幼馴染の変人ベーシストの料理番になった件について。   作:かんかんさば

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定期テストが近いので次回は少し先になりそうです。



#8 たこ焼き

────ジリジリジリジリ……

 

────カナカナカナカナ……

 

アブラゼミとヒグラシの鳴き声に夏の夕方の涼しさを感じる8月の上旬。

今日は花火大会ということもあり、下北沢駅は会場に向かう人で溢れている。俺は改札の前でリョウと虹夏を待っていた。特にドレスコードとかは決まっていないが、毎年2人は可愛らしい浴衣を着てきて、俺も2人と歩くのに恥ずかしくないくらいには洒落た服装で行くのがお決まりになっている。今年はどんな浴衣を着てくるのだろうか、なんて考えてるとポンポンと肩を叩かれた。

 

「おまたせ」

 

「ごめんごめん、結構待ったでしょ」

 

「ううん、今来たとこ」

 

リョウと虹夏がやってきた。リョウは白色ベースに紫陽花模様のカラフルな浴衣、虹夏は黄色のひまわり柄の浴衣に赤色の簪を身につけていて、普段とは違いなかなか魅力的に感じる。

 

「似合ってるよ、その浴衣」

 

「えへへ、そう?」

 

「私のような美少女には当然の言葉」

 

「ハイハイソウデスネー」

 

確かにリョウが美少女なのは間違いでは無いが、行動と性格で見た目のイメージ全てを破壊する残念系美少女と言った方が彼女にはあってる気がする。

 

「そろそろ電車来るし、いこっか」

 

「そうだな」

 

俺は2人とともに改札に入りホームへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会場に入ると、スピーカーから若干音割れ気味の祭囃子が聞こえてくる。

 

「はい、これ座席指定のチケット」

 

「かたじけない」

 

「あ、ありがと。っていってもまだ時間あるね」

 

花火が打ち上がるのは8時、今の時刻は6時なので2時間ほど余裕がある。

 

「じゃあ屋台巡りでもするか」

「お〜、いいね〜。リョウもどう?屋台めぐり」

「賛成」

「じゃあ楓、エスコートよろしくね!」

 

毎年一緒に回ってる幼馴染とはいえ、女の子2人をエスコートするのはなんだか恥ずかしい。俺は少し赤くなった顔を2人に見せないよう、2人より前を行く形で歩き始めた。

 

まず最初に向かったのはかき氷の屋台。夏祭りといったらこれに尽きる。

 

「何にする?」

 

「う〜ん、あたしはブルーハワイにするけどリョウは?」

 

「みぞれ」

 

みぞれを頼むってなんか意外だな。

 

「すみません、ブルーハワイとみぞれとコーラ一つずつください」

 

「あいよ!」

 

注文すると屋台のおじさんの威勢のいい返事が返ってきた。

氷が削れる音を聞きながら、昔のことを思い出す。

 

小学生の頃、3人でかき氷を食べたあと、よくシロップで染まった舌を見せ合って笑いあっていたものだ。

 

「わはは、楓ベロ真っ青じゃん」

 

「そういう虹夏だってベロ緑じゃん!」

 

「わたしは真っ赤……」

 

小さな頃の思い出って今も消えずに鮮やかに残るものだと思う。

 

「あいよ、ブルーハワイにコーラ、みぞれ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

屋台のおじさんからかき氷を受け取って、2人に渡す。かき氷を口に運ぶと冷たくも甘い味が口の中に拡がっていく。

 

「やっぱ夏のかき氷って美味しいね!」

 

「みぞれってこんな味なんだ」

 

2人とも美味しそうに食べる姿を見ると、お金を出してあげた甲斐がある。

あ、やばい...頭痛くなってきた。

 

「にしても兄ちゃん、両手に花だなぁ」

 

「あ、はい。よく言われます」

 

自慢ではないが、中々美人な幼馴染を2人も連れてるんだしそう言われるのも仕方ない。まあ、一方の中身は...アレだけど。

 

「照れっ//」

 

そう、中身はアレだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから射的にくじ引き、ヨーヨー釣りとお祭り定番の屋台を回り、気づけば夜の7時半になっていた。

 

「お腹すいた」

 

「あ〜、あたしもお腹すいたなぁ」

 

「たこ焼きとか買ってこよっか?あれなら腹持ちもいいだろうし」

 

「じゃあ、お願いするね」

 

