ハイスクールD×D ~審判を超えし者~【凍結】   作:メラニン

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さて、今回は説明回&働き先の決定です!


では、どうぞ!


第2話 衝撃のビデオレターです!

―― 一誠side

 

 

さて、どうやら俺たちは俺たちの世界によく似た世界に飛ばされたらしい。しかも、日付やら時間やらが全く異なっていた。今この世界では7月30日。俺たちの世界よりも進んだ日付だ。

レディオンにも空間転移出来ないか聞いてみたが、今回は次元を通り越しているとか、壁がどうのと言っていて、無理と言われた。となると、あのリモコン型のワープ装置で戻るしか無いのだが、妖精さん曰く、電池切れで充電するのにあと数日か、数週間も掛かるらしい。とにかく充電をさせて貰うために、コンセントを拝借している。

取り敢えず、まずは互いの情報が無いと話が進まないと言うことで、お互いに情報交換をした。

 

それで知ったのはコッチの地球では一切の異能が存在しないということだった。異能の源になる魔力や聖なる力(こっちでは聖法気というらしいが)の補充が行えないとのこと。(人に恐怖などのマイナスの感情を与えれば、そこから魔力を得る事ができるらしいが………)

しかし、俺たちの前に現れた女性2名が何故あんな風に力を使えたかと言うと、彼女達はこことは別世界であるエンテ・イスラ出身で、その別の世界から送られてくる、あるもので回復出来るからだそうだ。

で、俺たちに向かって来た蒼銀の髪の女性(今は赤みがかった黒髪になっているが)は本名はエミリア・ユスティーナと言い、勇者ということらしい。日本では遊佐恵美と名乗り、ド◯モのテレアポセンターで派遣の仕事をして生活しているとのこと。

 

 

そして、俺たちが居るヴィラローザ笹塚のアパートの一室の家主こそ、エンテ・イスラで魔王をやっていたという魔王サタン・ジャコブ。日本においては真奥貞夫と名乗り、マ◯ドナルドでバイトをしてフリーターをやっているらしい。目下の目標はバイトから正社員になる事。

その部下という芦屋四郎。本名はアルシエルで、地位は悪魔大元帥。日本では専ら主夫業に専念していて、空いた時間で魔力の取り戻し方を探っているらしい。

同じくその同僚だという、漆原半蔵。本名はルシフェルと言って、堕天使で悪魔大元帥。日本では……………ニートまっしぐら。本当に堕ちた生活をしているって訳だな。

 

 

俺たちに向かって来た着物の女性は鎌月鈴乃。本名はクレスティア・ベルと言って、大法神教会訂教審議会筆頭審問官という職にエンテ・イスラでは就ていたらしく、日本では漆原と同じく無職ではあるものの、身の回りを全て自分でこなしているので、漆原とはかなりの差がある。

 

 

……………と、なぜかそこに居る一般人の女子高生である佐々木千穂。

 

 

なぜ、彼女がそこに居るのかと言うと、エンテ・イスラにおいて魔王は勇者に負けて、『ゲート』でこの世界にアルシエルと共に避難して来たが、魔力が一切使えなくなり生活のためフリーターに身をやつし、日々を送っていた。しかし、魔王を単身で追ってきた勇者と遭遇。再会した際は、百均のナイフで斬りつけられるほど仲が悪かったらしいが、ルシフェルと勇者の元仲間であったオルバという爺さんが佐々木さんを巻き込み、暴挙を働いたために魔王と勇者は仕方なく共闘し退けた。佐々木さんはそこで巻き込まれたために、そこから異世界との関わりを始めたらしい。

因みに、この時ルシフェルはボコボコにされて、名前を漆原と変えてここに匿ってもらっているらしい。魔王も自分の部下という事で、放っとけなかったのかな?オルバという爺さんは警察に捕まったそうだ。

 

 

その後、勇者を追いかけてきたクレスティア・ベルこと、鎌月鈴乃がやって来た。天使であるサリエルと結託して、また佐々木さんを巻き込んで、エミリアの聖剣を回収しようとしたが、魔王に諭されサリエルから佐々木さんを助け出し、サリエルを撃退したらしい。

