幼馴染の変人ベーシストの料理番になった件について。 作:かんかんさば
※一部以前の話を参照しているところもありますが本編とは無関係です。
「楓、ポッキーゲームをしよう」
「なんだよ急に」
バイトの休憩中、リョウからの急な提案に俺は少し驚く。
理由を聞くと「今日はポッキーの日だから」とシンプルな回答が返ってきた。
今日は11月11日。月の数字も日にちの数字もきれいにそろっているこの日は「ポッキーの日」と言うらしく、ポッキーを販売している会社がポッキーを数字の1に見立て制定した日らしい。
にしても、そんな理由でポッキーゲームを持ちかけたのか。
あれ、ポッキーゲームって......
「ちょっと待て」
「ん?」
「ほら、ポッキーゲームって......その、あれじゃん......」
「あれって?」
ポッキーゲームというのは二人で一本のポッキーを共有し、向かい合って両端から食べ進めていくというものだ。
先にポッキーから口を離した方が負けとなるルールで、お互いが口を離さずに最後まで食べきると両者はキスをすることになる。
「最後まで食べるとキスすることになっちゃうんじゃ......」
そう、最後まで食べ進めてしまうとキスをすることになってしまうのだ。
いくら幼馴染だとしても付き合ってない男女でキスするのは問題だ。
「私と間接キスしといて今更ビビるのはダサいよ」
「それはそうだけどさ......」
五月のやつ、あれいまだに恥ずかしいんだが?
「で、やるの?やらないの?」
「うぅ......」
ポッキーの箱を持ってリョウは顔を近づけてくる。
その圧に耐えかねた俺は――
「やります......」
その誘いを了承した。
するとリョウは少し微笑みながら机に置いてあったポッキーの箱から一本取り出し、口にくわえたままこちらに差し出してきた。
やるしかない。今
それにファーストキスの相手がリョウなら別に......
「はやくして」
「あっはい」
すんません。
ってか邪なことを考えるな、これはゲームだぞ。
リョウが咥えたポッキーをこちらも咥える。
なんか恥ずかしいなこれ。
「......じゃあ、始めるぞ」
開始の合図をだし、少しずつ、ゆっくりとポッキーを食べ進めていく。
サクサクとしたビスケットと甘いチョコレートが口に広がっていく。
ただそれ以上にリョウの唇が近づいてくるということが、俺の頭の中を徐々に侵略していく。
その原因であるリョウはいつもと変わらない表情を浮かべている。
食べ進めていくうちにポッキーの残りの長さは全体の四分の一になった。
あと三、四口食べ進めれば確実に唇が触れ合う。本当は恥ずかしくてしょうがないのだがこれは勝負だ。
ポッキーを噛み切って離してしまえば負けてしまう。いくら恥ずかしくても勝負に負けることだけは絶対に避けたい。
俺は目を瞑り、覚悟を決めて一口食べ進める。するとそれに呼応するようにリョウも食べ進める。
そして、互いに最後の一口が残っているくらいの長さになった。
恐る恐る目を開けてみる。
目を開けて映ったのは顔を真っ赤に染めたリョウだった。
なんだよ、お前も恥ずかしがってんじゃねぇかよ。
俺は挑発するようにわざと一口の半分を食べた。
さあどうする、山田リョウ......!
ガチャ。
挑発に乗ったリョウが食べ進めようとしたその瞬間、ドアが開く音がした。
「リョウ先輩、楓先輩、おはようございま......」
え、うそ、喜多ちゃん!?
突然やってきた喜多ちゃんと目が合った。
彼女は俺らの様子を見て見る見る顔を赤く染めていく。
「お、おおおおおおお幸せにぃぃぃぃぃぃ!」
顔を真っ赤にした喜多ちゃんはどこかへと走り去ってしまった。
そしてリョウは——
「こ、ここ今回は勝ちを譲ってあげる......」
ポッキーをかみ切ってさっきよりも一層顔を赤くして机にうずくまり、一言もしゃべらなくなった。
何とも言えない気まずさが空間を走る。
一向に顔を上げそうにないリョウを見ながら俺は箱からポッキーを一本取り出し、食べた。
その味はいつもより少し甘く感じた。
その後、この事は俺とリョウ、二人の間の秘密になり、目撃者である喜多ちゃんにはリョウとのランチをダシにして口封じを行った。
本編はストックがたまり次第ぼちぼち更新再開していきます。
ちゃ、ちゃんと更新するからね!?
ストックもあるにはあるからね!?(4話分)
追記
アンケートを乗せたのでよかったら答えてください。
山田リョウは
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恋愛つよつよであるべき
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恋愛クソ雑魚であるべき