャンヌ・ダルクは、命を懸けて国を救った。その最期が救った者共による裏切りともなれば、憎悪に支配され復讐に走ったとしても何らおかしくはありません」
彼女にしては珍しく、マシュと同様に暗い顔をしてモルガンが言う。
しかし、その顔の暗さはマシュが感じているような不安や疑心から来ているのではなく、どこか共感を示しているように感じた。
共感……? どうして? オレが知ってる(療養期間中に改めてデータベースで確認した)伝説には、彼女がそんな末路を辿ったなんて話はなかったはずなのに……。
3人の間に沈黙が続く。その空気に耐えきれなくなったオレは、なるべく明るい声色を心掛けて2人に言う。
「このまま黙ってても仕方ないし、もう少し情報を集めてみようよ。今の所は悪い情報ばっかりだけど、きっと良い情報だってあるはず!」
「……そうですね。とはいえ、この街で得られる情報は現状はこれだけでしょうから、他の街にも足を運んで──」
ゴゴゴゴゴゴッ!!
モルガンが最後まで言い終えない内に、突然地面が揺れ、オレたちは地面に膝を付いた。
揺れはすぐに収まったが、混乱に拍車をかけるように門の外から走ってきた兵士が叫んだ。
「西の空からワイバーンの群れが接近中!! かなりの規模だ、我々だけでは凌ぎきれない! 難民達はラ・シャリテへの避難を、戦える者は直ちに武装して迎撃の用意だ!」
敵襲だって!? 難民も兵士たちも疲労困憊といった感じで、避難も戦闘も満足にはできないだろうに……!
「モルガン陛下、マシュ、この人達を助けよう! せめて、難民の人たちの避難が終わるまでの時間を稼げれば……!」
「了解! マシュ・キリエライト、彼らに加勢します!」
「……魔力をあまり無駄にはしたくなかったのですが、仕方ありませんね。霊基出力も上昇したことですし、慣らし運転といきましょう」
2人が武器を構えると、兵士の言葉通りにワイバーンの群れが現れた。翼を持つ彼らの前に街を囲む門は意味を成さず、次々とワイバーンが侵入してくる。
オレたちは難民たちの前に立ち塞がり、兵士たちに加勢する。
「私がワイバーンを撃ち落とします。マシュは難民を守りつつ私が取り逃した個体の処理を。マスターは避難が難しい者の支援と、隙を見て援護を。よろしいですね?」
モルガンがオレたちに指示を飛ばす。本来ならマスターのオレが指示を出すべきなのだろうが、今はその事を気にしている暇はない。そもそも、今のオレにそんな指揮能力があろうはずもないし……。
っと、いかんいかん。ここ最近はオレの能力不足が浮き彫りになる事ばかりで自嘲気味になってしまっていけない。
悩むのは、とりあえずここを切り抜けてからだ!
「了解、2人とも気を付けて!」
オレたちが散開すると、街の上空に到着したワイバーンが火炎弾を吐き出して攻撃を始めた。それをマシュが盾で受け止め難民を守る。
オレは子供や老人の避難を手伝いつつ、兵士たちの避難誘導に加わり難民たちの戦闘域離脱を円滑に進められるように努めた。街の外にさえ出られればあとは走るだけだから、兵士とマシュのフォローだけでも逃げ切れるはず。
一方、街では開けた広場に陣取ったモルガンが待ち構え、次々と大量に侵入してくるワイバーンを迎撃する。
彼女は杖を十字槍に変形させ、空を一突きする。その刺突が空間を転移し、ワイバーンに襲いかかる。
「死になさい」
その刺突は特異点Fで見た時より明らかに威力を増しており、1度の攻撃につき2~3体をまとめて貫いていた。
「逃がすものか」
刺突をくぐり抜けた個体には十字槍を黒剣に変形させ、それを一振りすることで衝撃波を放ち叩き斬っていく。
しかし竜も幻想種と呼ばれるだけのことはあり生命力は強く、間一髪で直撃を避け即死しなかった個体はモルガンの上空を突破して難民に迫る。その個体をマシュが地上から迎撃することで、難民にはまだ1人も犠牲者は出ていなかった。
「マシュ、皆の防御頼んだ! オレはモルガンのサポートに向かう!」
「お任せを! 先輩、お気を付けて!」
オレは一通り子供や怪我人、老人を優先的に街の外に避難させた後、マシュに避難民たちの守備を任せ、防ぎきれなかった火炎弾によって焼かれていく街の中で逃げ遅れた人を探しつつ、モルガンのサポートに当たる。
「陛下、上!」
彼女の真上に滞空し火炎弾を吐き出す個体を確認し、オレは彼女にそう声をかけながら魔術礼装の”緊急回避”を発動する。
「……っ、良い判断です、マスター!」
素早く横に跳び火炎弾を回避したモルガンは、上空のワイバーンを視認すると自身の周囲に天色の剣をいくつも展開し、それを自身に突き刺した。それは彼女の扱う魔術の1つで、上空にいたワイバーンは内側から天色の剣を何本も生やしながら墜落し、死骸の仲間入りを果たす。
これが彼女の真価、その魔術を活かした戦闘……!
