ハイスクールD×D ~審判を超えし者~【凍結】   作:メラニン

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今回はエンテ・イスラから悪魔が来訪して、ボコボコにされる回ですね。


あと、質問にあった眷属に関してですが、既に色々と決めたりしています。ただ、駒価値とかでイロイロと思案中ですね。


では、どうぞ!


第6話 謎の霧と魔鳥戦士です!

―― 一誠side

 

 

 

「ふふ♪日本の花火はやはり素晴らしいわ」

 

 

「ええ、そうですわね、リアス。やはり毎年の夏にやっても飽きませんもの」

 

 

 

 

 

 

「姉様、寄らないで下さい。焼き入れますよ?」

 

 

「にゃっ!?し、白音が不良みたいな言葉遣いを………もう私生きていけないにゃん………」

 

 

「ほら、黒歌。そんなに落ち込まない」

 

 

「で、でもミラちん、流石に最近白音が辛辣過ぎて泣きたくもなるにゃん」

 

 

「ミラさーん、取ってきまし――あうっ!」

 

 

俺たちが明日の浜開きに向けた準備を終えたのが夕方。周りも暗くなり始めた午後6時過ぎだった。取り敢えず準備できることは全部やった。料理の仕込みもかなりの分量にしたから多分平気だろう。多分……

そこから、遊佐さんたちは一度今日宿泊予定のホテルにチェックインして、コッチのバイト組も夕食を食べた後に、天祢さんが『花火やろうぜ!』って言ったのが発端で、車を出してもらって花火を買い出しに行った。人数が結構なので大分買い込んだけど。

で、花火をやり始めて、今は切れたライターの代わりを取ってきたアーシアが盛大にこけた。

 

 

「あーねーちゃ、だいじょうぶ?」

 

 

「は、はい、私は大丈夫ですよ、アラス・ラムスちゃん」

 

 

「ん!」

 

 

心配そうに寄ってきた赤ん坊のアラス・ラムスの頭を優しく撫でて、それを気持ちよさそうに受け止める姿は何とも微笑ましい。『ぱぱ』である真奥は自前のデジカメでシャッターチャンスとばかりにフラッシュを焚いてバシャバシャ撮っている。

それを遊佐さんを含めた悪魔大元帥たちが苦笑いで見ている。あれ、魔王城はお世辞にも財政が安定してるとは言い難かった筈だけどデジカメなんかよく持ってたな。

まぁ、全員が形はどうあれこのミニ花火大会を楽しんでいる訳だ。因みに千穂さんは母親である里穂さんから条件付きではあるが、二泊三日だけ滞在を許されたそうだ。なので、今この場には昼間に居たメンツが勢揃いで、各自好きな花火に火を点け楽しんでいる。流石に打ち上げ花火はダメと言われたのが惜しい!帰ったらやりたいなぁ。

 

 

「ほう、これが噂に聞いていた日本の花火というものか」

 

 

「私は小さい頃以来ね。昔はイッセー君と一緒に楽しんでたけど」

 

 

「あー、やってたな、そういえば」

 

 

「あの時は、大変だったねー」

 

 

「む?何が大変だったんだ、イリナ?」

 

 

「あー、それはね――」

 

 

「こういう事があったから、さっ!」

 

 

シュルルルル!

 

 

と、火花を撒き散らしながら地面で回転するのはネズミ花火だ。それを、イリナの足元に放ってみた。

(よい子は絶対にマネしないでください。火傷など大変危険です!)

 

 

「きゃあっ!?」

 

「な、何だコレは!?新手の武器か!?」

 

 

「あっはははははは!」

 

 

ネズミ花火に当たらないように必死で足をばたつかせる姿は、どこかの先住民の伝統芸能のようで面白い!これは確かに兄さんもやりたくなるよ。悔しいけど共感できてしまう。

あ、火が消えた。

 

 

「も、も~~~~!!イッセー君!あなたもお兄さんに似てきてないかなっ!?」

 

 

 

「いやいや、それは無いだろ。あ、でも今のイタズラが面白いってのは共感できてしまった」

 

 

頬を若干赤くして怒るイリナの姿が昔のままなことに一安心してるのも束の間。イリナは反撃に打って出た!

