幼馴染の変人ベーシストの料理番になった件について。   作:かんかんさば

15 / 83
そろそろ赤バーになりそうなので初投稿です。



#13 ローストターキー


あ〜、今年もやってきた〜♪

 

\クリスマスイブ〜/

 

街を歩けば見かけるのは〜♪

 

\イチャつくカップル〜/

 

それを見る俺に彼女は〜♪

 

\いるわけな〜い/

 

でも大丈夫〜、だってクリスマスイブは〜♪

 

\ただの休日〜/

 

いつも通りに過ごせばいい〜♪

 

非リアのクリスマス

作詞作曲:下村楓

歌:下村楓

 

 

───イブの昼間から自室で何をやってるんだ俺は...

謎ソングを歌い、完全におかしなテンションになってしまっているクリスマスイブ。

昨日から学校は冬休みに入り、成績不振者に対する冬期講習がかなりカツカツなスケジュールで行われたりと段々と年の瀬が近づいているのを感じる。

今日はクリスマスイブということで、街中にはイチャつくカップルや、クリスマスケーキを受け取りにケーキ屋へと向かう家族連れもいたりする。

そして夜になれば、クリスマスパーティーを開いてみんなで聖夜を楽しむ。

この俺も例年であれば母と妹、それに姉とリョウ、虹夏を呼んで家でクリスマスパーティーを開くのだが……

 

「へ〜、帰って来れなくなっちゃったんだ」

 

「そう、3人とも仕事や部活で忙しいんだとよ」

 

「楓、クリぼっちじゃん」

 

「うるせぇ」

 

「それならさ、今年はあたしの家でクリスマスパーティーしない?それにお姉ちゃんも誕生日だしみんなで祝おうよ!」

 

母と姉と妹が家に帰れなくなり、今年は伊地知家でクリスマスパーティー兼星歌さんの誕生会を開くことになった。

今日は朝からリョウを叩き起して冬期講習に行かせ、謎ソングを即興で作って歌い、今はローストターキーの材料などを買いにスーパーへと向かっている。

 

「料理は別に自分で作るからいいよ」と虹夏に言われたが、さすがに虹夏だけに料理を作らせる訳にはいかないと思い、せめて「ローストターキーだけは俺に作らせてくれ」と頼んだら「しょうがないな〜」と折れてくれた。

作るからにはおいしいローストターキーを作ろうと思い、俺はスーパーにマイバッグを持って突入した。

今日買うのはすりおろしニンニクのチューブ、岩塩、オリーブオイルなどの調味料とシャンメリーなど、今日のパーティーで必要な飲みもの。

ターキーの肉は先日通販で買ったものがあり、予め下処理やブライン液を作ったりはしておいたので、スーパーで買い物をする時間はそこまでかからないだろう。

 

 

買い物を済ませて、スーパーを後にする。

このまま伊地知家に向かおうとするが、まだ昼の3時。

虹夏には5時半に行くとロインを入れているため、まだ時間がある。

そこで俺は荷物を一旦家に置いて、少しだけ近場を散策することにした。

今日はクリスマスイブというのもあってか、街はカップルや家族連れで溢れかえっていた。

 

「あれ、下村くん?」

 

「お、佐竹じゃん。1人で買い物?」

 

「うん。弟にあげるクリスマスプレゼントを買いに」

 

この子は佐竹。

4月に話しかけてくれた桜新町中の子で、最近はよく一緒にゲームをやる仲になっている。

蘆名と違い、あんまり恋愛系の話をしてこない。

 

「へぇ〜、それってポケ○ンの最新作とか?」

「そうそう、弟がどうしても欲しいっていうから」

「いいお兄ちゃんじゃん」

「そういえば下村くんって妹さんいるよね?もしかして仲悪いの?」

「仲は悪くないけど8ヶ月あってないからな……」

「そっか、下村くん一人暮らししてるんだったね。って今日とかどうするの?1人だとだいぶ寂しいと思うけど」

 

「いや、今日は伊地知の家に呼ばれてるんだよね」

 

「へ〜、そっか下村くんと伊地知さん仲良いもんね」

 

「昔から家族ぐるみの付き合いなんでね〜」

 

