人理修復 withウルトラマンネクサス&モルガン 作:グリッド無頼
デッデッデッデッデレデレデンンネェクサァス……
【第5節】
「ちっ、しつこい奴め……!」
「Aaaaarrr!!!」
私は拾った木の枝を道具作成スキルで鋭利な投げナイフへと作り変え、猛追してくる黒い騎士へと投擲する。しかし奴は瞬時に対応し、でたらめなまでの反応速度でそれを掴み取る。
皆と分断された後、私は執拗に付け狙ってくる黒い騎士との戦闘を続けていた。数度打ち合ってみたものの、奴の筋力や敏捷性は私のそれを遥かに上回っていた。しかし、真正面からでは分が悪いと判断し距離を取ろうとしても、その敏捷性によりすぐに距離を詰められ攻撃に転じるタイミングが掴めない。
そして、更に厄介なのは奴の奇妙な特性だ。触れた物を黒化させ、それが何であれ魔力を通わせた、恐らくはDランク相当の擬似的な宝具に変容させる能力。
先程から一切の躊躇なく武器を使い捨て、投げ付け、その度にまた新たな武器を手に追撃して来る。
「Mooorgaaaan!!!」
しかし……何故か、あの鎧には既視感を覚える。それに、奴は私の名を何度も叫んでいるように聞こえる。であれば、私は奴を、奴は私を知っているのか?
だが、奴は時折銃火器を取り出して銃撃に転じることがあるが、私にそんな英霊との面識などある訳が無い。
いずれにせよ、面倒な相手だ……!
「モルゴース……!」
奴に馬鹿正直に魔術を打ち込んでいたのでは、そのことごとくを回避されて魔力を浪費するだけだ。故に、まずは奴の回避方向を1つに絞る。
私は振り向きざまに濁流を奴の左側から回り込ませるように放ち、右への回避を誘発させた。
その隙に空へ向けて少々前から練り続けていた高密度の魔力を飛ばしておき、更に奴自体にも呪詛を込めた球体をぶつける。
「内側から……壊れる」
そして左手に残ったもう1つの球体を握り潰し、体内から奴を攻撃した。
「Guaaaa!? ………Aaarrrr!!!」
鎧の隙間から血が吹き出すが、奴は少しばかり怯む程度で再び行動を始める。
ちっ、耐久力まで高ランクかこの狂犬は! つくづく面倒な……!
しかし、私とて呪詛程度で倒せる相手とは思っていない。第2の手は既に打ってある。
「”
まずは先程放った濁流を、杖をくるりと回して流れを私の方へと反転させ、その波に乗って後退する。そしてその波の上で、私は空に飛ばしておいた魔力を集結させ1本の
「光栄に思え……! 私の、本気ですッ!」
空から圧倒的な破壊の光が奴を呑み込み地面を穿ち、その余波で辺りの木々が倒れていく。
現状で放てる最大火力の魔術を撃ったことで、私の魔力はかなり消耗してしまった。だが、それだけの破壊力は──。
「Aaaa……aaarrr……」
「…………………何だと?」
信じ難いことに、奴は光の魔槍を耐え凌いで見せた。無論、全くの無傷ということは無く、左腕とその周辺が抉れるようにして無くなっているが、それでも奴はまだ立っている。
見ると、奴の残った右腕には、私もよく知っている形状をした黒い剣が握られていた。どうやら奴は、光の魔槍の矛先をあの剣で僅かに逸らし直撃を避けたようだ。
でたらめなまでのその技量、その実力、そしてその湖の聖剣。いや、あれは最早魔剣と言うべきか。
「……なるほど、道理で手強い訳だ。どこかで見た鎧とは思っていたが、おまえだったか。湖の騎士、汎人類史の『ランスロット』」
「Mor……gaaan……!」
奇妙な縁もあったものだ。だが、それは私にとっては決して良いものでは無い。特異点Fで会った黒いアルトリアのこともそうだ。私は、汎人類史の円卓の負の側面など見たくはなかった。
だって、あれは私にとって■■■■■だから。
私は杖を十字槍へと変形させ、逆手に持って頭上に掲げる。
結局は、そうだ。目を背けるしかない。壊すしかない。
私は十字槍で空間を一突きする──はずだった。奴から意識を逸らし思考してしまった一瞬は、あまりにも致命的な一瞬だったのだ。奴の手から、魔剣が滑り落ちていく瞬間を見逃してしまった。
ほんの一瞬の気の緩み。初歩的にして、決定的なミス。それが、致命的失敗を招いた。
