幼馴染の変人ベーシストの料理番になった件について。   作:かんかんさば

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ぼざろ2期の製作が決定したので初投稿です。
早くヨヨコが喋ったり動いたりする姿を見たいぞ!


#37 君の街まで

俺の初ライブから早くも一週間が経過した。

あれからトゥイッター内の一部界隈ではSICK HACKが話題となり、「イライザちゃんの代わりに弾いてた子普通に上手くて草」とか「どこのバンドに入ってるのか気になる」などいい感じの事を書かれている。まぁ、全部が全部賞賛という訳ではないんだけども。

 

それはさておき、今日は虹夏と金沢八景に来ている。ひとり、もといギターヒーローの宅録を見に行くためだ。

 

「まさかギターヒーローの宅録が生で見れるなんてなぁ〜!!」

「そんなに楽しみなのか?」

「そりゃそうでしょ! ギターヒーローとしてのぼっちちゃんを見れる機会なんて中々ないよ!」

 

ピコピコと頭のドリトスを揺らしながら、虹夏はご機嫌な様子で歩く。

しばらく歩くと後藤家へとたどり着いた。さすがに夏休みの時のような変な垂れ幕は付けてないようだ。

チャイムを鳴らすと、ひとりがいつも通り死にかけの様子で中から出てきた。

 

「あっ、麦茶とお菓子持っていくので先上がっててください…」

「「はーい」」

 

二階の部屋に上がると、パソコンに三脚、マイクにカメラなど収録に使うものが置いてあった。

 

「いいね〜あのギター!」

「だよな」

 

もちろん、収録に使うギターも置いてある。

 

「あっ、ありがとうございます……」

「今日はこれで動画撮るんだろ?」

「うん……」

「そういえば他の二人にはこのこと伝えてないんだっけ?」

「あっ、言おうと思ってたんですけどなかなかタイミングが掴めなくて……」

「まぁね~」

「なのでこのことは三人の間だけの秘密ってことで」

 

今更バレてもなぁ、とは思うが何があるか分からないし、あの二人にはまだ知らせない方がいいというひとりの考えには概ね同感だな。

 

 

「あっすみませんこの三脚立ててもらってもいいですか?」

「わかりました!! あとお茶どうぞ!」

「なんで敬語!?」

 

三人で話しながらセッティングを始める。これからあのギターヒーローの宅録が始まるということもあってか、虹夏は敬語になり、それが面白く感じる。

 

ある程度セッティングが終わり、ひとりはギターを構えた。あとは彼女の合図でカメラのボタンを押せばレコーディングが始まる。

 

「で、ではお願いします……」

 

そして、彼女の合図で俺はカメラのボタンを押し、宅録が始まった。

彼女が弾いている曲は今年流行った邦ロックのメドレー。ドラマの主題歌やチックトックで流行った音楽などなど。

思わず歌詞を口ずさみたくなってしまうが、我慢して彼女の演奏を楽しんだ。

 

 

 

「と、投稿完了……」

 

軽く編集をしてからひとりは動画をオーチューブに投稿した。「ネットでの存在意義回復……!」や「早くコメントつかないかな」と、承認欲求ダダ漏れなセリフをボソッと呟いていたが、まぁ彼女らしいなと感じた。

 

「やっぱりトゥイッターとかイソスタとかやらないの?」

「あっ、そんなに興味は……」

「え~、手軽に動画上げられてすぐ人目につくのに~!」

「あっ、いや私、みんながやってる事と同じことしたくないんで……ロックって孤独なものなんで」

 

さっき思いっきり流行りの曲弾いてたくせによく言うよ。

 

「あとギター弾いてみた系の人、ひとりの他にもまぁまぁいると思うよ」

「ア゛ッ……」

「サラっと辛辣なこと言うね」

「だって事実ですしおすし」

「……ほ、ほら!見てぼっちちゃん!こうやって色んな人があげてるんだよ!」

 

虹夏がひとりを起こしつつパソコンでトゥイッターを開き、ある単語を検索にかけた。

 

「なにこれ楽器の写真だけでたくさん反応もらってる……? ま、まいにゅーげあ?」

「まいにゅーぎあだよ!」

「パプアニューギニア……」

「国じゃねぇよ」

「新しい楽器や機材買ったらみんなこうして写真あげてるんだよ」

「えっ、写真あげるだけでこんな簡単に……!」

 