大量にいたワイバーンの群れは既にその多くを失い、彼女に恐れを成したのか逃げ出す個体も現れ始める。
よし、このままいけば皆の避難が完了するまでの時間は稼げそうだ……!
しかし、オレがそう思った瞬間、
「なっ!? うぁっ、 くぅぅ………ッ!」
再び地面が揺れ、地中から1本の巨大な触手が伸びてモルガンの右足に巻き付き、彼女を地中に引き摺り込もうとする。
彼女は地面に杖の先端を突き刺して耐えるが、触手の力は相当強いようで、次第に彼女の顔に苦痛の色が浮かび始める。
「陛下! くそっ、このぉ!」
近くの瓦礫を拾って触手を殴りつけるも、触手は怯むどころか体をしならせてオレを吹っ飛ばす。マシュは避難民のフォローに向かっているから彼女の助けも望めない……!
「くぅっ……うあぁぁ……ぁぁ……!!」
モルガンの口から、苦痛を堪えきれなくなり悲鳴が溢れ始める。限界が迫っているようで、少しずつ彼女の体が触手に引き摺られていく。
オレは必死に頭を働かせ、先程の兵士の発言を思い出す。
「地中に潜み、人や竜を襲う……! じゃあ、こいつは!」
オレは懐から短刀を取り出し、即座にそれを抜刀する。刀身から眩い光が溢れ出し俺を包み込んでいく。
そして銀色の巨人、ウルトラマンへと変身していた。
〘 シュアッ!〙
オレはすぐさま触手に向けてパーティクルフェザーを放った。触手は大きく怯んでモルガンを解放するが、彼女はその場に前のめりに倒れたまま起き上がれずにいた。
よく見ると、彼女の右足は不自然な方向に折れ曲がっている。触手に巻き付かれているうちに骨を折られてしまったらしい。
込み上げる怒りを何とか抑え、彼女を戦闘の巻き添えにしてしまわないように、右腕から光の鞭”セービングビュート”を伸ばして彼女を掴み、俺から遠く離れた場所に降ろす。
振り返ると、触手は地中の中に逃げようとしていた。オレは走り寄って、触手が地中に消える寸前でそれを掴み、力任せに引っ張った。
〘 ハァァァ……!〙
渾身の力を込めて引っ張ると、やがて地中から全身が茶黒く、黒光りする甲殻を持つ昆虫のような姿をした1体の巨大なスペースビーストが現れた。
〘 ゼェヤッ!!〙
オレはそのままそいつを投げ飛ばし、地面に叩きつけた。叩きつけられたスペースビーストはすぐに立ち上がり、触手だと思っていた舌を口の中にしまい込みこちらと対峙する。
こいつがバグバズン……!
