幼馴染の変人ベーシストの料理番になった件について。   作:かんかんさば

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Switch2落選したので初投稿です。

ここ最近更新の間隔があいてしまい、ご心配をおかけして申し訳ございませんでした。


#45 大槻ヨヨコ伝説

 

俺が結束バンドにサポートメンバーとして加入してから2週間が経過した。

サポートと言えどこれまでとやることは変わらず、メトロノームをセットしたりお弁当を作ったりお金管理の補助をしたりしている。

ただ、喜多ちゃんやひとりが不在の時は彼女の代わりにそのパートを併せて弾いているという点ではこれまでと変わったと言える。

もちろん、声のかかっているバンドも疎かにしていない。

 

今日は練習もバイトもない、いわゆる完全オフの日。

俺はある人との待ち合わせのため、芳大前駅に来ている。

 

「待たせたわね」

「あ、やっと来た」

 

ある人というのは大槻だ。

どうやら新曲のインスピレーションを見つけるために出かけるらしく、ちょうど暇そうだったから俺を誘ったらしい。

本当なら家でA○EXのランク登りをするつもりだったのだが、たまにはありかもしれない。

 

「ところで今日はどこに行くんだ?」

「ふふん、聞いて驚きなさい!今日はこれから高尾山に行くわよ!」

「へー……ってマジかよ!?」

 

マジか、登山か。まぁ、ガッツリ登る訳ではなさそうだしいいか。

にしても高尾山か。お土産買っておかないと色々言われそうだな。特にリョウとかリョウとかリョウとかにはね。

 

「なにボサっとしてんのよ、早く行くわよ!」

「お、おう……」

 

それにしても上機嫌だな、大槻。これはこれで面白いかもね。

 

芳大前から京王線に乗ること45分。俺と大槻は高尾山口駅にやってきた。

同じ都内とは思えないほど一面山に囲まれていて、新鮮な気分になる。

時刻は10時の少し前。上の方でお昼を食べるには少し早い気がするが、混む前に席を確保することを考えるとちょうどいいのかもしれない。

 

「じゃあ俺ケーブルカーのチケット買ってくるから」

「なによ、まさかアンタそれで登るつもり?」

「そうだけど。普通こういうのってケーブルカーで登るやつだろ」

「ふんっ、アンタは甘いわね!高尾山は歩いて登るわよ!!」

 

【悲報】大槻ヨヨコさん、高尾山を登る手段がまさかの徒歩だったwww

 

嘘だろおい、歩道が整備されてるとはいえ無茶だろ。

歩いて登る人もチラホラ見えるけどそれなりに着込んでるぞ?

 

「山ってのはね、ちゃんと自分の足で登ってこそのものなのよ」

「そ、そうだな……」

「まぁいいわ、あたしは歩いて登るから。アンタはケーブルカーで登っときなさい」

 

大槻は自信ありげに登山道へと姿を消していった。

どうせすぐに戻ってきそうな予感がするが、気にせずチケット売り場の列に並ぶ。

高尾山にはどうやらケーブルカーの他にリフトがあるみたいだ。気になったので少し調べてみると、ケーブルカーと値段は同じみたいだ。

 

せっかく晴れてるんだから、こっちにしよう。その方が景色も楽しめるだろうし。

 

「すみません、これ2人乗りで……」

「そうなんですか」

 

マジか。ということはケーブルカーに乗るしかないのか。

係員さんに止められ、仕方なくケーブルカーのチケットを買おうとしたその時───────

 

「待って!」

 

後ろから声をかけられた。声の主は大槻。なんでここにいるんだ?

