幼馴染の変人ベーシストの料理番になった件について。 作:かんかんさば
ちなみにエピグラフ2のおかげで1年生編がほとんど過去捏造になってしまいました。
【注意!】
今回のお話は本編とは全く別の世界線のお話です。登場人物の設定が多少変わっています。
また、エピグラフ2のネタバレを含みますのでご注意ください。
ベーシスト、山田リョウ。
俺がハッキリと彼女の存在を意識するようになったのは中学二年生の文化祭の時のことだった。
体育館のステージで一人、コアなロックファンじゃない限り誰も知らないような曲を弾いていた。その時の会場の静けさは今でも忘れられない。でも、そんな静けさをかき消すくらいに、彼女のベースは俺の心を魅了した。
「ねぇ下村くん!」
「ん? どうした伊地知」
「さっきの山田さんの演奏凄かったよね!」
「確かに、曲選はちょっとアレだけど腕前は半端なかったな」
「あたし今から山田さんに感想言いに行くんだけどさ、下村くんも一緒に行こうよ!」
「えぇ、終わったあとなんかしんみりしてたしまた今度の方が……」
「いいや、感想もフォローもその日のうちに行った方がいいでしょ! ほら、山田さん探しに行くよ!」
その日、あの演奏に魅せられた俺と虹夏は文化祭を途中で抜け出し、リョウを探しに行った。
教室や体育倉庫、保健室に武道場。色んな所を探しても彼女は見つからなかった。
最後に屋上を探してみると、そこには涙を流す彼女の姿があった。
「あ!山田さん!探したよ〜!」
「……」
「さっきの演奏凄かったね!」
「まさか南中にこんなに凄いベーシストがいるなんて思わなかったよ」
「小学校から一緒なのにそんな一面があるなんて知らなかったよ〜!」
「……ぐすんっ」
「伊地知、お前……」
「ちょっ、あたしなんもしてないって!?あ、どうしたの?大丈夫?どっか痛いとかある!?」
「別に、なんでもない……」
リョウの存在自体は小学校の頃から知っていた。ただ、知っていたのは名前ぐらいでどんな性格なのかはよく知らなかった。せいぜい見た感じからして堂々とした性格なのだろうと、憶測するぐらいだった。それぐらいにリョウはよく分からない存在だった。
「ソロベースの演奏かっこよかったよ!」
「あの曲、かなり練習しないと弾けない難しいやつだよな。同い年なのにすごいよね、山田さん」
「……本当?」
「うん!!」
「ということはまだ時代が私に追いついてなかっただけか。二人ともセンスあるね」
でも本当は堂々としてるように見えて根は意外と繊細、そしてちょっと傲慢なやつだってことを知った。
「二人はなんか楽器とかやってるの?」
「あたしはドラムやってるんだ〜! まぁ下手なんだけどね〜」
「そっちのクルクル頭は?」
「クルクル頭ってなんだよ。 まぁ俺はピアノとキーボードを少々」
「ふーん、いつか聞かせてよ」
「……あのさ、もしよかったら一緒にバン「これ」ん?」
「私が普段やってるバンド、『ざ・はむきたす』よかったら今度見に来て」
『ざ・はむきたす』というのはリョウが当時所属していたバンドのこと。オーチューブで検索すれば動画が出てくるくらいには有名なインディースバンドだった。
「あ、バンドやってるんだ!」
「お、早速今度見に行ってもいいか?」
「うん、いいよ」
「ねえ、今度の休み三人で一緒に遊ばない?」
「お昼奢ってくれるなら」
「ええ〜」
「ところで二人とも、名前は?」
「あたし伊地知虹夏! よろしくね!」
「下村楓。よろしく」
「虹夏に楓、よろしく」
「いきなり名前呼び?」
「じゃあクルクル頭って呼ぼうか?」
「いや、名前で……」
こうして、音楽という共通の趣味を持った俺たち三人はあっという間に仲良くなった。
ある時は──
「楓、学ラン貸して」
「え、ああ、いいけど」
(学ランでなにするんだ……?)
