幼馴染の変人ベーシストの料理番になった件について。 作:かんかんさば
なんでこれが日間ランキングに載ったんですかね…(困惑)
3月14日、ホワイトデー。
この日、楓は朝から焦燥を隠せないでいた。
何故、彼が焦燥を隠せていないのか。それは今からちょうど一か月前、バレンタインデーまで遡る。
今年、彼はリョウと虹夏から例年よりも豪華な義理チョコ(本人の解釈)を2つもらうことが出来た。それからというもの、楓はどんなお返しをするのがいいか暇さえあれば模索していた。しかし、結局なにをあげればいいか分からないまま当日を迎えてしまったのだ。
「あ、いいの思いついたかも」
どうやらいい案を思いついたようだ。
◇
今日はホワイトデー。男性が女性にバレンタインのお返しをする日。例年より豪華な義理チョコをもらった俺はどんなお返しをすればいいのかが分からなかった。しかし、教室でぼーっとしていると、急にお返しのアイデアが浮かんできた。そのアイデアというのは、日頃の感謝も込めてリョウと虹夏に楽器関連のプレゼントを贈ることである。2人ならきっと喜んでくれるだろう。俺はそう信じてその計画を行動に移す。
「俺ちょっとお返し買いに行ってくるから。また後で」
「え?いや、いいよいいよ〜。別に無理しなくても……」
「いやいや、お礼はちゃんとしたいから」
「素晴らしいお返しを期待しとく」
「うん、任せとけ。じゃあ6時半くらいに駅に来て」
「りょーかい」
今日はバイトがないので、これから秋葉原にドラムスティックとケース、御茶ノ水にベースの弦とストラップを買いにいく。といっても安い物じゃ2人に失礼だ。ここは奮発して少し高めのものを買おう。そう思い改札に入った。
──御茶ノ水のベース専門店。
まずはベースの弦とストラップ。弦は普段リョウが家で弦の張替えをしているのでどんなタイプを使っているかは把握している。相場は4本セットでだいたい1000円程度。しかし、俺が買うのは4本セットで2500円。質のいいものであれば妥当だろう。ストラップはリョウに似合う花があしらわれた和風のデザインのものを買うことにした。
「あ、これください。あとラッピングもお願いします」
「個別にしますか?それともまとめて袋に入れちゃいますか?」
「あ、まとめてお願いします」
「了解しました〜。じゃあ合計で4300円になります〜」
「はい」
「ちょうどお預かりします。ではラッピングしてきますので少々お待ちください」
しばらくして、ラッピングされたものを受け取り店を出た。スマホで時間を確認するとまだ時刻は4時半。時間に余裕があるとはいえ、約束の時間に遅れてはいけない。俺は急いで次の目的地、秋葉原へと向かう。
─秋葉原のドラム専門店。
次に買うのはドラムスティックとケース。ドラムスティックは消耗品のため、ストックがあった方がいいと、文化祭ライブのときに本人が言っていた。なるべく良質でかつ耐久性のあるものに、ケースはシンプルでかつ、可愛らしい水色のものにすることにした。
スティックは3000円、ケースは1000円。2つともかなり高そうな感じがするし、これも妥当だろう。
「すみません、これください。あとラッピングも」
「4000円になります〜」
「5000円で」
「はい。5000円お預かりします。1000円お返しです〜。じゃあラッピングしてきますんで少々お待ちくださ〜い」
にしてもほわほわしている店員さんだな……。
ラッピングしてもらったものを受け取り、ドラム専門店を後にして秋葉原駅に向かう。下北沢まで電車で40分程。時刻は5時半。戻るにはちょうどいい頃合だろう。
秋葉原から電車に揺られ、下北沢へと戻ってきた。
約束の時間まであとまだ少し時間があるが、あっという間に過ぎるだろう。
「お待たせ〜。結構待ったでしょ」
「ううん、今戻ってきたとこ。はいこれ。お返し」
「ありがと〜。開けていい?」
「うん。いいよ」
「弦にストラップ……。まさかほんとに買ってくるとは」
「お前は俺に対してどんなイメージ持ってるんだよ……」
「おお〜、スティックにケース……。ありがと!大切に使わせてもらうね!!」
どうやら喜んでくれているようだ。2人の喜ぶ顔を見ると奮発した甲斐があると感じる。
その後、しばらく3人で雑談してリョウと2人で家に戻った。
そしていつも通り、夕飯を食べ終わると、リョウがベースの弦の張替えを始めた。早速、プレゼントした弦を使ってくれるようだ。
「楓、アンプ持ってきて。セッションしよう」
「あ、うん。ちょっとまってて」