「りょーかい。じゃあ先に席行っといて。たこ焼き買ったらそっち行くから」

 

2人と別れ、俺はたこ焼きを買いに行った。いざ屋台に向かうとそこには長い行列が出来ていた。さすがに長すぎると思い、別のところに並ぼうとするとクラスメイトに話しかけられた。

 

「よぉ、下村。久しぶり」

 

「蘆名か、久しぶり」

 

「お前もたこ焼き買うんだろ?一緒に並ぼうぜ」

 

「あぁ、いいよ」

 

蘆名というのはクラスメイトのことで、4月の最初のLHRで話しかけてきた出席番号1番の子だ。あれから趣味があって意気投合し、今では結構仲良くしてもらっている。

 

「今日って1人?」

 

「いや、リョウと虹夏と3人で」

 

「山田さんと伊地知さん?あんな美人2人と回れるなんて羨ましいわ〜」

 

「そうか?虹夏はまだしもリョウは大分アレなやつだと思うけど」

 

「いやいや、山田さんと一緒に回れたらきっと楽しいに違いないだろ」

 

たぶんミステリアスで思慮深い美人かなんかだと思ってるんだろうな。

蘆名よ、お前が抱いてるイメージのリョウは実際のリョウとは180度別の性格だぞ。

 

「そういえばここのところどうしてる?」

 

夏休みの出来事について、蘆名が尋ねてくる。

 

「うーん、三浦にマグロ食べに行った以外は普通にバイトいったりリョウに飯作ったりとか」

 

「へ〜、山田さんにご飯作ってるんだ」

 

「うん、図々しいしいろいろ上から目線だけど美味しく食べてもらってる」

 

「それってさ、週に何回くらい?」

ズケズケと聞いてくるな...

普通そこまで気になるようなものか?

 

「ほぼ毎日くらいかな……?最近はたまに泊まっていったりしてる」

 

「え、確かお前って一人暮らしだよな?」

 

「うん」

 

「それで付き合ってないのか?」

 

「まぁな」

 

「でもちょっとは意識してたりして」

 

「んなわけねぇよ」

 

「あっ、そう……。まぁ、毎日ご飯食べに来てくれるってことは一人暮らしの中で話し相手になって結構助かってたりして」

 

「半分そうだけど残りは違う」

 

リョウがちょくちょく家に泊まるようになったのはバンドを抜けてからのことで、蘆名の言う通り、話し相手になってくれているのは助かるが、リビングを占拠されたり私物を置いていかれりされて結構困っている。

 

「お、そろそろ先頭じゃん」

 

「あ、ほんとだ。あっという間だったな」

 

いつの間にか列の先頭付近まで進んでいたことに驚く。先頭になると俺と蘆名は財布を取りだし、たこ焼きを買って別れて2人の所へと戻った。

 

「あ、こっちこっち!」

 

「遅い」

 

2人のところに戻るといつの間にかレジャーシートが敷かれていて、そこにはラムネが人数分並べられていた。

 

「ごめん、蘆名と話してたら遅くなった」

 

「へ〜、蘆名くん元気そうだった?」

 

「相変わらずって感じだった」

 

「それなら良かったよ」

 

「楓、早くたこ焼き出して」

 

「はいよ」

 

リョウと虹夏にたこ焼きを渡して俺もレジャーシートに座る。

そろそろ花火が打ち上がる時刻なのか、辺りも賑やかになってきた。

 

「それじゃあ、今年も3人で花火大会に行けたことを祝して〜、乾杯!」

 

「「乾杯!!」」

 

虹夏の合図でラムネの瓶を互いにコツンとぶつけて、栓を開ける。溢れるラムネを急いで飲むと、これから打ち上がろうとしている花火に対する期待を表すような甘い味がした。

すると、

 

 

────ヒュー......パバババン!