 

 

「正義の一撃を喰らいなさい!」

 

 

「うおっと!?ははっ、当たるk――あちっ!?」

 

 

「ははは、脇がガラ空きだぞ、イッセー!」

 

 

反撃としてイリナが正面から燃える花火を振って、袈裟斬りの要領で火花を散らしながら攻撃してくる!

(よい子は絶対にマネしないでください。火傷など大変危険です!)

そして、少し後ろに下がった俺の動きを読んでいたとばかりに、ゼノヴィアに横から花火による攻撃を受ける!(重ね重ねよい子は絶対にマネしないでください。火傷など大変危険です!)

 

 

「二対一かよ!?木場ヘルプ!」

 

 

「ゴメンよ、イッセー君。今は動く訳には――あ」

 

 

木場の方を向いてみると、木場とギャスパー、鎌月さん、天祢さんが線香花火サドンデスなるものを開催していた。どうやら、最後に残ったのは木場と鎌月さんだったらしく、木場はたった今負けた。

 

 

「ふふふ、どうやら私の勝ちのようだな。っと、私も終わってしまったか。さぁ、第八回戦だ」

 

 

「望むところです」

 

 

「ふえ!?ま、まだやるんですかぁ!?もう僕は足が痺れました!」

 

 

「あー、ゴメンね、鎌月ちゃん。私はパス。私も足が痺れちった。いやー、にしてもさすがだね、鎌月ちゃん。伊達に浴衣を着てないよ」

 

 

天祢さんの言う通り、鎌月さんは浴衣姿で遊んでいた。まぁ、普段着が着物の人だから不思議は無いんだろうけど。異世界出身とは思えないほど、浴衣姿が様になっている。オカ研組だとなんやかんや似合いそうなのはヤッパリ朱乃さんって事になるのかな?そう言えば前に着ていた巫女服も似合ってたし。まぁ、オカ研の女性陣は基本的に何着ても似合うか。

あ、また3人が線香花火に点火し始めた。どうやらギャスパーは逃げられなかったようだ。天祢さんの方はアラス・ラムスや遊佐さんたちがいる方に歩いて行った。

 

 

んー、初対面で天祢さんに感じた違和感は気のせいなのかな?今は大して何も感じないんだけど………

 

 

 

「おい、芦屋!コッチに火貸せ!四刀流に挑戦するぞ!」

 

 

「…………お楽しみいただけているようで何よりです」

 

 

 

俺の考え事もあの庶民派魔王と主夫な悪魔大元帥の花火で戯れる行動を見てると、どうでもいいかと思えてしまうから不思議。

因みにもう一人の悪魔大元帥である漆原はヘビ花火が気に入ったのか、既にいくつもの残骸が彼の足元に散乱している。実は今回の花火が初めてだ、という人も結構いたりする。俺たちオカ研組の中だと、ミラ、アーシア、ゼノヴィア、黒歌なんかがそうだ。あとはエンテ・イスラ出身の真奥や芦屋、漆原、遊佐さん、鎌月さんが花火初体験だと言っていた。あとは、当然赤ん坊のアラス・ラムスもだ。花火未経験者は初めの内はおっかなびっくりだったが、慣れたら全員が楽しんでいた。

事実、両手に2本ずつスティック花火を持って四刀流なるものを披露している真奥なんかはその象徴だろう。

 

 

「あ、次はコレやってみましょう」

 

 

すると、数ある花火の中から千穂さんが長い導火線の先端に箱状のものが取り付けられ、それの上に紙の束がくっ付いた花火を取り出してきた。あー、オモチャが出てくるタイプの花火か。最近は色んなのがあるよな。花火に点火すると、通常の花火と同様に火花を上げる。そこまでは普通の花火と同じで、その後紙の束状になっていたものと、中に入っていた鳥の紙と合わさって鳥籠が出てきた!

