ハイスクールD×D ~審判を超えし者~【凍結】   作:メラニン

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はい、今回はほんの少し(?)シリアスですね。


まぁ、前置きはさておき、どうぞ!


番外編 騎士と夢の花畑です!

 

――木場side

 

 

ガタンゴトン………

 

 

僕らは今北欧の本当に隅っこの方に来ていた。オカ研の副顧問になった福山翔という人物が聖剣計画について教えてくれると言ったからだ。

そう言われて、『神の子を見張る者(グリゴリ)』の支部に設置されていた転移装置なるもので、北欧の支部に転移したというわけだ。改めて『神の子を見張る者(グリゴリ)』の技術力には舌を巻くよね。で、転移した後はそこから列車で移動している。それに向かい合うようにして座っているという訳だ。僕は何があってもいい様に何時でも戦えるよう、警戒はしている。

で、当の本人は――

 

 

「がつがつ……むぐ……ごくん………ふぅ、食った食った。いやぁ、美味いねぇ。列車の中での弁当ってのも旅の醍醐味だねぇ」

 

 

緊張感の欠片もなく、先ほどの駅内で買った弁当を完食していた。僕と部長は軽いサンドイッチで済ませたんだけど、イッセー君もガッツリ弁当を食べていた。君も大概だね。

 

 

「……うん、肉は良いのを使ってるな。けど肉に付いてたソースは少し合わないな。それに、野菜の質感もイマイチ。添えてあるハーブもこの料理には会わないヤツだし、パンの味もそこまで良くない。……18点」

 

 

………呑気に採点なんかをしている。しかも結構辛口の評価だ。

 

 

「イッセー君?一応、警戒しなくていいのかい?」

 

 

「してるぞ?だが、食える時には食っとかないといけないし、仕方がない。それに、俺は料理に関しては手は抜きたくないからな」

 

 

「はぁ………まったく、イッセーは大器なんだか、呑気なんだか分からないわね」

 

 

「え……酷いです、部長。俺これでもしっかり警戒してますよ?だから、福山の――」

 

 

「フー先生ね」

 

 

「………フー先生の隣で、何時でも戦いになっても良い様にスタンバッてます」

 

 

「だーから、そんな事しないって。まぁ、とにかくあと一時間くらいで着くから我慢してよ」

 

 

 

 

そうは言うが、既に3時間ほど列車を乗り継いでいるので、若干疲れてきたのが事実。しかし、目的の場所って一体……

 

 

 

――○●○――

 

 

「着いたぁ!いやー、お疲れ。連れ回してしまって悪かったね」

 

 

………確かにあれから1時間で目的の駅に着いた。けど、着いたのは畑ばかりしかないド田舎だ。バスも通って居なければ、タクシーなんて気の利いた物も無い。つまり移動手段は……

 

 

「はぁ………さすがの私でもコレだけ歩かされたら疲れたわ」

 

 

「そうですね。まさか、小一時間歩くとは……けど、綺麗なところですね」

 

 

僕らが着いたのは一面、鮮やかな黄色い花が咲いている平原だった。確かにこれは純粋に綺麗と感じる。風がザアッと吹くと、それに合わせて花も揺れ、花びらが舞う。そして、その中をここに連れてきた本人が先導していくと、木が十字に重ねられた物が幾つも地面に刺さった場所に出た。

まさか、コレって……

 

 

 

「やれやれ、少し来てないだけで、花びらまみれだなぁ。少し掃除を手伝ってくれるか?地面を少し綺麗にしたい」

 

 

「……ここって――」

 

 

「とにかく、今は掃除が先。ほれ、動いた動いた」

 

 

僕らは花びらで埋もれた地面を掃除していく。一通り終わると、中央に石碑の様な物が出てきた。そこにはこう刻まれていた。

 

 

 

『聖剣の贄に捧げられし無垢な子供たち、ここに眠る。私はせめてもの贖罪に彼らの望む地にて彼らを埋葬する者なり。同じ罪が二度と起こらぬように、そして子供達の安寧を祈って』

 

 

 

 

 

 

「これは………?」

 

 

「墓だよ、彼らの。この下に君の同士が眠っている」

 

 

「……………ッ」

 

 

 

 

 

 

…………僕は言葉が出てこなかった。僕から出てくるのは頬を伝う暖かい雫と嗚咽だけだった。

 

 

 

 

――side out

 

 

 

 

 

 

 

―― 一誠side

 

 

「………う……うぅぅ………」

 

 