 

 

で、最後に謎の赤ん坊であるアラス・ラムス。魔王の事を『ぱぱ』、勇者の事を『まま』と呼んでいる。この子はどうやら勇者の聖剣と融合しているらしく、自由に具現化と収納(?)が可能らしい。なんでも、セフィロトの構成要素であるセフィラの一つであるイェソドの化身とのこと。そのため、天使の組織である天兵連隊と共にやって来たガブリエルって天使がアラス・ラムスを回収しに来たが、なんとか退けたらしい。この世界のガブリエルは男性で服のセンスが無いと言っていて、イリナが必要以上に反応していた。

因みに、アラス・ラムスは決して魔王と勇者の実の子では無いと、かなりしつこく言われた。特に佐々木さんに。

 

 

「…………セフィロト………セフィラ………イェソド…………うーーーん………北欧の方でセフィロトについて学んだ気がするんだけど、何だったかなぁ。あ、そう言えば、セフィラが全部揃ってないとダァトがどうのって、聞いた気がす――っ!?」

 

 

「ちょっと、それをどこで聞いたの!?詳しく話しなさい!!」

 

 

アラス・ラムスの説明が終わったところで俺がそう言った瞬間に、遊佐さんが凄い剣幕で迫ってきた。

 

 

「ぐ………く、苦し………し、締まってる、締まってる………」

 

 

「イ、イッセーさんを離して下さぁい!!」

 

 

アーシアが必死に涙を浮かべつつ、割って入ってくれるが止まる気配がない。

あ、やべ。本当に意識が………

 

 

「おい、恵美。やり過ぎだぞ」

 

 

「そうですよ、遊佐さん。それじゃあ、話す事も話せませんよ」

 

 

「う………ご、ごめん………」

 

 

そこで、俺はようやく解放された。窒息死すると思った………

隣に居たミラが一堂を見回すようにして、見やると口を開いた。

 

 

「にしても、改めて見ると信じらんないわねぇ。フリーター魔王に、OL勇者。主夫な悪魔大元帥に、ニートな堕天使、無職な聖職者、セフィラの赤ん坊。で、その中に居る女子高生。何コレ?ネタ?」

 

 

ミラはズケズケと思ったこと言うなぁ。

 

 

「なっ!?し、失礼ね!!私だって、こんなビンボー魔王斬り捨てて、とっととエンテ・イスラに帰りたいわよ!!」

 

 

「まま、ぱぱとけんかしちゃ、やーの!!」

 

 

アラス・ラムスが必死に遊佐さんの足にしがみ付いて訴えかける。

 

 

「………恵美。お前は情操教育に悪い」

 

 

「魔王に言われたくないわ!!」

 

 

うん、正論。けど、コッチの魔王様とイメージが違うなぁ。いや、まぁしょうがないんだろうけど。

 

 

「そんな事よりさぁ、そいつらどうすんの?」

 

 

「………はぁ、悪魔である以上放っとく訳にはいかないでしょ?」

 

 

「………失礼ですが、私たちは貴方達の言う所の悪魔とは別物です。決して人間に危害を加えたりはしません」

 

 

部長が取り繕うが、どうやら勇者である遊佐さんは納得出来ないようだ。

 

 

「そんなの信じられるわけないでしょ!エンテ・イスラじゃ悪魔は人間を虐殺して楽しんでいたような連中ばっかりだったわ!」

 

 

無言で睨み合う部長と遊佐さん。しかし、ニートがそこに割って入ったことによって、一旦険悪ムードはストップした。

 

 

「ねぇねぇ、ところでさぁ。今は真奥の問題を解決しないといけないんじゃ無いの?」

 

 

「そ、そうですよ、真奥さん!早く大家さんのビデオを見ないと!」

 

 

「ぐあぁぁぁ!忘れていたことをおぉぉぉ!!」

 

 

