ハイスクールD×D ~審判を超えし者~【凍結】   作:メラニン

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どうも、お久しぶりです。


今回はやや長めになってしまいました。申し訳ない。


今回から聖剣奪還作戦スタートです!


ではでは、どうぞ!


第6話 共同戦線です!

―― 一誠side

 

 

 

「はぁ!!」

 

 

ゴッ!

 

 

「こんなものか?イッセー!」

 

 

ドン!

 

 

「ぐっ!?」

 

 

俺は『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』で能力を倍加した状態で、父さんに突っ込んだが、呆気なく防がれて逆に吹き飛ばされた。

因みに父さんも今は神滅具である『賢者の拳(クルスニク・ナックル)』を発動した状態で戦っている。

 

 

イリナ達との模擬戦が終わった翌日の朝早くに俺は父さんに、家の地下3階の広いスペースで鍛錬をしてもらっていた。

結構久しぶりにやるけど、未だに俺の拳は届かない。

 

 

「次はこちらから行くぞ!」

 

 

「こっちも行くよ!」

 

 

『『Kresnik!』』

 

 

俺と父さんは互いに瞬間移動を繰り返し、読み合いを続ける。

 

 

「ここだ!」

 

 

俺は父さんの後方斜め上に現れて、拳を繰り出すがその瞬間に父さんの姿は消失した。

 

ゾッ……

 

 

「くっ!?」

 

 

ギイィィン!

 

 

「ほう、防御の方の読みは大分上達したな」

 

 

俺は横から現れて、繰り出された父さんの拳を『賢者の槍(クルスニク・スピア)』を即座に発現させて防いだ。

槍を持つ方の手も今の衝撃で少し痺れる。

 

 

「そりゃ、父さんの拳骨は痛いからね。そう簡単には受けられない、よっ!」

 

 

ギン!

 

 

俺が弾いた後、お互いに距離を取る。

 

 

「頼むぞ、テミス!」

 

 

『はい!』

 

 

それから俺は『転写鏡の腕甲(トランス・ミラー・ガントレット)』も発現させて、鏡状の龍鱗を数枚操作して父さんに襲い掛からせる。

 

 

「ははははっ、そうか!ここまで自在に動かせる様にもなったか!」

 

 

父さんは避けつつ、隙あらば龍鱗を撃ち落としていく。さらに、龍鱗を追加してそれと一緒に俺も突っ込む。

 

 

キキキキキン!

 

 

「なるほど、龍鱗とお前自身のコンビネーションか!確かにこれは戦い辛い!」

 

 

「撃ち落としながらよく言うよ!」

 

 

さらに、何度か槍と拳をぶつけ合う。お互いに、攻撃が擦りはするが、クリーンヒットまではいかない。

 

 

『Boost!』

 

 

よし、倍加が溜まった!

 

 

ギン!!

 

 

俺と父さんは互いに拳と、槍を弾いて大きく距離を取った。

 

 

「行くぞ、ドライグ!」

 

 

『応!』

 

 

『Explosion!』

 

 

「はははっ、一撃で決めるつもりか、イッセー?ならば!」

 

 

俺と父さんは同じ構えを取る。俺からは赤いオーラがとめどなく溢れ出て、父さんの方も大容量のオーラに包まれる。

 

 

ゴウッ!

 

 

俺と父さんは同時に地面を蹴り、零距離になり拳を振り抜く!

 

 

「「絶拳(ぜっけん)!!」」

 

 

ドッゴオォォォォォォ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ……」

 

 

煙が晴れた後、地面に片膝を付いたのは俺の方だった。

俺は左腕を抑えながら、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の様子を見る。多少ではあるが、先端の方はヒビが入っていた。

 

 

「ふむ、今日はここまでだな」

 

 

「あ、ありがとうございました……」

 

 

「今のお前ならば、堕天使の幹部如きには遅れを取る事は無さそうだな」

 

 

「――っ!?父さんは知ってたのか!?」

 

 

「詳しい事情は知らん。だが、先日からお前の幼馴染が来ている事は知っている。事件の大筋もな。確か、紫藤イリナと言ったか?………心配なのだろう?」

 