マイニューギアの投稿をすれば沢山いいねやリトゥイートとしてもらえるというのは概ね事実だ。実際俺もこの前の誕生日プレゼントでもらったギターをトゥイッターに上げたら2000件近くのいいねを貰えた。これだけのいいねを貰ってたことを知った時は脳汁ドバドバだったな。

 

「演奏動画あげるのもうやめよ、コスパ悪すぎるし……」

「おーい、ギタリストとしてのプライドどこいった~?」

 

承認欲求モンスターのひとりからしたらそりゃコスパいい方に行くよな。

 

「まぁでもそんなマイニューギアにも怖〜い話があるんだよ」

「そうそう、怖い話があるんだ。ってことで虹夏、あの怪談お願い」

「おっけ~。では行くよ、怪談『my new gear……』」

 

 

 

 

 

 

あるところにトゥイッタラーのAさんがいました。そのAさんは60万もするハイエンドギターをローンを組んで買いました。

「my new gear……」のつぶやきと共に、そのトゥイートはたくさんのいいね、リトゥイートがもらえました。

しかしその3日後、オークションサイトにはあのAさんのギターが出品されていました。Aさんにとっていいねが貰えなくなったギターは、例えどんなに高くても価値がないものなのでした。

そしてまた数日後、Aさんのトゥイッターには売ったお金で手に入れたお金で手に入れた別のハイエンドギターと共にこう呟かれていたのです。

 

マイニューギアーッ!!!!

 

 

 

「お゛ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

「と、そんな話があったりなかったり。まぁ楽しみ方なんて人それぞれだけど」

「でも俺はせっかく高いお金だして買った楽器は大切にした方がいいよな~って思うな」

「あっこの人……」

 

ひとりがパソコンの画面に指を差して見せてきたのは「世界のYAMADA」というユーザーのトゥイート。

 

『my new gear……』

『#ベース売ります #機材40万で売ります』

 

「高い楽器速攻で売り買いしてる……」

「ってリョウじゃんこれ!?」

「嘘だろアイツ……」

 

なんか写真のベース見覚えあるけど、まさか喜多ちゃんの多弦ベースとかじゃないよな……?

 

他にもどんな楽器を転売してるのか気になるので、リョウのトゥイートを遡ってみることにした。

 

「なにこれ、山菜ごはん?」

「『お金が無いので今日のお昼ご飯は山菜ご飯です』って、あいつこんなに見栄っ張りだったとは……」

「ブレブレじゃねぇか」

 

山田らしいといえば山田らしいけど、もう少しプライドというのを持ってくれよ。仮にもお嬢様なんだから。

 

「なんか身内のこーゆーの引くな……ていうかリョウフォロワー3000人もいるんだ」

「リョウさんのベース300いいね近くついてる…… あっ、この『メイプル』って人のトゥイート……」

「ん?お、これ楓のギターじゃん?」

「え、あっ、ちょっ、見るなっ!!」

「お~、2000件もついてるじゃん。よかったねぇ~」

「う、羨ましい……」

「あっそうだ、このアカウントのトゥイートもっと覗いてみようよ!」

「本当にやめろ!」

 

 

 

パソコンを取り上げてなんとか二人を抑えることに成功した。普通に見られたくないものも多いからね仕方ないね。

 

「ううっ……」

「ど、どうした?」

「めちゃくちゃマイニューギアりたい~!!にっ、虹夏ちゃん手遅れになる前にこれで一思いに……!」

「そんな物騒なの嫌だよ!?」

 

承認欲求モンスターの次は物欲モンスターか。ほんと欲が尽きないよなこのピンクは。

 

「てかさ、そんなに気になるんだったら今日だけやってみたら?」

「確かに、一枚写真あげて少しだけでもいいねつけば満足だろ」

「うぅ……」

「はい!これでギターヒーローのアカウント完成っ!」

「あっ、私生活が充実してる陽キャリア充JKの設定なのでアイコンはタピオカでお願いします」

「タピオカに信頼置きすぎだよ……しかもブームとっくに過ぎてるし」

 

私生活が充実してる陽キャリア充JKの設定ってVTuber見たいだな。それにタピオカ流行ってたの俺が中一の頃だぞ?まだマリトッツォとか今川焼きの方が設定通りになると思うんだよな……

 

「ひとり、アイコンにするならこのマリトッツォの写真使うか?」

「えっ、なにそれ……?」

「今流行ってるお菓子だよ」

「じゃ、じゃあそれで……!」

 

