ハイスクールD×D ~審判を超えし者~【凍結】 作:メラニン
では、どうぞ!
(あー、酒残ってるよー。アタマイタイー・・・)
―― 一誠side
「んーー…………ん?…………………はぁっ!?」
えー、皆さんおはようございます。
夢の中にあの昨日の悪夢が出てきて目が覚めた。あー、寝覚め悪い。
俺が今居るのは見慣れない天井、ブルーシートで覆われた窓や壁。さらに、俺の部屋よりも遥かに狭い一室で目を覚ます。
俺たちが異世界………もとい、どこかに存在するという、もう一つの地球に来てから1日が経過した。
昨日はね………もう本当に酷かったですよ!あの悪夢なビデオレターを見せられて、俺は気絶したらしい。気が付けばヴィラローザ笹塚に戻って来ていた。
俺の周りに居るのは未だにイビキをかいて寝ている、この部屋の家主である真奥。そして、木場と部屋の隅っこに置かれているダンボールから息遣いが聞こえてくる事からギャスパーが居るのだろう。
また、おそらく押入れの中にはやる気のない駄天使……………間違えた。堕天使の漆原が引き篭もっている。
「おはようございます、兵藤さん。よく眠れましたか?」
そう言って声を掛けてきたのは、既に起きてグリーンのエプロンを着用し朝食の準備に取り掛かっている芦屋だ。
「おはようございます。あ、朝食の準備なら手伝いますよ」
「いえ、そういう訳にもいきません。兵藤さんはお客様ですし」
「え、でも悪いですし……」
「いえ、お気になさらず。それに、これ以上お世話になる訳にはいきませんので」
「え、それってどういう……」
「これです!」
そう言って芦屋は冷蔵庫を全開にした。冷蔵庫の中は昨日見たより遥かに食材が充実しているのが分かる。
「リアス・グレモリー様からあなたのためとはいえ、ここまで食材を提供していただいたのです!この芦屋、我が魔王城の冷蔵庫がここまで充実しているのを見るのは初めてなのです!これを提供していただいたからには、私も悪魔大元帥として恩を返さなければ私の沽券に関わります!なので、三食の準備くらいは私がやらせていただきます!」
「は、はぁ…………じゃあお願いします」
「はっ!」
……………『食』って凄いな。人や悪魔限らず、ここまで影響を与えられるんだからな。そう考えると、俺は恵まれすぎてるなぁ。
「つっても芦屋よぉ。今日中にそれ全部片付けなきゃならないんだろう?結構キツイんじゃないのか?」
もそもそと、この魔王城の主もといヴィラローザ笹塚201号室の家主である真奥が起きてきた。まだ寝ぼけているのか半目を開けた状態で周囲を見渡す。
「あーー、改めて見ると人口密度凄えな。こんな狭い場所に男6人が雑魚寝って。まぁ、一人は押入れで、もう一人は段ボールの中なんだが」
「おはようございます、魔王様。さ、起きてください。今日は魔王様は木崎さんの所へ事情を説明しにいくのでしょう?」
「まあな。だけど、行くのは昼頃だぜ?それよか、芦屋はどうするんだよ?」
「私の方は明日のための準備ですね。恵美の話を聞いた限り、住み込みだそうですからキャリーケースやビーサンなどを買いに行ってきます。それと着替え等の準備もしておきます。あとは、私自身の事情を済ませてきます」
「ん、りょーかい。で?兵藤君とかはどうするよ?」
「どうするって…………俺たちも働かされる件って他の皆は知ってるんですか?」
「ああ。とっくに了解を得たぞ?何人かは渋ってたが、異世界のお前らから目を離す訳にもいかないだろう?だから一緒に行動してもらう、って事で納得してたぞ」
「んー、じゃあ部長たちの準備に付き合いますよ。ほら、女の子の準備って大変みたいですし」
「なら、僕も手伝おうかな」
いつの間にやら起きてきた木場も会話に加わった。
「やぁ、おはようイッセー君」
「ああ、おはよう。と言う訳で、自分達は自分たちの準備をしてきます」
「そうですか。では、兵藤さん達の案内はベルに頼みましょう」
「そうだな。多分あいつならやってくれるだろ。俺たちは俺たちの方の準備を終わらせよう。で、芦屋。飯まだか?」
「はい、もうできますよ」
それで芦屋の方は朝食の最後の仕上げに入った。あれ、そう言えば………
「あの、皆はどこに?」