 

 

「とりさん!ぴぃぴぃ!」

 

 

遊佐さんの腕の中のアラス・ラムスは手をバタバタさせて全力で触りたいアピールをする。千穂さんがひょいっと鳥籠を持ち上げて、遊佐さんに手渡す。

 

 

「まだ煙臭いかもしれないですから、もう暫くしたら触らせてあげて下さい」

 

 

「オモチャとはいえ侮れないわね………ありがとう、千穂ちゃん。ほら、アラス・ラムス、ちーねーちゃんにお礼を言って」

 

 

「ありがとごじゃます!」

 

 

ぺこりとお辞儀をしてお礼を言うアラス・ラムスの姿にその場に居た全員の表情が緩んだ。

お陰で、イリナとゼノヴィアも花火を振り回しながら追い掛けるのを止めてくれた。ええ、実は今の今まで追い掛けられていました。もう、部長達からは呆れられた視線を浴びていました。そんなこんなしていると、遊佐さんがアラス・ラムスに何かを話しかけると笑いながら『線香花火サドンデス』が行われている場所にテコテコ進んでいった。それに千穂さんが付いて行っている。

ってか、いつの間にかアレをやっている人数が多くなってる。さっきのメンバーに加えて、真奥と芦屋も参加し始めたようだ。

 

 

 

 

 

俺もそちらへ行こうかと思ったが、ふと海の方を見やると漁船が沖の方で漁をしているのか、漁火が光っている。それが海の上にボンヤリ浮いているようになっている。それが幾つも増えていくように見える。確かああいうのを『不知火』って言うんだよな。フー先生の聖剣とも関係があるのか?そう言えば、昔はあの光は妖怪って認識されてたんだよな。今だと科学的に解明されてた筈だけど、実際にはどうなんだろう?本当に居てもおかしくないよな?火のないところに煙は立たない、って言うし。

それにしても、ヤッパリ居るんだよなぁ。アレが。

 

 

 

 

なぁ、オリジン。これって俺たちのせいか?

 

 

『ううん、多分違うと思うよ。元からここはそういう場所なんだと思う』

 

 

『オリジンの言う通りだな。我もここの土地自体に何か異質さを感じる。上手く言葉に出来んがな』

 

 

『俺たち全員がそう感じているぞ、相棒』

 

 

んー、了解。何かあっても対処できる様に心構えだけはしとこう。既に俺たちみたいな存在がここに居るという事自体がイレギュラーだと思うわけなんだけどな。

 

 

『………今回はある意味不可抗力だから仕方無いのではないか、主?』

 

 

『レディオンの言う通りですね。それよりも今は花火を楽しんだら如何ですか?主様もこういった花火をするのは久方ぶりなのでしょう?』

 

 

ん、それもそう――

 

 

 

ブオオオオオオオオ………

ブオオオオオオオオオオ………

ブオオオオオオオオオオオオ………

 

 

 

「うおっ!?何だ!?」

 

 

「う、うるさっ!」

 

 

「敵襲か!?」

 

 

急に極大の重低音があたり一帯に鳴り響く!その大音響に天祢さん以外の全員が驚いたようで、線香花火組は軒並み全員が線香花火を強制終了させられた。

その場に居たアラス・ラムスは急な大音響に驚いてか、どんどん顔が泣き顔へ歪んでいく。急いで千穂さんが腕に抱えて宥めようとし、俺たちも怖がらないように気を逸らせようとする。が、何度も音が鳴り響き、遂に………

 

 

「ひぅ、ひぅああうぅぅああぁぁぁっ!!」

 

 

我慢の限界とばかりに堰を切ったようにアラス・ラムスは泣き出してしまった!

 

 

「あらら、ヤッパリ赤ちゃんにはこの音は怖いよね。慣れてる私ですら急に来るとビックリしちゃうし」

 

 

音の発信源を確認しようとすると、どうやら灯台の方角から聞こえるようだ。

 

 

「これって、あの灯台の霧笛ですか?」

 

 

「ピンポーン。兵藤君正解♪」

 

 

「ムテキ?」

 

 

おい、マジか。この世界の勇者………

って、日本に来てまだ一年じゃ分からないか。もしかしたら、エンテ・イスラの方では夜に漁をやらないのか?もしくは、灯台自体が無いのかな?