俺たちは、フー先生に連れられて北欧の片田舎に来ていた。そこにあったのは、聖剣計画の被験者になった子供達の墓だった。木場はそれを知った瞬間に泣き崩れた。

 

 

「………一つ、聞いていいかしら?」

 

 

「ああ、いいよ」

 

 

「彼らを埋葬したのってあなたかしら?」

 

 

「そうだ。それを含めてあの計画で何があったのか見せよう。兵藤君、君の鏡を貸してくれるかい?」

 

 

「別にいいけど……」

 

 

俺は『転写鏡の腕甲(トランス・ミラー・ガントレット)』を発現し、鏡を1枚フー先生に手渡す。

 

 

「君の能力で俺の記憶をここに写してくれ」

 

 

「それは――」

 

 

「これを使え。アザゼルから借りてきた。神器のブースターだとさ」

 

 

腕輪を投げて寄越したので、俺はそれ着用して能力を使用する。

 

 

 

『Transcribe!』

 

 

 

 

 

 

 

 

――memory

 

 

 

鏡に映ったのは、若かりし頃のフー先生だ。まだ少年と呼んでもいいくらいだろうか?むしろそっちの方がしっくりくる。

机に向かって何かを必死に書いている。そこに見知った人物が映った!

 

 

「福山さん、如何ですか?上手くいきそうですか?」

 

 

「うーん、正直厳しいですねぇ。いやぁ、作り手の俺が言うのもなんですけど、あの聖剣ども強過ぎて必要な因子も膨大ですわ。あれを使えるのは多分、俺や猊下達だけじゃないですか?あとは、教会でも選りすぐりの歴戦の戦士数名とか、教会内で猊下が目にかけてるデュランダルの後継者とか」

 

 

「それでも、今は必要な事です。主の御られない今、もしもの事に備える必要があります」

 

 

「分かってますよ、ミカエルさん」

 

 

そう、若かりしフー先生に話しかけていたのはミカエルさんだ!こちらは今と全然変わらない。そっか、そう言えば元々は聖剣を作ってた人間なんだから天界陣営だよな。けど、何でそれが堕天使陣営に?

 

 

「貴方には申し訳ない事を強いています。主の不在を知りながらも、追放せずに貴方の頭脳を我々は利用している。それ故、あなたにこの様な生活を……」

 

 

「いいんですよ、別に。俺は研究者気質で引き篭もりですから。別に今の軟禁みたいな状況には困ってないですよ。何たって、自分の研究が出来て、衣食住は安定と来てる。不満は無いですよ…………あー、ただ欲を言えばそろそろ太陽が恋しいですねぇ」

 

 

伸びをしながら、そう言う福山にミカエルさんは微笑みかけた。

 

 

「ははは、そうですね。では、今日はご一緒に食事でもどうですか?他の『熾天使』のメンバーも貴方に会いたがっています」

 

 

「はは、『熾天使』メンバーのお誘いとあっては断れねえっすね。じゃ、行きましょうか。うーん……久々の外かぁ」

 

 

福山は大きく伸びをすると、机の上にあった紙類を纏めてゴミ箱に捨てた。

 

 

「いいのですか、捨ててしまって?あれは先程まで貴方が書いていた物ですよね?」

 

 

「あー、大丈夫です。内容は頭の中に入ってますし、今書いてたのだと因子を取り出された奴は死んじゃうんですよ。だから、未完成なんで捨てました。教会がそれはマズイでしょう?理想の理論まで、あとちょいだと思うんですけどねぇ」

 

 

「ははは、そうですか。成功を楽しみにしてますよ。では、行きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、場面が変わる。そこに映し出されたのは血の海だった。そこに立っているのは純白の白衣を着た福山だ。足元には斬り刻まれた屍体や、すでに原型をとどめていない物もある。そして、フー先生の方は研究員と思しき男を片手で持ち上げ、真っ赤な剣を突き付けていた。血で赤くなっていると思ったが、よく見ると刀身自体が赤い片刃の剣だ。刀に形は近く、鍔の部分は結構小さい。

 

 

「おい、今回の計画の首謀者は誰だ?」

 

 

「バ、バルパー……大司教…様です…」

 

 

「バルパー本人は何処にいる?ここに来るまでに会わなかったぞ?」

 

 

「う………裏の……脱出口…からっ……」

 

 

「ちっ、狡猾なジジィだな!」

 

 

「た……助け……命…………………命…だけは……」

 

 

その言葉を聞いた瞬間フー先生の目が冷徹なものに変わった。

 

 