 

「はぁ、お見通しってわけか。父さんには色々と敵わないね」

 

 

「久しぶりに鍛錬を付けて欲しいなどと言ってくれば当然だ。

家の事は心配するな。思う存分にやれ」

 

 

「はは………分かったよ。ありがとう、父さん」

 

 

父さんは頷くと、エレベーターで上へと上がっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はー、やっぱまだ敵わないかぁ」

 

 

俺はその場で仰向けに倒れた。すると、クロノスが語りかけてきた。

 

 

『つくづく思うが、奴は本当に人間か?』

 

 

『確かに、人間にしては強すぎるね。何せ何回も倍加して、同じ攻撃を放ったのにコッチが押し負けたからね。まぁ、彼こそある意味人の可能性の体現者といったところかな?』

 

 

あぁー………

ようやく、手の痺れが取れてきた。

 

 

俺は左手を振って、感覚を確かめる。

 

 

『まったく、アイツの攻撃は相変わらず凄まじいな。あれで、まだ本気でないからこそ恐ろしいところだな。まぁ、それは相棒も同じなのだが』

 

 

まぁ、そりゃ一応組手って事だからお互いにある程度は加減してるけど、それでもまだ勝てないってのはねぇ。

 

 

『ここまで来ると、刃紅さん自体が神滅具な気もしてきますね』

 

 

まぁ、あれで人間ですがね。昔に『怪物』って言われた理由がなんとなく分かるような気がする。

けど、兄さんは父さんから一本取ったことがあるって話してたな。どうやったんだろう?

 

 

『まぁ、ユリウスはユリウスの方法があったのだろう。相棒には相棒の方法があるだろうさ。ところでいいのか、相棒?今日は何かあると言ってなかったか?』

 

 

あっ、そうだった!

 

 

俺は急いで飛び起きて、シャワーだけ軽く浴びてから、直ぐに出かけた。

 

 

 

――side out

 

 

 

 

 

 

――刃紅side

 

 

「フフフ………はははは!」

 

 

『どうした、刃紅?急に笑い出したな。遂に頭がおかしくなったか?』

 

 

「ククク………いや、ただただ嬉しくてな」

 

 

私はイッセーとぶつけ合った拳を見る。

二ヶ月ほど私自身相手をしていなかったが、ここまで強くなっていたとは。嬉しいものだな、子の成長というのは。

 

 

『ふん、大した変わりようだ。これならばオリジンの言う人の可能性とやらにも反論はできんな』

 

 

ああ、そうだ。人は様々な可能性を秘めている。その絶大な可能性が息子二人共にある事が実感できた。こんな嬉しいことはない!

これが精霊にも分かるか、アスカ?

 

 

『………さあな。だが、お前の息子共はまだまだ強くなりそうだ。心身ともに、な』

 

 

ははははは、そうだな。

一先ずはこれで、安心した。これならば、神にはまだ及ばずとも、それに近しいレベルには直ぐに達しそうだ。

 

 

『やれやれ、神を相手にさせる事が前提なのか?』

 

 

当り前だ。最近の三大勢力や、他の勢力の動きは明らかに不穏だ。こういう時は決まって何かが起こる。

 

 

さて、歓談もここまでだな。仕事だ。

 

 

――side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―― 一誠side

 

 

父さんとの模擬戦が終わった後、俺はある人物を呼び出していた。

因みに今は一人だ。松田達と遊んで来る、といった内容の書置きを残して朝早くに家を出た。

ゆっくりしてると、皆と鉢合わせるだろうからな。俺がこれからやろうとしていると事には、出来れば巻き込みたくは無いし。

って言うか、昨日の今日でこんな事したら次は説教で済むかすら怪しい。

 

 

「よう、兵藤!使い魔の時以来か?何だよ、朝っぱらから呼び出して」

 

 

「悪いな、サジ。頼めそうな奴が他に居なくてさ」

 

 

片手で挨拶しながらやって来たのは、匙元士郎。駒王学園生徒会の会長である、ソーナ・シトリーの『兵士(ポーン)』だ。今日は朝一で『宿泊処ロランド』で待ち合わせをしていた。

 

 