 

 

 

「イッセー、ムテキって何よ?」

 

 

「え、ミラも?」

 

 

「………何よ?」

 

 

「いえ、何も」

 

 

そっか。そう言えば、エレンピオスやリーゼ・マクシアでも灯台って全然無かったな。それに、こっちに転生してもミラは断界殻の中に居たんだった。じゃあ、知らなくて当然か。

 

 

「むっふっふ〜♪ここは無知なミラちんやウサちんの為に世界を旅して物知りな私が教えてあげるにゃん♪」

 

 

「誰がウサギよ!?」

 

 

黒歌の奴、またテキトーなアダ名を………

遊佐さんの指摘やミラの視線を無視して黒歌は得意そうに解説を始める。

 

 

「霧笛ってのは、灯台が出す音信号のこと。沖の船が座礁したりしない様に出す信号の事にゃん。遠目で分かりにくいけど、確かに沖の方は霧が出てるみたいにゃん」

 

 

黒歌が沖の方をじっと見ているが、俺には分かりづらい。黒歌は猫だから夜目が効く。だから分かるんだろうけど。

 

 

「へぇ、黒歌ちゃんは目が良いねぇ。私でもここからじゃ目で霧は分かんないよ」

 

 

「……………ま、私は夜目が利くからねん。それよりもあの霧がコッチに来そうなのは、気のせいかにゃん、天祢っち?」

 

 

「あー………気のせいじゃないね。この君ケ浜って、昔は『霧が浜』って呼ばれてたくらい霧が濃くてね。地元住民でも霧が濃い日は外に出ないからね。花火はここまでだね。悪いんだけど、花火の後片付けを――」

 

 

「もう終わってます。姉様が得意げに霧笛如きの解説をしている間に終わらせました」

 

 

「うわぁあーーん、イッセー!白音がいじめるぅぅ!」

 

 

「だー!分かったから、くっ付くな、黒歌!」

 

 

「はっはっは!モテモテだねぇ、兵藤君。明日は客引きを木場君と一緒に頼むよ?っと、冗談はここまででにして、そろそろ遊佐ちゃん達を送らないとね」

 

 

そこで俺たちは解散になった。確かに霧がどんどん迫ってきている。俺たちバイト組は男女で分かれてそれぞれの離れに向かった。

 

 

――○●○――

 

 

 

 

「にしても、本当に霧がすごいな。こりゃ確かに地元住民でも外に出ようとは思わねえよな」

 

 

「まさしく五里霧中という様相ですね」

 

 

「ま、真奥さんと、芦屋さんの言う通りですぅ。ぼ、僕もここまで霧が出てると怖いですぅ……」

 

 

「おい、吸血鬼」

 

 

ヴァンパイアって確か霧になって逃げるだとか、霧を操るとか言われてなかったか?大丈夫か、こいつ。

 

 

「ギャスパーさんは吸血鬼だったのですか?」

 

 

「は、はい、一応……」

 

 

「へぇ、やっぱしエンテ・イスラの連中とは違うんだな」

 

 

「エンテ・イスラにも吸血鬼がいるんですか?」

 

 

「ああ、こんな人型じゃ無いけどな」

 

 

「人形じゃないって………い、一体どんな姿なんですかぁ……?」

 

 

「んー、下半身は人っぽいんだけど上半身が黒くて所々に節があって、背中には半透明な羽がある。で、普通の口とは別に血を吸うときにストローっぽい口が現れる」

 

 

「………それって、蚊じゃないですかぁぁぁ!」

 

 

「いやぁ、俺たちもこっちの世界で初めて蚊を見たときは驚いた。まさか、エンテ・イスラの使いか!?って芦屋も勘違いしたからな」

 

 

「そうでしたね。体が小さくなってしまっているだけだと思っておりましたが、まさかあの口を我々に向けるなど、言語道断でしたので、即刻駆除しました」

 

 

