幼馴染の変人ベーシストの料理番になった件について。 作:かんかんさば
オーディションからはや3週間。
オーディションに無事合格できた結束バンドは店長から課されたチケットノルマもクリアし、来週のライブに向けて日々練習を重ねている。
まさかひとりがチケットを売ることが出来ていたことにおどろきながらも、俺は彼女たちを応援する身として、弁当を作って差し入れしたりしている。
そして今日はバンTのデザインを考えるため、ひとりの家に行く虹夏と喜多ちゃんを連れてひとりの家に向かっている。
「いや〜、ありがとね〜」
「いいよいいよ。ちょうど横浜に出かけようと思ってたところだったし」
初めは行くつもりはなかったが、横浜に出かけたかったのと、2人が道に迷ってしまうだろうと思って2人を連れていくことにしたのだ。
「リョウ先輩もくればよかったのに……」
「おばぁちゃんが峠なんだって。今年で10回目だけど」
リョウがおばぁちゃんの峠ネタを使うときはだいたいサボりであることが多い。
ちなみにリョウのおばぁちゃんは今でもすこぶる元気だ。
「それにしても金沢八景駅の駅舎、すっごい綺麗でしたね!」
「わっかる〜!」
「去年の夏休みに来たときはまだ工事中だったからな」
「そういえばぼっちちゃんの家って駅からだいたいどのくらい?」
「歩いて10分位だったような……」
「あ〜、じゃあタオル持ってきて正解だったね〜」
まだ午前中とはいえ、夏真っ盛りの8月。真っ青な青空に空高く登る太陽、そしてそこから降り注ぐ日差しが眩しく、そして暑い。こうして歩いてるだけで汗がじわじわと出てくる。
この暑さのせいか、品川で買ったペットボトルの麦茶はもうそろそろ空になりそうだ。
「そういえば降りるときに乗換案内で逗子方面は〜って言ってましたけど、ここから逗子に行けるんですね」
「そうそう、葉山とかにも行けるから意外と便利だよ」
「へ〜。楓、結構詳しいんだね」
「小さいころよく親に連れてってもらってたんだよ」
両親は写真を撮るのが好きで、中でも葉山や鎌倉、江ノ島などがお気に入りでよく連れてってもらっていたのだ。そして、その帰りに金沢八景の後藤家に寄り道するのがお決まりだった。
まぁ、中学に上がってからは遠征とかで忙しなって行けてないのだが。
──しばらく3人で雑談しているうちにひとりの家に着いた……のだが着いた途端、虹夏と喜多ちゃんは黙り込んでしまった。
「……」
「……」
「……って、急にどうした?」
「……いや、あれ……」
虹夏が指を指した先には──
『歓迎!結束バンド御一行さま!〜癒しのひとときを皆様に...〜』
──と書かれた横断幕がベランダに掛かっていた。
いや俺結束バンドでもなんでもないただの付き添いなんですけどね……。
「ぼっちちゃんの家って民泊かなにかやってるの……?」
「いや、やってないけど……」
「えぇ……」
「……」
まさかの歓迎ぶりに虹夏と喜多ちゃんが絶句している。まぁ、俺も少し引いているのだが。
「ま、まぁ、ここがぼっちちゃんの家みたいだし、さっそく呼んでみよっか!」
流石の適応力と言ったところだろうか、すぐに切り替えて虹夏はドアチャイムを鳴らした。
すると、インターホン越し……ではなく、ドア越しにひとりの声が聞こえ、ガチャっと鍵が開く音がした。
ドアの向こうには、真っ暗な廊下にたち、星型のサングラスを掛け、頭にはポンポンがついた三角帽子、口にはつけ髭、そして肩には「一日巡査部長」と書かれたタスキをかけているひとりの姿があった。
「「……」」
「いっ、いえええええい!うぇ、うぇうぇウェルカァァァム〜!!」
俺たちを歓迎してくれているのだろうか、クラッカーを鳴らすひとりだが──
「……」
「ぼっちちゃん楽しそうだね……」
2人の反応は微妙なところのようだ。
「あっはい……こっちです」
そして完全にひとりは撃沈したようだ。
◇
「わぁ〜、すっごい素敵な飾り付け!これ後藤さん一人でやったの?」
2階にあがり、ひとりの部屋に上がるとそこには「ようこそ!後藤家へ」と書かれた垂れ幕にキラキラした風船、ミラーボールなど、まるでパーティをするかのような飾りつけがしてあった。
「確かに凄いけど……遊びに来たわけじゃないからね?」
「あっ、全部片付けますね……」
「いややっぱ少しだけ遊ぼっかな〜」
「あっ、じゃあ飲み物取ってくるので楽にしててください……」
「後藤さんここにお土産置いとくわね」
いつもよりきらびやかな感じに違和感を感じながらも、ひとりの部屋で俺はスマホをいじる。
オーチューブで動画を見てるとリョウからロインが来た。
『かき氷おいしい』
『あと今日の晩御飯はゴーヤチャンプルーでお願いします』
サボってるくせになに一丁前にリクエストしてるんだよ……。
「そういえばギターやエフェクターとか何もありませんね」
「確かに……もう少しロックっぽ……」
「2人ともどうした?」
「ほら、楓先輩。あれ……」
喜多ちゃんの視線の先には除霊用の御札(?)と盛り塩が置いてあった。
おそらくオーディションでやっていた曲を作るときに貼られたものだろう。
そういえばこの前、美智代さんから『ひとりに何があったのか聞かせてくれる?』というメッセージとともに『おねーさんテキーラ追加ァ〜!!』と変に踊り狂っているひとりの動画が送られてきたな……。
「いろんな意味でロックだな……」
「ロックですね……」
「めちゃくちゃロックしてるねぇ……」
2人が本日2度目の絶句に包まれているとスタスタと早い足音が聞こえてきた。
「あ、かえでおにーちゃん!!」
「ワンッ!」
その足音の正体はふたりとジミヘンだった。
相変わらず元気がよさそうでなによりだ。
「え〜!ぼっちちゃん妹いたの!?」
「ごとうふたりです!犬のほうはジミヘンっていいます!!」
「ワンワンッ!」
「あたしは伊地知虹夏。よろしくね、ふたりちゃん!」
初めてあった虹夏にしっかりと挨拶するふたり。挨拶するとさっそく盛り塩と御札の説明を始めた。
「それね、おねぇちゃんがおばけにとりつかれちゃったからはってあるんだよ!!」
「そうなんだ……」
「はやくお姉ちゃんのお化けいなくなるといいな」
「うん!」
しばらく喜多ちゃんとふたりの会話を眺めていると、押し入れの襖が開いていることに気づいた。閉めようとすると中が少し見えたので見てみるとそこには──
「ウワアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「ちょっと楓、どうしたの?」
「あ、アア、アー写が……た、大量に……」
──先月撮ったアー写が大量に貼られていた。
俺はあまりの狂気に叫び、某BOARD隊員のように絶叫してしまうとともにあの
「えぇ……ま、まぁ確かに大量のアー写には驚きますけど……って楓先輩?しっかりしてくださいよ!?」
やばい、あれ思い出すと怖くなってきて、力が抜けていく……。
思い出したくない記憶ってなんでこういうふとした時にフラッシュバックしてくるんだろう……。
「やだよ、かえでおにーちゃん!しなないでよ!」
「ワンッ!」
「ちょっと楓!?」
トラウマのあまり、俺は気を失ってしまったのだった。
後編に続く。
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