幼馴染の変人ベーシストの料理番になった件について。 作:かんかんさば
ひとりがスターリーでバイトを始め、はや数日。
普段のバイトはかなり賑やかなものになった。例えば──
「次はドリンク覚えよっか〜」
「あっはい」
「トニックウォーターはここからで、ビールはこのサーバーから……ってどこからそのギター出したの?」
初日はギターの音色に合わせて仕事を覚えようとして虹夏を困惑させた。そしてサボりと見なされ星歌さんにゲンコツを食らっていた。
他にもあげるとキリがないが、いろいろと面白い行動をしながらひとりはバイトに慣れていき、今ではすっかりアルバイトの一員になっている。
そんな愉快なバイトも今日は休み。俺はリョウから「今日はハンバーグがいい」とリクエストを受け、スーパーに買い物に行った。そして今はその帰り道。今は夕方の6時くらいだが、6月ということもあってかまだ空は明るい。それでも早く帰らないとリョウが拗ねてしまう。なので急がなければと歩くスピードを早めようとしたそのとき、なにかが落ちる音がした。落ちていたのは生徒手帳。見た感じからして今すれ違った秀華生のものだろう。ひとまず届けなくてはと思い、すれ違った秀華生を追いかける。
「あ、あの……!!これ落としましたよ……」
「あ、ありがとうございます!!」
「いえいえ、人として当然のことをしたまでですよ……。あれ?もしかして喜多ちゃん?」
「あ、楓先輩……。あ、あの……その……い、いいいい」
生徒手帳の持ち主は先日のライブで音信不通になってしまった喜多ちゃんだった。彼女は俺に気づくと顔を段々と赤く染めていく。
「え、どうした?」
「今すぐ私を──
──メチャクチャにしてください!!!」
え?今、この子なんていった?
「ほら、今すぐ私を先輩が思うようにメチャクチャにしちゃってください!もう心の準備は出来てますので!!」
喜多ちゃんのとんでもない発言により、道行く人の冷ややかな視線が俺に向けられる。
「とにかく落ちつこ?あと誤解を生むような発言も今すぐやめて!」
◇
取り乱した喜多ちゃんを落ちつかせて、近くの公園のベンチに座らせる。俺は自販機でジュースを買って喜多ちゃんに渡す。すると彼女はバンドに入った理由を話してくれた。
「私、本当はリョウ先輩目当てでバンド入ったんです……」
「だから即決でバンド入ったんだ」
「はい。でも、私……ギター弾けないんです」
「やっぱりそうだったか」
「え?」
「いや、弾けないのは薄々感じてたんだよね」
喜多ちゃんのバンド加入以降、リョウから彼女が合わせ練習に来ないという話をよく聞いていた。初めのうちは学校などが忙しいのかと思っていたが、あからさまに来ないことから俺は彼女がギターを弾けないのは見破ることが出来た。
「弾けるって嘘ついて入って……それでこれって、なんだか情けないですよね……」
「別に情けなくなんかないよ。練習すればいいだけの話だし」
「今でも練習はしてるんです。でも一向に上手くなる気がしなくて……」
「まぁ、上手くなるかは別として諦めちゃいけないってことは確かだと思う」
「そうですよね……」
嘘をついたことはあまり良いことではない。しかし、その嘘を本当にしようとしていた努力は素晴らしいと思う。
「そういえばバンドの方はどうなったんですか?」
「この前のライブでサポートギターを呼んでそのままそのギターの子が入ってくれたよ」
「そうなんですね……。やっぱりリョウ先輩と伊地知先輩、怒ってますよね……」
「いや全然、むしろ俺もだけど心配してたよ。虹夏は『急にどうしちゃったのかな〜』って言ってたしリョウはなぜかお線香あげてた」
「こ、こんな無礼者の私を心配してくれてたなんて……」
「リョウのお線香はどうかと思うけどな」
