ハイスクールD×D ~審判を超えし者~【凍結】 作:メラニン
ではどうぞ!
―― 一誠side
〜〜♪〜〜♪
「んんあぁ………まおーさーん。携帯ぃ」
「ぬ……うぅん?…………4時!?誰だよ、こんな時間に……?」
昨日の事件は当事者であるカミーオの怪我を考慮して保留となり、取り敢えず俺たちは寝る事にして、それぞれ布団に入ったのが夜11時頃。そして、今は不意に真奥の携帯に入った着信で目を覚ましてしまった。いや、いつも通りだと朝の鍛錬があるから早起きは慣れてるんだけど、流石に昨日は移動と準備で疲れた。なので、もう少し寝ていたいのが正直なところ。
真奥は渋々といった様子で、携帯を取る。ホントに誰だよ、こんな時間に……
『おっはよー!!!真奥君!!起きてる?起きてるよね!?今すぐ皆を起こして大黒屋前に出てきたまえ!!店長命令だ!!』
………相手は我らの雇い主だった。これって、パワハラ……
兎にも角にも、今の大音量でコッチの男性陣は全員起きてしまった。全員が目を擦りながら、ノソノソとそのままの姿で大黒屋前に集合した。そこには、腕組みをして仁王立ちした天祢さんがいた。ようやく、海岸線が白み始めた時間だ。マジ勘弁して欲しいです、店長。
「お、来たねぇ。ほらほら、若い男がそんなんでどうする!男であるならば、この君ケ浜から見える朝焼けを見ずに何とする!」
「「「「「「………………」」」」」」
俺たちは絶句した。ええ、絶句です。
「あの……天祢さん。もしかして、俺たちに朝日を見せる為だけに起こしたんですか?」
「そうだぜぃ、兵藤君!ほら、あと少ししたら朝日が昇るよ!」
子供の様にはしゃぐ天祢さん。しかし、それよりも俺たち従業員が思っている事は多分同じ。
((((((睡眠時間を返せ、このヤロウ))))))
まぁ、海岸線から昇る朝日は綺麗だとは思う。しかし、こちとら眠い目をシパシパさせている状態なのだ。ぶっちゃけ、朝日は眩しすぎる!目が焼ける!ギャスパーなんかは元がヴァンパイアだから思いっきり顔を引きつらせている。それで、しばらくご来光を眺めて世間話や、今日の仕込みについてなど話しているうちに時間は過ぎた。
「さて、この後君らは準備もあるから、昨日の連絡の通り6時にはバイトの服装で集合よ。で、開店は9時から!時間厳守!よろしい?では、解散!」
「「「「「「うぇーい………」」」」」」
俺たちはフラついた足取りで再び離れに戻った。女性陣を起こさなかったのは、多分天祢さんの気遣いだろう。そういや、部長も睡眠には結構うるさかったなぁ。美容の秘訣だとか言ってた。
とにかく、戻った俺たちは先ほどの朝日で目が覚めてしまった為(漆原以外。本人は二度寝に突入)、昨日の事件の当事者から話を聞く事にした。即ち、昨夜空から落ちてきた魔鳥戦士カミーオだ。その魔鳥戦士本人は何処にいるかというと――
「ぴぃ?……朝ですかな?おはようございます、魔王様。アルシエル殿も。ルシフェルは……まぁ、いいぴぃょ。そして、昨夜は助けていただき、ありがとうございました。知らぬとはいえ、あの様な言葉を吐いてしまった事を謝罪致しぴぃ、兵藤ぴぃよ」
………小さな黒い小鳥の姿になってギャスパーが持っていたスペア用のダンボールの中に、タオルを敷いてその上で寝ていた。喋ることと、その外見から九官鳥というのがしっくりくる。因みに傷の方は昨晩カミーオが縮んだ後にアーシアが完治させてしまった。あの子最近俺よりも神器使いこなしてないか?いや、まぁ成長してくれてるのは嬉しいんですけど。
まぁ、それでも念のためカミーオには包帯を巻いている。
「まぁ、それはいいんですけど、その人の名前の最後に『ぴぃよ』を付けるのはやめてください」
呼ばれ方が面白かったのか、さっきから木場がニヤけててムカつく!