「そ、そんな吸血鬼いやぁぁぁ!!」

 

 

「そういや、特性はこっちの蚊と変わりなかったよな。エンテ・イスラの方でもあいつら蚊取り線香で死んでたし」

 

 

「ええ、全くです。なので、魔王軍にもどう配置したものか頭痛のタネでしたね」

 

 

 

………そっか。エンテ・イスラでは吸血鬼は蚊なのか。いや、まぁ確かに蚊って吸血鬼とやってる事は変わりないけどね。しかし、ギャスパーは蚊と呼ばれたのがよほどショックだったのか、沈んでいる。

 

 

「うぅ………僕は蚊じゃないもん。蚊取り線香だって、平気ですぅ……」

 

 

「「は、ははは………」」

 

 

これには俺と木場は苦笑するしかなかった。がんばれ、ギャスパー。

 

 

 

にしても、本当に霧が濃いな。窓から外を伺おうにも霧が濃すぎて部屋の明かりが届くぐらいまでの距離しか分からない。これが『霧が浜』って呼ばれたことのある由縁か。確かにこれじゃ地元住民であっても外に出るのは危険だろう。

と、そんな事を考えていると着信を知らせる音楽が響いた。音源は真奥のポケットの携帯だ。真奥は携帯を取り出して画面を確認すると、表情がやや変わった。誰からのメールなんだ?

 

 

「誰からですか?」

 

 

「ちーちゃんからだ。天祢さんがこの霧の中どこかへ行ったらしい」

 

 

「そりゃ、家に帰ったんじゃないの?」

 

 

「うーん。漆原の言う通りかもしんねえが、ちーちゃんからの連絡には『帰った』じゃなくて『行った』って書いてあるんだよ」

 

 

「天祢さんは『地元住民でも霧が濃い日には外に出ない』と言ってたのに、地元住民である天祢さんがどこかへ向かったって言うのはおかしな話ですね」

 

 

「ふむ、木場さんの言う通りですね。魔王様、ここは一度念のため天祢さんに連絡を取ってみては如何ですか?明日からお世話になる店主にもしもの事があったら、私たちは何も無い状態でここに放り出される事になります」

 

 

さすが、悪魔大元帥のブレイン。

 

 

「そうだな。じゃ、一応天祢さんに――」

 

 

「ひ、ひいぃぃぃ!?」

「「「「「うおうっ!?」」」」」

 

 

ギャスパーが急に悲鳴を上げたので、俺たちは全員が驚いて悲鳴の発生源であるギャスパーに視線を向けた。当のギャスパーは腰が抜けたのか尻餅をついた状態で外を指差して震えている。

 

 

「そ、そそそ、そそ外に、何かが……」

 

 

その言葉通り窓から外を伺うと、確かに何かの足がチラッとだけ見える。しかも、明らかに人のそれでは無い。サイズもそうだし、皮膚(?)の色が燻んだ緑色っぽいのだ。真奥と芦屋は互いに目配せをしているあたり、覚えがあるんだろう。

 

 

「行くぞ、芦屋!」

 

 

「はい、魔王様。ルシフェル、お前もだ」

 

 

「えぇ!?………イヤだなぁ」

 

 

「俺も行きます。俺たち異世界組は力を使えるので。木場とギャスパーは隣の離れの部長たちを頼む!」

 

 

「了解だよ、イッセー君!ほら、ギャスパー君、行こう!」

 

 

「は、はいぃぃ……」

 

 

俺が行く、と言って止めようとしてきた芦屋を正当な理由で看破して、付いていく事にした。この世界では俺たちオカ研メンバーは力を使えるが、エンテ・イスラの人たちは使えないみたいだからな。戦闘人員がいた方がいいって訳だ。

俺、真奥、芦屋、少し後方から漆原が付いて来て、先ほどの足が見えた場所へと向かう。そこには、全身が緑色の一つ目の巨人が立っていた。大きくて分かりづらいが、目測3〜4mくらいかな?種族としては、おそらくサイクロップスってやつだろう。しかし、全身が血まみれで息も絶え絶えといった様子だ。

 

 

『おの……れ、人間。またしても、俺と戦うか。…いいだろう。相手に――』

 

 

ブオオオオオオオオン……

 

 

サイクロップスが右手に持っていた棍棒を振り上げた瞬間に、巨大な生物の嘶きの様な音が鳴り響いた。それと同時に霧が蛇の様な形を取って、サイクロップスに巻きつき光と共に消えた。

何だ、今のは?

