幼馴染の変人ベーシストの料理番になった件について。   作:かんかんさば

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1年生編最終回です。
今回若干過去捏造気味になってるのでご注意ください。



#20 幼馴染の変人ベーシストとこれからも

桜が咲き、もうすっかり街は春一色になった3月の終わり。

学校は既に終業式が終わり、春休みに入っている。春休みに入っても相変わらずバイトは忙しく、3月をもって退職するスタッフさんの送別会をやるなどの年度末特有の日々を送っている。そんな忙しいバイトも今日は休み。なので、思い切って家の中を掃除することにした。

 

「ということで、掃除するから手伝って」

 

「パスで」

 

「いやいや、普段飯を作って風呂と寝る場所を提供してやってるんだからそれくらいしてもらわないと」

 

「ごめん、お母さん、今日が峠で……」

 

「お前の母さん昨日見かけたけど普通に元気だったぞ」

 

「バレたか……」

 

「当たり前だろ。あ、お前そういや今日、春季補習じゃなかったっけ......?」

 

「忘れてた。じゃあ、いってくる」

 

「行ってらっしゃい」

 

補習があることを思い出したリョウは急いで家を出て行った。本当は彼女に掃除を手伝ってほしかったが、しょうがない。俺は1人で家を掃除しはじめた。

まずはリビング。リョウが散らかしていったコントローラーをかたづけて、掃除機をかける。

 

「全く、よく付き合ってもない男の家で堂々と寛げるよな……」

 

軽くボヤきながらも、着々と掃除を進めていく。リビングの次は和室。和室は本棚とクッションがあるくらいの部屋で、特に本を読むくらいにしか使われていなかったが、最近はリョウの寝室になっている。部屋一帯に散らかっていた漫画を本棚に戻す。すると、上から何かが落ちてきて、ゴツンと俺の頭にぶつかった。

 

「いってて……。ってあれ?これって昔のアルバムだよな……」

 

落ちてきたのは昔の写真が入ったアルバム。俺は懐かしいと思ったのか、一旦掃除を中断して中身を見ることにした。

 

「これって退院したときの写真か……。そういえばあいつに初めてあったのもあそこだったな……」

 

アルバムを開いて最初に目にしたのは病院を退院したときの写真。俺はそれを見ながらその頃を思い出す。

 

 

 

 

『うぅ……。おかあさん、おとうさん、おねえちゃん、あやの……。ぐすん、はやくおうちにかえりたいよぉ……』

 

俺が病院に入院していたのは今から12年前、5歳になる秋の頃だった。今でこそ俺は風邪のひとつも引かないくらい体は丈夫だ。しかし、小さい頃は体が弱く、よく風邪を引いては治り、また風邪を引いてを繰り返していた。そして誕生日を迎える少し前に風邪を拗らせ、入院した。病室には俺一人しか入院しておらず、俺は寂しさのあまりよく泣いていた。

 

『なんでないてるの?』

 

『え、きみ、ぐすん、はだれ?』

 

『わたしはリョウ。このびょういんのいんちょう。きみのなまえは?』

 

『ぼくは、ぐすん、かえで……』

『おんなのこみたいななまえだね』

 

『おんなのこみたいって……やめてよ』

 

『あ、なきやんだ』

 

『え、あれ?いつのまに……』

 

そんなときに出会ったのがリョウ。そう、俺が入院していたのは彼女の両親が経営している病院だった。後で彼女の両親から聞いた話だが、彼女は寂しかったのか、よく家を抜け出して病院にこっそり来ていたらしい。

 

『へ〜、リョウちゃんってバイオリンやってるんだ』

 

『うん。さいきんはきらきらぼしができるようになった』

 

それからというもの、よく彼女は病室にいる俺のところにやってきては話を聞かせてくれた。

 

『は〜い、楓もうちょっと右寄って〜。あ、リョウちゃん少しだけ左にいって……。はい、チーズ』

 

『じゃあ、楓。お家に帰ろっか』

 

『うん!あ、そのまえに……。リョウちゃん、なかよくしてくれてありがとう!』

 

『どういたしまして。かえでもげんきでね』

 