「うっ……!?」
突如激痛が走り、私の右手から十字槍が落ちる。右腕には、先程私が木の枝から作成し、奴に掴み取られた投げナイフが深々と突き刺さっていた。
奴は間髪入れずにアサルトライフルを取り出し銃撃に移る。奴が狙ったのは私の足で、弾丸はその狙い通りに私の両足を貫いていく。
「あぐッ……! うあああッああ………ッ!!」
奴は弾を撃ち尽くすと銃を投げ捨て、全弾とは言わずとも相当数に足を貫かれその場に倒れ込んだ私に馬乗りになり、首を絞めてきた。
唯一動かせる左腕で抵抗しても、奴の筋力は例え片腕だけであれ私1人でどうこうできるものではなかった。
大量の失血と呼吸困難によって、次第に視界が暗く、意識が遠くなっていく。
「ゃ………め………………て…………………」
ああ、私は。私はまた、みじめに懇願しながら死んでいくのか。私はまた、何も為せずに死んでいくのか。
私は、また───。
奴の兜のスリットから覗く、ぽっかりと開いた穴のような目が、私を嘲笑うかのように歪んでいた。それはまるで、命を刈り取る物言わぬ死神のようで───。
「うおおおおおおおッッッ!!!!」
そして、それはけたたましい叫びと共に現れた誰かによって殴り飛ばされて行った。
その誰かは、私の上体を抱き起こして顔を覗き込み、懸命に呼びかけてくる。
「モル……! ……ルガン!! しっかり…………! 死ん…………めだ!!!」
遠のいていく意識が最後に捉えたのは───。
「マス………ター……………」
私の、
「くそっ、どこまで行ったんだ……!?」
しばらくは走ったつもりだが、2人の姿どころか戦闘音さえ聞こえてこない。中々追いつくことが出来ず、胸騒ぎが大きくなっていく。モルガンの強さは知ってるし信頼もしてるけど、無性に嫌な予感がしてならない。
そしてもう1つ気になることがあって、さっきからワイバーンの死骸があちこちに転がっているんだ。いや、2人の戦闘に巻き込まれたのかもしれないけど、何かひっかかる。というのも、その死骸のほぼ全部が心臓や首などの急所を正確に貫かれ、切り裂かれているんだ。
1対1の戦闘中に、果たしてそんな冷静で確実な対処をするだけの余裕があるだろうか? それに、モルガンの魔術による傷跡ならもっと大きく抉るようなものになるはずだし、あの黒い騎士はワイバーンと敵対する理由がない。じゃあ、一体誰が? まさか、ロマン教授が言ってた、もう1人のサーヴァント?
俺の困惑を他所に、空に突然光が瞬く。
「あれは、モルガンの……!」
そこには1本の巨大な光の槍が形成されていて、地面に向かって射ち出されるのが見えた。彼女はまだ、戦ってるんだ……!
光の槍の位置的に、多分2人との距離はもうそう遠くはない。あと少しだ……! それに、特異点Fでガルベロスにもダメージを与えた魔術なら、きっと──。
という俺の希望的観測は、その後すぐに打ち砕かれることになる。
「なんだこの音……? まさか、銃声!?」
乾いた断続的な爆発音。詳しくはないけど、多分アサルトライフルとかマシンガンとかの……!?
銃声はすぐに止んだが、俺の胸騒ぎはさっきの銃声をも凌ぐほどにうるさくなる。
そして、ついに。
「モル……!?」
見つけた。黒い騎士にのしかかられ、首を絞められているモルガンの姿を。
止めないと。助けないと。……どうやって? ただの人間が、どうやって? 考えろ、どうすれば彼女を助けられる……!?
考えろ、考えろ、考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ………!!
黒い騎士の腕を掴んでいたモルガンの左手が、ぐったりと脱力する。まずい、もう時間がない。俺と黒い騎士の距離はまだ少し遠い。何かするにしても、この距離を一瞬で詰めるような一手が必要だ……!
それに、仮に俺が体当たりしたとしても多分あいつは止まらない。どうにかして強力な一撃を撃たないと……!
考えろ、考えろ、考えろ……! 助けるんだろ、死なせないんだろ、モルガンを───!
───そうだ。魔術礼装のスキルを組み合わせれば……!