「見て、鬼○隊」
「ぶふっ、おいっ……!」
「おもしろ〜!」
帰り道で少しふざけながら帰ったり──
「あの日の悲しみさえ あの日の苦しみさえ♪」
「やっぱ歌上手いな」
「さすがバンドでコーラスやってるだけあるね〜!」
放課後にカラオケに行ったり──
「今日はどこのライブハウス行く?」
「思い切って大塚に行ってみよう……!」
「じゃあしゅっぱーつ!」
お小遣いを貯めてライブハウスに行ったり──
「このベース、買った……!」
「それ買うのか? 結構高いぞ?」
「今月のお小遣い全部使えば行ける」
「もーっ! またあたし達がノルマ手伝わなきゃじゃん!」
そして、高校も三人で同じところを受けて見事全員合格した。
遊びにいく時も、受験勉強をしていた時でも、三人で過ごす時間はとても楽しかった。
その中でも、はむきたすの時のリョウは輝いていて、楽しそうにベースを弾く姿が俺は一番好きだった。
高校に入ってから俺は虹夏からバンドに誘われて、キーボードとして加入した。そして、メンバー探しつつ、リョウの活動を応援する。そんな日々を送っていたある日の事だった。
「リョウ、『ざ・はむきたす』脱退するって本当なの……?」
リョウが『ざ・はむきたす』を脱退した。
その知らせを聞いたとき、俺は気が動転した。
「……本当」
「……もうバンドはやんないのか?」
「どうだろ、今はよくわかんないかも」
「絶っ対に辞めちゃダメだよ!」
「そうだよ、もったいないよ! あんなに上手いのに……!」
「なんで? 二人には関係ないじゃん」
「関係ある!! あたし達がどんだけリョウのノルマに協力してやったと思ってんの!」
「……」
「あたしが助けた分の金額に見合うくらいは頑張って貰わないと……」
「……」
「虹夏、その言い方は……」
「もうほっといてよ!」
「……!」
「残りの高校生活は勉学に励むんだから……もう、ほっといてよ……」
感情的になったリョウはそう言って、涙を流し始めた。
はむきたすで何があったのかはよく分からないが、その姿を見ると放っておけない。そう感じた。
なにかしてやれないか、そう考えていると虹夏が笑顔でリョウの肩をポンと叩いた。
「何……」
「リョウが勉強なんて続くわけないじゃん!」
「……!」
「暇ならベースやってよ! あたし達のバンドで!」
頬つつきをした虹夏は、リョウをバンドにスカウトした。
まさかこのタイミングで、とは思ったが今考えてみればナイスタイミングだと思った。
「あたし達って、メンバーは誰なの?」
「そりゃあ、あたしと楓だよ」
「それになんで私なの? 他を当たればいいじゃん……」
「だってあたし、リョウのベース好きだし!ね、楓!」
「……まぁそうだな。俺もお前のベース……その……結構好きだから……」
「なに照れてんのさ〜!」
「痛ってぇな!」
「ふふっ、いいよ。やるよ、ベース」
「じゃあよろしくね! リョウ!」
「うん、よろしく。あ、帰りにファ○チキ奢って」
「はいはい……」
こうして俺たちのバンドにリョウが加わった。
それから、バイトの傍らでメンバー募集をするようになって行った。
「お〜い、楓〜!ねぇ、楓! ねぇってば!」
「ああ、ごめんちょっと考え事してた」
「も〜っ、これからメンバー探しも兼ねた路上ライブなんだから、しっかりしてよね!」
「ライブ前にボーッとするとは、私の風上にもおけない」
「お前に言われたかねぇよ」
「そこ喧嘩しないの! ほら、設営しに行くよ!」
リョウがこのバンドで楽しく演奏できるように、そして一日でも長くその姿を近くで見れるように。
「ちょっと、待ってくれよ!」
そう願いながら先に歩き出した二人を追うように俺も歩きだした。
【補足:今回の番外編における楓と虹夏の関係性】
・楓⇔虹夏:小学校は同じだったが、仲良くなったのは中学二年から。互いに名前で呼ぶようになったのは高校進学後のこと。
さて、突然ですがここで2年生編(後編)のタイトルが決まりましたので発表します。
2年生編(後編)のタイトルは──
『仲間たちと駆けるロックな青春について。』
です!
現在絶賛執筆中ですので今しばらくお待ちください!!
高評価、感想、お気に入り登録、ここすきなどいただけると作者のモチベと筆のスピードが上がるのでぜひお願いします。
高評価くれー!!(承認欲求モンスター)
【第2回】好きなキャラは?
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山田リョウ
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伊地知虹夏
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後藤ひとり
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喜多郁代
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下村楓
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伊地知星歌
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PAさん
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廣井きくり
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岩下志麻
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清水イライザ
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大槻ヨヨコ
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長谷川あくび
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本城楓子
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内田幽々
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ぽいずん♡やみ
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後藤ふたり
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暗殺前の山田リョウ
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初期案後藤ひとり
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郁代(ぱぺちゃ)
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伊地知ニジカ