「こ、これは失礼いたしました、兵藤……………ぴぃよ」
………もう諦めます、はい。
「ップ……ククク……わ、悪い、兵藤君。部下が失礼な事を言っ……て……クク……」
まったく悪いと思ってないだろ、この魔王。
「ま、まぁ、とにかく今日からバイトが開始ですし、まずは朝食にしましょう。腹が減っては戦はできぬ、ですよ。カミーオ殿の分も用意しますね」
「芦屋の言う通りだな。まずは飯にしようや」
「申し訳ありませぴぃ、アルシエル殿」
「じゃ、じゃあ、僕は隣の部長達を起こして来るですぅ」
「僕も行くよ、ギャスパー君」
「って訳だから、お前の話を聞くのはバイトが終わった夕方でいいか、カミーオ?」
「はい、我輩は構いません………ぴぃょ。………ぐ、語尾が変わるこの身が憎い……ぴぃょ」
俺と真奥は揃って苦笑するしかなかった。
そんなこんなしている内に部長達もやってきて、全員で朝食と昨夜の事件の情報の共有をして、互いに自己紹介を行って、それぞれ着替えて大黒屋前に集まる事にした。カミーオが俺たちはエンテ・イスラともこの世界とも別世界から来たって知ったときはエラく驚いてたのが印象的だった。驚いたときのリアクションが『ぴぃよ!?』って完璧に鳥だったからな。
本人はだいぶ落ち込んでたけど。
ミラや部長達の反応はまあ、普通だった。取り敢えずカミーオから事態を聞かないことには始まらないから現状維持が最適だろう、という結論に落ち着いた。カミーオの方も今日は自分の主の仕事があると知って、話を聞いてくれるのなら仕事終わりでも良いと言ってくれた。
そして俺たちは大黒屋前に集合した。天祢さんは既に待っていて、俺たち男性陣が先に来て、女性陣がラストだ。しかし、俺は……というか、俺たちは本日二度目の絶句タイムに陥った。
それは、女性陣の格好が原因だ。
「………あの……部長。朱乃さんも、ミラも他の皆も……あのさぁ、俺たちはこれからバイトするんだよね?何で水着一枚で出てきてんの?」
そう、彼女たちは全員が水着で出てきたのだ。せめて布地面積の小さいビキニでなく、セパレーツタイプやワンピースタイプなどであるだけ救いであると言えるが、まるで遊ぶことが目的って感じの格好に見える。あぁ、でもそう言えばバイトの時の服装は『動きやすい服装』としか言ってなかったからなぁ。まさか、あの時の水着をバイトで着るとは思わなかった。バイト終了後に海で遊ぶために買ったものとばかり思ってたからな。
「何でって……海の家で働くのでしょう?それなら水着じゃないのかしら?むしろ、あなた達は水着じゃないのね」
あ、あれ、俺たちの方がおかしいのか?確かに俺たち男性陣は全員がTシャツに濡れてもいい様に短パンといった格好だ。天祢さんに関しても昨日と似たような格好だし。人数的に言えば、水着姿の女性陣の方が勝っている。あれ、おかしいのって俺たちの方?