『うん、げんきでね!』

 

そして退院する日、退院を記念して、母さんと父さんが今俺が見ている写真を撮ってくれた。

ここまでだと、一度お別れをしたようにも思うが、退院してから2週間後、また幼稚園に行けるようになり、久しぶりに行くと同じクラスにリョウがいて、結局卒園するまではほとんどリョウと一緒にいた。

 

 

 

 

 

「あれから12年か……。時間の経過って早いな……。お、これはあのときの……」

 

ページを捲って、目にしたのは小学一年のころ、虹夏とリョウと写ってる写真。虹夏との出会いもこの頃だった。

 

『やだ!ひかない!』

 

『どうしてひかないの?』

 

『ひいたらうそつきになるもん!』

 

『ぼくもリョウもうそついてないじゃん』

 

『だって、おねえちゃんあそぼうっていってもあとでねっていってくるし……。おねえちゃん、あたしよりもバンドがだいじなんだもん……』

 

その頃、虹夏は楽器を弾くことが嫌いで、音楽の授業ではこんな感じによく駄々を捏ねていた。当時星歌さんはバンドをやっていて、よく家を空けていた。お姉ちゃん子の虹夏は星歌さんがバンドに取られると思っていたらしい。

 

『でもがっきれんしゅうしたらにじかちゃんのおねえちゃんもいっしょにひこうってなるかもしれないよ?』

 

『ほんと?うそじゃない?』

 

『うん。ぼくはうそつかないよ』

 

『わたしもうそはつかない』

 

『やくそくだよ?』

 

『じゃあゆびきりしようよ』

 

『『『ゆびきりげんまんうそついたらはりせんぼんのーばす!ゆびきった!!』』』

 

こうして俺と、リョウと虹夏との3人の付き合いが始まった。それから10年、楽しいこと、辛いこと。いろんな出来事が俺たち3人の絆を強くしていった。そしてそれはいつの間にか切っても切れないような腐れ縁になっていた。

 

「いや〜懐かしいなぁ......。あ、そろそろ買い物に行かなきゃ」

 

俺はアルバムを閉じて残りの掃除を済ませ、買い物をしに家を出た。外に出ると暖かい春風がヒューっと吹き付けてきた。そんな日には少し遠出してみよう。俺はそう思い、自転車を漕いで家から少し離れたスーパーへと向かった。

 

 

 

 

 

 

買い物を終え、夕飯の材料が入った袋を自転車のカゴに入れてスーパーを後にする。

帰り道の途中、桜並木を通り抜けた。舞い散る桜を見て、俺はこれまでの生活を振り返る。

公園で倒れていたリョウにご飯を作ったら、料理番になって、そこからいろんなご飯をいろんな人に作ってきた。料理番になってから得た知識は計り知れないし、こうしてみると一人暮らしでもやって行けるんじゃないかと思えてきた。

 

「ん、袋もってるってことは買い物帰りだね」

 

「お、リョウ。講習終わったんだ」

 

「内容は右から入って左から抜けていった」

 

「それ全く理解してないってことじゃん」

 

「つまらないのが悪い。あ、今日はカレーがいい」

 

「そういうと思って材料は買ってきてあるから」

 

「さすが料理番。主人の食べたいものを理解してる」

 

「お褒めいただき光栄にございます。変人ベーシストさん」

 

「照れる」

 

もうそろそろ高校2年生になる。この先もきっと、俺が下北沢にいる限りはこの生活は変わらないだろう。

 

幼馴染の変人ベーシストと、これからも

 

 

 

 

 

幼馴染の変人ベーシストの料理番になった件について1年生編、完。

 




どうも、作者のかんかんさばです。
1年生編全20話、お読みいただきありがとうございました。
1月の終わりに初めて投稿してから早2ヶ月。たくさんの人にお気に入り登録や評価をしていただいて感謝しております。
さて、今後ですが遅くとも来週の週末までには2年生編をスタートさせようと思います。
改めて、読者の皆様、ありがとうございました。2年生編もこの小説をよろしくお願いします。

評価、お気に入り登録、感想などあると作者のモチベと筆のスピードが上がるのでぜひお願いします。

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