その後、いろいろな世間話をして佐竹と別れた。

東北沢まで歩いてみようかと思ったが家に荷物を取りにいかなければいけないので諦めて家に戻ることにした。

 

 

シャンメリーとターキー肉にローズマリーと岩塩が入った瓶を保冷バッグに詰めて休む間もなく家を出る。

家から伊地知家までは歩いてだいたい4分くらいで、準備の時間を考えるとこれくらいに出るのがちょうどいいだろう。

虹夏に早めに行くことを伝えて保冷バッグを肩に提げて伊地知家へと向かう。

 

「おかーさん!僕ね、今年サンタさんにゲーム頼んだんだ〜」

 

「じゃあ、いいこにしなきゃね」

 

「うん!」

 

道中、仲睦まじい親子を見かけた。

俺も小学生のころはよくクリスマスプレゼントを貰っていたものだ。

ゲームに変身ベルト、電車のおもちゃなどなど。

サンタさんにお手紙を書くときのあのワクワク感は高校生になっても忘れられない。

 

───8年前

 

 

『かえで、今年は頼んだの?』

 

『え?ぼくはゲームだけど、にじかは?』

 

『あたしはドラムスティックかな〜。いつかお姉ちゃんと一緒に演奏したいんだ〜!』

 

『へ〜、すごいじゃん!そういえばリョウは何頼んだの?』

 

『わたしは楽譜を頼んだ』

 

 

幼き日の思い出を思い出しているうちに伊地知家についた。

ドアチャイムを鳴らすとすぐに虹夏が出てきた。

 

「悪いね、急に早くいくなんて言って」

 

「あ〜、いいよいいよ。ローストターキーって結構時間かかるんでしょ。さぁ入って入って」

 

「それじゃ、お邪魔しま〜す」

 

家に入り、早速荷物を下ろす。

家の中は既に飾りつけが施されていて、クリスマスツリーも明かりがチカチカとついている。まさにこれからクリスマスパーティーをやりますって感じの素敵な雰囲気が部屋を漂う。

 

「オーブン借りるよ〜」

 

「うん、やり方とかわかる?」

 

「家にあるやつと同じような感じのだから多分大丈夫」

 

そんな雰囲気を感じながら俺はオーブンを付けて余熱を始め、保冷バッグからターキーの肉を取り出してしっかりと水分を拭き取り、香り付けとしてニンニクチューブをターキーの肉の表面に擦り付けていく。

そして次に岩塩を全体に刷り込み、胡椒をふりかける。

胡椒をふりかけるときにくしゃみが出そうになったが、鼻をつまんでそれを止めた。

まあ、少し痛いのだが人の家で盛大にくしゃみをかますよりかはマシだろう。

オーブンの天板に網を付けて、そこにターキーの肉を乗せる。

タイマーをセットし、これから90分程オーブンの中でじっくり焼いていくのだが、15分置きにオリーブオイルを刷毛で塗ること以外はやることがほぼない。

 

「虹夏、キッチン空いたぞ〜」

 

「りょうか〜い」

 

キッチンが空いたことを虹夏に伝えると彼女はスタスタとキッチンに駆けていった。

エプロンを付けてポテトサラダとスープを作っている彼女の姿はまるで主婦のようだった。

にしてもただでさえ年齢よりも幼く見える見た目なのにエプロンを付けるとそれがなくなるのはどういう効果なのだろう。

全く不思議なものだ。

 

「今失礼なこと考えてたでしょ」

 

「イエマッタクソンナコトハゴザイマサン」

 

「むぅ〜、そんなんだから楓は彼女できないんだよ」

 

「彼氏いない歴=年齢のお前が言うと説得力ないな」

 

「うぐっ……」

 

俺の反撃で虹夏が黙り込む。どうやら会心の一撃が入ったようだ。

恋愛関係でいじっていいのはそれでいじられる覚悟のある人だけなんで。

え、俺はあるのかって?そりゃもちろんありますよ。

 

 

刷毛でオリーブオイルを塗り込み、そろそろ焼き上がる頃になってきた。

時計はもう既に6時半を回っていて、いつの間にかリョウも講習を終えて伊地知家に来ていた。

 

「美味しそうな匂いがする」

 

「お、リョウか。講習お疲れさん」

 