急に家主である真奥が苦しみだしたので、何事かと聞いてみた。

 

 

「あ、えっとぉ…………真奥さんと私の働いているマ◯ドナルドが改装する間、真奥さんお仕事無くなっちゃうんです。それに、このアパートも修理する間は住民の人達は出て行かないと行けないらしくて………」

 

 

「………つまり、宿無し無職の魔王になるって事?」

 

 

「ぐふっ!!」

 

 

俺の言葉が突き刺さったのか、真奥は倒れた。

 

 

「き、貴様!異世界の住人とはいえ、悪魔である事には変わりないのだろ!?ならばもっと魔王様を敬え!」

 

 

そんなこと言われてもなぁ…………

 

 

 

「ふむ、こちらの世界と私たちの世界だと、魔王もだいぶ違うのだな」

 

 

ゼノヴィアの言葉が気になったのか、鎌月さんが質問してきた。

 

 

「…………少し気になったのだが、そちらの世界では魔王とはどの様な感じなのだ?いや、先ほど四人いるというのは分かったのだが、詳しくは知らない故な」

 

 

「……私たちの世界の魔王様は冥界でも人間界でも事業を立ち上げて成功を収めてますね。実際に部長のお兄様がその魔王の一人ですが、冥界では魔王として。人間界では学園の理事と他にも幾つかの事業を立ち上げてます。因みに、私を含めて全員がそこの生徒です」

 

 

 

「へぇ〜〜〜………それが、こっちじゃエライ甲斐性なしでビデオテープ一本に怯えてる魔王と来たんだから、悲しくなるわ」

 

 

かなり冷たい視線を投げかける遊佐さんに、居所が悪そうに視線を泳がせる真奥。うーん、確かに魔王っぽくないな。

 

 

「う、うるせえな!お前たちはアレを見たこと無えから――」

 

 

「はいはい。で?どうすんの?千穂ちゃんが折角ビデオデッキ貸してくれるって言ってるんでしょ?とっとと行って来なさいよ。こっちの悪魔御一行は見張っとくから」

 

 

「悪魔じゃないもん!私天使だもん!」

 

 

「イリナ。分かってるから、翼を仕舞え。こんな狭い中じゃ翼が当たる」

 

 

イリナは少し文句を言いながら翼を仕舞ってくれた。

 

 

「エミリア、見張りは私の方でやっておこう。エミリアは魔王の見張りの方がいいだろう?」

 

 

「そう?ありがと、お言葉に甘えるわ、ベル」

 

 

 

「はぁ…………しょうがねえ。覚悟を決めて行ってくるわ!ちーちゃん、悪いけど家にお邪魔してもいいか?」

 

 

「は、はい!あ、でも一回お母さんに確認取って良いですか?」

 

 

そう言うと、佐々木さんは携帯電話で電話をかけ始めた。

 

 

「さて、兵藤君だっけ?お前も来い」

 

 

「……良いですけど、理由は?」

 

 

「ここに残る悪魔勢の人質だよ。まだ、全面的にそっちを信用してないからな。お前が多分一番効果的だ。ほら、事実そっちの連中は一気に俺に敵意向けやがった」

 

 

あ、ホントだ。

 

 

「コッチは芦屋達だけしか見張りに残して置けないからな。その間に変な事しない様にって意味を込めての人質だ」

 

 

「なるほど。で、あなた自身が俺の人質って訳ですか」

 

 

「へぇ、分かってるじゃん」

 

 

こんな感じでお互いを人質にした不思議な一行はヴィラローザ笹塚というアパートを後にした。

 

 

 

 

そして、いざアパートを出る時に漆原だけが俺の方に近付いてきて耳打ちした。

 

 

(余計な事は吹き込まないでよ?特に魔王にはさ)

 

 

(え?)

 

 

(ただでさえ、魔王はある伝説を知っているって事で、一部の天使にはターゲットにされてる。そこにセフィラ云々の情報を得ちゃったら…………分かるよね?)

