幼馴染の変人ベーシストの料理番になった件について。   作:かんかんさば

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いつの間にか年が明けるどころか1月も終わっていたので初投稿です。
別に某学マ○スとか某シャ○マスに浮気していた訳ではありません。断じてありません。

この小説のネタifルートで主人公初○学園入学ルートとか28○プロ就職ルートもありだな。(確信犯)


#52 仲間がいる

クリムトの夜に加入してから早3週間がたった。入ってからユニットに関して何があったかというと、それが特に何も無かった。

というのも、他のメンバーは2人とも別の仕事をしている。ワラビさんはモデル、AmeさんはボカロPのようなお仕事をしていて、なかなか集まる機会がない。司馬さんはそれを「昼の顔」と言っていた。なら俺の「昼の顔」はなんだろうか、学校行ってバイトして幼馴染に飯作る高校生なのかもしれない。

そんなこんなで、既存の曲を練習している。クリムトの夜はすでに5曲を発表していて、途中加入の俺は次のライブまでにこの曲達をモノにしないといけない。あと4ヶ月もあるとはいえ、そこで新曲もお披露目するということを考えれば尚更早く仕上げないといけない。

 

「おーい楓、ぼーっとしてんぞ」

「あっ、すみません……」

 

実際睡眠時間を極限まで削って練習している為、寝不足気味だ。エナジードリンクを飲んで凌いでいるとはいえ、効果が絶対とは限らないみたいだ。

 

「お前ここ最近ずっと働いてるけど大丈夫なのか?」

「これぐらいどうってことないですよ。稼げる時に稼いどかないとあとで苦しくなるんで」

「……そうか。ただ無理はすんなよ? それ終わったら絶対休憩入ってもらうからな」

「はーい」

 

寝不足に加えて、店長の言う通りここ最近はずっとバイト漬けだ。確か今日で6連勤だ。しかもこれを2週連続でやっているから心配されるのも無理はない。でも、バイトを休む訳にはいかない。

 

その理由は──

 

「リョウ、どうしちゃったんだろ…… バイトも学校も来ないし、ロイン入れても返事こないし…… あ、そっちはどうなの? ご飯食べに来たりとかした?」

「いいや、全く来てない」

 

リョウが学校にも、バイトにも、俺の家にも来なくなったのだ。顔を見せなくなったのはスカウトされた2日後。初めはただの体調不良と思ったが、こんだけ長い間休むとは思わなかった。

 

俺は彼女の代わりにシフトに入っている。なので尚更休む訳にはいかないのだ。

 

『あいつ、絶対シバく』

 

とはいえ、勝手に長期間休まれてるのもあって店長はお冠だ。はやくこい。

 

「あっ、おはようございます……」

「おはよ〜ぼっちちゃん」

「あれ、喜多ちゃんは? いつもなら一緒に来てるのに」

「あっ、喜多さんならここに」

 

ひとりがテーブルの下に指を指すと、そこにはいつものひとりみたいなオーラを出して病んでる喜多ちゃんがいた。

 

「生きるのしんどいわ……」

「ちょっと、どうしたの!? なんかぼっちちゃんみたいになってるけど」

「さ、最近リョウさんがバイト来ないから落ち込んでるみたいで……どうすれば……」

「それでこんな風になってたのか」

 

喜多ちゃんも最近少し暗いと感じてたけど、リョウが原因だったんだな。

 

「なんだこのストーリー『もう無理まじ無理病む……ぴえん』? イソスタは更新してるみたいだな。相当辛そうだけど」

「まだSNSやってるうちは大丈夫だよ」

 

まあストーリーにポテチとかファ○タ写ってるし大丈夫そうだな。

 

「富士の樹海にサスペンスの崖……へへっ、映えそうね」

「きっ、喜多さんがあんなに落ち込むなんて……」

「別にぼっちちゃんだったら気にしないけど……喜多ちゃんだとちょっと心配だな〜」

「えっ」

「ほら、ひとりはいつもあんな感じだし気になんないからな。逆にいつもの喜多ちゃんみたいになった方が心配だわ」

「うぅ……」

 

だってひとりはほっといても大丈夫っていう謎の安心感があるからね、仕方ないね。

 