「……散々命を弄んだ奴が何を言ってやがる?ここに来るまでに、何人の因子を抜き取られた屍体を見てきたと思う?」

 

 

「ひっ………ひぃっ……!」

 

 

「死ね」

 

 

静かにそう言うと、持っていた赤い剣で研究員の首を切断した。切断された東部からは血が流れ続け、それを片手で持つフー先生はまさしく悪鬼のようだ。

首を投げるとフー先生は歩を進めた。そして、遂に行き着いてしまう。自分自身の罪が在る場所に………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――○●○――

 

 

 

そこは薄暗い部屋だった。明かりは天井の中央に設置された電灯だけだ。フー先生は部屋に入った瞬間、顔を歪めた。そこに居たのは、既に死んでいるであろう子供達だった。震えながら一歩、また一歩と歩を進める。

子供達は寄り添うようにしながら、息絶えていた。その顔は大変穏やかだ。その表情を確認し、フー先生は崩れ落ちた。そして、ポツポツと言葉を発する。

 

 

「こ、こんな……子供まで……お、俺の……研究…が……?俺の……あのとき捨てたもの…か?…い、いや、違うんだ!!俺は……俺は…やってない!!俺は…こんな……俺はこんな結果は………俺……は………俺はぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……ぅ…誰?」

 

 

寄り添うようにしていた子供達の内の一人が動いた。その瞬間に雷に打たれたように、フー先生は立ち上がり、その子を腕の中に抱え、魔法陣を展開し何とか回復しようと試みる。けど、この子はもう……!

 

「だ、大丈夫か!?助けに来たぞ!もう君達は自由だ!」

 

 

「じ……ゆ…う?」

 

 

「そうだ!自分の好きな事をやっていいんだ!」

 

 

「そ…っかぁ………じゃあ、僕は……外でたくさん遊びたい……な」

 

 

「ああ、ああ!そうだな!連れてってやる!」

 

 

「うん………そう…だ………メイ…はね、綺麗なお花畑に…皆で…行きたい……って…」

 

 

「ああ、分かった!行こう!一番綺麗な場所に連れてってやる!この前見つけたばかりの秘密の場所だ!」

 

 

「そ……そっかぁ……ひみつの…場所…………へへ……何だか、格好いいな……」

 

 

「ああ、あ……あぁ………」

 

 

福山の目からは大粒の涙が溢れている。声も嗚咽で途切れ途切れになる。

 

 

「レイ……はね…ヒーローになりたい…って……」

 

 

「あ、あぁ、なれるさ……なれるさ…絶対!」

 

 

「エド…はね、絵が上手いんだぁ…」

 

 

「そ、そっか!じゃあ、今度見たいな!」

 

 

「キャシーは……歌が…凄く………綺麗……」

 

 

「あ、あぁ…あぁ……!」

 

 

「うん…他の…………皆も………………あれ?暗い…よ?…………今は…夜?」

 

 

俺はハッと息を呑む。この子の目からは既に虹彩が消えかけていた。もう、何も見えていないんだ。

 

 

「あ……あぁ!夜だ!でも、皆周りに居るから!だから、安心しろ!」

 

 

「そっかぁ……………ねぇ、………もう…着いた?……秘密の………お花…畑……ねぇ、着いた………?」

 

 

「あぁ!ああ!着いたぞ!けど、夜だから……見えないんだ!だからっ…………だから明日…皆で見よう!一面に黄色い花が咲くんだ!……太陽に照らされて、風が吹くと揺れて花びらが舞うんだ!綺麗だぞ………だから、明日一緒にっ………!」

 

 

もう、福山から言葉は出てこない。出てくるのは彼が必死で我慢しながら、それでも出てしまっている嗚咽の声だけだ。

 

 

「楽しみ……だなぁ………………ねぇ、……おにいさん…」

 

 

「な、何だ………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ありがとう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その子はもう返事をしなかった。その言葉と共に、その子は彼の腕の中から滑り落ちた。そして彼は暫く放心した。その姿はまるで何もかもが訳が分からないといった顔だ。だが、段々と意識が戻り、そしえ頭を両手で覆い――

 

 

 

 

「う……うぅ……………うああぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!」

 

 

 

 

彼の慟哭が部屋中に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

――end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記憶がそこで終わり、俺たちは現実に意識を引き戻した。

 

 

俺も部長も、そして木場も泣いていた。フー先生本人は少し居心地悪そうに頬をポリポリ掻いていた。

 

 

「み、皆………僕はっ……」

 

 

「………なぁ、今の記憶って……」

 

 

