幼馴染の変人ベーシストの料理番になった件について。   作:かんかんさば

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桜の開花が近づいてきたので初投稿です。

今回のお話は前後編にわかれています。


#42 変毒為薬(前編)

前回までのあらすじっ!(唐突)

 

「あっ、あたしぽいずん♡やみ、14歳で〜す!」

 

見るからにキッつい年齢詐称してそうな野生のぶりっ子が現れた。はいあらすじ終了。

さて、ふざけたあらすじは置いといて状況整理だ。

 

ぽいずん♡やみと名乗る自称ライターの突然の来店に───

 

「しゅ、取材……?」

 

結束バンド4人組は困惑し、

 

「アポとかとってらっしゃいますか?」

 

PAさんは平然となぞのフリを流し、

 

「キッツ、おえっ……」

 

店長は拒絶反応を示した。

ちなみに俺は拒絶半分、もう半分が不安と期待と言ったところだ。

 

「今のフリ流すの!?」

「喜多ちゃん、うちじゃ変な人は日常茶飯事じゃん」

「そうだな、きくりさんにひとり、リョウに虹k「なんか言った?」……いえ、なにも」

 

ここでは変な人の方が多いというか、俺の身の回りでまともな人の方を探すのが大変だと思うな。

 

「楓も十分変だよ」

「同感」

 

二人して地の文を読んでくるなよ。どういう能力だ?

 

 

裏で拒絶反応を示していた店長が気だるそうにやってきた。いつもの5割増しでおっかない感じがする。

 

「なんの取材しに来たの?」

「実はあたし今〜、シモキタで活躍中の若手バンド特集の記事を書こうと思ってまして〜! ぱぱっと終わらせますんで取材いいですかぁ〜?」

 

開場前に入ってきたり、いきなりキッついぶりっ子全開で話してきたりでイラッとするのだが、理由からして本当にライターを仕事にしてるのだろう。

あれ、ライターってそんなキャラ作りしないといけないような職業だっけ?

少なくとも姉貴はそんなキャラ作りしてない気が───

 

『あなたに笑顔と熱いロックの記事を届けます!ライターアイドル、下村伊織です!』

 

想像しただけで吐きそうになるからしてないでほしいな。

自分の中の記者のイメージが揺らいでるのとは裏腹に、虹夏たちは乗り気になっていた。

 

「あたし達ってもうそんなに注目されているんだ!? ありがとうございます!!」

「先輩凄いですね!これでもっと知名度上がるの間違いなしですよ!」

 

二人の発言に俺は盛大なフラグと()()()を感じてしまう。

そもそも結束バンドはまだ片手で数えられる程度しかライブをしたことがない。ノルマだって文化祭ライブのおかげで少しは余裕が出たとはいえ、捌き切れるか微妙な時が多い。

それにそのライブだって8月の時は台風でほとんど客は来なかったし、文化祭もひとりのギターの故障とダイブで最後までやり切れていない。

多少知名度が上がったと言ってもせいぜい秀華高と下高のごく一部しか知られていない。

そんなバンドをこの人がわざわざ取材しに来る理由がわからない。パッと見下北沢にあるライブハウスを片っ端から漁ってるようには見えない。

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「では早速質問しま〜す!結束バンドの今後の目標は?」

 

様子を見ていると取材が始まっていた。

なにかがあってからじゃ遅いから警戒しておこう。

 

「メジャーデビュー!」

「エンドース契約してタダで楽器もらう」

「みんなでずっと楽しく続ける事ですかね?」

「あっ、せっ、世界平和……」

 

マジで結束感ないなこいつら。バラバラじゃん。

ぽいずんさんは彼女達の回答にスマホでメモを取っていく。

 

「あれ、そういえばそこにいる天パの人、この前のSICK HACKのライブに出てましたよね?」

「はっ、はい……」

 

次の質問をするかと思いきや突然、俺に話しかけてきた。

なんで知ってるんだよ、と思ったがバンド系ライターなのだからあの時見に来てても普通だろう。

 

「サポートとして演奏されてましたけど、とても上手かったですよね? 普段はバンドとかで演奏されてるんです?」

「いや、バンドとかはとくに……」

「じゃあソロとしてなんですね? なんか勿体ないな〜。いいところからスカウト来るといいですね?」

「そうですね…… あの、結束バンドに取材してるんでしたらこういうのは彼女達の後にした方がいいんじゃないですか?」

「そうですね!いけないいけない!」

 

唐突な質問をなんとか乗り切り、結束バンドの取材へと戻ってもらった。

引き続き取材を続けるぽいずんさんを背に、俺はPAさんと店長の所へと移動した。

 

「お前すごいウザそうな顔してたな」

「凄いやりずらかったんですよ……」

「ふふ、お疲れ様です!」

 

PAさんにお疲れ様って言ってもらえただけで疲れが癒えてくる。

店長とPAさんと会話しつつ、引き続き結束バンドの様子を見る。

 

だんだん聞こえてくる質問の内容に、俺の違和感は加速していく。

なんと、ぽいずんさんは最初の質問以外、ひとりに関することしか聞いていないのだ。

ギターのこと、文化祭ライブのことなど、まるで取材を受けているのがひとりだけのように見えてくる。

 

 

ロッカーからモップを取りだし、掃除をするフリをして虹夏たちに近づく。

 

「ねぇ楓、もしかしてこの人……」

「あぁ、この人はひとりのことしか記事のネタにしないつもりだ」

 