「いいって。お互い『兵士(ポーン)』同士仲良くしようぜ、って言ったのはお前だろ?で、どうしたんだよ?」

 

 

「ああ、実はな――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は事細かに事情を説明した。一通り説明し終えた後、匙は表情を引き攣らせながら、口を開いた。

 

 

「お、お前正気か!?どこか頭のネジでも飛んでってんじゃないのか!?」

 

 

「失礼な。これでも至って正常だ。で、協力して欲しいのが――」

 

 

「お、俺は絶対にお断りだからな!そんなの、下手を打ったらそのまま三大勢力同士が争ってもおかしくないじゃないか!」

 

 

「まぁ、聞けって。いくら相互不干渉だからって、このまま聖剣使いがこの町を闊歩してるってのは、俺たちにだって何時火の粉が降りかかるか分かったもんじゃないだろ?それに、首謀者は堕天使の幹部であるコカビエルらしい。あの二人だけだとヤッパリ厳しいと思うんだ」

 

 

「お前が幼馴染を心配してるのは分かるが、それでも、相手が相手なだけに尚更手を出せないだろ!もし、堕天使の幹部に下級悪魔の俺たちが手を出してみろ。即刻返り討ちならまだいいが、いや良くは無いけど………とにかく責任問題を問われたら、会長達にまで被害が及ぶぞ!」

 

 

「まぁ、そこは多分問題ない」

 

 

「何でだよ?」

 

 

「要はコカビエルに勝てばいいからだ」

 

 

「尚更、無理だろうが!」

 

 

「いや、勝利条件を考えてみろって。今回の一件はコカビエルが聖剣を盗んだのが発端だ。なら、それを取り戻す、もしくは破壊すればいい。ほら、これで解決。何も直接対決で奪う必要は無いんだよ。意表を突いて取り返せばいいだけだからな」

 

 

 

「そうは言ってもよぉ……直接コカビエルが守ってたらどうすんだよ?」

 

 

「その時は俺が奴の気を引くさ。足止めくらいは訳無いと思うし」

 

 

「うーん、まぁレーティングゲームの映像は見たから、お前の実力は分かってるつもりだけどよ」

 

 

「因みに俺の力があれだけじゃ無いって言ったら?」

 

 

「ぶっ!?」

 

 

匙は飲んでいた、コーヒーを盛大に吹き出した。

 

 

「お、お前、あの頑丈に出来た空間一つ壊しておいて、全力じゃ無かったのか!?」

 

 

 

「………おい、人の顔面にコーヒーぶちまけといて、第一声がそれか?」

 

 

「わ、わるい……」

 

 

俺は溜息を吐いて、『時の支配者たる時計(タイム・ルーラーズ・ウォッチ)』で時間を戻して元通りにした。

 

 

「な!?今のは……?」

 

 

「ほう、今のが一誠君の悪魔の力かい?」

 

 

いつの間にか、そばに来ていたウォーロックさんから話しかけられた。

 

 

「ええ、まぁ。厳密に言うと少し違うんですけどね」

 

 

「へぇ、それは気にもなるねぇ。あ、コレおかわりのコーヒーだ。邪魔をしてしまったね。ごゆっくり」

 

 

ウォーロックさんはそう言うとまた店の奥に入って行った。今日は朝早いだけあって、まだ客は俺たちだけだ。

 

 

「お、おい、兵藤。一般人に……」

 

 

「ああ、あの人は俺のお得意様だから大丈夫だよ。悪魔についても知ってる。で、話を戻すけど、コレがあのゲームでは使わなかった、『時の支配者たる時計(タイム・ルーラーズ・ウォッチ)』だ。能力は『時』。まぁ、これでもまだ使いこなせて無いんだけど。他にもあの時、禁止されてた力もある」

 

 

「レーティングゲームで禁止って………一体どんな力なんだよ……」

 

 

「簡単に言ってしまえば、異能が絡んでいれば全部無効化出来る力だな。だから、レーティングゲームの定義を揺るがしてしまう、って理由で使用を禁止されてたんだ」

 

 

「……お前そんな能力持ってたのか?はぁ〜〜………スペック高すぎだろ!?」

 

 

「……で、どうよ?協力してくれるか?」

 

 

「うーーん………」

 

 

あと一押しか?