 

 

俺は一度頷いて真奥たちの後を追った。

 

 

 

 

――○●○――

 

 

 

「ただいまー、お母さ――わっ!?」

 

 

「あらあらまぁまぁ、いらっしゃい!あなたが真奥さんよね!?」

 

 

そう言って出てきたのは快活そうな30から40くらいの歳の女性だった。

 

 

「は、はい。真奥貞夫です。いつも佐々木さんにはお世話になっています」

 

 

 

「いいのよ、そんなに硬くならないで!それで、あなたが遊佐さんよね?よく千穂から話は聞いています。とっても、しっかりした大人の女性だって聞いてるわ!」

 

 

「は、はぁ………ありがとうございます。改めまして、遊佐恵美です。初めまして」

 

 

「はい、初めまして」

 

 

「あ、そうだ、いつも佐々木さんにはお世話になっているので、つまらない物ですが……」

 

 

そう言って真奥は白い紙の箱を渡した。あれは、近所で美味しいと有名らしいケーキ屋で買ってきたものだ。因みに払ったのは俺だ。もしかすると、しばらくはコッチの世界で生活するかもしれない。となると、俺もお世話になるかもしれないからだ。ただ、この世界で俺たちの世界の現金を使うのはマズイので、この時間までギリギリ空いていた店で先日依頼の報酬で貰った指輪を換金した。

どの様な依頼だったかと言うと、別れた元カレに一泡吹かせたいって依頼で、その元カレさんは性格が若干アレだったので、少しキツめに懲らしめたら指輪が報酬になった。どうやら、値打ち物だったらしくかなりの金額になった。因みに、その金額を見たときの魔王と勇者の目は怖かった…………

 

 

 

「あらぁ、ワザワザごめんなさい。そんなに気を使わなくてもよろしいのに。…………で、そちらが千穂から電話で聞いていた――」

 

 

「初めまして。真奥の親戚で兵藤一誠と言います。夜分に失礼します」

 

 

ここでは、俺は真奥の親戚という設定にした。ここで遊佐さんの親戚と言おうものなら、多分斬り掛られるからだ。この人の悪魔嫌いは筋金入りらしい。

 

 

「そうなんですかぁ。真奥さんの………話は聞いています。今回は大変なみたいねぇ。さ、どうぞ。上がってください」

 

 

 

そうして、俺たちは佐々木家のリビングに案内された。

 

 

「もう~~~~……………お母さん張り切りすぎ…………」

 

 

小声で佐々木さんがそんな事を呟いた。

まぁ、確かに客を迎え入れるのにも、これは張り切りすぎだと思う。リビング丸々一室がフローラルの香りで満たされ、テーブルの上には真新しい花が刺された花瓶が鎮座している。椅子のクッションも真新しいし、テレビ周りや床も埃一つない。ただ、一目で歓迎されているのは分かる。

 

テーブルに座っておくように促されて、そのまま席に着く。暫くすると茶菓子と紅茶を運んできてくれた。茶菓子にはさっき渡したケーキなんかも含まれていたりする。

配膳が終わり、佐々木さんのお母さんも向かい合う形で席に着いた。

 

 

「じゃあ、改めまして千穂の母の佐々木里穂です。いつも娘がお世話になっています」

 

 

「い、いえいえ、そんな!むしろいつも此方が助けられています!」

 

 

「もう、お母さん!いいってば!真奥さん達も困っちゃってるでしょ!」

 

 

佐々木さんがお母さんに…………あー、ややこしいから、名前でいいや。千穂さんが里穂さんに止めるように懇願しても止まらない。

 

 

「何言ってるの。普段からバイトでお世話になってるんでしょう?それに、普段から遊佐さんとも色んな交流があるんだったら、これくらい当たり前よ」

 

 

「あーもぅ〜〜………」

 

 

 

どうやら、千穂さんの方が折れたようだ。

 

 

「で!?そっちの兵藤……君?は真奥さんと親戚なのよね?」

 

 

「ええ、まぁ一応。といっても結構遠縁なんですが」

 

 

