幼馴染の変人ベーシストの料理番になった件について。   作:かんかんさば

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ファーストテイクに感動したので初投稿です。




#16 線香花火

──8月30日。

 

昼間の身体が焦げるような暑さとは打って変わって、涼しい夜風が肌寒く感じ、夏の終わりをひしひしと感じさせる。

俺はリョウと虹夏と花火をしに、近くの公園に来ている。

 

「ランタンOKっと……うん、そろそろ大丈夫かも」

 

「よぉ〜し、じゃあたこ焼きとかラムネ出して……」

 

なぜ公園で花火をすることになったかというと、理由は2週間ほど前、結束バンドの初ライブの前日に遡る。

 

 

 

2週間前。

 

 

 

『うわぁ、ニコタマの花火大会中止だってよ』

 

『私の楽しみが……残念』

 

『なんか代わりになるものないかな〜』

 

去年まで毎年行っていた二子玉川の花火大会が今年は台風の影響で中止になってしまったのだ。これまで何回か延期になったことはあるのだが、中止は初めて。毎年の楽しみが今年はなくて気分が少し沈んでしまっていたのだが──

 

『だったらさ、今度バイトが休みの日に公園で花火でもしようよ!たまにはこういうのもありだと思うし!!』

 

『ナイス虹夏』

 

『賛成』

 

虹夏の発案により、今日ここで3人だけの花火大会を開くことになったのだ。

 

 

「それじゃあ、今年の夏休みもお疲れ様ってことで──」

 

 

かんぱ〜い!!!

 

 

虹夏の合図でラムネの栓を開け、こぼれないようにすぐにラムネの瓶を口に運び、それを飲む。やっぱりこういう時の炭酸ってラムネに限るんだよなぁ、と思いながら今度はたこ焼きを口にする。このたこ焼きを作ったのは虹夏だ。

タコとソースのコンビネーションがとても美味しい味を引き出している。

 

「うめぇ〜、やっぱオカンの作るたこ焼きは美味いな〜!!」

 

「誰がオカンだよ。まぁ、美味しいって言って貰えるのはうれしいなぁ〜」

 

「やはりこれはオカンの味だ」

 

このたこ焼きだけでなく、今日公園に持ってきた料理のうち半分は虹夏が作ってきたものだ。残りの半分は俺が作ってきた。

 

「お、楓が作った焼きそばもなかなか美味しいじゃん」

 

「料理番としては当然の働き。だけど褒めて遣わす」

 

「あざます」

 

焼きそばは俺が作ってきた料理の1つなのだが、これもこれで麺と具材にソースがしっかり絡まっていてとても美味しい。

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜、食べた食べた。よし、じゃあ花火やろっか」

 

「うむ」

 

「そうだな。じゃあロウソクに火つけるか」

 

カバンからロウソクとライターを取り出し、ロウソクに火をつける。薄暗い公園の中に灯る炎色の明かりが周囲を照らし出す。火がついたのを確認したら早速手持ち花火に火をつける。

ぱち、ぱちと少し音を立てたあと、綺麗な火花が勢いよく吹き出してくる。

 

「やっぱこれもこれで綺麗だな」

 

「そうだね〜」

 

手持ち花火をやるなんて何年ぶりだろうか。最後にやったのはまだ小学生の頃だったから、もう4年以上もやっていなかったのか。

 

『みてみてかえで!きれーでしょ!!』

『お〜っ、すっげぇ!!おれもやる!!』

 

『わたしも』

 

『こらこら3人とも、危ないでしょ』

 

『『『ごめんなさい……』』』

 

花火をやるときは3人とも必ずふざけてよく虹夏のお母さんに怒られてたな……。

もう戻らない幼き日の思い出にしんみりとしてしまう。

 

「楓、ボーッとしてたらせっかくの花火がもったいない」

 

「そうだよ!しんみりした顔しないでよ!!」

 

「ごめんごめん、ちょっと昔のこと思い出してたわ」

 

今は今、そう思って俺は袋から花火を取りだして火をつけ、鮮やかな火花を楽しむ。

楽しんでいくうちにどんどん手持ち花火の数は減っていき、残すは線香花火のみとなった。

 

「じゃあ、3人の中で誰が1番長持ちさせられるか勝負しない?」

 

「上等だ。前みたいに泣きべそかくなよ?」

 

「もう!子供じゃないんだから〜」

 

「ふっ、2人とも私の長持ち技術を思い知るがいい……」

 

袋から線香花火を取り出し、3人で一斉に火をつける。火をつけると、花火の切っ先から火花がパチパチと爆ぜる。火の玉からでる鮮やかな閃光に心を奪われていく。火の玉はだんだんと膨れていき、やがて落ちた。

 

「うわ〜、俺がビリかよ……って、2人とも同じタイミングじゃん」

 

「これじゃ勝負にならない」

 

「だったらもう一回!」

 

まだまだ線香花火は沢山残っている。残りのもので、俺は2人と長持ち対決を始める。

 

「よっしゃ、また俺の勝ち〜」

 

「ぐぬぬ……」

 

「悔しい〜」

 

ある時は俺が勝ち──

 

「あ〜、またあたしビリじゃん」

 

「ふっ、この山田様に勝とうなんて百年早い……」

 

「ちっ、次は勝つからな?」

 

ある時はリョウが勝ったり──

 

「やった勝った〜!!」

 

「やるじゃねぇか」

 

「私の連勝記録が……」

 

ある時は虹夏が勝ったりして、線香花火長持ち対決は幕を閉じた。結果は──

 

「ふっ、やはり私は線香花火の天才……」

 

10回中4勝5敗1分でリョウが勝った。こいつ昔から線香花火を長持ちさせるのがすごい上手いんだよな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

後始末を終え、家路につく。楽しい時間が終わった後の静けさもまた、しんみりと感じさせてくる。

 

「いや〜、楽しかったね〜」

 

「まぁな。来年こそは花火大会行けるといいな」

 

「あのイカ焼きを食べれないのは心苦しい」

 

「ま〜、なんやかんや今年の夏休みも楽しかったわけだし、明後日からまた頑張ろうよ」

 

「そうだな」

 

「うん、そうだね」

 

まだ1日残っているとはいえ、新学期に向けて英気を養えたような、そんな夏の終わりの夜だった。

 




次回、「江の島デイトリップ」

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第二回 誰にご飯を作りたい?

  • 喜多ちゃん
  • PAさん
  • 大槻ヨヨコ
  • 虹夏ちゃん
  • 志麻さん
  • イライザさん
  • 園田智代子
  • 好きな総菜発表ドラゴン
  • 重音テト
  • あり
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