「それは僕から説明するよ。昨日イッセー君達を運んだ後に僕ら男性陣はここって事になったんだけど、女性陣には別れてもらったんだ、スペースの関係上ね。隣の鎌月さんの部屋には部長とミラさん、アーシアさんが居るよ。で、朱乃さん、ゼノヴィア、小猫ちゃん、黒歌さん、イリナさんは遊佐さんの家にご厄介になってるよ。まぁ、この割り振りを決めるときがまた凄かったんだけどね………」
「ん?凄かったって?何が?」
木場、真奥、芦屋は揃って目を逸らした。
「え?何?何があったの?」
「……………昨日は女性の底力のようなものを垣間見た気がします」
「俺も芦屋と同意見だ」
「僕は慣れてるんですけどね………」
「え?え?え?」
「まぁ、知らない方が幸せだよねー。おはよー。芦屋ー、ご飯まだー?」
押入れが開き、そこから押入れの住人でニートな駄天使……………もとい堕天使の漆原半蔵が出てきた。
「黙れ、漆原。貴様、今朝の食卓が誰のお陰でここまで贅沢になっているのか忘れたか!?」
確かに、ちゃぶ台の上には結構豪勢な朝食が並んで、いい匂いが立ち込めている。
「分かってるよ。そこの異世界の悪魔には感謝しないとねー。ありがとう」
「漆原………」
芦屋からは怒りのオーラが立ち上っている。魔力は無い筈だが、威圧感が多少なりともあるのは悪魔大元帥としての貫禄故だろう。決して主夫だからとかでは無いはず………
「ま、まぁまぁ、出来たんなら早速いただきましょう」
「む………そうですね。では、隣の者達を呼んでまいります」
芦屋が出て行こうとしたところで、ドアが開いて部長とミラ、アーシア、隣の住人である鎌月さんが入ってきた。鎌月さんだけ若干疲れたような顔をしていた。
「おはようございます、リアス様。よく眠れましたか?」
部長は様付けされていた。むー、食品の力恐るべし。
「ええ、よく眠れました。朝食を準備させてしまって申し訳ありません」
「いえ、いいのですよ。食材はそちらが提供して下さったので当たり前です…………ところで、ベル。なぜお前は疲れた様子なのだ?」
確かにクレスティア・ベルこと、鎌月鈴乃の顔は若干疲れた様な顔だ。
「ああ、ごめんなさい。私が抱きついたまま寝てしまった様で………」
「………………何なのだ、この差は………」
鎌月さんは目線を部長に合わせたままそんな事を呟いていた。その目は羨望とも嫉妬とも取れる目であった。
「?まぁ、いい。とにかく、今日は頼みたいこともあるのだ。協力してもらうぞ?」
「ああ、分かっている………はぁ……………」
鎌月さんが溜息をついた後、食卓に全員が付いて朝食を取った。そこで、今日の予定の確認をしている最中にオカ研の残りメンバーもやって来て、俺たちはそれぞれ行動を開始した。
因みに遊佐さんは仕事に出かけたらしい。
――○●○――
「ほら、鈴乃はこっちの方がヤッパリ似合うわよ」
「い、いや、しかし私は別に今回は行くわけではないし――」
「あらあら、それでもこの世界にまだ暫く滞在するのでしたら、水着の一着くらいは持っていた方が良いですわ」
「で、でもこれは――」
「じゃあ、コッチは?んーー…………少し大きいわね」
「あ、あのだな――」
「部長さん、コッチはどうでしょうか」
「あら、いいわね、アーシア。折角ミラも選んでくれたのだし、早速試着してみましょう」
「ちょっと、待――話を聞けぇぇぇ!!」
デパート内で聖職者が悪魔に引きずられていく図がそこにはあった。
俺たち異世界組は明日から始まるバイトのために、色々と入り用な物を準備していた。海へ行くなら、まずは水着を調達しよう、と女性陣が言い始め俺たち男性陣もそれに同行している。
で、一応案内役として、鎌月さんも付いて来たのだが着せ替え人形状態である。自分たちの分もあるだろうに。こうなると、かなりの長丁場を覚悟しなければならない。
「はぁ………アレは長くなるぞ」
「はは………そうだね。僕らは一応バイト用の服を買い終わってしまったし、どうしよっか?」
「ううぅぅ…………人が一杯……」
ギャスパーは相変わらず人が大勢いるとダメらしい。まぁ、人混みが好きな奴なんて居ないだろうしな。俺たちは流石に女性用の水着コーナーに居るわけにはいかないので、外の方で遠目から見ているだけになっている。仕方がないので俺たちは店の外に出て、近くの自動販売機で飲み物を買って、店の前の通路のベンチに座って一息ついていた。
俺たち男性陣が買ったのは、バイト用の服とビーサン。一応海の家という事で水着と私服を二着づつのみだ。それに少し入り用になりそうな物をイロイロと。