カマかけてみるか。

 

 

「話は変わるけど、最近会長とは進展あったのか?」

 

 

「いや、それがさぁ、会長にとって俺は弟みた――」

 

 

ハッとした様子で俺を見る匙。うわ、まさかこんな簡単に引っ掛かるとは……

 

 

「兵藤ぉ〜〜?嵌めやがったなぁ!?」

 

 

「まぁまぁ、なら尚の事ここで手柄を立てとけばいいじゃないか。そうすりゃ、会長の評価も変わるかもよ?」

 

 

「ま、マジか!?」

 

 

「ああ、きっと変わるさ」

 

 

「うおぉぉっしゃあぁぁ!!やるぜ、兵藤!是非協力させてくれ!」

 

 

俺の手を握って、ブンブン振ってくる匙。喜びすぎだろ……

 

 

うん、我ながら汚いと思うけど………ま、いっか。俺も悪魔だし。それに、人間を騙してるわけじゃないし。

 

 

 

「まぁ、それに多分今回のコカビエルの一件は単独っぽいし」

 

 

俺はコーヒーを飲みながら、説明を続ける。

 

 

「へ?何でそう思うんだよ」

 

 

「部長に聞いた話だけど、今三大勢力のそれぞれのトップは戦争に消極的らしい。まぁ、前回の大戦で互いに戦力が潰れてるんだし、当たり前と言えば当たり前なんだけど。それなのに、一触即発になりそうな事件を起こすっていうのは矛盾するだろう?」

 

 

「確かにそうだな」

 

 

「まぁ、こんな事した目的は何となく分かるけど、とにかくこの事件に首を突っ込んだからって、コッチが責任を追及されるって事は無いと思うんだ。仮にされるにしても、それを相殺するだけの手柄を上げればいいだけなんだしな。その手柄っていうのは聖剣の奪還って事で」

 

 

 

「お前って、以外と考えてるんだな」

 

 

「失礼な」

 

 

「で、まずどうするんだよ?」

 

 

匙が少し身を乗り出して聞いてくる。

 

 

「まずは、さっき話した聖剣使い二人組を見つける事だな。一応話を合わせておかないと、後々鉢合わせた時にマズイし、一応は教会の所有物の問題だから、許可を取っておかないとさ」

 

 

「確かにな………でも、行方を知らないんだろう?」

 

 

「ああ、確かに知らないけど、片方は俺の幼馴染だ。行動パターンは大体分かる」

 

 

「なるほどねぇ………うし!じゃあ、行くとすっか!」

 

 

俺と匙は会計を済ませて、店を出て行こうとすると、店の前には腕組みをした我が家の猫姉妹が立っていた。

あ、マズイこれ………

 

 

 

 

「……先輩、松田さん達と遊んで来るっていうのは嘘ですか?」

 

 

ビシッと、固まる俺と匙。匙が後ろから背中を小突いて、なんとかしろと言ってくる。

 

 

「い、いや、これから松田達とは待ち合わせて遊びに行くんだよ。で、先に匙と合流してただけ」

 

 

「へぇ……遊びに行くにしては、随分と物騒な話をしてたわねぇ?確か、聖剣がどうとか」

 

 

ぐ、聞こえてたか………

 

 

「はぁ、どうやって店の中盗聴したんだ?」

 

 

「盗聴じゃないわよ。仙術を使って、聞いてただけにゃん」

 

 

それを盗聴と言う。

 

 

「あー、悪かったよ、黙ってて。けど、これは木場には必要な事なんだし、放っとけないんだよ。それに、あの教会の二人組も心配だし。頼むから、部長やミラ達には黙っててくれ」

 

 

「なら、その代わりに私にも手伝わせて下さい」

 

 

「白音?私達じゃないの?」

 

 

小猫ちゃんはそんな黒歌の言葉を無視して続ける。

 

 

「私だって、祐斗先輩は心配です」

 

 

「白音!?無視はやめて!お姉ちゃん泣いちゃうにゃん!」

 

 