〘 フッ……!〙
オレは両腕を構え戦闘態勢になる。バグバズンも鳴き声を上げてこちらを威嚇してくる。突如現れた2体の超巨大生物に驚き恐怖を覚えたワイバーンたちが次々と逃げ出していく。動けないモルガンが奴らに襲われることはなさそうだ。
メタフィールドを展開できればその心配も不要だが、バグバズンが目の前にいる状態で力を解放しようとしても、展開中は無防備に近いため妨害されてしまうだろう。
ならまずは、バグバズンを怯ませて隙を作るしかない。
〘 シャッ!〙
オレとバグバズンは互いに走り寄り、組み合った状態になる。奴には見た目と大きさに違わず力があるが、オレも負けじと全力で押し返す。そして少しずつこちら優勢になり、そのまま奴を突き飛ばし腹に蹴りを放った。
蹴りに怯んで後ろに下がるバグバズンの顔に、飛びかかりながら右腕で手刀を繰り出し、続けて左腕で渾身のアッパーをぶちかます。
オレの攻撃を受けバグバズンは仰向けにダウンする。その隙に俺は力を解放しようと形態変化を試みるも、奴の尻尾の先端が俺の左足に噛み付いてきた。
〘 ウアァァッ……!〙
そしてそのまま尻尾に足を掬われ、背中から転倒させられた。
オレが立ち上がると、既に立ち上がっていたバグバズンが尻尾をぶちかまして来た。オレは避けれずに直撃を受け吹っ飛ばされる。
衝撃に怯んですぐに起き上がれずにいると、バグバズンがのしかかって来た。オレは下敷きになり苦しむが、何とか動かせる腕を動かし奴の追撃の爪を振り下ろす攻撃を左腕で受け止め、右腕のアームドネクサスの側面のブレード”エルボーカッター”で奴の顔面を斬り付けた。
バグバズンが怯んだ隙に奴の体を押し上げ、そして蹴り飛ばして下敷きから逃れた。
〘 シュアッ!〙
オレは立ち上がると同時にパーティクルフェザーを追撃で放ちダメージを与えつつ、奴の尻尾を掴んで持ち上げ、全力で振り回して奴を投げ飛ばした。
うつ伏せに倒れたバグバズンは、ダメージを受けて戦意喪失したのか、不利と判断したのか、背中の羽を開いて空に飛び上がり逃走を図る。
逃がすまいとこちらも飛び上がろうとしたその時、
「Arrrrrrthurrrrrrrr!!!」
くぐもった叫び声を上げながら、全身を漆黒の鎧で包んだ騎士がこの時代にはあまりにも似合わない戦闘機に乗って俺に迫って来た。
その騎士は戦闘機からミサイルやガトリング砲を乱射し、通り魔の如くオレを攻撃した後にすぐに飛び去ってしまった。その銃撃に怯んで飛び上がれずバグバズンを逃がしてしまう。
奴が空の彼方に消える寸前で、オレは左腕を伸ばして構え、両手の平を水平に構えてエネルギーをスパークさせ、両腕をクロスして破壊光線”クロスレイ・シュトローム”を放った。
光線は奴の羽に直撃し、羽を傷付けられた奴はフラフラとしながら滑空するように落ちていき、やがて姿を消した。
畜生、ここでは倒せなかったか……。少しの悔しさを覚えつつ、ウルトラマンへの変身は解けていった。
土壇場でオレを攻撃してきたあの黒い騎士は一体何者だったのだろうか……? そんな事を考えつつ、すぐにモルガンの元に向かった。
「陛下、大丈夫!?」
「マス……ター……。見ての……通り……です……」
「待ってて、今回復をっ……!」
オレが彼女の元に着いた時、彼女は無理やり足の向きを元に直したのか目の端に涙を浮かべながら肩で息をし、ぐったりとしていた。
すぐに魔術礼装の”応急手当”を発動し彼女の骨折を少しだけ癒す。
今まで激痛に耐えていたようで、少しだけでも痛みが引き彼女の顔から苦痛の色が薄れる。
「そうだ、これを……」
オレは携帯していた水筒の中に入っていた氷水を取り出して袋に入れ、それを彼女の足に当てて患部を冷やす。ダ・ヴィンチ印の長持ちする水筒を貰ってきておいて正解だった……。
彼女が楽になるまで待機していると、急に彼女が声を上げる。
「マスター、後ろを……!」
「なっ、嘘だろ……!?」
彼女の警告を聞き振り返ると、オレの後ろから、再び戻ってきたのか街に隠れていたのか、2体のワイバーンが迫って来ていた。
モルガンは今はまともに戦える状態じゃないし、マシュもまだ戻ってきていない……!
「くぅぁぁっ……、通す……ものですかっ!」
しかしモルガンは体を無理に動かして杖の先端を地面に突き刺し、片方のワイバーンの直上から魔術を落として1体を仕留める。だが、もう1体は猛スピードで迫ってくる。
とうとう彼女は限界を迎えてしまったようで、杖を手放しぐったりと倒れ込んでしまう。
「陛下……! くそっ……!」
オレは彼女の前に立ち塞がり、ワイバーンからの攻撃を庇おうとした。マスターであるならば、サーヴァントを置いて逃げるべきなんだろう。例えサーヴァントが死んでも、マスターが生きていれば再召喚も出来るはずだからだ。それに、オレが死ねば人理修復はそこで詰みだ。しかし、オレにそんな選択は出来なかった。モルガンを見捨てることなんて出来なかった、いや、したくなかったんだ。
例え愚者と謗られても、考え無しの無能と罵られても、彼女を見捨てたくなんてなかったから……!