まぁ、それでも所持金はまだかなり、余ってるんだけど余裕があった方がいいから、この程度の買い物にしておいた。因みに今回ばかりはギャスパーにも男用の水着という事にしてもらった。本人は滅茶苦茶渋ったが、今回ばかりはな。
「まぁ、しょうがないから、俺たちは雑談して時間を潰そう」
「そうだね。それにしても、イッセー君の使い魔はいよいよ次元すら超えるアイテムを作っちゃったね」
「でも、スゴイですよぉ。これを使えば異世界旅行し放題ですね、先輩」
「まぁ、その度に電池の充電中は今回みたいに強制的に滞在させられるけどな」
「そ、それは困りますうぅぅ………」
けど、本当に凄いものを作ったな、あいつら。確かにこれで異世界に行き放題だ。
『……イッセー、分かってると思うけど――』
分かってるよ。これでエレンピオスに帰ろうなんて考えないさ。あの世界の『ルドガー・ウィル・クルスニク』は確かに死んだんだからな。
あのリモコンは無事に帰ったら処分するさ。
『………ゴメンよ、イッセー』
謝るなよ、オリジン。いいさ、あの世界には『今』を生きてるエルや仲間たちが居る。どちらにせよ、俺が戻っても後を生きてるアイツらの邪魔になる。だから戻らない。
『………主様は本当にそれで――』
『テミス。それ以上は言うな。相棒は既に答えを決めている。俺たちが口を出すべきではない』
『なっ、わ、分かっています!』
はは、心配してくれてアリガトよ。俺は大丈夫だ。
「イッセー君?大丈夫かい?」
「へ!?何が!?」
「呼びかけても反応が無かったからさ」
「そうですよ、先輩。どうしたんですか?」
「え、あー………無事に俺たちの世界に帰れるのか、考えてた」
「まぁ、それはイッセー君の使い魔達を信じるしかないよね」
「うぅぅ………できるだけ早くおウチに帰りたいですぅ」
「ははは………そうだな。部長も里帰りする予定があったし、あまり長い期間ここに居ると皆が心配するからな」
「そうだね。特にイッセー君のお母様とか」
「う………やめてくれ。想像したくない」
ああそうだよ。もし、母さんに無断で居なくなったりなんかしたら、どうなるか………
ブルル…………か、考えないでおこう。
「イッセー、ここに居たのか。どうだろうか、この水着は?君の好みに合っているかな?」
………………俺の目の前には、鮮やかなブルーとグリーンの水着を着たゼノヴィアが立っていた。爽やかな色合いの水着は確かにゼノヴィアにはよく似合っていて、また彼女のボディラインをくっきり強調する水着姿は賛辞を贈りたくなる。
だが、思い返して欲しい。ここは店の外の通路。他のお客も大量に居る。そこで、男性に女性が自分の水着姿を誇示しているのだ。これを、事情を知らない人が見たらどうなるか。皆さんに考えて欲しい。
「ねぇねぇ、何アレ?」
「何かの撮影?」
「ここで?」
「うわっ、スッゲェスタイルいいな!」
「大胆!」
「外人、よね?」
「水着少女ナウ」
ああ、周囲から奇異の視線や声が………
「どうした、イッセー?感想を言ってくれ。それとも、やはりイッセーは裸の方が好みか?いいだろう、前の様に見せてやるが、その……………今度は責任を取って………その、だな…………」
「誤解を招く言い方をするなぁぁぁ!!」
「は、裸!?ブパッ!」
「せ、責任!?」
「え、え!?」
「一体あの子達ってどういう関係!?」
「み、見たところ学生っぽいけど……」
「が、学生婚、かしら?」
「さ、最近の子は早熟だな」
「責任云々って事は、もしかしてもう子供が……?」
「ち、違います!この子は来日してから日が浅くてイロイロと勘違いしてるだけですから!」
「そうだぞ。それに、私とイッセーはまだそういった関係ではない。惜しくも未遂で終わってしまったからな。しかし、私はイッセーとの子作りを諦めた訳では無く、今日にでも――」
「ちょ、お前もう黙れ!余計変な誤解を与えるだろうが!」
「お、お客様!?困ります!ここで、その様な……」
「ほら、店員さんが困ってるだろ!ゼノヴィアは店内に戻れ!」
「では、イッセーも一緒に戻って選んでくれ。私はイマイチこの手の服の事は分からないからな」
「わ、分かった!分かったから、もう誤解を招く様な事は――」
「何が誤解なものか!私は本気でイッセーと子――」
「もう黙れやあぁぁ!!」
その後、俺はゼノヴィアだけで無く、他の女性陣の水着選びにも付き合うハメになり、その時点で俺のライフはゼロになった。