緊急回避で運動性能を上げれば、多分間に合う。瞬間強化で力を上げれば、多分あいつを止められる。俺の体が、持てばの話だけど……!
だが、もうやるしかない。俺は彼女が殺されるのを、ただ眺めに来た訳じゃない! 助けるために、ここまで来たんだ!!
「うおおおおおおおッッッ!!!!」
俺は拳を握りしめ、2種類の魔術を自身に施し、叫び声を上げながら黒い騎士へと殴りかかった。モルガンを殺すことに夢中になっていた黒い騎士は、一切の回避行動を取らずに攻撃を受け吹っ飛んでいった。
俺はモルガンの上体を抱き起こし、虚ろな目をした彼女に必死に呼びかける。
「モルガン! モルガン!! しっかりしてくれ! 死んじゃだめだ!!!」
俺の呼びかけに応えるように、彼女の目が少しだけ動き、俺を見た。そして、酷く弱々しい小さな声で呟いた。
「マス………ター……………」
その呟きを残して、彼女の目が閉じる。
「……モルガン? モルガン!? 目を開けてよ、死んじゃだめだ!! ……ちくしょう、血が……血が止まらない……!!」
魔術礼装の応急手当はもうとっくに掛けた。でも、傷は全然塞がらない。傷が、多すぎるんだ……! 何とか、何とかしないと!
俺は何とか彼女を助けようと必死で考える。しかし、その思考は1発の爆音によって妨害されることになった。
「いづっ!? 何だ……!?」
その爆音と共に、俺の頬を何かが凄まじい速度で切り裂いた。
俺は、反射的に黒い騎士が飛んで行った方向を見る。そして、そこに立つ絶望を突き付けられた。
「Aaaarrrr……!!」
そこには、銃口から硝煙を上げる大きな銃火器、恐らくはスナイパーライフルを構えた黒い騎士が立っていた。よくよく考えれば、当たり前だ。いくら魔術で強化したとはいえ、俺なんかの攻撃でサーヴァントが行動不能になる訳がなかったんだ。
一撃で頭を撃ち抜かれなかったのは、本当に幸運だった。でも、そこまでだ。黒い騎士は銃を捨て、すぐ近くの地面に突き刺さっていた黒い剣を手に俺の方へと走ってくる。
その恐怖からか、それとも絶望に押し潰されてしまったのか、俺の体は動いてくれなかった。
「Mooorgaaaaaaan!!!!」
黒い騎士がその剣を振りかぶる。逃れようのない、絶対的な絶望と確実な死。
それを目の前に、俺は悲鳴を上げることすら出来なかった。ただ、不思議と───。
───時が、まるで止まったかのように遅く感じた。走馬灯って奴なのかな、これ。
だって、目の前にモルガンが立ってる。その後ろに、ウルトラマンが立ってる。他の皆の姿が見えないのは、少し変だけど。
目の前のモルガンの口が動く。なんて言っているのかは、どうしてか聞こえなかった。そして、彼女がこっちに歩み寄って来て、俺に何かを手渡す。
俺は手に握らされた何かを見た。そこにあったのは、光り輝く『■■■■■■■■■』だった───。
「Guaaaaa!?」
「……今のって……!? ていうか、何だよこれ!?」
黒い騎士のくぐもった悲鳴で目が覚めた俺が目にした光景は、とても奇妙なものだった。俺と黒い騎士とはすれ違うような形になり、剣を握っていた黒い騎士の右腕が宙を舞い、俺の右手には恐らくそれを為したのであろう、光り輝く何か──朧気で、あやふやな形をした剣のようなもの──が握られていた。
「Arrr……thurrr……!? …………Arrrrrrrthurrrrrrr!!!!!」
両腕を失った黒い騎士は、それでも尚叫び声を上げて襲って来る。……例え凄い武器を持っていたとしても、使用者が扱えなければ意味がない。俺は手にした光を一切使えず混乱したまま、黒い騎士の頭突きをモロに食らう。
「がッ……!!」
「Arrthurrr……! Arrrthurrrr……!! Arrrrrrrrthurrrrrr!!!」
その場にうつ伏せに倒れた俺を、黒い騎士は何度も踏み付け蹴り付けて来る。俺の手にあった光は、もう既に消えてしまっていた。
そして、黒い騎士はトドメとばかりに大きく足を振り上げ、俺の頭にかかと落としを繰り出そうとする。しかし、振り上げられたその足は、力無くだらりと落ちた。