「…………分かったよ。ただし、絶対にバレないようにしてくれ。あと、黒歌」

 

 

今のやり取りで、落ち込んでいた黒歌に声を掛ける。

 

 

「一応、イリナ達の探知を頼めるか?」

 

 

「うん!了解にゃん!」

 

 

黒歌はパァっと顔を輝かせると、早速仙術による探知を始めてくれた。

 

 

 

 

 

 

――○●○――

 

 

 

 

 

「え〜〜………迷える仔羊にお恵みを〜……」

 

 

「どうか、哀れな私達に救いの手をぉぉ!」

 

 

 

白いローブを被った少女2人が、路上で募金活動をするという、何とも珍妙な光景がそこにはあった。

…………頭がイタイ。

 

 

「……兵藤?」

 

 

「言うな、サジ。言いたい事は分からんでもないが、口には出すな。

はぁ……まさか、こうも俺の予想通りだと、なんだかなぁ」

 

 

「先輩はあの2人の行動を予測できていたのですか?」

 

 

「うん、まぁ。正確に言うと、イリナの方を予測出来てた」

 

 

「へぇ、それは幼馴染だから?」

 

 

「ああ、まぁな。…………何だよ、黒歌?」

 

 

 

黒歌がジト目で俺を見てくる。

 

 

「べっつにぃ。何でもないにゃん」

 

 

「まぁ、話を戻すとイリナは騙されやすい質なんだ。それも酷いほどに。多分今回も何かしら騙されてあんな事になってるんだと思うけど」

 

 

「………騙されやすいって、それはどのくらいですか?」

 

 

うーん、どのくらいか?

 

 

「……そうだな、例えば小猫ちゃんの元に黒歌の声で、電話が掛かってきたとする。で、その黒歌の声の主が俺だと言い張って、ATMとかにお金を振り込んでと頼む。普通なら振り込まないだろ?けど、100%イリナは振り込む」

 

 

 

「「「……えぇ〜〜……」」」

 

 

疑ってらっしゃる。けど、これが本当に酷いんだ。

向こうにいた時、歩いていたら柄の悪そうな男達が話しかけて来て、自分達は孤児院をやっていて金が足りなくて困っていると言ってきた。それに対するイリナの回答は……

 

 

 

『スゴイ!なんていい人達なの!イリナの持ってるお金でいいなら全部あげる!』

 

 

 

と言って、全部差し出してしまった。だが、明らかにおかしいはずなのである。なぜなら、その男達は見るからに高そうな宝石の指輪やらネックレスやらを付けていて、とても金に困っている風には見えなかったんだから。金に困っているなら、それを売ればいいだろ。

 

 

 

まぁ、当然その後イリナには黙ってその人たちの元に行って、その人たちの事務所(?)は潰させてもらった。で、キッチリ、イリナが渡してしまった金額だけ取り返した。余剰のお金は後から、警察が突入してきたから、その人たちが何とかしてくれた。

この時は兄さんにも手伝ってもらったんだけど。(当然母さんには内緒だ!)

で、お金のまま返すのはどうかと兄さんに言われたので、そのお金を使ってイリナにはプレゼントという事で、マフラーを贈った。

 

そう言えば大層喜んでたなぁ。あの時はサイズ間違えて結構大きいの買ったんだっけ?

 

 

まぁ、こんな感じでイリナは結構騙されやすい。

 

 

 

「じゃあ、今回も騙されてこんな事になってるって言うのか?」

 

 

「まぁ、十中八九サジの言う通りだろうな。確か最近この辺だと訳の分からない絵を売ってるだろ?多分それを買っちゃったんじゃないか?」

 

 

 

 

 

 

「く………これだから信仰の薄い国は嫌なんだ!これだけやっても、一人たりとも募金なんかしてくれやしない!」

 

あ、ついにゼノヴィアが限界みたいだ。

 

「しょうがないのよ、ゼノヴィア。路銀の尽きた私達はこうでもしないと空腹を満たすことだって出来ないのよ。はぁ……お腹減ったぁ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……昨日までの姿が見る影もなし」

 

「ははは…………まぁ、取り敢えず救いの手を差し伸べようか」

 