「へぇ。今回はどうして真奥さんの元を訪ねてきたの?」

 

 

「ただ単に遊びに来ただけですよ。急に行って驚かそうと思ったら、まさかこんな事になってるとは思ってもみませんでしたが………」

 

 

うん、若干嘘言ってる気もするが、合ってるといえば合ってる………はず。

 

 

「そうよねぇ。まさか、ダブルパンチでこんな大変な事が重なるなんてねぇ。見たところ兵藤君の方は千穂とあまり変わらないくらいかしら?」

 

 

「そうですね。今高校2年生ですから、同い年ですね」

 

 

「ところで気になっていたんだけど、その髪色って地毛かしら?」

 

 

………そうですよね、気になりますよね。お忘れかもしれないが俺は白髪アンド先端は黒なのでよく勘違いされる。日々真面目に生きてるのに、これが原因で不良とかに間違えられる事もしばしば。まぁ、問答無用で絡んできた連中は返り討ちにしてるけど。

 

 

 

「はい、地毛です。母が北欧の方出身なので、この髪色なんですよ」

 

 

「もう!お母さん!兵藤さんに失礼でしょ!!」

 

 

「でも、気になるじゃない!こんな髪色した子を見る機会なんて滅多にに無いんだから!」

 

 

「ご、ごめんなさい、兵藤さん………あ、真奥さん、デッキの準備できたから再生しちゃいますね」

 

 

「お、おおおおおおおおおう、た、頼むぜ、ちーちゃん」

 

 

異世界の魔王が物凄い震えながら、大家さんから送られてきたというビデオテープを渡す。

え?そんなに怖いものが収録されてるんですか、それ?

 

 

なんだか分からんが、覚悟は必要みたいだ。しかし、俺はこの直後に思い知る。どれだけ自分の覚悟が足りていなかったのかを。

 

 

そして、ついにビデオテープがデッキに入れられ、再生ボタンが押される。

 

 

そこに映し出されたのは、雲一つない青い空に砂漠。そして遠くの方にピラミッドが見える事から、エジプトと分かる。そして、カメラが動いていき遂に画面に『彼女』が映った。

 

 

「「……………ッ!!」」

 

 

その瞬間、今まで感じた事の無いような寒気を感じ、ブルッと身震いした。アレがヴィラローザ笹塚の大家さんか…………隣の席で見ている真奥も俺と同様なのか、額に薄っすら汗が浮かんでいる。

状況だけ言ってしまえば画面に映っているのは、結構大柄の女性で日除け用のフリルの付いた日傘を片手に大きめのドレスハット、半袖に生足がこれでもか、と言うほどに露出したワンピースを着ていて唇には真っ赤なルージュが濃く塗られている。見れば見るほど、悪寒が止まらない!

しかし、そういった様子は俺と真奥だけのようで、遊佐さんと千穂さん、里穂さんは平然としている。

 

 

『ごきげんよう、真奥さん、芦屋さん。私志波は今エジプトのギザの三大ピラミッドの前から連絡させていただいております。この度は災害に遭われたそうですが、真奥さんたちにお怪我が無かっただけでも私は安心しました。さて、アパートの修理ですがこれを機に大規模な修繕を行おうと思っております。そのため、住人の皆様にはご迷惑をお掛けしますが、暫くの間アパートを開けて頂きたく思います。今回の修繕は全て私の方で行うのでお金の心配は要りません。また今回の事で家賃が上がったりする事も無いので御安心下さいね』

 

 

真奥は冷や汗をかきながらも、今の言葉特に最後の方には安心していた様に見えた。

うーん、この辺はやっぱりサーゼクス様とかとは全然違うなぁ。サーゼクス様が貧乏な姿……………

ダメだ、想像できない。

 

 

 

『時に真奥さん。私には姪がおりますの』

 

 

「「え!?」」

 

 

その言葉に驚いたのは真奥と俺だ。言い方が失礼になってしまうが、こんなのが他にも居るのか!?

それを想像しただけで、背筋が凍る!