「喜多ちゃんは最近リョウに呆れてることもあったけど、やっぱり憧れてるんだね……」

「あっ、そういえばリョウさん今日もバイト来ないんですね」

「うん…… 何の連絡もないし……」

「実は学校にも来なくなったんだよ」

「嫌ああああああ!!」

「!?」

 

学校にも来なくなったことを打ち明けると喜多ちゃんが突然発狂しだした。

 

「それは絶対恋!! 男だわぁぁぁっっ!!」

「ちょっ、喜多ちゃん! 急にどうした!?」

「悪い男に引っかかったに違いないわ!! 女が突然変わる時そこには大抵男がいるのよ〜っっ!!」

「えぇ……」

 

それだけじゃないだろ。まぁ姉貴は高校生の頃彼氏に振られた時盛大に髪を切ってたけどさ。

 

「こんなに女子がいるのに、男子の楓先輩も含めて誰一人浮かれた話がないから何か見えない大きな力が働いているかと思って安心してたけど」

「な、何の話?」

「そんなことなかったのね〜!!だって女子高生だもの〜!!」

 

やばい、こんな暴走は初めてだわ。てかなんだよ、楓先輩含めてって。悪かったな浮かれた話がなくて。

 

「あれ、男……そうだ、いるじゃないですか。リョウ先輩を誑かした悪い男がそこに……」

 

突然ピタッと落ち着いたかと思いきや、ハイライトが完全に消えた目をして俺を指さして来た。

 

「先輩、もしかしてあなたですか?リョウ先輩を誑かしたのは」

「えっ、俺?」

「だっておかしくないですか? 毎日ご飯作って一緒に学校行ってって……」

「そりゃ俺はあいつの料理番だからご飯作るのは普通だし、学校行くのは幼馴染だし当然でしょ……」

「そうやって口実を作って先輩を誑かしたんですよね?」

「いや違うって。そもそも俺に「言い訳は聞いてません!」えぇ……」

 

目が完全にキマってるから凄く怖いんだけど。

 

「先輩、正直に言ってください……」

「だから、俺とリョウは別につk「別にいいですよ?」ちょ、話聞いてよ……」

「バンドマンには恋愛が付き物ってよく言いますしギタリストとベーシストですから演奏合わせて心を通わせるなんてこともありますでしょうし楓先輩なら真面目で優しいしギターも上手いですから将来も安定してそうですしリョウ先輩も安心して暮らせそうですね。あ、でも楓先輩もバンドマンですしいろんな女の子を手篭めにしたって話がありますから私としては安心できないですね。もしかしてリョウ先輩の心に漬け込みつつ先輩の実家の財産を? ということは楓先輩はとんでもない男なのでは? まあでもいいですよ。先輩が決めたことですし……」

「喜多ちゃん、一旦落ち着こうよ。まあ、楓なら一部本当にやりそうだけどさ」

「おい一言余計だぞ」

 

途中一部褒められてたような気がしたけど全然嬉しく感じないわ。

 

『彼氏なんだから手、つなごうよ……』

 

なんでこんな時にフラッシュバックしてくるんだよ……!

 

「あっ、楓顔赤くなってる〜! もしかして楓ってリョウのこ「今その話はいいだろ?」えぇ〜」

「まずはリョウをどうにかしないとだろ」

 

すぐ恋バナにつなげようとする。待てよ、これ結構めんどくさいやつじゃん。まあいい、リョウの心配をした方がいいだろう。

 

「まあ、そうだね。うーん、どうしよっか〜」

「みっ、みんなでリョウさんの様子を見に行きませんか?」

「大丈夫だと思うけど……」

「あっ、でも虹夏ちゃんも楓くんも元気ないように見えるから」

「ぼっちちゃん……」

 

ひとりの言う通りだ。あいつがいないと若干寂しく感じる。ご飯も学校もバイトも、全部リョウがいることが当たり前のように捉えているからこそそう感じるのかもしれない。

それにしても、ひとりは意外と周りのことを見れている。成長というか、新しい発見のような気がしてとても嬉しい。

 

「私も行きたいです〜〜!! けどもし彼氏がいたら明日だけバイト休みます! 楓先輩が彼氏なら先輩も休ませます!! 先に言っておきます!!」

「そんなしょうもないことに人を巻き込むなよ」

「……喜多ちゃんを静かにさせるためにも行こうか」

 

 

 

 