リョウが家でベースやギターを弾くのはよくある話だが、セッションしようと誘ってくるのは初めてだ。俺は部屋からアンプとエレキをリビングに持っていく。
軽くチューニングをしてコードを繋ぎ、早速1曲目を弾き始めた。弾いているときにふとリョウの顔を見ると、楽しそうな顔をしていた。その顔を見ると、俺もより一層、セッションが楽しくなっていくのを感じる。
それにしても、リョウと2人でいるとなんだかドキドキしてくる。
去年の花火大会の頃からうっすら抱いていたリョウへの好意。それを俺は自ら否定してきた。けれど、もうそれを否定するのは辞めよう。
やっぱり俺はリョウのことが好きなのかもしれない。でも、想いを伝えるにはまだ早いし、この関係が崩れるのは絶対に避けたい。
だからこの気持ちにまだ蓋をしておこう。そう思いながらギターを弾くホワイトデーの夜だった。
◇
今日はホワイトデー。といってもチョコのお返しを貰うこと以外はいつもと変わらない普通の日。私はいつも通り、楓と虹夏と一緒に学校から帰った。しかし、帰り道の途中で楓が急にお返しを買ってくると言ったので駅を過ぎたあたりからは虹夏と2人で歩いていた。
6時半くらいに下北沢に戻ると楓が言っていたので、私は虹夏の家で時間を潰すことにした。
「いや〜、さっきの楓の顔、なんか張り切ってるって感じがしたね〜」
「うん。私に貢ごうとしてる素晴らしい顔だった」
「おい、言い方」
「お返しをくれるんだから間違ってないと思う」
「まあ、そうだけど……。そういえばいつになったら楓に告白するのさ」
「む、うるさい……」
ちょうど一か月前のバレンタインデー、私は楓に本命チョコを渡した。そしてそこで想いを打ち明けようとした。チョコを渡すところまでは良かったのだが、緊張で口があかなかった。それから2人きりになる度に想いを伝えるようとしたが、それも緊張で出来なかった。
「早くしないと誰かに取られちゃうかもよ?」
「楓はどうせ恋人出来ないからいいじゃん......」
「確かにそうだけど......ほら、坂戸さんとかさ......」
「坂戸は蘆名といい感じだからそれはない」
「そうだね~」
「いや、待てよ......?」
突然、私の頭の中に不安がよぎる。
こうやって高をくくっていたら足元を掬われる......!
それに――
「ん?どうした?」
「有識者は言っていた。恋愛において幼馴染は負けヒロインだと......!」
「大丈夫だって~」
虹夏はのんき過ぎるよ。
ちなみに虹夏は楓のことは恋愛対象外であり、私のことを応援してくれている。
しばらく虹夏の家で時間を潰していると、時刻は6時20分を回っていた。私は虹夏と一緒に駅へと向かう。駅につくと、楓はお返しが入っているであろう紙袋を持っていた。
「お待たせ〜。結構待ったでしょ」
「ううん、今戻ってきたとこ。はいこれ。お返し」
そういって楓は袋から包みに入ったお返しを私たちに渡した。中身はベースの弦とストラップ。弦は普段私が使っているタイプの良質なもの。ストラップは私の好みにあったデザインものだった。値段は分からないが、結構高いのだろう。せっかくのプレゼントだから大切に使わせてもらおう。私はそう思った。
その後、楓の家に行って、いつも通り夕飯を食べたあと、私は彼にセッションしようと誘った。普段、彼は私の演奏を聞くだけだが、今日は新しい弦で弾くベースの音を彼の、軽快なギターに合わせたいと思ったからだ。
チューニングをして、アンプにコードを繋いで早速1曲目を弾き始めた。
弾いている時の彼の楽しそうな顔。私はそれを見てより一層、セッションが楽しくなるのを感じる。
今、想いを伝えるべきなのだろうが、やっぱり勇気がでない。でも――
『俺もお前のベース、結構好きだぞ』
私のベースが好きって言ってくれたんだ。今度はベースだけじゃなくて、私のことも好きになってほしい。
だからいつか、この想いは絶対に伝えたい。
そう思うホワイトデーの夜だった。
◇
こうして、彼らのホワイトデーは幕を閉じた。
だか、彼らが互いに好意を抱いていることをまだ知らない。
次回、1年生編最終回、「幼馴染の変人ベーシストとこれからも」
評価、感想、お気に入り登録などがあると作者の筆のスピードとモチベが上がるので是非お願いします。
高評価くれー!!(承認欲求モンスター)
好きなキャラは?
-
後藤ひとり
-
喜多郁代
-
山田リョウ
-
伊地知虹夏
-
廣井きくり
-
伊地知星歌
-
PAさん
-
岩下志麻
-
清水イライザ
-
大槻ヨヨコ
-
後藤ふたり
-
ジミヘン