 

 

『その姪が今度海の家を経営する事になっておりますの。もし改修期間の間、行く当てが無いのでしたらそちらの方で住み込みで働いては頂けないでしょうか?当然そちらにもご都合があるでしょうから、出来ればで構いません。場所は千葉県の銚子の方にある海の家で、もしご都合がよろしければこれから言う連絡先に連絡を入れてください』

 

 

「!?」

 

 

その言葉に真奥は目を丸くした。確かに、この話は真奥達が抱える家の問題と仕事の問題を同時に解決できることになる。まさに棚から牡丹餅のような話な訳だ。

 

 

「良かったじゃない!真奥さん!」

「魔お――真奥!今すぐ連絡取りなさいよ!ほら、大家さんが連絡先言おうとしてるから!」

「真奥さん、紙です!ええっと、何か書けるもの……」

「はい、ペン!」

 

 

俺を含めた後半3人はナイスコンビネーションだっただろう。まず、遊佐さんが呆けている真奥の意識を呼び覚まし、千穂さんが紙を差し出して、俺が偶然ポケットに入れていたボールペンを渡す。

 

 

「お、おう!?サ、サンキュー……っと、連絡先は………」

 

 

そうして、連絡先を急いで紙に書く真奥。

にしても、意外だった。話を聞く限りじゃ遊佐さんは真奥の事を許せないという話なのに、協力するとは……

何でだろ?

 

 

周りに聞こえないようにコッソリ聞いてみた。

 

 

(あの、話を聞く限りじゃ真奥さんと遊佐さんって敵同士なんですよね?何で今回は協力的なんですか?)

 

 

(簡単よ。もしこれで魔王の働き先が無くなって、それこそ犯罪でも起こして魔力を回復なんかされたら、本末転倒だからよ。私は魔王を全面的には信頼してないわ。それに、あなたもね)

 

 

(………最後の一言はグサッと来ました)

 

 

(あら、悪魔も言葉でダメージを受けるのね)

 

 

うん、この人ヤッパリ悪魔を毛嫌いしてるのは本当だな。言葉の節々に若干トゲがあったりする。

 

 

 

「真奥さん!今すぐ連絡しなさい!だってこのビデオテープが送られてきたのって結構前なんでしょ?もしかしたら先に働き先取られちゃってるかもしれないでしょ!」

 

 

そのとき千穂さんが、銚子とボソっと呟いたが、真奥には聞こえなかったようだ。

当の真奥は連絡先を携帯電話に打ち込んで、一度目礼をしてから連絡をし始める。

 

 

「…………あ、夜分に失礼します。私志波さんに紹介された真奥という者ですが………」

 

 

電話越しからは随分フランクな対応をする女性の声が聞こえた。声の感じからしてまだ年若い感じかな?

 

 

「はい……えと、ミキティ?……あ、そうです。長い間連絡をせず申し訳ありません……………………はぁ………はい、大丈夫です。行けます。それで、場所が千葉県の銚子としか言われていなくて、詳しい場所が分からないのですが…………はい、君ケ浜?………犬吠?外山?」

 

 

真奥は言われたことを先ほどのメモに書いていく。犬吠って確か千葉の東端の方だっけか?行ったことないけど………

 

 

「分かりました、ではこちらでも調べておきます。で、持ち物とかは……………え?体力?………………はい、ビーサンと動きやすい服装ですね…………分かりました。合うヤツを買っておきます………………………え、一人時給千円!?」

 

 

最後の方だけ声のトーンが上がった。確かに時給千円とかなら下手なコンビニよりは高い。それに、住み込みだからその間は殆ど生活費は掛からない訳だから、労働条件としては結構良い方だろう。

まぁ、俺は悪魔の仕事くらいしかやった事無いけど。

ただ、最後の一人時給千円の話から真奥の目つきが若干変わり、俺を見据えていたのが分かった。え?何ですか、その目は?

