幼馴染の変人ベーシストの料理番になった件について。   作:かんかんさば

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だいたい物語を3500文字くらいにまとめられるようになったので初投稿です。
この回を抜いてあと3話で1年生編を完結させようと思います。


#17 バレンタイン

2月14日、バレンタインデー。

この日、楓は朝から憂鬱な気分に包まれていた。何故、彼が憂鬱な気分に包まれているか。それは単純、チョコがもらえないからである。

しかし、そんな楓のクラスの女子の中での評判は──

 

『下村くんってそこそこ勉強できてギターも上手いし結構かっこいいよね〜』

 

『そうそう!それにゆるっとした天パにあの少し可愛げな顔も魅力的だよね!』

 

と言われているように、評判はそこそこいい。それでも彼がチョコをもらえないのは理由がある。

その理由は──

 

『でもさ、下村くんってあれでしょ?伊地知さんかとなりのクラスの山田さんのどっちかと付き合ってるんでしょ?』

 

『あ〜確かに。あの3人結構仲良いもんね』

 

 

幼馴染の2人との関係。それがクラスの女子を勘違いさせていたのだ。

これが、彼がチョコをもらえない理由である。

 

 

 

 

 

 

 

 

あ〜、今年も来てしまったか。バレンタインデー。

クラスの男子たちは──

 

「今年もチョコもらえて良かったわ〜。お前は?」

 

「1個だけ義理チョコ貰えたよ」

 

「俺は全く」

 

と一喜一憂している。ちなみに俺は毎年、チョコは家族と虹夏、リョウからしかもらえてない。しかし、それも今年はまだもらえてない。それが俺の憂鬱な気分をさらに加速させる。

俺なんか悪いことでもしたのかな……。日頃の行いはそこまで「お〜い」そこまで悪くないと思うけど。でも毎年もらえるわけでもないし。もらえなかったらもらえなかったで割り切るか。

 

「お〜い。楓」

 

「あ、わりぃ。考え事してた」

 

ぼーっとしていると虹夏が話しかけてきた。

今日は午前授業。これから家に帰って一休みしてからバイトがある。幸いバレンタインデーでイチャイチャするカップルを見ずに済みそうだ。

 

「ふ〜ん。あ、はいこれ、チョコ」

 

「お、ありがとう!美味しく頂かせてもらうよ」

 

そういって虹夏は袋からチョコを取り出して俺に手渡した。包みが毎年もらってる義理チョコよりも少し豪華なものになっている。

 

『いつもありがとう!これからも仲良くしてね!!』

 

さすがは大天使ニジカエル。メッセージまでつけてある。

 

「去年渡せなかったから今年は少し豪華にしたんだ〜」

 

 

去年のバレンタインデーは受験が終わった直後。入学手続き等で忙しくてチョコをもらえていなかった。

この包装、義理チョコとわかっているのに何故だか本命チョコのように感じてしまうのは気のせいだろうか。

 

(おい、あれ見ろよ。下村のやつ、伊地知さんからチョコもらってるよ……)

 

(羨ましい〜。しかもあの包みからして本命チョコだろ絶対)

 

(これじゃ世間は許してくれませんよ)

 

他の男子からの殺意の篭った視線も気のせいだろう、きっと。

 

 

 

 

 

 

家で一休みしてからスターリーに向かう。

階段を降りてドアを開け、軽く挨拶を済ませる。するとテーブルにチョコが入ったダンボールが大量に置いてあるのを発見した。

 

「このたくさんのチョコってどうしたんですか?」

 

「あ〜、それか。今日ってバレンタインデーだろ?今日のライブに来てくれた客に配ろうと思って」

 

「店長さん、普段の常連さんには少し豪華なチョコを配るみたいですよ」

 

「おい!それは秘密にしとけっていっただろ!」

 

 

マジか。星歌さんってそういう一面もあるんだな。

星歌さんがチョコを渡す場面ってどんな感じなんだろう──

 

『ほら、チョコ。あげるから……その……味わって食べろよ』

 

──なんかツンデレっぽい感じがして面白いかも。

 

「おいそこ。今なんか失礼なこと考えてなかったか?」

 

「いえ全く」

 

「そうか。じゃあ今から床の掃除と機材運び、そしてフロアの装飾もやって」

 

「了解です」

 

指示通りに床の掃除に機材運びと順調にこなしていく。フロアの装飾を始めようとしたその時、リョウがやってきた。

 

「む、これは私への貢物……!」

 

「なわけねぇだろ」

 