 

 

「な、何なのだ、今のは?先程まで居たサイクロップスはどこに……」

 

 

「……あれって、間違いなくエンテ・イスラの悪魔だったよね?なに、またゲートでも開いたの?」

 

 

「いや、そうだとしても、さっきの霧の動きは何だ?まるで生き物みたいに体に巻きついて消すなんざ、聞いたことがねえぞ!?」

 

 

「確かに、その通りですね。っと、次が来ましたよ」

 

 

次に現れたのは、上半身は鬼面で下半身は肉食獣の形をした悪魔だ。こちらも、ところどころに傷を負い、膝をついて倒れている。身につけた鎧はボロボロで、両手に持っている剣は今にも折れるんじゃないか、という具合だ。

 

 

『……ゴア……グウ』

 

 

こちらも余程重症なのか、息が荒い。

 

 

「ビーストデモノイド!?魔王都サタナスアルクの住人か!?」

 

 

真奥が驚愕の声を上げる。ビーストデモノイドっていうのは多分種族名だろう。ビーストデモノイドと呼ばれた悪魔は真奥の言葉に反応して、顔を上げる。

 

 

『……ま、まさか…人間如きに…遅れをとるとは……ぜぇ、ぜぇ………貴様らもやるのか、この世界の人間!?……せめて、一人でも多く……!』

 

 

そう言うと、ビーストデモノイドは持っていた剣で横薙ぎにして切り裂こうとする。俺はそれを見て、側にいた真奥と芦屋を後方に突き飛ばして、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』を発動して籠手で剣を防ぐ!

 

 

『Boost!』

 

 

ギィン!

 

 

「落ち着け!こちらに敵対の意思は無い!刃を納めてくれ!」

 

 

『に、人間……なぜ、我らの言葉を……まさか「概念送受(イデア・リンク)」か!?………しかし、他にやられた同胞のためにも、引く………訳に……は…』

 

 

「それ以上動くと危険だ!それに俺は悪魔だ!」

 

 

俺は悪魔の証である翼を展開して見せた。それを確認したのを見て、再び悪魔の翼をしまった。

 

 

 

《お前はビーストデモノイドだな?一体何があった?》

 

 

意味は分かるが、聞いたことのない言語で芦屋が尋ね始めた。身にまとう雰囲気も少し変わってるから、悪魔大元帥アルシエルとしてこの悪魔に接してるんだろう。外見は変わんないけど。

 

 

 

『……っ!?わ、我らの言葉を……貴様らは一体……』

 

 

《無礼な。我は――》

 

 

「ッ!?危ない!」

 

 

再び霧が集まり始めたので、俺は芦屋のシャツの裾を引っ張って後ろに引かせた。

 

 

ブオオオオオオオオン……

 

 

再び嘶きが聞こえ、光と共に悪魔が消えた。文字通り跡形も無く……

混乱していると宝玉からレディオンが声を掛けてきた。

 

 

『……主。この霧と光はおそらく空間に作用している。先ほどの悪魔たちは多分どこか別の場所に飛ばされた』

 

 

「うおっ!?こ、籠手から声が!?ってか、籠手!?いつの間に!?」

 

 

おい、今更気付いたのか魔王。

 

 

「これが俺の力で、今の声は俺の中に存在しているドラゴンの声です。っと、今度は上みたいですよ」

 

 

ゴオォォォン!!

 

 

上空で大砲の様な轟音が鳴り響き、何かが猛スピードで飛んで来る!いや、落ちて来る!