 

 

 

「何人まで大丈夫ですか?…………はい、それなりに大勢で行けます。基本的には同居人と俺で3人ですが、今たまたま来ている『親戚』を含めて、男女合わせて10人ちょいです」

 

 

「え!?ちょ!?」

 

 

真奥が指を口に当てたので、俺は慌てて黙るが、今のはどういう事だ!?

ジェスチャーでこっちの意思を伝えるが、真奥は俺を指差して口パクで『はたらけ』と言ってきた。

何という横暴!?さすが魔王!

ってか、多分オカ研メンバー全員が人数にカウントされてるよね?え、どうするの?部長たちは多分大丈夫。面白がりながらやってくれそう。けど、ミラ…………は文句言いそうだなぁ。ただ、一番の問題はギャスパーだ。あいつコミュ障もいいところだぞ!しかも、真夏の海の太陽ピーカンの所でって…………ヴァンパイアには地獄だな。

 

 

「…………はい………多い分には大歓迎………分かりました!………………はい、そうですね。こちらで少し荷物とかを整理してから伺いたいので、明後日には…………え?そ、そんな相手いませんよ!………はい、じゃあ当日は犬吠って駅まで電車で行って、迎えに来ていただけるという事で…………はい、分かりました!では明後日の正午頃に!失礼します!」

 

 

携帯を切った真奥はこちらに向き直った。

 

 

「って事で悪りぃ。お前も働いてくれ」

 

 

「どういう事だよおぉぉぉぉ!?」

 

 

場も弁えずに絶叫してしまったが無理もないだろう。だって、いきなりお前も働き先の労働人口に入れといたから、ってのは理不尽だろ!

 

 

「どういう事も何も、あのアパートは話にあった通り立ち入り禁止になるんだし仕方ないだろ。その間どうするんだ?お前ら家に帰れないんだろう?」

 

 

「う…………まぁ、そうですけど………」

 

 

「え、なに兵藤君って家出でもしてるの?」

 

 

「いや、違います。ええっと………………家の事情で………」

 

 

「ふ〜ん、なるほどねぇ………あれ、でも10人って――」

 

 

「もーー!お母さん!いいでしょ!人様のお家の事情は!それより、真奥さん良かったですね。これでまた、休業明けは一緒にバイトできますよね!」

 

 

「おう、そうだな、ちーちゃ――」

 

 

『ところで、真奥さん。私こちらでベリーダンスを学ぶ機会に恵まれましたの』

 

 

今までフリートークでもしていたらしい、大家さんのビデオレターの画面はいつの間にか豪勢なダンスホールに変わっていた。

 

 

『それで、ダンスを生業とする部族に一流と認められて、今度大会にも参加致しますの。それでその練習の成果を是非ここで披露したいと思いますのでご覧あそばせ』

 

 

「あらー、素敵な衣装ね」

 

 

!?

里穂さん、正気ですか!?アレが素敵!?

 

 

俺には里穂さんの発言が狂気の沙汰としか思えなかった。

大家さんは肩を大きく曝け出し、どこが境か分からないベールを腰に巻いて、その下には真っ赤なスカートが覗いている。正直に言おう。俺にはアレが人間に見えない!真っ赤なラフレシアの化け物だろ!

とにかくそこから、俺と真奥の行動は速かった。このビデオレターを止めないと絶対にここに居る全員………いや少なくともさっきから、汗を流している俺と真奥は生きていられない!そう本能が告げているのだ!

ともかく、停止ボタンを押そうとビデオデッキに手を伸ばした時にはもう遅かった。音楽が流れ始めて、大家さんは流れ目でこちらを見ながら…………

 

 

「「ぎやあぁぁああぁぁぁぁぁああぁぁぁ◯△*>$%£€!*+σ~~~~~~!!!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから俺は翌朝までの記憶が無い………

 




はい、今回は少し長かったですね。この章は自分の独自解釈が若干入ります!

あと、これを投稿してる現在ですね、GWで調子に乗って飲んできた後でして・・・
誤字とかが酷いかもしれないので、見つけたらご一報ください。すんませんす・・・


では、次回に続く!
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