ひとりはアイコンをマリトッツォの写真に変えると、今度はヘッダーの画像を喜多ちゃんのイソスタから探し始めた。

正直その様子を見ていると、そこまで無理して演じる必要は無いと感じる。なぜならジャージと殺風景な部屋で視聴者はパリピ陽キャJKではないと薄々感じとっているかもしれないからだ。

 

「よ、よし……」

「おいおい、これこの前まで使ってた直樹さんのギターじゃねぇか」

「マイニューギアーじゃないよね……」

「うぅ……なかなかいいねつかない……」

「ま〜始めたばっかだとね。リョウみたいにフォロワーいないとそんなすぐにいいねはつかないよ」

「すぐにいいねがもらえる方法……あっ、炎上商法……!」

「ちょっとそういうのはよくないかな!?」

 

炎上って、絶対ドリンクバー風呂とかおでんツンツンとかそういうことするつもりなんだろ

うな。恐ろしい。

 

ひとりは直樹さんのギターだけでなく、持ってる機材全ての写真を投稿した。そうして承認欲求に取り憑かれたのか、ひとりは机に置いてあった封筒を握りしめた。

 

「あっ、あの……!」

「どうしたの?」

「きっ、機材買ってくるので適当に時間潰しといてください!では、行ってきます!!」

「は?えっ、ちょっ、どういうこと?」

 

そして走って家を出ていってしまった。ひとりは時折とんでもない行動力を見せる。いつもは肝心な時にいい意味ですごい行動をしてみせるが、今回はそうではないと俺は思う。

 

「一人で買い物大丈夫なのかな~」

「思い立ってすぐに行動に移せるんだから大丈夫だろ」

「適当だな~。そういえばギターヒーローってパリピ陽キャって設定だけどなんでそんな無理がある設定なのか知ってる?」

「いや、全く知らない。だけどどうしてそんな設定なのか想像はできる」

「ふ~ん、どんなの?」

「多分あれだよ、一種のあこがれ的なやつ。『高校生といえば~』みたいなの」

「なんかわかるかも」

 

ひとりがあんなに無理のある設定で通そうする気持ちは正直わかる。俺だって中学生の頃は高校生になったら恋人が出来て、毎日が素敵な思い出になっていくキラキラした生活が送れると思っていた。今、自分が送っている生活は思い描いてたものとは違う。それでも楽しいからいいのだが。

 

「まぁひとりには高校卒業した時にどんな形の高校生活であれ『楽しかった』って思ってもらえたらいいなっては思う」

「ね~。ってか楓ってたま~にぼっちちゃんのお兄ちゃんみたいな感じになるよね」

「そりゃ従兄だからな」

「楓のそういう所、好きだよ」

「えっ……」

 

もしや、これは3ヶ月ぶり2回目の告白イベ……なわけないか、虹夏だし。

 

「もっ、もちろん恋愛的な意味じゃないよ?友達として……そ、そう!幼馴染としてってこと!」

「だよな」

 

ですよね、知ってましたよ。それにしてはなんかキョドってたような気がするけど。

 

「まぁそれはそれとして、どうする?ひとり帰ってくるのまだまだ先だろうし」

「そうだよね……ってあれ?押し入れからシールドがはみ出てる……?」

「普段は押し入れで宅録してるんじゃないのか?」

「なんか気になるな〜……ってそういえばこの押し入れの中って……」

「あっ、や、やばい、その押し入れの中は……」

 

虹夏は恐る恐る押し入れの扉を開けると見えたのは───

 

「これって……」

「たっ、た……」

 

 

「「大量のアー写だぁぁぁぁぁ!!!」」

 

 

バンTのデザインを決める時に見たあの狂気の壁一面を埋め尽くしているアー写達だった。

 

 

「……やることないし帰るかぁ」

「……そうだな」

 

 

二度目ともなればさすがに失神なんてしないんですわ。はい。




次回、「桜木町」

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高評価くれー!!(承認欲求モンスター)



曲名引用元:ASIAN KUNG-FU GENERATION「君の街まで」

【第2回】好きなキャラは?

  • 山田リョウ
  • 伊地知虹夏
  • 後藤ひとり
  • 喜多郁代
  • 下村楓
  • 伊地知星歌
  • PAさん
  • 廣井きくり
  • 岩下志麻
  • 清水イライザ
  • 大槻ヨヨコ
  • 長谷川あくび
  • 本城楓子
  • 内田幽々
  • ぽいずん♡やみ
  • 後藤ふたり
  • 暗殺前の山田リョウ
  • 初期案後藤ひとり
  • 郁代(ぱぺちゃ)
  • 伊地知ニジカ
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