ワイバーンが雄叫びを上げて突進してくる。オレは反射的に目を閉じ被弾を覚悟するも、しばらくしても攻撃は来なかった。
不思議に思いつつ目を開けると、目の前にはフードを目深に被った1人の女性が立っていた。
「間に合ってよかった。ご無事ですか、見慣れない格好の方」
彼女が手に持つ旗はワイバーンを穿っていて、彼女がオレたちを助けてくれた事を明示していた。
「た……助かりました。あの、貴女は……?」
目の前の女性は死骸から旗を抜きながら振り返る。
「ええと、少し話がややこしくなるんですが。私は……」
彼女が言いきらない内に、後ろから息を荒らげた様子のマシュが走って追いつき、俺たちに声をかけてきた。
「先輩! モルガンさん! ご無事ですか!? ウルトラマンの出現を確認し急ぎ戻ってきたのですが……」
「マシュ、無事そうでよかった! こっちは……オレは無事だけど、陛下が足を……」
「……骨を、折られてしまったのですね。急ぎ手当をします。こう見えても、カルデアでは治療の訓練を受けていましたので、お任せを」
マシュがモルガンの右足に治療を施していく。訓練を受けていたというのは事実のようで、てきぱきと進めていく。
治療の間、オレは助けてくれた女性に話しかける。
「さっきは話を遮ってしまってすみませんでした。それで、貴女は?」
「……いえ、今話してしまうと、恐らくあなた方の混乱を招いてしまいます。ですから、手当が完了しどこか落ち着ける場所に移動してからお話させてください」
「……分かりました」
彼女の発言を少し疑問に思うも、追求はせずモルガンの手当の完了を待つことにした。
「応急処置、完了です。右足は動かさないようにして、氷水を当てて冷やしてください」
「手当、完了したようですね。なら急いでここから離れましょう。もうじきここにも火の手が回ります」
手当の完了を見届けたフードの女性は、オレたちにそう声をかける。モルガンを歩かせる訳には行かないから、オレは彼女を背負うために背を差し出す。
「分かりました。陛下、背負って行くので掴まってください」
しかし、彼女は掴まってくれない。疑問に思って振り返ると、彼女はこちらの顔をじっと見つめながら言ってきた。
「……私は女王ですよ。もう少し、相応しい扱いがあるでしょう」
「えっ」
そう言われたって、他にどうしろと……?
ま、まさか……。
「ですから、分かりませんか。その……横抱きにしなさいと言っているのです」
何故か頬を朱に染めて彼女がそう言う。しかし聞き慣れないワードを聞いてオウム返しにする。てっきりオレはアレのことを言われるものかと……。
「よ、横抱き……?」
「物分りの悪いマスターですね……。そうです、貴方の思っている通りのことです。分かりやすく言えば……”お姫様抱っこ”というものですよ」
「えっ……うぇぇぇぇ!?」
おっ、オレが、モルガンを、お姫様抱っこぉ!?
オレが考えていた予感は的中してしまっていたようだ。
咄嗟に無理だと口走りそうになるが、彼女の怪我と表情を見てその言葉を飲み込む。
しょ、しょうがない。ここは彼女のマスターらしく、男らしい所を見せないと……!
「わ……分かったよ。じゃ、じゃあ、失礼します……」
左足を立てて片膝立ちになり、その上に座って貰ってから彼女の膝裏に腕を通し、そして背中にも腕を回す。そして、持ち上げた。
触れた彼女の体は華奢で、肌は柔らかく、きめ細かく、すべすべとしていて───
「うぉぉっ……!」
存外に、重かった。
そんなオレの様子に気付いたのか、彼女は少しでも楽にしてくれようと、なんと。大胆にも。
オレの首に腕を回し、抱き着いて来た。その凄まじいまでの美貌が、目前に迫って来る。
オレと彼女の位置関係上、必然的に彼女は上目遣いになる。そして彼女がその殺人的なまでの魅力を放ちながら言う。
「マスター、頼みましたよ」
…………男として、これ以上に退く訳には行かない場面が、他にあるのだろうか?
少なくとも今の、冷静な判断力というものが吹き飛んでしまっているオレには、思い付かなかった。
デッデッデッデッデレデレデンンネェクサァス……
特異点Fの半分の尺を既に消化したのに、原作でいうと10%くらいしか進行してないのマジでマジで
展開がぁ
遅イィ