どうやら虹夏も薄々勘づいていたみたいだ。

結束バンドの取材じゃなくてひとりの取材ならわざわざ他の3人まで集める意味はないし、失礼だ。知名度をあげるにしたってこんな形じゃ不服だろう。

まさかこの人……いや、ないだろう。ないと信じたい。

なんか結束バンドをいい方向に変えてくれるきっかけになる人かもしれないという予感が少し信じ難くなってきたな。

 

「店長、あの人想像以上にやばそうなんで止めてきてもらっていいですか?」

「えぇ…… お前が行ってこいよ。いつものように軽く毒吐けばあんなのすぐダウンするだろ」

「いや、店長が言った方がいいですよ。仮にもあいつらスタッフなんですから。それに僕よりも店長の2000年代後半のヤンキーギャルみたいな雰囲気の方がいいですって。ほら、みんな困ってますよ?」

「お前後で説教な」

 

程よくキレさせると、店長はぽいずんさんの所へと向かっていった。

よし、このまま大泣させて追い出してやれ!

 

「すみません、うちでの迷惑行為はやめてもらえますか?」

 

平成ヤンキー(伊地知星歌)のドスの効いた注意!

 

「……」

 

効果は───

 

「ふぇ……ごめんなさい……」

 

今ひとつのようだ!

ぽいずんさんのキッついぶりっ子ムーブ!

 

「セツドアルコウドウヲオネガイシマスネ……」

 

効果は抜群だ!

平成ヤンキーはキツさのあまり退散した!

 

「おねーちゃんの役立たず!!」

 

マジかよ、店長でも無理とかこの人もうあれじゃん、無敵の人じゃん!?

 

「って、みんなそろそろライブの準備しなきゃじゃん!」

「あっ、そうですね!」

「いこう、ぼっちちゃん! すみません、後はライブの後でいいですか?」

「あっ」

 

ライブの時間が近づいてきたのか、結束バンドはそそくさと楽屋の方へと入っていった。

 

「楓、受付頼むね!」

「任せろ!」

 

俺も急いで受付の方へと向かう。

今日も今日とてたくさんのお客さんがやってくる。中には結束バンドを見に来る人もいるが、その他のバンドを見に来る人も大勢いる。

大勢のお客さんを捌くのは大変だ。しかも今日はぽいずんさんがいる。そちらにも注意をしとかないといけないのが大変だが、やるしかないだろう。

 

「こんにちは! 今日はどのバンドを見にこられましたか?」

 

水を一口飲んで、俺は仕事を始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました〜! 結束バンドでした〜!!」

 

 

結局、その日のライブは何事もなく無事に終了した。

 

他のバンドが控える中、結束バンドはトップバッターとして出番を全うした。

演奏のレベルはプロと比べるとまだ全然だが、初めの頃よりは確実に上手くなっている。

他のバンドを見に来たお客さんもノッてくれていたし、今日のライブは成功したと間違いなく言えるだろう。

ただ、少し引っかかったことがある。ぽいずんさんの反応だ。

初めの方はつまらなさそうにスマホを弄っていたが2曲目、『星座になれたら』のあたりからキラキラした目でライブを見始めたのだ。しかも、視線はひとりにだけ向いていた。ギターソロのところでは釘付けになっていた。その様子は感動しているか、あるいは確信しているのか、またはその両方のような表情を浮かべていた。

そんな表情に俺は改めて感じる()()()()()()()が心の中にモヤモヤと浮かび上がってくるのを感じる。

 

「今日のライブ、すっごくよかったです!」

「あっ、ありがとうございます!」

「これ、差し入れの鈴カステラです! よかったら後でみんなで食べてください!!」

「あっ、どうも……」

 

ひとりのファンの二人組がひとりに差し入れを渡す。

いつの間にかファンを作っていたことに感心していると俺の上にどかっとリョウが座ってきた。

 

「ちょっ、重いんだけど……」

「疲れたから休憩させて」

 

だからって人のことを座布団扱いしないで貰えませんかね。

まぁ、少し楽になったからいいけども。

 

「演奏のこととかよく分からないけど最近すごいいい感じな気がします!」

「あっ、だいたい同じお客さんだから最近慣れてきて……」

「そこ慣れないで! 少しでもお客さん増やさないとダメじゃん!」

「まっ、まずは今いるファンのみなさんの前で最高の演奏ができるようになることが先なんじゃないかって……」

「正論かましてきた!!」

 

どっちの言ってることも正しいんだよな。

 

「あのっ……!!」

 

あ、やばいまた嫌な予感と違和感が出てきた……

 

「あっ、はい……」

「その……まさか、まさかとは思ったんですけど……」

 

まさか、まさかとは……って、おい嘘だろ、まさかそんなのは無いよな……

 

「その歌うようなギタービブラートのかけ方、所々に滲み出る演奏のクセ。絶対そう、間違いない!」

 

一瞬にして緊張感というか、恐怖心で冷や汗をかく。

どうか、どうかその言葉を口にしないでくれと祈ったが、その祈りはこの状況においては虚しかった。

 

「あなた、ギターヒーローさんですよね!」

 

その一言ともに、()()()()()()()になっていき、()()()()()()()()を帯びてきたのだった。

 




後編へ続く

後編では若干主人公が結束バンドに対してあたり強くなるかもなので注意です

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クロスオーバースピンオフは

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