「その命、絶たせてもらう」
何故なら、黒い騎士の心臓を、赤い長剣が背後から貫いていたからだ。そして、その赤剣は縦に切り上げられ、黒い騎士を2つに分ける。
その一撃で、今度こそ黒い騎士は息絶えた。
「貴方……は……?」
俺は立ち上がることが出来ないまま、頭だけを動かしてそこに立つ人物を見上げる。
そこには、青く光る目を持つ仮面を身に付け、黒い服とズボンを装着し、腰には2つの短剣を下げ、黒い騎士を斬り裂いた赤い長剣を手にした男がいた。
「申し訳ない。竜たちの相手をしていた所、援護が遅くなってしまった」
男は屈んで俺の手を引いて立たせてくれた後、そう言った。とりあえず、敵ではないようだ。
でも、今の俺にはそんなことを気にしている暇はなく、男への感謝の言葉すら忘れてモルガンの元へと駆け寄っていた。
「モルガン……! くそっ、どうすれば……!」
まだ彼女の胸は上下している。まだ、彼女は生きることを放棄してはいないんだ。でも、それを繋ぎ止める術だけが足りなかった。しかし。
「ふむ、貴殿の仲間か。酷く衰弱しているが、まだ間に合うだろう。とりあえずこの場は当方が何とかしよう」
男は懐から
すると、彼女の傷が少しずつ塞がっていき、完全では無くとも出血が止まった。
「当方が出来るのはここまで。後は本人の生きる意志次第であるが、少なくとも今すぐに死ぬことはないはずだ。安心して欲しい」
「あ……ありがとう、ございま……す………」
男に感謝を述べながら、俺はその場に倒れ込む。今までの無理の祟りが、男が施した治療を見て安心したことで一気に襲って来たらしい。多分、とっくに限界は迎えていたのだろう。
意識を手放す前に、俺は震える指で、俺が走ってきた方向を指差した。
「向こうで……仲間が……戦って……るんです………。力を、貸してくださ……い………」
男は驚いた様子だったが、俺の意思を尊重することを選んでくれたようで、力強く頷いて答えてくれた。
「あと、これを……皆に……」
俺はリストバンドを外し、男へと渡す。これから気を失う俺が着けていたら、きっと通信が出来なくて所長たちが心配するだろうから。あと絶対怒ってるだろうな……。
ともかく、男はそれを受け取ってくれた。
「承諾した。貴殿の覚悟を無駄にしないことを約束しよう」
そう言い残すと、彼は指差した方向へと走り出して行った。その背を見送った俺は遂に力尽き、意識を手放した。
知らず知らずの内に、モルガンの手を握りしめたままで。
───仮面の男が走り去った少し後のこと。
「まぁ大変! 人が倒れてるわ!」
「うわぁ、酷いなこりゃ。傷だらけの男女に、辺りは血の海ときた。これは心中でもしたのかな?」
「もう、ふざけてる場合じゃないのよ『アマデウス』!」
「ははは、ごめんごめん。おっと、この2人まだ生きてるじゃないか! 凄い生命力だな!」
「だから、ふざけてる場合じゃないって言ってるじゃない!! とにかく、お2人を村まで連れて行きましょう、手当をして休ませてあげないと!」
「え、それってつまり、僕にこの2人を担げって言ってるのかい?」
「当たり前よ! さぁ、早く馬車に乗せてあげましょう!」
「マジか、人使い荒いったらありゃしない! 肉体労働は僕の趣味じゃないんだけどなぁ!」
可憐な王妃と、お付のような音楽家。2人は、傷と血にまみれた、一目では死体と区別がつかないような男女を拾い、ガラスの馬車を走らせるのであった。
デッデッデッデッデレデレデンンネェクサァス……
いじめるつもりは毛頭ないのに、何故かモルガンが負傷していく……。いつも試読を頼んでる友人には、リョナラー疑惑をかけられました。自分にそんな趣味は無いはずなんですけどね……。
ちなみに、戦闘の様子はアプリ版とアーケード版のモーションを参考に適当に描写しています。アプリ版は言わずもがなですが、アーケードのモルガンも本当に腰抜かすほど可愛いので、福袋とかピックアップが来たら推しの人は是非とも(無理のない範囲で)狙うことをオススメします。マイルームでのセリフと仕草は必見ですよ!