 

 

打ち上がったスターマインが夏の雲一つない晴れた夜空を華やかに照らした。

会場にいる人たちは鮮やかに光るそれをうっとり見つめていたり、「たーまやー」と掛け声をかけたり、それぞれ違う、様々な方法で花火を楽しんでいる。俺たち3人はラムネを飲み、たこ焼きをつまみながら打ち上がる花火を眺めていた。

 

「楓、私が持ってる空のパックと楓が持ってるたこ焼きが入ってるそのパック、交換しよう」

 

「それ全部よこせってことだろ?」

 

「うむ」

 

「はぁ、俺もたこ焼き食べたいから2つだけあげる」

 

「ほら、リョウ。あたしもあげるよ」

「かたじけない」

 

 

2人でたこ焼きをリョウに差し出す。すると彼女は目を輝かせながら美味しそうにたこ焼きを口にする。

 

「やっぱ夏に見る花火って綺麗だな」

 

「わっかる〜。あの鮮やかな感じがいいよねぇ」

 

「ははひひながははべるはほやひははくへふ(花火見ながら食べるたこ焼きは格別)」

 

「口に食べ物入ってるときにしゃべるなよ……」

 

3人で花火を見ながら話すのが楽しいのは昔から変わらないが、今年はより一層楽しいと感じるのは夏の魔法のせいなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや〜、楽しかったねぇ」

 

「夏って感じがして楽しかったよ」

 

「私の心も満たされた」

 

 

花火大会が終わって、下北沢に戻り、3人で歩きながら話す。夏の涼しい夜風が頬を撫でるように吹き、また1つ、夏の思い出が出来たことを告げる。

 

「それじゃ私、こっちだから。また明日〜!」

 

「また明日」

 

「じゃあね」

 

虹夏と別れて、リョウと2人で歩く。

もうとっくにリョウの家の前は過ぎているし、今日も泊まっていくのだろう。

 

「今日も泊まるんだろ?」

 

答えは分かりきっているが、リョウに尋ねる。

 

「うん。疲れたし少しお腹空いた」

 

「俺も少しお腹空いたけど、さすがに今から飯作る体力はないぞ?」

 

「ならカップ麺とかは?」

 

「あるよ」

 

「じゃあ料理番、お湯入れといてね。シャワーから出たらすぐに食べたいから」

 

ほんとこの変人は図々しいな。

少しは着替えとかカップ麺を用意するこっちの身にもなってほしいものだ。

 

「変人って、なんか照れる」

 

「心を読んでくるなよ」

 

ふりかえってこちらを見てくるリョウの、街灯に照らされた顔が綺麗だと思ったのもきっと、夏の魔法のせいなのかもしれない。俺はそう思うことにした。

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

おまけ

ひとりと従兄

 

私、後藤ひとりには尊敬するいとこがいる。

名前は下村楓。私の1つ年上で、よくからかってきて、言葉遣いにトゲがあったりするけど、こんなぼっちで陰キャでミジンコみたいな私にも優しくしてくれる自慢のいとこだ。

この前、楓くんが家に泊まりに来たとき、彼に下北沢の方の高校に行きたいのかと聞かれ、私は「高校は誰も知らないところに行きたいから……」と答えた。

誰も私のことを知らない"という条件であれば県内の遠いところでも良かったが、わざわざ下北沢の高校にした理由はそう、楓くんがいるからだ。

楓くんの住む下北沢はお洒落な街で、こんな私には全く似合わない。でも、これは"素の私"にとっての話であって、"ギターヒーロー"の私であれば話は別だ。

ギターヒーローというのは私が小遣い稼ぎがてら動画投稿や配信を行うのに使ってるアカウントで、私は視聴者さんたちから"バスケ部のキャプテンが彼氏のリア充女子中学生”というイメージを持たれている。

最初は否定しようと思ったけどなんだか褒められてるような気がしたしネットの世界なら見栄を張ってもいいかもと思った。

つまり、下北沢に行けばギターヒーローとしての私のイメージがかなり上がるし、素の私ももしかしたらギターヒーローとしての私に少しでも近づけるんじゃないか、そして友達もできたらバンドを組めるのではと思い下北沢の高校にしようと思ったのだ。

 

 

『これ、うちの高校の文化祭の日程。秀華高じゃないけど1度高校がどういうものか見ておいたら?』

 

楓くんからロインが来た。

どうやら10月に文化祭があるようだ。確かに見学会とかはまだ行ってないからこの機会に見に行くのもありかもしれない。

 

『あ、バスケ部の彼氏くんも連れてくるといいよ』

 

うぅ……、やっぱり茶化してくる……。

絶対に高校でバンド組んでチヤホヤされてギャフンと言わしてやるー!!

 

 

 

 

 

 




おまけの方は思いつきで書いたので読みにくいかもしれません...
高評価、感想、お気に入り、アドバイスなどあると作者のモチベと筆のスピードが上がるのでぜひお願いします。

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