 

 

俺たちは彼女達に近付いて、話しかけた。

 

 

「おーい、そこの信徒2名。救いの手ならあるぞ?悪魔の手だけど」

 

 

「先輩、意地悪する時の顔です」

 

 

そんな突っ込みを入れられつつ、俺は2人に食事を奢ることになった。

 

 

 

 

 

 

――○●○――

 

 

 

 

「はいよ、イッセー君!にしてもお嬢さん方細いのによく食べるね〜。いやぁ、作り甲斐があるってもんだよ!」

 

 

「すいません、また押し掛けてしまって」

 

 

「はっはっは!いいんだよ、イッセー君!こっちも商売繁盛で大助かりだ!」

 

 

「おじさん、この料理追加お願いします!」

 

 

「はいはい、少々お待ちを!」

 

 

イリナの注文に対して、再び奥に戻って行くウォーロックさん。

今俺たちは、また『宿泊処ロランド』に来て、教会二人組に奢っていた。席は特別に込み入った話になる可能性も考慮して一番隅っこの席にしてもらった。

 

 

「にしても、ここの食事は美味いな!日本の食事は美味いものが多いと聞いていたが、驚きだ!」

 

 

「私もこんなオイシイご飯は久しぶりよ!って、ちょっと、ゼノヴィア!?それは私が最後に食べようと思って取っておいたのに!」

 

 

「むぐむぐ……ごく!ボーッとしている方が悪い。何事も先手必勝だ!」

 

 

「ぬぬぬ……あなたの戦い方を食事の席にまで持ち込まないでよ!」

 

 

「何を言う!食事とは聖戦だ!」

 

 

人目も憚らず、いがみ合う信徒2名。はぁ、こいつら……

 

 

「あのなぁ、他にもお客さんが――」

 

 

「はい、お待ち!今日は食材もタップリあるから、じゃんじゃん食べてくれ!」

 

 

「うん!ありがとね、おじさん!」

 

 

「かたじけない、店主」

 

 

「いいって、いいって!さ、次のご注文は?」

 

 

「ええっと、私はコレとコレと――」

 

 

「私も頼む」

 

 

「はいよ!じゃあ、また少し待っててな」

 

 

注文を取って再び奥へ戻って行くウォーロックさん。にしても、この2人の食べるペースに合わせて、調理するなんてスゴイな。普段はソニアさんに完璧に尻に敷かれてるけど……

因みに、ソニアさんとレイア、アグリアは買い物に出かけているそうだ。

 

 

それからも、10分ほど2人の食事は続いた。と言うか、本当によく食べますね!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁー、もうお腹一杯。ごちそうさまぁ」

 

 

「そうだな。私も満足だ」

 

 

 

 

俺たちのテーブルには何段にも積み重ねられた皿が………

途中から他のお客さんからも好奇の目で見られてた。

 

 

「黒歌、仙術で防音の結界って張れるか?一般人には分からないように」

 

 

「そんなの、お茶の子さいさいにゃん。ほいっと♪」

 

 

俺たちの周りには薄い防音用の結界が張られた。まぁ、他のお客さんが居るのに、悪魔だ天使だって話は聞かれると困るしな。

 

 

 

「さて、食べ終わったところで悪いけど、コッチの話を聞いてもらっていいか?」

 

 

「……いいだろう、私達も食事の借りがあるからな」

 

 

「ああ、主よ。空腹のためとはいえ、悪魔の手を取ってしまった事をお赦しください。アーメン。

あっ、でもでも、きっと主もイッセー君相手なら許してくれるかも」

 

 

「はぁ、そんなわけあるか」

 

 

ゼノヴィアからの突っ込みを受けつつ、イリナは天に祈るようなポーズを取る。

 

 

「ところで、まぁ予想はつくんだけど、何で金が尽きたんだ?」

 

 

「ああ、それはな――」

 

 

「コレを買ったからよ!」

 

 

そう言ってイリナが取り出したのは、一枚の絵だった。

うん、まぁビンゴだな。この前、売っていた絵だ。中心に手を広げたハゲのおっさんが描かれてる。

 

 