「………これが若さか………」
天祢さんが声のトーンを落として呟く。いや、落ち込まないでください、店長。色素抜けたみたいになってますよ。
それにしたって、部長達の水着姿は若干目に毒だ。部長と朱乃さん、ミラ、黒歌、ゼノヴィアはセパレーツタイプの水着で、部長は赤、朱乃さんは淡い紫陽花色、ミラと黒歌はホルターネックタイプで、それぞれ白に淡い赤い色のラインが入った水着と、黒にアクセントで白が入ったタイプの水着だ。ゼノヴィアはあの店で俺の前に現れた水着と同じ爽やかな青空のような色のセパレーツタイプにパレオを巻いている。
アーシアはストラップレスの白一色の水着にパレオを着用。イリナと小猫ちゃんはワンピースタイプの水着だが、イリナの方は背中が大きく空いていて、アーシアと同じく純白の水着。小猫ちゃんは短いスカートが付いたものを着用している。
いや、それぞれ個性を活かした水着を着ているとは思います。正直言って似合ってます、はい。ただ、これから働くのは海の家な訳だ。だからこそ、この格好のままじゃイロイロとあるだろうと思うわけでして……
「はぁ…………まったく。木場、やっぱり必要になったから、アレ持ってきてくれ」
「ははは……そうだね、持って来るよ」
そう言って木場は普通の速度で離れに戻って、大きな袋を持ってきた。まぁ、一般人である天祢さんがいるしね。
「ほら、一応これ着て下さい」
そう言って俺が袋から出したのは、白のパーカーだ。10着くらい買っておいて正解だった。
「あら、準備がいいですわね、イッセー君」
「まぁ、制服じゃないですけど統一感があった方がいいかなと思いまして。予算の都合上これしか買えませんでしたけど。それでも、女性陣全員には行き渡る筈です。とにかくこれ着て下さい。でないと、絶対にナンパとかのターゲットになります」
「……先輩、それは似合っているから、ということですか?」
「……さぁ、仕込みしよう」
「逃がしません」
「白音に同じく」
大黒屋の中に入ろうとした俺を猫姉妹が通せんぼをする。助けを求めようと後ろを振り返っても、木場たちは距離を取っていて、ワザとらしく知らんぷりを決め込んでいる。
そして、いつの間にか周りに逃げ場は無かった。できればこの連携はもっと別の場面で活かして欲しい。とにかく、オカ研女子に囲まれた俺はまさしく四面楚歌といった様相だ。………どうしよう。
「イッセー、どうだろうか?似合っているかな?」
「イッセー君!嘘はダメよ!?正直に言って!」
「イッセーさん!」
教会トリオが俺に迫る。他の面々も謎の視線を向けてくる。おそらく、この海岸………いや、この世界に俺の味方はいない。いや、むしろ松田とか元浜の部類の人間には抹殺対象にされかねない。しかし、女性の姿を褒めるのは妙に気恥ずかしい。でも、言わなきゃ解放されなさそうだしなぁ………
ぐ………結局言わなきゃダメか……
「あー、うん。似合ってるよ。バッチしだ」
「「「「「「「「もっと、はっきり言って」」」」」」」」
う…………やっぱ今のじゃダメか……
「あーもう、分かりました!似合ってますよ!似合いすぎてて絶対にナンパのターゲットにされるでしょうから、それが嫌で白のパーカーだって着てもらったんですよ!」
女性陣は満足そうに表情を綻ばせ、俺から距離を取っていたブルータス(裏切り者)共からは『わー!』という謎の歓声をいただいた。俺はその場でうな垂れた。
「うおぉぉ…………何の罰ゲームだよ、これぇ……」
俺の精神が削られる……
そしてそれで終わらず、さらに追撃が掛けられる。
「よしっ!よく言った、兵藤君!これで、女の子たちの士気は高まった!君という尊い犠牲のおかげで!」
天祢さんは親指を立てて褒め称えるが、俺の士気は上がらない。穴があったらそれをさらに深く掘って、穴の中で二泊三日くらいした後に一人旅したい気分だよ!あぁぁぁ………働きたくねぇ……
「それにしても意外でしたね。まさか兵藤さんがこんなに独占欲が強かったとは」
「……はい?」
おい、芦屋。それはどういう事だ?一体今の会話からどうしてそうなるの?独占欲?俺が?何を独占しようとしていると?