騒ぎに騒ぎまくる喜多ちゃんを連れて、リョウの家へと向かう。スターリーからは歩いて5分ほど。すぐに着くだろう。

 

「かっ、楓くんと虹夏ちゃんはよく行かれるんですか?」

「うーん、まあ1〜2週間に1回は行くかな〜。学校ある日の朝に」

「朝?」

「あいつ朝弱くてよく寝坊するから叩き起しに行ってんの」

「そうなんですね〜」

「お、着いたぞ」

 

喋りながら歩いているとあっという間に到着した。

 

「あっ、豪邸ですね……」

「病院やってるからな。今いるのかな、聞いてみるわ」

「ちょっと先輩、見てください! あれ……」

 

喜多ちゃんが指をさした先には、テントと寝袋にくるまっている人がいた。恐らくリョウだろう。

 

「おーい、バイトサボって何してんだよ」

「いやん」

 

寝袋のフードを上げると、リョウが出てきた。なんでここでキャンプしてんだよ。

 

「なにがいやんだよ庭でキャンプなんかして」

「遠くに旅に出ようと思ったけど準備してるうちに遠出するのダルくなって庭でキャンプしてた」

「はぁ……」

「あ、あと寝袋で寝てる私を起こすならもう少し丁寧にかつロマンチックにね」

「シチュエーションを求めるな」

「先輩! パソコンも持ち込んでるしご飯もケータリングしてますよ!」

「ゆるキャンいえい」

「「キャンプ舐めてんのか!」」

 

某野クル部員たちに謝ってこい。

てかテントまで準備できたんならせめて近場でもいいから行ってくればいいのに。

 

「も〜、急に旅なんか!心配したんですよ? 男の趣味にでも染まったんですか?」

「別に……」

 

別に、ってことは彼氏が出来たとかそういう訳じゃないみたいだな。いや、まだ確定した訳じゃないしな。いやいや、詮索するな気持ち悪い。

 

「リョウちゃ〜ん! BBQ準備できたよ〜!」

「デザートもあるぞ〜!!」

 

後ろから声がしたので振り返ると、リョウのご両親がBBQをしているのが見えた。

 

「リョウのお父さんお母さん!」

「山田先生!」

「あら〜、2人とも久しぶり〜」

「君たちも参加するかい? 夜には花火もやるよ〜」

「病院の方は大丈夫なんですか?」

「リョウちゃんが家にいてくれてるから病院は休業してるの!」

「「おい社会人!!」」

 

相変わらずリョウの両親の溺愛ぶりは尋常じゃない。流石に病院休業は心配になるが。

 

 

「……とりあえず、みんな中に入って」

 

若干呆れた様子でリョウは自身の部屋へと、俺たち一行を招き入れた。

相変わらず、彼女の部屋は綺麗に整っている。ギターにベース、バイオリンにDTMのキーボード。人の家は散らかしていく癖に、こういう所はしっかりしてるんだよな。

 

「わ〜、楽器が沢山! ギターもこんなに持ってるんですね〜」

「あっ、バイオリンも……」

「昔習ってた」

「そういえば、私が間違えて買った多弦ベースってありますか?」

 

あっ、触れてはいけないことに触れちゃったよ。

 

「……これ」

「え、でもこれ違うやつですよね?」

「これになった」

「……」

 

自信満々にベースを掲げるリョウ。そして、多弦ベースがどうなったのかを悟る喜多ちゃん。

 

「売り飛ばされた……」

 

改めてみると本当に可哀想だな。本当買い取ったとはいえ、売り飛ばすとか、人の心とかないんか?(某ドブカス)

 

「あっ、曲作ってたんだね」

「まぁ……」

「ほんとだ!曲たくさんあるじゃないですか! 聞かせてくださいよ」

 

一瞬で立ち直った喜多ちゃんに迫られ、リョウはモニターを担いで必死に隠そうとする。

遅かれ早かれ曲の全容はわかるのだから隠す必要なんてないのに。

 

「なんでそんなに隠すんですか……」

「作りかけだし微妙だからまだ聞かせたくない……」

「そんなことないですよ! いつもいい曲作ってきてくれるじゃないですか!」

「今までのクオリティなんかじゃデモで落とされる。もっといいの作るから待ってて…… できたら連絡するから今日のところは帰って。気が散る」

「おい、その言い方はねぇだろ。みんなお前のことを心配して……」

 