仮にこれがリョウ宛のチョコとしよう。大量にチョコを貢ぐファンはいるだろうか。いや、いる。まあ、あの子なら貢ぐだろう。

ちなみにリョウはクラスの女子から毎年結構な量のチョコをもらっている。今年もそうだったのだろう。カバンからもらったのを取り出して食べ始めた。

 

「はえへ、ひょほはへふのへふはっへ(楓、チョコ食べるの手伝って)」

 

「そんな人様の贈り物をいただけるわけないだろ」

 

チョコには人の気持ちが詰まっている。それをもらった人以外が食べるのはよくない。そして俺はそんなことをするほど外道じゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さよならなんてさ「素直に」当たり前の毎日が「なれないよ」続いていくと思っていたから平行線のまま」

 

夜になり、バレンタインデーライブが始まった。

お客さんはいつもより多い。そして、カップルで来ている人がそのほとんどを占めている。

チケットと一緒に配っていたチョコも開場してから間もなく全部なくなった。

チョコを配り終えた俺はリョウと虹夏とカウンターで一緒に曲を鑑賞している。

 

「やっぱり恋愛系の曲多いね〜」

 

「そりゃバレンタインデーだからな」

 

「今からデスメタ流せばもっと盛り上がる」

 

「「雰囲気お通夜にするつもりかお前は」」

 

開場の前に店長にセットリストを見せてもらったが、恋愛系の曲が中心だった。普段ロック系の曲が多いので新鮮な気分になる。

今ここで歌われているのはAdam×sius fromヨルダケの平行線。この曲は思いを伝えられない両想いの2人の幼馴染の心情を歌っている。俺はこの曲を結構カラオケで歌っているので、思い入れがある。

 

「あ、3人とも。これ店長さんからです」

 

「「「ありがとうございます」」」

 

 

 

PAさんから渡されたのはお菓子の入った小さな袋。袋には英語でThank you for everything! と書かれていた。俺は入り口の近くに立っている星歌さんを見つめる。すると彼女は照れながらこちらに笑いかけてきた。

 

「あ、あと今日はもう上がって大丈夫だそうですよ」

 

「そうですか。じゃあお疲れ様でした〜」

 

「お疲れ様でした」

 

「じゃあ、2人ともまた明日〜」

 

「うん。また明日」

 

「また明日」

 

PAさんから上がっていいと言われたので、リョウと2人でスターリーを出る。外に出ると雪が降っていた。昼間は雲一つない快晴だったが、これはこれでロマンチックだ。とはいえ2人とも傘を持ってないので家に急いで歩く。

 

「いや〜まさか雪が降るなんて思わなかったな」

 

「メル○ィーキッスならいいのに」

 

「さっき食べてたからいいだろ」

 

「そういえば、はい。チョコ」

 

急に足を止め、リョウは鞄の中から箱を取り出した。茶色に黄色のリボンが結ってある小さめの箱だ。リボンに何度も結び直した痕跡があるので、恐らく手作りなのだろう。

 

「あ、ありがとう」

 

「味わって食べて」

 

今までリョウからもらったチョコはだいたい市販のお菓子が中心もので、まさか今年は手作りになるとは思わなかった。俺はそのことに驚く。

 

「……ごめん、先行ってて」

 

「え?」

 

「先行って」

 

「外寒いし、それにお腹すいてるんじゃ……」

 

「いいから先行ってて」

 

リョウが顔を赤くしながら俺に口調を強くして言う。

もらうときの態度が悪かったのか、それともまた違う何かか。何が彼女を怒らせたのかがわからないまま、彼女の言う通り、先に家に帰った。

家に帰ってからしばらくしてリョウが帰ってきたが、結局その日はあまり口を利いてくれなかった。

 

リョウからもらった生チョコと虹夏から貰ったチョコレートバーの甘さが口いっぱいに広がる。

今年も義理だけどおいしいチョコをもらえて満足だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、今年の楓のバレンタインデーは幕を閉じた。今年も彼は義理チョコがもらえて満足している。しかし、まだ彼は気づいていない。 もらったチョコの中に本命チョコが入っていたことに。

そして、──

 

──密かに彼に想いを寄せている人がいるということに




次回、「差し入れ弁当」


初めて三人称視点を入れてみました。意外と便利なものですね。
2年生編についてですが、現在構想を練っているのですが、料理番要素がかなり薄れる(1年生編ですら薄れているのに)ので別作品で投稿しようか迷っているところです。
アンケートを乗せたので是非回答をお願いします。

評価、お気に入り登録、感想などがあると作者の筆のスピードとモチベが上がるので是非お願いします。

高評価くれー!!(承認欲求モンスター)

2年生編を

  • そのままこのシリーズに投稿してほしい
  • 別作品として投稿してほしい
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