幼馴染の変人ベーシストの料理番になった件について。 作:かんかんさば
お気に入りが最近徐々に増えてきていてモチベが上がってます。
紅葉が本格化し、少し肌寒い風が吹くようになり始めた11月。
ここのところいろんな人に話しかけられるようになった。
文化祭の前までは学校での話し相手といえば西荻くんや佐竹くんに蘆名、女子に至っては虹夏とリョウしか話し相手がいなかったのだが、文化祭のあの演奏のおかげなのか、他クラスの子ともよく話すようになった。
今日の昼休みも例に漏れず他のクラスの子と話していた。
「下村くん文化祭のとき凄いギター上手だったけど、誰に教えてもらったの?」
「あ〜、俺さ、バンドやってた姉がいて、それで中学に上がるまで少しづつ教えてもらってたんだけど、中学上がってからは独学で......」
俺は基本的にギターは独学で学んだが、文化祭に向けてバンドを組んだときは、朝から晩までエレキの奏法を姉にみっちり叩き込まれた。
「へ〜、独学で......。というかお姉さんバンドマンだったんだ」
「そうそう!しかも下村のお姉さんボーカルやってたんだよ!あんな美人な人の歌とか聞いたら絶対耳溶けるよ!!」
「やだ〜、颯太郎。下村くんと話してるんだから邪魔しないでよ!」
「なんだよ春香、いいじゃねーかよ!」
颯太郎というのは蘆名の下の名前のことで、今俺が話している彼女は隣のクラスで学級委員をやっている坂戸春香さん。
最近よく話しかけてくれてる子で、文化祭前までは彼女とは全く話したことがなかったが、話してみると蘆名と同様、話しやすいタイプの陽キャだった。
「あ、そういえば今軽音部部員募集しててさ、もし良かったらなんだけど下村くんもどう?」
「気持ちは嬉しいんだけど、遠慮しとこうかな......」
「え?あんなにギター上手いのに?」
「こいつ4月から一人暮らししてバイトもしてるんだよ。部活まで入ったらキャパオーバーだろ」
ご丁寧に説明してくれてるなよ。
でも、リョウとのことを言われてないだけまだマシか。
「そっか。なんかごめんね」
「こっちこそせっかくのお誘いなのに申し訳ない」
剣道部のときもそうだが、勉強とバイトを両立しながらの一人暮らし、そしてリョウにご飯を作る料理番の身としては、部活までやるのはかなり困難なことなのだ。
「そういやお前、普段どういう飯作ってるんだ?」
「確かに、気になるかも!」
やっぱり聞いてくるよなぁ......。
蘆名に関しては今まで聞いてこなかったのが不思議な気がするが。
「普通の料理だよ、ハンバーグとかカレーとか」
「普通の料理だけど毎日私を飽きさせないくらいに美味しい」
「まあ、自分でいうのもなんだけどそれなりに美味しいのはつk......。ってリョウ、お前いつの間に...!」
「やっほー。あれ?坂戸、顔赤いけどどうしたの?」
「あわ、あわわわ......」
おい、せっかく蘆名が誤解を生まないように黙っててくれたのにどうしてくれるんだよ。
というかやばい、これ坂戸さんに要らぬ誤解与えちゃったよ......。
「もうあれなしではいられなくなるくらいに絶品///」
「あ......え......」
山田ァ!!何やってんだお前ェ!!!(海賊王)
リョウの火に油を注ぐような発言で坂戸さんは完全にショートしてしまった。
その後、なんとか坂戸さんの誤解を解くことは出来たが昼休みで感じた気まずさは一日中消えることは無かった。
◇
「リョウ、お前マジで余計なことをいうなよ」
「私は思ったことをいっただけ」
「まぁ、美味しいって言ってもらえるのはありがたいんだけどさ……。ほら、普段のあれはたから見たら同棲してるカップルのそれじゃねぇかよ……」
あ〜、明日からどんな顔して坂戸さんと話せばいいのだろうか。
「いしや〜きいも〜おいも〜」
そんなことを考えていると焼き芋が売っているトラックが通りかかった。
「ちょっとまってて、焼き芋買ってくる」
ちょうど小腹が空いたので、1つ買うことにした。
リョウが奢ってくれといわんばかりの視線を送ってくるが昼休みのことがあったし、最近またジュース代やカラオケ代など、貸したお金の額が増えてきたので奢るつもりはない。
「すみません、焼き芋1つお願いします」
「あ、あたしも1つ」
「はいよ、焼き芋ふたつね。600円頂戴するよ」
「楓、これ」
「あ〜、ありがと。はい、これで」
「600円ちょうどね。少々お待ち」
虹夏から受け取った小銭と合わせて代金を支払う。
トラックを運転してるおばさんが釜からいもを取り出し紙袋に包む。
それをこちらに渡すのを待ってる間にも芋のいい匂いが漂ってくる。
「はい、焼き芋ふたつ」
「「ありがとうございます」」
「にしてもお兄ちゃん、こりゃまた美人な彼女さんを連れてるねぇ」
「「いや、ただの友達です(即答)」」
学校帰りにこうして買いに来てるのだし、そういわれるのも無理はない。
焼き芋が入った袋をもって、近くの公園に入ってベンチに座る。
公園には落ち葉が溜まっていて、それが秋の深まりと少しづつ冬が近づいていることを感じさせる。
「はい、虹夏。お前の」
「ありがと」
虹夏に焼き芋を渡してベンチに腰をかける。
ふぅーっと息をふきかけて、焼き芋を冷まして食べる虹夏の姿が一瞬、幼き日の彼女の姿のように見えて、ふと笑みがこぼれた。
「ん、どうした?」
「いや、一瞬虹夏がガキっぽく見えただけ」
「誰が子供だよ」
虹夏をイジり、予想通りのリアクションを見ていると、リョウが「半分頂戴」といっているような表情を向けてきた。
こちらも「あげないぞ」というテレパシーを送るような視線を送りながら焼き芋を口にしようとしたそのとき、急に冷たい風が頬を刺すように吹いてきた。
「うおっ、寒いな」
「や〜、カイロがないと堪えるね〜」
「寒い、このままだと私は凍える」
いや、知らねぇよ。
少しは自分のやったことを反省しろっての。
でもこの寒さだとさすがにリョウが可哀想に思えてきた。
「ほら、半分やるよ」
「ありがとう。楓なら分けてくれると信じてた」
焼き芋を半分に割って、それをリョウに渡す。
すると、彼女はまるで待っていたかのようなことをいいながら焼き芋を頬張った。
俺もそれを見ながら冷めないうちにもう半分を口にする。
やはり、こういうのってみんなで一緒に食べるほうが格段においしい。
◆
「よぉ〜し、食べ終わったことだし、バイト行こっか」
「そうだな」
焼き芋を食べ終えて、公園を後にしてスターリーへと向かう。
そのときにふと見た、西陽に照らされたリョウと虹夏の笑顔が花火大会のときより一層、俺は綺麗に感じたのだった。
次回、「ローストターキー」
次回から冬に入り、章としては1年生編最終章に突入します
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【追記】
登場人物紹介にさらにキャラクターを追加しました
高評価くれー!!(承認欲求モンスター)
タイトル変更は
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してもいい
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しなくてもいい