俺は頭を抱えることしか出来なかった。まぁ、取り敢えず

 

 

「なんか、本当に俺の幼馴染が苦労を掛けてるようでゴメン」

 

 

「ちょっと!?ヒドイわ、イッセー君!」

 

 

「出来れば、君にイリナが子供のうちに躾けておいて欲しかったところだね」

 

 

「もう!ゼノヴィアまで!」

 

 

 

 

 

と、そこで匙が小声で話しかけてきた。

 

 

「……なぁ、兵藤。本当に大丈夫なのか、コレ?失敗したら多分俺は会長に殺されるんだけど……」

 

 

「まぁ、多分大丈夫………だと思う。はぁ……ほらイリナ、そこまでにして話を聞いてくれ」

 

 

「うぅ……分かったわ。けど、この絵は絶対にあのおじさんが言ってたように、聖人の方が描いたんだもん!」

 

 

「だから、何度言えば――

はぁ、いやそういう事でいい。これでは、一向に話が進まないからね。で、そちらの話とは?」

 

 

ゼノヴィアはイリナの制御に本当に苦労してるみたいだな。まぁ、それはさて置いてだ。

 

 

「単刀直入に言うと、聖剣の破壊に協力させて欲しい」

 

 

「え!?」

 

 

イリナは大層驚いた様子だが、ゼノヴィアはそうでもないようだな。

 

 

「……私達は相互不干渉となってるはずだが?」

 

 

「そもそも相互不干渉と言っても、悪魔である部長が管轄する街に教会側のお前たちがいる時点で、相互不干渉なんて無理だ。今更だろ?」

 

 

「ふむ……言われてみれば確かにそうだな」

 

 

「そっちにも体面があるのは分かる。だから、無理に協力しろと言ってるわけじゃない。ただ、この街にいる以上、今は聖剣と俺たち悪魔が偶然遭遇してもおかしくはない。その時は降り掛かる火の粉は払おうと思ってるだけだ」

 

 

「ふふ、なるほど。偶然ね」

 

 

「ああ、偶然な」

 

 

 

 

 

「……先輩、ヤッパリ意地悪する時の顔です」

 

 

「ま、タマにはこんなイッセーもいいにゃん♪」

 

 

「はぁ、俺と兵藤はどこが違うんだ………」

 

 

 

 

うん、そんな顔してたのか。気を付けよう。

 

 

「で、それの許可が欲しい。それに、俺はドラゴンを5匹宿してる。どちらかと言うと、多分悪魔よりドラゴンの力の方が強いんだ。これなら悪魔に手を借りるわけじゃなくて、ドラゴンの力を借りたって言えるだろう?どうだ?」

 

 

ゼノヴィアはアゴに手を当てて暫く考え込むと、笑いながら応答してくれた。

 

 

「ふふ。本当に面白いな君は。悪魔がわざわざ危険を犯してまで、聖剣を破壊しようとするなんてね。

………いいだろう。もし、偶然にも聖剣を発見した時は破壊してくれても構わない」

 

 

「ちょっと、ゼノヴィア!」

 

 

「いいんだ、イリナ。実際にこの任務は元々成功する確率は20%と、低かったんだ」

 

 

「それでも、高い確率と見込んで覚悟の上で私達は!」

 

 

「は?そんなに成功確率は低いのか?ちょっと待った。もし、失敗した時は?」

 

 

2人の顔が曇った。おいおい、まさか……

 

 

「……失敗する事は無い。私達はこの命を燃やしてでも、この任務を完遂するのだから」

 

 

ゼノヴィアの目は真剣そのものだ。イリナの方も少々バツの悪そうな顔をしているが、目には一切の迷いが無い。

………なんでだよ?

