幼馴染の変人ベーシストの料理番になった件について。   作:かんかんさば

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12月なので初投稿です。


#27 るっきんぐ・ふぉー・ぼっち!

10月1日。

第三十一回秀華高校文化祭、秀華祭一日目。

 

秀華高校の校風は普段俺が通っている下北沢高校とは違う。下高のような真面目で少々お堅い進学校という感じではなく、自由で活発な、キラキラした校風だ。

 

「郁代みたいなのが沢山いる」

「なんだよその例え方。つっても俺らの所とはえらい違いだな」

 

秀華高校はこれまで何度か来たことはあるが、こうやって中に入るのは今日で初めてだ。

そんな初見さんでも飾りつけやポスターだけで校風が分かるぐらい、活発な学校だということがよくわかる。

 

「なにから見て回る?」

「先に喜多ちゃんと合流した方がいいんじゃないのか?」

「そうだね〜。喜多ちゃんとは確かぼっちちゃんのクラスで合流ってことだったから……ひとまずぼっちちゃんのクラスに行こっか!」

 

今日は喜多ちゃんとひとりに俺らの案内役を務めてもらうことになっている。

なぜだろう、陽キャチョイスのイソスタ映えするような出し物の所に連れてかれそうな気がしてならない。

いや、ひとりがいるからいい具合に相殺……されるわけないか。

 

校内を歩くこと数分、俺たちはひとりのクラスである一年二組の教室にたどり着いた。

 

「確かぼっちちゃんのクラスはこの辺だったはず……あ、いた!やっほ〜喜多ちゃ〜ん!!」

「あ、伊地知先輩にリョウ先輩、楓先輩!」

「ぼっち、もてなせ」

「開口一番にそんなこと…… あれ、ひとりは?」

「……その……先輩……」

「どしたの?」

 

なにか言いにくそうな表情をする喜多ちゃんに虹夏は様子を伺う。するとひとりのクラスメイトと思われる娘が重い口を開けるように話した。

 

「後藤さん……いなくなっちゃって……」

 

ウッソだろオイ。

 

「ええっ!! ぼっちちゃんが突然消えた!?」

「はい、朝から見つからなくて……」

 

クラスメイトの娘が俺らに伝えたのは、ひとりが失踪したという知らせだった。

 

「今日の朝メイド服を着せたら、『トイレに行ってきます』って言ったっきり戻ってこなくて……」

「メイド服が嫌なら言ってくれればよかったのに…… やっぱり恥ずかしかったのかな……」

 

うちの従妹が申し訳ございません。

 

クラスメイトの娘が言う通り、ひとりのクラスの出し物はメイド喫茶だ。

今立っている教室のドアからちらっと覗いている内装はとても豪華なもので、クラスメイトの娘が来ているメイド服もとても可愛らしいものだ。

 

「どう考えてもメイド服で校内走り回る方が恥ずかしいと思うんだけどな……」

 

メイド服で走り回るひとり……なんか面白いな。

 

「とりあえず探さないと……!」

「えぇ……」

「おいそこ、面倒くさがるなー」

 

正直面倒臭いっちゃ面倒臭いけど、クラスの人達が心配してるんだ。早いところ見つけてクラスメイトのところに戻してあげなければ。

 

こうして、急遽俺達は姿を消したひとりを探すこととなった。

 

廊下や教室を一通り見てみたがそれらしき姿は見つからなかった。まぁ、普段から押し入れに篭ってるやつだ。そう簡単に見つかるわけない。

 

「ぼっちちゃんどこに行ったんだろうねぇ〜。トイレに行ったっきり帰ってこないってことはずっとトイレに篭ってたりして?」

「いいえ先輩!後藤さんはそんな四六時中人がいるような場所には生息していません!」

「えっ、そうなの!? ってか生息って例え酷くない?」

「いや全然」

 

普段は押し入れ在住で突然電子音発しながら痙攣したり、パリピに絡まれて爆発したり、ツチノコに変身したりする奴には生息って例えはピッタリだと思うんですけどね。

 

「後藤さんはもっとこう、人がいなくって、日が当たらないジメジメしたような場所……つまりナメクジとかダンゴムシが居そうな場所、石の裏とか落ち葉の下とか、そういう場所を探さないと!」

「わかってらっしゃる」

 

喜多ちゃんがここまでひとりの生態に詳しいとは……感心感心。

 

「ということで、早速後藤さんを探しましょ!」

「お〜!!」

「ちょっと待って。ここの敷地結構広いから二手に別れて探さないか?」

「え」

「だだっ広い範囲を一グループだけで探してたら日が暮れるだろ。だから二手に分かれて探して見つけ次第合流するってのはどうだ?」

「それならいいんだけどどう分けるの?」

「そんなの俺とお前らで分れればいいだろ。俺は北側を探すから三人は南側頼んだわ。ってことでまた後で。見つけたら連絡する」

「え、あ、うん。わかった。気をつけてね?」

「ああ」

 

こうしてひとりを探し出すために俺たちは二手に分れた。

階段を下り、昇降口を出て一旦外に出てみた。

すると、一人の小さな男の子が泣いているのを見かけた。

 

「うぅ……お母さん……」

 

ひとりを探すのが今の最優先事項だが、親とはぐれてしまったであろう男の子を放っておく訳にはいかない。

俺は男の子に駆け寄って、腰を落として視線の高さを同じぐらいにして声をかけてみた。

 

「大丈夫?」

「……おかあさんと……ぐすっ……はぐれちゃった……」

「ありゃま。どんな服を着てるとかって覚えてない?」

「……みどりいろの……おようふくを……ううっ、うえぇぇん……!」

 