「ありがとう。これから食べる美味しいご飯のおかげで講習で疲れた私の疲れは癒える」

 

「そうだな。朝からお前を叩き起して買い出しで街中駆け回った俺の疲れも癒えるな」

 

「朝から大変だったね〜」

 

虹夏の方もスープが完成し、コンロのほうからコンソメのいい匂いがする。

焼き始めたときにセットしておいたタイマーが鳴り、俺はオーブンを開けてローストターキーに竹串を刺す。

すると中から肉汁が溢れてきてそれが俺の食欲をそそる。

 

「ただいま〜。お、いい匂いすんじゃん」

 

「あ、お姉ちゃんおかえり〜!」

 

「お邪魔します〜」

 

ちょうどローストターキーをオーブンから取り出したタイミングで星歌さんとPAさんがやってきた。

星歌さんは今日が誕生日というのもあってか、大量の紙袋を持っていた。

 

「あ、店長。誕生日おめでとうございます」

 

「ありがと。別に今は名前でいいよ」

 

「はい!じゃあ、ローストターキーとか飲み物とか出すんで席に着いててください!」

 

ローストターキーに、レタスとポテトサラダにコンソメスープ、そしてシャンメリーとシャンパンが置かれ、クリスマスイブさながらの食卓になれば……

 

メリークリスマス!!そして……

 

星歌さん(お姉ちゃん)、お誕生日おめでとうございま〜す!!!

 

クラッカーを鳴らしてシャンメリーとシャンパンの栓を開けていよいよ、パーティーの幕が上がった。

 

「お、おいしいなこれ。楓が作ったのか?」

 

「はい、こういう料理作るのははじめてなんですけどそう言ってもらえてうれしいです!」

 

「下村くんって結構料理上手なんですね」

 

星歌さんとPAさんに料理の腕を褒められる。

やっぱり人に褒められるのは嬉しいものだ。

にしてもPAさんも褒めてくれるとは思わなかったな……。

 

「いや〜、それほどでもないですよ……あ、このポテトサラダとスープ、結構美味しい」

 

「やっぱり虹夏の料理もおいしい」

 

「そう?まあ、でも結構頑張ったしなんか嬉しいな〜」

 

やっぱり虹夏の作る料理は自分が作るものより一段と美味い。

もちろん自分が作ったローストターキーもそれなりにおいしいのだけれど、7年も人に料理を作ってる虹夏には敵わないと思う。

 

 

 

ローストターキーを食べ終え、しばらく談笑していると虹夏が冷蔵庫からデザートのケーキを持ってきた。

箱から取り出すとそれはクリスマスケーキとバースデーケーキの間の子のような感じで、サンタさんとトナカイの飾りがあり、真ん中には「Happybirthday!!!」と書かれているウエハース。そしてその前には2と9のロウソクが飾られていた。

 

「いや〜、もう29か。私も歳をとったな」

 

「そうだね〜。お姉ちゃん来年こそはいい人見つかるといいね」

 

「うるせぇ。お前も彼氏くらいつくれよ」

 

姉妹で傷に塩を塗り合うなよ……。

 

「あたしだけじゃないもん!リョウも楓も恋人いないもん!」

 

「うぐっ……」

 

こっちまで巻き込もうとするなよ……。

そしてリョウ、なぜお前はノーダメージみたいな顔ができるんだよ。

 

「うふふ。ケーキが勿体ないですし早く食べましょうよ」

 

「そ、そうですね」

 

その後、ケーキのロウソクに火をつけ、星歌さんがそれを消して5等分に切り分けてみんなで食べた。

毎年食べているクリスマスケーキ。一人暮らしを始めてから初めて食べるやっぱり人と食べるそれはとても美味しいと改めて認識できたのだった。

 

 

 

 

 

 




次回、年越しそば

一応ここで主人公の見た目を載せておこうと思います。
(人物紹介にも後日載せる予定)

髪型:若干ゆるめの天パ
髪の色:明るめの焦げ茶色
目の色:群青色


高評価、お気に入り登録、感想などがあると作者の筆のスピードとモチベが上がるので是非お願いします。
高評価くれー!!(承認欲求モンスター)


タイトル変更は

  • してもいい
  • しなくてもいい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。