 

「まっ、まぁアンタがどうしてもリフトに乗りたいって言うんだったら私がその……一緒に乗ってあげてもいいわよ?」

「お、おう…… ありがとう」

 

突然の大槻カムバックに困惑しながら、俺はリフトの切符を買う。

リフトを待っている間に、戻ってきた理由を聞いてみることにした。

 

「ところで、なんで戻ってきたんだ? あんなに『あまちゃんのアンタとは違うから!』みたいな雰囲気出してたのに」

「ちっ、違うから!」

「なにが?」

「べ、別に思ったよりもキツくて戻ってきたとかじゃないから! アンタが困ってるんだろうな〜って思って仕方なく戻ってきてあげただけだから!」

「絶対理由前者だろ。にしてもキツかったんだ〜。まぁ無理するのはよくないですしね〜?」

「……」

 

ちょっと煽るとこのふくれっ面が拝めるの最高だろ。やっぱ面白いわこいつ。

リアクションを楽しんでいるとリフトがやってきた。係員の案内に従って乗り込む。

 

駅を出ると、辺り一面に綺麗な紅葉が広がっているのが見える。季節も相まってとても幻想的だ。

 

「綺麗ね、なかなかセンスあるじゃない」

「ありがと」

 

さっき俺の事甘いとか言ってましたよねあなた?

 

しばらく景色を楽しんでいるうちにあっという間に終点に着いた。ここから山頂までは歩いて50分ほど。喋りながら登ればすぐだろう。

 

「にしてもさすが高尾山人いっぱいいるな」

「ぜぇっ……はぁっ……アンタ、よくそんなペースで……の、登れるわね……」

「そうか? 結構ゆっくり目に登ってるつもりだけど……」

「……」

 

ヘトヘトになる大槻にペースをあわせて、そこそこ時間をかけて登っていった。

登り始めてから1時間と少し、ようやく山頂へと辿り着いた。

 

「すごく混んでる……」

「ハァ、ハァ、人多すぎでしょ……」

 

日曜のお昼時なので当然と言えば当然だが売店やレストランは混んでいた。レストランに入って空席を探してみたはいいものの、見つからずやむなく諦めて小さめの茶屋に入ることにした。

 

「すみません、ラーメンの大盛りをひとつお願いします。あ、大槻は?」

「あたしも同じので。あ、サイズは普通でお願いします……」

 

テーブルに座ってすぐに料理を注文した。山で食べるラーメンは美味しいってどっかの誰かが言ってたような言ってなかったような。

 

「さむっ!」

 

ラーメンを待っているとピューっと風が吹いてきた。もう11月も下旬にさしかかろうとしている。今の風が冬の訪れと言ってもおかしくない。

 

「ふっ、あ、アンタその程度で寒がってるの?」

「ミニスカ履いてるお前に言われたかねぇわ!」

「はぁっ!?ちょっ、あんたどこ見てんのよ!?」

「服装見ればわかんだろ」

「……」

「あ、もしかして黒いパンツ見られたのが悔しいのか?」

「や、やっぱり見てたじゃないこの変態っ!!」

 

嘘です。見てません。やっぱりこいつ簡単に引っかかるから面白いな。

 

「あてずっぽで言っただけで別に見たとは一言も言ってませんが? もしかして当てちゃった感じ?」

「うっさいこのスケベパーマ!!」

「ごへぇぁっ!?」

 

初めて腹パン食らったわ。結構痛いなこれ。

 

 

「お待たせしました〜。ラーメンの大盛りと普通サイズで〜す」

「ありがとうございます!」

「ごゆっくりどうぞ〜」

 

大槻のリアクションを楽しんでいると頼んでいたラーメンがやってきた。

あたりは少し冷えているからか、ラーメンの温かさが体に染みる。醤油味のスープとコシのある麺が箸の進むスピードを加速させる。

 

「おいしい……」

 

大槻もご満悦の様子だ。

嫌なことがあって癇癪を起こしたと思えば、いいことがあってすぐに上機嫌になる。感情の乱高下が激しいタイプだがなんだかんだ本人は楽しいのかもしれない。

 

「あ、楓くんに大槻ちゃんじゃ〜ん!!」

 

ラーメンを食べながらそう考えていると見知った酔っ払いが一升瓶を持ってやってきた。なんでそんな状態でここにいるんだよ、というツッコミはめんどくさいので口に出さないことにした。

 

「姐さん!?どうしてここに?」

「昨日4件ぐらいハシゴしてなんか気づいたらここにいたんだ〜」

「へぇ、山で飲むお酒は美味しいですか?」

「そりゃ格別だよ〜! 空気が澄んでるから新鮮な気分でお酒飲めるしさ〜!!」

 