 

 

「………ふざけるなよ」

 

 

「え?」

 

 

「成功する確率が20%?80%の確率で失敗するんだろ?つまり、80%の確率で死ぬ危険があるんだよな?」

 

 

 

「それでも、私達はこの任務を成し遂げなければならない。コレは主のため――」

 

 

「ふざけんなっ!!何が主のためだ!あんなくだらない聖剣なんかの為に教会は死ねって言ってきてるのか!?」

 

 

「落ち着いて、イッセー君!それは、あくまで失敗した時よ!」

 

 

「その失敗の確率が問題なんだろうが!一体教会は人の命を何だと思ってやがる!戦士は欠けたらまた補充すれば良いとでも思ってるのか!?いいか?命に代えなんか効かないんだぞ!死んだら………消えたらそこまでなんだよ!遺された人達の胸に何時までだって重くのし掛かる。俺は………あんな思いは――!」

 

 

 

『イッセー!』

 

 

 

………ごめん、オリジン

 

 

 

 

イリナ達はキョトンとして俺を見ていた。

 

 

「はぁ……スマナイ、取り乱した。とにかく、協力させてもらいたい。俺はイリナにもゼノヴィアにも死んで欲しくはない」

 

 

 

「…………ははは、………ヤッパリ変わんないなぁ、イッセー君は……ズルイよ。そんな事言って……」

 

 

「ふふっ、そうだな、イリナ。知り合ったばかりの私にまでそんな事を言うなんてな。それも敵であるのにも関わらず………そうだな、改めてこちらからもお願いしよう」

 

 

「よし、そしたらもう一人の協力者も呼んでいいか?」

 

 

 

 

ゼノヴィア達はまだ、いるのか?と小首を傾げたが、それに構わず俺は連絡を入れた。

 

 

 

 

 

 

――○●○――

 

 

「なるほど………分かったよ。僕も協力させてもらおう。聖剣を破壊できるまたとない機会なんだしね」

 

 

そう、俺が呼び出したのは聖剣計画の被験者である木場だ。だから、殺気を抑えろと言うに。

 

 

「そうか。あと、数日前神父を救ったのは君か?容姿の特徴が聞いた通りなんだが?」

 

 

「ああ、そうだね。まぁ、本来は救う義理は無かったけど、目の前で起きていた事だったから、介入しただけさ。一応は襲撃していた者の名前を教えておくよ。フリード・ゼルセン。はぐれ悪魔祓いだよ」

 

 

また、アイツが出てきてるのか。そういえば、レイナーレの一件の時は、吹き飛ばした後姿を見なかったけど逃げてたか……

 

 

「そうか。君の救ってくれた神父は君に感謝の言葉を述べていたよ。たとえ、異端と言われようとも、私を救ってくれた彼には感謝している。ありがとう、とね」

 

 

「…………………」

 

 

木場はふいっと顔を逸らす。その表情はなんとも複雑だ。

 

 

「それで、その礼と言ってはなんだが、こちらも情報を渡しておこうと思う。聖剣計画の首謀者はまだ生きている」

 

 

「「「「「…………………………………!?」」」」」

 

 

俺たちは揃って驚いた。

 

 

「え、ちょ、ちょっと待った。聖剣計画の実施されていた施設は『白衣の襲撃者』事件があって、1人を残して全員死んでるハズだろ?その1人も裁かれたって聞いたぞ!」

 

 

ゼノヴィアは少しバツの悪そうな表情をして言葉を続けた。

 

 

「その裁きの内容は、禁固刑だった。死ぬまでね。だが、コカビエルが利用価値有りと判断したんだろう。脱獄をして堕天使の側に付いた。その者の名はバルパー・ガリレイ。『皆殺しの大司教』と呼ばれた男だ」

 

 

「…………そうか。一応はお礼を言っておくよ。ありがとう。これで僕は復讐を果たすことが出来そうだ」

 

 

木場の目には暗い影が差していた。

 

 

 

こうして、教会、悪魔、ドラゴンという恐らく、この世界で初の珍妙な共同戦線が張られるのだった。

 




はい、今回はこんな感じで。


絶拳同士をぶつけ合って、地下が壊れないのは、母親であるコーネリアが魔術をかけて補填してるからです。
絶拳がどのくらいの威力か?本家の絶拳は食らうと問答無用で、HPがほぼゼロでしたね。今回は、両者ともに鎧を装着してないですから、あの威力で留まりました。

いずれは強敵相手に、絶拳腹パンオーバーキルをやってみたい・・・


さて、次回あたり再び、テンションひゃっほう!なアイツが再び。


ではまた次回!
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