「嘘偽りない俺の記憶だよ。君自身が分かってるでしょ?」

 

 

「ああ、まあな」

 

 

「………それであなたは、ここに聖剣計画の被験者を運び弔ったのね」

 

 

「そういうこと。そして、二度と聖剣計画が行われないように子供達を運んだ後に、研究所を焼いた。跡形もなくな。天界に残して来ておいた資料も全て焼き払った。さすがにミカエルさんに渡してしまっていた物までは回収できなかったけどね。まぁ、その後はここで墓守をしつつ、腐っていた俺の所にアザゼルが来て、無理矢理連れて行かれた。その後は紆余曲折あって、って感じだな」

 

 

「……後悔、していたのね?」

 

 

「……そうだな、当り前だ。俺は自分の計画が戦争を起こさない抑止力になると信じた。戦争が起こらなければ人が無闇矢鱈に死ぬ事は無い。そう思ってた。なんともまぁ、安直なガキの発想だ。そして、蓋を開けてみればあの様だ。自分がやろうとした事と逆の結果になって俺に帰ってきた。そりゃ後悔したさ。責任を感じた、罪の意識を持った。俺は文字通り取り返しのつかない事の元凶を作った。だから、木場君よぉ」

 

 

フー先生は記憶の中で使っていた赤い剣を出して、木場の方に投げた。あの剣は……

 

 

「そいつは『赤鬼(あかおに)』。俺の作った聖剣の内の一本だ。そして、あそこに居た研究者連中の血を吸った剣だ。俺が許せないんであれば、その剣で俺を斬れ。俺もあそこの研究者共と同罪……いや、それ以上に罪深い」

 

 

「「!?」」

 

 

俺と部長は驚いた!いきなり木場に対して、こんな事を!?

いや、でもこれは木場自身が自分で決着を付けなければならない事だ。おそらくそれがこの男にも分かってる。そして、木場も。木場は地面に転がった聖剣を手に取り、福山の方に歩を進める。

 

 

「祐斗、待ちなさい!あなたは――イッセー!邪魔しないで!」

 

 

俺は飛び出そうとした部長を手で制した。

 

 

「……すいません、部長。コレは木場自身が決着を付けなきゃいけない事です。それがたとえ、どんな決着になるにしろ、俺たちはそれを受け入れなくちゃいけない。それが同じ眷属として、仲間として、友としての俺たちの義務です」

 

 

「…………そうね。私はあの子の主だもの。あの子のする事を見届けないと、ね」

 

 

部長は少し悔しそうにしているが、受け入れてくれたようだ。俺自身もしっかり見届けないといけない。俺の親友が過去を知り、どう『選択』するのかを。

そして、木場は遂にフー先生の目の前に迫る。フー先生は瞑目し、木場は右手で剣を振り上げる。そして――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴッ!

 

 

「ぐふっ!」

 

 

木場は左の拳を思いっ切り福山の顔面目掛けて叩きつけた!

 

 

「ふざけないで下さい!あなたの贖罪に僕を巻き込まないでください!僕は同士に復讐はしないと誓った!あなたはただ、僕らからの赦しが欲しくて死を望んだだけだ!そんなの贖罪じゃない!ただの自己満足だ!あなたの贖罪とは僕らの様な存在を二度と生み出さない為に努めること、そして僕らを導くことだ!あなたは、僕らの先生になったんじゃないんですか!?導くんじゃないんですか!?なら、こんなところで死んでる場合じゃない!」

 

 

「……は、ははは……参ったねぇ、どうも。まさか君にここまで言われるとは思いもしなかった。けど、君の同士はどうやら満足のようだね」

 

 

「何を言って――こ、これは!?」

 

 

いきなり木場の中から淡い青の結晶が出てきた!アレはバルパーが木場に投げて寄越した聖剣の因子だ。そして、あの時と同じように俺の『無と連環の腕輪(オリジン・チェイン・バングル)』が勝手に発現して、腕輪から伸びた帯状の光が結晶を包み、何人もの人の形を取っていく。そして、記憶の中にいた最後に息を引き取った男の子が口を開いた。

 

 

 

 

『お兄さん、ありがとう。彼をここへ連れて来てくれて』

 

 

「まぁ、約束だったからな。皆で見たかったんだろ?」

 

 

『うん、そうだね。どうかな?僕らが居るここは?綺麗かな?』

 

 

木場は問いかけられて、涙を流しながら大きく頷く。しばらく、言葉が出てこなかったが、ようやく言葉が出るようになって、泣きながら話始める。

 

 