そりゃ新鮮でしょうね。あんま見ないもん、山のてっぺんでお酒飲む人。

 

「あれ、君たち2人で一緒ってことはもしかしてデート? ってことはもう付き合っちゃってる?」

「ちっ、違いますよ!!」

「そっ、そうですよ姐さん! だっ、だだ第一こんなやつと付き合うわけないじゃないですか!!」

「そう? 意外とお似合いだと思うけど」

 

廣井さんの言葉に大槻は顔を真っ赤にする。

いやー、面白い面白い。

 

「あ、そうだ!楓くんにオファーを持ち込んできたんだ〜!」

 

なにかを思い出したかのようにきくりさんはそう言って、バキバキに割れたスマホを見せてきた。

画面には『【オープニングアクト】 下村楓』と書かれていた。

 

「えっ、どういうことですか?」

「どういうことってそういうことだよ〜。今度のクリスマスイブのライブ、楓くんにオープニングアクトをやって欲しいんだ〜!!ボーカルもできるって伊織から聞いたからちょうどいいかな〜って」

「なっ、またしても私を差し置いて……」

「どう、やってみない?」

「へぁぇっ!?」

「驚きすぎて変な声が出てる……」

 

SICK HACKは毎年クリスマスイブにライブをやっている。大槻やきくりさんから話を聞く限りかなり盛り上がるらしい。

そんなライブのオープニングを俺が飾っていいのだろうか?

 

「そんな、俺なんかでいいんですか? まだ駆け出しのど素人ですよ!?」

「君の実力をより広く示すにはいい機会だと思うんだよね〜」

 

きくりさんの言うことに間違いは無い。ただ、とてつもなく怖いだけだ。これまでは誰かしらと一緒にステージに上がったが、ソロは初めてだ。今までの経験は活きてくるかもしれないが、それでも怖い。

 

そう思った刹那、ある言葉が頭をよぎった。

 

『今日のライブ、見に来た人全員をファンにするくらいの気持ちでやった方がいい。そうすれば絶対成功するから』

 

初ライブの時にリョウがかけてくれた言葉だ。

 

そうだ、全員ファンにするくらいの気持ちで行けば大丈夫じゃないか。その気持ちさえあればソロでも平気だな。

 

「大丈夫だって〜。今までやってこれたんだし、ソロだって行けるよ〜!」

「ですよね、やってみます。いや、是非ともやらせてください!!」

「おお〜!! いいねいいねぇ〜!! じゃあバックバンドのこととかは今度決めるからそこんとこよろしくねぇ〜!!」

 

かくして初めてのソロ出演が決まった。なんだか楽しみだな。

 

その後しばらく談笑した後、山頂でもう少しお酒を楽しみたいと言っていたきくりさんと別れて俺と大槻は下山した。

 

帰りの電車は座席指定の列車のチケットを買った。疲れてる以上確実に座れた方が楽だからな。

今はホームでその電車を待っている。

 

「ところでインスピレーション湧いたか?」

「えぇ、もちろん。いい曲が書けそうだわ」

 

ラーメンを待っている間も、景色を楽しみつつ下山している間も大槻はちょくちょくスマホでメモをとっていた。

文字を打ち込む彼女の顔はその道の人のような感じがした。

 

「そういえば、次の結束バンドのライブっていつなの?」

「12月3日の土曜日」

「わかったわ。その日予定ないから見に来てあげるわ」

 

こいつ絶対アイツらにマウント取るつもりだ……

ん、待てよ。大槻がスターリーに来るってことは───

 

『へぇ、君が噂の大槻ヨヨコか……』

『なによ……』

 

リョウと一悶着あるかもしれないな。

いや、別に彼女ではないからあのネタを終わらせられるいいチャンスだ。

 

「ちょっと、なにボケっとしてんのよ。早く乗るわよ!」

「あ、ああごめんごめん」

 

少し怒った大槻に着いていくように俺は電車に乗りこんだ。




次回、「幼馴染2人組VS大槻ヨヨコVSダーク○イ」

学校があまりにも忙しすぎるので、夏休み初め頃までは不定期亀更新になります。


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