 

 

「避けろ!」

 

 

真奥の言葉通り俺たちは全員そこから退避した。それから少し遅れて黒いカラスの様な翼に鳥の嘴を持ち、立派だったであろう鎧や兜を身に付けた者が砂浜に降り立った。見た目は天狗に近いか……

鎧や兜はボロボロだが、腰に佩いた剣は傷一つなく様々な意匠や宝石が華やかに輝いている。さしずめ魔鳥戦士といった格好だ。

 

 

「ぐ……よもや、あの様な人間がいるとは……まるで、あれでは…噂に聞く、聖剣の勇者の様な実力ではないか……!」

 

 

今度砂浜に降り立ったのは、魔鳥戦士の姿の悪魔は嘴から血を流しながら、膝をつき肩で息をしていた。こちらもやはり、ボロボロだ。その姿を見て俺は正体を見極めるため警戒したが、俺以外の3人は反応が違った。3人とも目を丸くして驚いている。

 

 

「ま、まさか……」

「カ、カミーオ!?」

「カミーオ殿!?」

 

 

カミーオと呼ばれた魔鳥戦士の姿をした悪魔はゆっくりと顔を上げる。姿の割にはつぶらな瞳をしているのが印象的だ。

 

 

「に、人間………何故我輩の名を……うぐっ」

 

 

声の感じからして男性(いや、オス?)か。彼は嘴から血をさらに吐き出した。今の吐血した感じから見ても、今すぐ治療しないとまずい。俺はすぐに近付いて『時の支配者たる時計』の効果で回復させ始める。カミーオと呼ばれた悪魔は目を丸くしてるけど。

 

 

「ひょ、兵藤さん、その力は一体…………はっ、それよりも」

 

 

芦屋が周囲を見回すと再び霧が集まり始めている。少なくともあの霧に巻かれるのだけは勘弁願いたい!

しょうがない、か。オリジン!!

 

 

『了解だよ、イッセー』

 

 

 

そこで俺は『無と連環の腕輪』で目の前の霧を消すが、すぐに元に戻る。まるで、駒王協定のときの魔方陣みたいだな。これじゃ、キリがない!

 

 

「ぐ、ダメか!?」

 

 

「くっそ!こうなりゃ賭けだ!」

 

 

漆原はそう叫ぶと、一対二枚の翼を展開して宙に浮かび上がった。しかし、その翼の色は純白!?漆原って堕天使じゃなかったのか!?

翼をはためかせると一陣の風が吹き、離れまでの道が開かれる。

 

 

「う、漆原!?その翼、なんで聖法気を纏って……」

 

 

「今はそんなのどうでもいいだろ!?それよりもカミーオを早く家の中に!僕だってコレをやり続けるのは疲れるんだからな!」

 

 

「魔王様、今はルシフェルの言う通りです」

 

 

「ああ、悔しいがしゃあねえ。おい、芦屋はそっちを持て。俺はもう片方を。兵藤君はそれ回復してるのか?なら、それを続けながらついて来てくれ」

 

 

「了解です!」

 

 

カミーオは真奥と芦屋が両肩を支えて、俺は背中から回復を掛け続け、何故か天使の翼が生えた漆原が殿を務めて、何とか離れに辿り着いて扉を閉めた。

 

 

ブオオオオオオオオン……

ブオオオオオオオオオオン……

 

 

再び嘶きの様な音が聞こえて、窓から外を見ると霧が嘘のように引いていき、そこには押しては返す波を起こしている暗い海と灯台の灯りが見えるだけになって、普通通りの君ケ浜の姿になっていた。

 

 

ドサッ!