「いえ、リョウ先輩にお線香上げてもらえるなんて一生の幸せです!!」
路上ライブのときから思ってたけどこの子、リョウに対しては本当ぶっ飛んだ思想持ってるよな……。
「ともかく、別に2人とも怒ってないからそこは気にしなくてもいいよ」
「そうですか……なんだか優しい先輩たちを裏切った自分がなんだか嫌になってきちゃいました……やっぱりもう諦めた方が……」
まずい、このままだと傷を抱えてしまう。
ここは何とかしなくては……。
「さっき俺なんて言った?」
「諦めちゃいけないって……」
「バンド入るのに嘘ついたけど、その嘘を本当にしようと努力してたんだろ?その努力を今ここで水の泡にしようとするほうが断然よくないし、それをしようものなら俺は喜多ちゃんを絶対に許さない」
「楓先輩……」
「だから諦めるな。ちゃんと練習して上手くなったって自分で思えたら、そのときはいつでもスターリーにおいで。あの2人もきっと待ってるから」
「でも……」
「もし怖くて言い出せないなら俺が一緒に謝ってあげるから」
人に謝るのには相当の勇気が必要なものだ。そう思った俺は喜多ちゃんに優しく諭す。
「はい……!その、話聞いてくれてありがとうございました!!」
喜多ちゃんは眩しい笑顔でお礼を言うと、嬉しそうに帰っていった。彼女がバンドに戻ってくるかはわからない。でも、きっと戻ってくることを信じて俺は飲み物を飲みながらスマホを見る。
『遅い、お腹空いた。早く帰ってきて』
あ、リョウのことすっかり忘れてた\(^o^)/
リョウからのロインに震えながら急いで家に帰ると、見るからに不機嫌なリョウがソファにいた。
その後、ハンバーグをリョウは美味しそうに食べていたがしばらく口はきいてくれなかった。
◇
喜多ちゃんの話を聞いてからはや数日。
今日も俺はリョウと虹夏とスターリーに向かう。といっても今日はいつものように直行するのではなく、学校の近くにあるドラッグストアに寄り道をしてから向かっている。
なぜ寄り道しているかというと──
『すみません……!EDMガンガンかけて虹夏ちゃんとリョウさんと楓くんの3人でエナドリ片手に踊り狂いながらバイトしててください』
という意味のわからないひとりからのロインを受け、エナドリを大量に買ったからである。
「いや〜、エナドリ結構高いね〜」
「まぁ、リ○ルゴールドとか安いものはあるけどエナドリって感じがしないからな」
「やっぱりエナドリといえばモ○スター」
「そうなんだ……」
「にしても大量にエナドリ買う虹夏、店員さんからしたらただのやべーやつに思われてたんだろうな」
「失礼な……ぼっちちゃんに頼まれて買ったんだもん……」
「楓、これ結構おいしいから楓も飲むべき」
「あ〜、わかった」
「2人ともスターリー着いてから飲んでよ……あ、ぼっちちゃんいた。お~い、ぼっちちゃ〜ん」
「おい、沢山持ったまま走るなよ」
俺の忠告を聞かずに虹夏はひとりを見つけたのか、曲がり角を曲がってスタスタと走っていってしまった。
転ばなければいいのだがと思っていたら──
「あ、逃げたギター!!!」
大声で叫ぶ虹夏に驚いた俺は、急いで虹夏の後を追うとそこには──
「ふぇぇぇぇぇ!!!」
「おふぉえ……」
──ギターケースを背負った喜多ちゃんとひとりがいた。
次回、「誕生、結束バンド」
もう既に気づいている読者の人も多いかもしれませんが2年生編以降は基本原作に沿ってストーリーが進んでいきます。←1話で説明するの忘れてたなんていえない
一応オリジナルストーリーや料理番要素のある回も上げるつもりです。
評価、感想、お気に入り登録などあると作者のモチベと筆のスピードが上がるので是非お願いします。
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