彼女がいつも通りではないことはわかってる。でも、突き放すような物言いを見過ごす訳にはいかない。続けて言葉を投げかけようにも上手く出てこない。

 

どうにか言葉を捻り出そうとすると、後ろからギターの音色が聞こえた。振り返ると、ひとりが床に散らばった楽譜を見て、演奏していた。

 

「あっ、それいいフレーズだね」

 

ひとりに感化されるように虹夏もスティックを用いてティッシュを叩き始めた。さらにそれに釣られるように喜多ちゃんもギターを合わせ始めた。

 

「リョ、リョウさんもセッションしませんか……?」

 

ひとりが問いかけると、リョウは無言でベースを取り、問いかけに応えるように音を合わせ始めた。

まだ完成すらしていないのに、彼女らが奏でる音色は、まるでライブをしているかのように感じるほどピッタリ合わさっている。それぞれからこぼれる笑みに、俺は嬉しく感じる。

 

「あっ、リョウさん……いっ、今のいい曲だと思いませんか……?」

「……うん」

「だから私言ったじゃないですか〜! そうだ、みんなでもう1回合わせましょうよ!!」

「それはいいけどそのギター40万するからぶつけないでね。万が一のことがあったら倍の額で弁償してもらうから」

「あっ、勝手に借りてすみません……」

 

金額で脅すな。しかもサラッと集ってるし。80万も修理代で使うことは無いだろ。どうせ余った金でギター買うくせに。

 

「虹夏、楓、勝手にバイト休んでごめん」

「あたしはいいけどちゃんと明日お姉ちゃんに謝ってね! あと、代わりに楓も出てくれてたからちゃんとお礼言って」

「うん、楓、ありがと」

「いいよ全然」

「……ごめんね、リョウがそんなになるまで気づかなくて」

「俺も悪かった。また落ち込んでるのに気づけなくて」

 

こういう時、自分の無力さを痛感する。また彼女の心の憂いを見過ごしてしまっていた。

 

「2人ともいいよ。別に私が勝手にスランプなっただけだから」

「リョウ……」

「みんなこのフェスに賭けてるから、結果がダメだったらみんな辞めるんじゃないかって不安になってた」

「……もう!」

「ごふっ」

「わーお、唐突な暴力」

 

雰囲気をぶち壊すかのごとく、虹夏はリョウにバックドロップを浴びせた。痛そうだな。

 

「確かに今度のフェスは今の私たちにとって大事だけど、だからって結果が悪いくらいで解散するわけないでしょ!」

「……」

「このメンバーで音楽やってるのが楽しいからバンド組んでるんでしょ! これからはちゃんとみんなを頼るんだよ、バンドなんだから! ね、楓!!」

「ああ、仲間なんだし、困った時はお互い様だろ。」

「あっ、いいんですか? それなら欲しい機材あるんで1人5000円ほど……」

「ふんっ!」

 

至極真当な拳骨、お見事にございます。

 

「でもリョウがそこまでバンドのこと思ってたなんてね」

「本当、いつもどうでもよさそうにしてる癖に素直じゃないよなお前は」

「そうだよ、2人とも知らなかったの?」

 

リョウのまぶしい笑顔を見るに、きっとそれが本心なのであろう。まぁ、前のバンドを辞めた理由にも通じるところだしな。

 

「それじゃさっきのセッション形にしたいから帰ってくれる? 忘れないうちにやりたいから」

「てめ〜……!」

 

おい、せっかく感動する雰囲気だったのに2度もぶち壊されてるじゃねぇか。どうしてくれんのこれ。

 

「さっきバンドを頼れって言ったのに〜!」

「それはそれ、これはこれ」

「おいおい、早速仲間割れかよ……って、電話か?」

 

取っ組み合いになっている2人を他所に部屋を出て、通話に応じる。相手は司馬さんだ。

 

「もしもし、下村です」

『お疲れ様です、司馬です』

「お疲れ様です。どうしましたか?」

『明日、活動に関してお話したいことがありますので、事務所に来てください。』

「わかりました」

『よろしくお願いします。では、失礼いたします』

 

なにか、大きな動きがある予感がする。事の全容を知らないのにそう感じてしまう。この先、何が待ち受けているのだろうか。




次回、「アドベンチャー」

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クロスオーバースピンオフは

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