そして、今日のこの騒ぎは後日『笹塚に水着美少女現る!?』という見出しで暫くこの世界のネット上で話題になったことを俺は知る由もない。はぁ……
――○●○――
「お帰りなさいませ、兵藤さ――ど、どうなさったんですか!?」
「………も、もう無理。もう二度と女の子の買い物には付き合わない……」
俺は憔悴しきった様子でアパートに帰還した。女性陣はあの後も夕方くらいまで買い物を続け満足した様子でそれぞれの下宿先(?)に帰って行った。それに明日は早いしな。因みに余裕のあった筈の所持金はほぼほぼ使い切った。まぁ、コッチの世界の貨幣を持ち帰るわけにもいかないし。と言うことで、今のところ手持ちは必要な交通費と、プラス各人1万円ずつくらいになった。お金って結構無くなるもんですね………
取り敢えず今日あったことをそれぞれ報告して夕食になった。
真奥の方は取り敢えず、バイト先の店長である木崎さんにしっかり挨拶をしてきたようだ。バイト先で千穂さんと一緒になって家まで送ったそうだけど。芦屋の方は今朝言った通りイロイロと買い物をして準備を済ませたみたいだ。
で、家電関連は全て鈴乃さんと同じ倉庫に預けるらしく、今は冷蔵庫の中にあった食材を全て消費している。
「にしても明日からですね。初めは勝手にバイトを決められて焦ったけど………」
「あー、悪いな。恵美の所にお前らを残そうとすると絶対あいつ何か言ってくるだろうからな。ま、あんま良い気はしないだろうが、一応監視しておかないとって話になってんだ。必要ねえと思うけどなぁ」
「まぁ、いいんじゃない?お陰で食卓が豊かになってる訳なんだし。それに、君らが働いてくれるお陰で僕も働かなくて済みそうだしねー」
もそもそと口に唐揚げを運びながら、漆原はそんな事を言うが、当然芦屋がその発言をスルーする訳が無かった。
「何を言っている、漆原。貴様も是が非でも働いてもらうぞ?」
「ええ!?」
「当たり前だ。本来であれば客人である兵藤さんを始め、リアス様たちも働いて下さるのだぞ。それなのに貴様がサボるなど、言語道断だ」
「で、でも、僕だぞ!?今までロクに働いてないぞ!?」
「言ってて悲しくならんのか、貴様は?」
「まぁまぁ、芦屋さん。僕らも出来る限りフォローしますから」
「む……しかし、木場さん達に本格的に働かせる訳には……」
「いやいや、いいですよ。それに、俺たちはここの電気使わせてもらってますし」
そう言って、俺はコンセントの方を確認する。コンセントには妖精さん作の充電器に、これまた妖精さん作のリモコン型ワープ装置の電池がセットされており、今尚充電中だ。溜まるのが遅いらしく、実際にまだ数割程度しか溜まっていない。因みに妖精さんには『丸まり』状態になってもらっている。あまり勝手なことされると困るしな。この期間中それをしっかり維持していれば、お菓子をあげると言う事で手を打った。
あと、今回のバイト代は取り敢えず今回世話になっている、魔王城、隣の鎌月さんの部屋、遊佐さん宅に納める事になっている。この世界の貨幣を俺たちの世界に持ってはいけないし、宿代や充電に使っている電気代という事になった。
これを話した当初、こちらの世界の住人全員が首を横に振ったが、先ほど言った今回の宿代やら電気代だと思ってくれと言うことで納得してもらった。
「うーん、バイト期間中に充電終わるかね?終わらない場合コッチで本格的にバイトを探す事になるぞ?あ、言っとくけどウチの職場は暫く雇う予定無いって言ってたからダメだぞ」
「住み込み期間中に何とか終われば良いんですけどねぇ」
「どちらにせよ、充電が終われば帰れんだろ?ならいいじゃねえか」
「魔王様、その期間が問題なのです」
「まぁ、もし終わらなければもう暫くコッチに居て、働くしか無いですね。本当に最悪の場合ですけど」
「そ、そうならない様に願いますぅぅ………」
「さ、とにかく明日は朝出発なんですから早めに片付けましょう」
そんなやり取りがありつつも、俺たちは早めに食事を終えて銭湯に行き、その日は眠りについた。
そして、ついにその日を迎える!
というわけで、あのワープ装置を使ってルドガーの元居た世界であるエレンピオスには戻りません。まぁ、その理由は書いてあった通りですね。けど、十年後(?)くらいのエルの姿は見せてあげたい気もするんですよねー・・・
ま、その辺はおいおい・・・
ではでは、今回はこれにて。