手がかりを得ようとすると、少しそれっぽいヒントを話して男の子は泣き出してしまった。

 

「あーごめんごめん!ほら、飴あげるから落ち着いて」

 

カバンから飴を取り出して男の子に渡す。

すると、男の子は飴をゆっくり舐めだした。しばらくすると泣きやみ、探している母親のことを話しだした。

 

「おかあさんはみどりいろのおようふくをきていて、しろくてながいスカートをはいているの……」

「そうなんだね。よし、じゃあお兄ちゃんと一緒に探そうか!」

「え、いいの?」

「お兄ちゃんも探してる人がいてね。その人を探してたら君のお母さんも見つかるかもしれないし」

「うん!ありがとう!」

 

男の子が飴を舐め終わるのを待って、お母さん探しを始めた。

一号館、二号館、中庭など、色々探し回ること10分。

 

「おかあさん!」

「悠太!」

 

男の子、もとい悠太くんのお母さんを見つけだすことに成功した。母親を見つけた途端、彼はとても嬉しそうに走っていった。

 

「ありがとうございます……!」

「いえいえ、困ってるのを見過ごせなくてつい……」

「ありがとうおにいちゃん!」

「どういたしまして。今度はお母さんとはぐれたりしたらダメだぞ?」

「うん!」

「よし、じゃあまたね。悠太くん!」

「うん!おにいちゃんもげんきでね!」

 

そう言って悠太くんは満面の笑みで手を振った。

悠太くんとお別れした俺は改めてひとりを探すことにした。

 

さっきまでとは違いゴミ箱、空き教室、生垣の下など、とても人を探しているとは思えないような場所を隈なく探してみる。

 

え、お前従兄なんだからあっさり見つけられるだろって?

あいつ一度逃げると見つけるのにまぁまぁ時間かかるんだよ。

 

なかなか見つからないひとりを探すこと15分。

一号館の校舎裏に出る出口の前で飲み物を飲むことにした。コンビニで買ったルイボスティー、すっきり飲みやすい味わいが特徴なのでかなり気に入っている。

 

そんなルイボスティーを飲みながらスマホをいじっていると外に出るドアの方に、人が立ち上がるのを見た。

その人は見慣れたピンク髪をしていて、サイドには黄色と水色の四角い髪飾りをしている。

間違いない、ひとりだ。

 

そっとドアに近づき、様子を見てみる。

なにやらスマホでギターヒーローのコメント欄を見ているみたいだ。

 

「うへっ……うへへへへっ……」

 

そっとドアを開けても気づきそうにない。ここはひとつイタズラをすることにしよう。イタズラといってもシンプルな頬つつきなのだが。

 

中腰になってトントンとひとりの肩を叩いて向かってくるほっぺを人差し指でつついてみた。

 

すると──

 

「こんなとこで何してん」

「くぁw背drftgyふじこlp;@:」

「わーお」

 

お得意の顔面崩壊をかましながら言葉にならない叫び声をあげ、白目を剥いて倒れた。

 

少し経ってから回復したひとりになぜ逃げ出したのか、理由を聞いてみた。

どうやらメイド服を着るのが恥ずかしくて逃げ出してしまったらしい。まさかクラスメイトの娘が言っていた憶測がそのまま当たるとは思わなかった。

 

「はぁ、そんなことで……あとでクラスメイトの娘たちに謝るんだぞ」

「うぅ……」

「まぁそれはそれとして。そのメイド服、中々似合ってんじゃん」

「えっ」

「せっかく似合っている服を可愛く着れてるんだ。もっと自信持ちなよ」

「でっ、でも……」

「でも?」

「わっ、私なんかがメイド服着たら『地味なぼっち陰キャがイキってメイド服着たで賞』で磔にされるよ……」

 

だからなんで名誉ある人に贈られる賞で○ななきゃなんないんだよ。

でもせっかく似合ってるんだし、このままの状態でいられるのもアレだな。ここは一言投げかけて自信を持たせなきゃな。

 

「はぁ、とにかく。メイド服似合ってて可愛いからもっと自信持てって。それに──」

「それに……?」

「きくりさんが言ってたことそのまんまだけど、ハコでも路上でもライブできたんだし、明日は体育館のステージで大勢の人の前でライブするんだろ? だから大丈夫だよ」

「楓くん……!」

 

これまで……っていってもまだスターリー2回に路上とまだまだ経験は浅いが、自信を持つには十分だ。

自信を持たせるような言葉を投げかけると、ひとりの表情は少しだけ明るくなった。

 

少し自信を持たせたところで電話で三人を呼び出した。すると、しばらくして三人はボロボロの状態でやってきた。

 

「結構ボロボロだな」

「ゴミ箱の中とか落ち葉の裏を探してたらこうなりました!」

「とても人を探してるとは思えなかったけどね」

「まぁ、ご苦労さん」

「にしてもさすがぼっちマイスター。まんまとぼっち見つけたね」

「まだそのネタ擦ってるのかよ」

 

だからマイスターじゃないっての。

いや、いち早く見つけたんだからリョウの言ってることはあながち間違っていないのかもな。

 

「とにかく、これで全員揃ったわけだし!早速色々見て回ろ〜!」

 

まずはそのボロボロをどうにかして欲しいんですけどね。

 

ともかく、こうして無事(?)五人揃ったところで改めて、俺たちは文化祭の出し物を回ることになったのだった。




次回、「アイデンティティ」

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第二回 誰にご飯を作りたい?

  • 喜多ちゃん
  • PAさん
  • 大槻ヨヨコ
  • 虹夏ちゃん
  • 志麻さん
  • イライザさん
  • 園田智代子
  • 好きな総菜発表ドラゴン
  • 重音テト
  • あり
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