「うん……!うん…!ここは……君らの眠る場所はとても綺麗だ!昔に皆で夢見た場所と同じだ!……君達と一緒にずっと見たかった景色だっ……!」

 

 

今度は違う女の子が口を開く。

 

 

『そうね。私が見たいって言い出して、君が、じゃあ行こう!って言ってくれたんだよね。嬉しかったなぁ』

 

 

「うん……!うん…!」

 

 

また、別の男の子が話しかける。

 

 

『僕はここで絵を描きたかったなぁ……覚えてるかい?君が一番僕の絵を気に入って何枚も描いてってせがまれたんだよ?』

 

 

「うん……!覚えてる…覚え……て…………うぅ」

 

 

『私はここで、聖歌を唄いたかったわ。けど、今それをやると、君には毒になっちゃうから無理かな』

 

 

「は…はは…そうだね。でも…君は聖歌じゃ……なくて、他の…歌でも……う、うぅ……」

 

 

 

そして、一番初めに口を開いた男の子が再び木場を真っ直ぐ見て話し出した。

 

 

『………僕らは、もう満足だよ。君と皆でここへ来て、話すことが出来た。君は泣いてばっかだったけどね』

 

 

悪戯っぽい笑みを浮かべると、木場は何か言おうとするが、上手く言葉が出てこないのかコクコクと頷くだけだ。

 

 

『………………………じゃあ、僕たちはもう行くよ』

 

 

「…ま、待ってくれ!僕は………僕はまだ君達と……!」

 

 

『ううん。これ以上僕らはここに残れないんだ。だからお別れ――』

 

 

「い、嫌だっ!僕は……僕は――」

 

 

フルフルと男の子は首を横に振り、改めて木場を見据える。

 

 

『いいかい?生きている限り別れは付き物なんだ。確かに君はこれから幾つもの別れを経験するかもしれない。辛いって思う事が沢山あると思う。でも死者である僕らを、生者である君が羨まないで。じゃないと、僕らは安心できないよ』

 

 

「うぅ…………それでも………それで…も…………………僕はっ………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊体である子供達は揃って苦笑いを浮かべる。

 

 

『確かに僕らは居なくなる。でも、僕らが生きていた証であるその聖剣の因子は君に遺していくよ。そんな泣き虫な君じゃ……不安…だか…ら………も、もう、嫌だなぁっ!…………君のせいで……僕まで…涙………が…………う、わあぁぁぁん!』

 

 

そこから堰を切ったように子供達は泣き出した。彼らも辛いんだ。同士である木場との別れが。

 

 

『僕ら……だって、一緒に居たい!…………君と…皆と話して……遊んで、学校に行って……!…そんな……そんな幸せな日々を送りたかったっ!』

 

 

『私……も!私だって……ずっと一緒って、約束したのに……なのにぃ………』

 

 

口々に思いの丈をぶつける子供達。この子たちが言う『幸せな日々』……それは当たり前過ぎて気付かないけど、確かにそこには『幸せ』がある。

けど、この子たちはそれを…………

 

 

「み、皆………」

 

 

 

『……ぐずっ…!………ご、ゴメンね!……泣くつもりは無かったんだ。皆とそう約束してたけど、守れなかったや、へへ………』

 

 

「…は、はは……僕の事を……言えないじゃないか…」

 

 

『うん、そうだね。…………………じゃあ、今度こそ――』

 

 

「…………お別れ…だね」

 

 

『うん。君と僕らは充分に話したよ。だから、これからは――』

 

 

そこで彼らの視線が俺と部長に注がれる。

 

 

『今、君がいる場所で……新しい仲間と……………どうか、幸せになって』

 

 

 

「うん……約束するよ。僕は君達との約束を守るよ」

 

 

 

『忘れないで、僕たちは――』

 

 

 

『『『『『『『いつだって一緒だ』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言うと彼らは光の粒子になって、空へゆっくり昇っていった。

 

 

残された木場の表情はまだ涙で目は濡れているが、とても晴れやかなものだった。

 

 

そして、光と一緒に風が吹き、花びらが共に舞う。まるで、『騎士』を慰めるように、子供達の旅立ちを祝うように。

 

 

 










はい、まぁ今回はこんな感じに。福山に与えた役割はズバリ『弔い』ですね。
子供たちの墓をしっかり作ってあげた方が良かろうと思いまして・・・


まぁ、これは持論ですが、遺された方にできる事なんて悼むくらいなんですよねぇ。で、その悼む場所が必要と思いまして・・・



さて、次回からは重い内容は脱します!
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