 

 

 

それとほぼ同時にカミーオが倒れこんだ。俺は回復を掛け続けているが、やっぱり本職のアーシアほど上手くいかない。

 

 

「芦屋さん!隣からアーシアを呼んできてください!回復であれば、アーシアがプロフェッショナルです!」

 

 

「わ、分かりました!」

 

 

それから10秒も経たないうちにアーシアが飛び込んできた。

 

 

「イ、イッセーさん!私に何か――えっ?」

 

 

アーシアは俺の目の前に倒れこんでいる魔鳥戦士の姿を見て一瞬息を呑んだが、俺が声を掛けるよりも早く『聖母の微笑』を発現して回復を開始してくれた。

本当に性根が優しい子だな。事情も聞かず、目の前で傷付いている存在がいたら癒そうとするんだから。

 

 

「イッセーさん、この方は一体……」

 

 

「さぁ、俺には分からない。でも、真奥さん達なら知ってるんじゃないか?」

 

 

「ああ、こいつの名は――」

 

 

「カミーオと言う。……ぐ、はぁ、はぁ……助けてくれた事には感謝するが………人間…共よ、我輩に関われば命を落とすことになるだろう。………分を弁え――」

 

 

「ジッとしていてください!傷が開いてしまいます!」

 

 

「ぬ、ぬぅ……」

 

 

アーシアの剣幕に圧されて、カミーオは嘴を閉じた。こと治療に関してはアーシアは譲らないよなぁ。

 

 

「まぁ、無理ないか。魔王サタンもアルシエルも丸っきり姿形が変わってるんだし。でも、僕なら分かるんじゃない?悪魔大尚書カミーオ」

 

 

「お、お前はまさか、ルシフェル!?ルシフェルか!?」

 

 

「相変わらず僕だけは呼び捨てなのな……」

 

 

カミーオは倒れたまま顔だけ動かし、ゆっくり真奥と芦屋の姿を目に入れる。

 

 

「サタン……アルシエル……まさか、まさか……!」

 

 

声も途切れ途切れに、彼らの姿を再確認するカミーオ。そして、芦屋の方を見て再び嘴を開いた。

 

 

「東方元帥殿……」

 

 

「はい、姿こそこの様になっておりますが、私は悪魔大元帥アルシエルです。お久しぶりです、カミーオ殿」

 

 

そして、次は真奥の方に顔を向ける。

 

 

「では、あなた様は……まさかっ……!」

 

 

「一体何があったんだ、カミーオ。話してくれ」

 

 

「おお……魔王サタン様!……生きて……生きておられたっ………!………これは、なんたる巡り合わせか!」

 

 

若干涙ぐみながら声を絞り出すカミーオ。それを気遣ってか真奥は姿形は人間でも魔王サタンとして、カミーオの前に片膝を付き、目線を合わせて真っ直ぐに見据えた。

 

 

「長らく魔界を留守にしてすまない。だが、お前がまさかこの世界に来るとは思っていなかった。一体何があった?」

 

 

「サタン様……申し訳ございませぬ。……我輩はサタン様が留守の魔界を守り通すことが、出来ませなんだ。………今は亡き、北方元帥殿………南方元帥殿にも顔向けできませぬ」

 

 

「一体何があったんだ、カミーオ!」

 

 

「サタン様……魔界は……いえ、エンテ・イスラに……再び戦乱が迫っております。我輩……は、力及ばずっ………!申し訳…ござ……」

 

 

「カ、カミーオ!?おい、しっかりしろ!!」

 

 

「し、しっかりして下さい!わ、私が!私が治しますから!」

 

 

アーシアが必死に叫ぶ。俺たちは相変わらず回復を続け、傷も完全ではないとはいえ、回復仕掛けているが、一向に良くなりそうな感じがしない。何でだ!?

 

 

『主様、おそらくこの世界における魔力の流出が止まっていないのです。このまま魔力が枯渇しては……』

 

 

時計からテミスが声をかけてくる。それに真奥たちは一瞬驚くが、それよりもカミーオだ!一体どうすれば……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、魔王様!これは!」

 

 

芦屋が叫ぶと同時に、カミーオの体が淡く発光し始め体がみるみる縮んでいく!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「……………」」」」」

 

 

………えーと、発光が治まり後に残ったのは、カミーオが身に付けていたボロボロの鎧と兜に、擦り切れた黒いマント、腰に佩いていた立派な剣。マントがモゾモゾと動いているので、退かしてみるとそこには――

 

 

「か、可愛いですっ!」

 

 

アーシアが女の子らしい感想を述べるが、それ以外の俺たち男性陣は困惑した。どうすんだ、これ?

 

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