「なるほどな。兵藤君がパーカーを買ってきた本当の目的はそれだったんだな」
「え、んん?」
「み、皆さんお綺麗ですから、仕方ないとも思います……」
「んん?ギャスパー?どういう――」
「お、そっか。兵藤君は女の子たちの水着姿は自分だけの物にしたかった訳か。『てめえら他の男に俺の女の艶姿は見せねえ!』って訳だねぇ」
「はぁ!?いや、俺は――」
「うっわぁ……お前ってムッツリだったの?普段ニートの僕よりヒドイんじゃない?」
「「「「「「「「「「「「それはない」」」」」」」」」」」」
そこだけ、気持ちは皆同じだった。
「何だよ!そこはノリで否定せずに、肯定してくれたっていいだろ!?」
「残念だが漆原、貴様は何も出来ないのに対して、兵藤さんは家事スキルが高いというのが、ここ数日共に生活して感じた事だ。そのスキルの高さは恥ずかしながら、この私を凌ぐかもしれないと言っても過言ではない!く……私もまだまだ精進せねば……!」
いや、芦屋さん、家事くらいで熱くならないでください。まぁでも、家事スキルが高いのは当たり前だ。だって、エレンピオスでは兄さんのも含め家事は全部俺の担当だったし。ってか、兄さんの場合仕事はできる、社会的ステータスも高い完璧超人だったのに、家事はてんでダメだったからなぁ。
「いや、それは今はどうでも良いんですよ。それより、俺は別に独占欲とかそういうのじゃなくて――」
「うんうん、分かってるにゃん、イッセー。恥ずかしいんだよね?私と白音は分かってるから大丈夫にゃん」
「………姉様に賛成はしかねますが、その……先輩から褒めていただいて嬉しかったです」
「いや、だから待って。俺の話を聞いて」
プルルルル♪
「……あ、はい……お、そうですか、分かりました。じゃあ、今から取りに行きますね」
天祢さんの携帯に着信が入り、それに応答した。携帯を仕舞うと、天祢さんはこちらに向き直った。
「さ、君たち仕事だ!兵藤君、もう弁解は諦めなさい。女の子たちはしっかり喜んでくれてるから、それでいいって事にしなさい。大丈夫、きっとこの子たちは君の性癖を受け止めてくれる」
「ちげえぇぇぇぇっ!!何ヘンナコトをサラッと言ってるんですか!?性癖じゃないです!勝手に言われてるこ――」
「あーはいはい。取り敢えず男どもは今漁協の人が裏に食材を届けてくれに来てるから、それを運ぶよ。女の子チームは店の鍵開けて、軽くでいいから清掃や備品のチェックをもう一度やって。さ、動いた動いた!」
「「「「「「「「はーい」」」」」」」」
女性陣の方が上機嫌で早速行動に取り掛かった。結局俺の独占欲説(?)は弁解できずに終わった。
あれ、皆分かってるよね?あれって冗談で言ってたんですよね?俺は大黒屋の裏手に回りながら一人そんな事を考えていた。
いや、本当に不安でしょうがない。このままだと、また学校の方で変な勘違いされる可能性が………
――○●○――
さて、俺たちはガハハと笑う豪快な漁師の人から、食材を貰い大黒屋に運んだ。店内では天祢さんに言われた通りに女性陣が店内清掃をしていた。で、早速俺、芦屋、アーシア、ミラの料理組は仕込みに入った。
俺と芦屋は鉄板などを担当する焼き組。鉄板が二面あるため、俺と芦屋で一面ずつ。芦屋の方は焼きそばを担当し、俺の方はお好み焼きだ。で、鉄板がそれぞれそれなりの大きさなので、半分のスペースで基本的に作って、人気のある方をサポートできる様にしている。そして、俺たちの右後ろには炭を入れて網を乗っけたバーベキューコンロが鎮座している。実は急ごしらえのリカバリーな上に、調理できる人数を考えると、どうしても時間や手間のかかるメニューは外さざるを得なかった。ただ、少しでもメニューの少なさを誤魔化せないか、と考えたのが手のかからない新メニューの考案だ。
新メニューとして焼きトウモロコシを追加した訳だ。確かにこれなら、トウモロコシにタレを漬けてオーダーが入ったら焼くだけで済む。
そして、ミラとアーシアはコンロを担当するカレー組。事前に鍋とは別にポーク、チキン、ビーフを焼いておいて、カレーに入れて出す。コンロの位置と鉄板の位置が隣同士なので、コッチのカレー組もバーベキューコンロが使える。だからミラとアーシアにはさらにフランクフルトを担当してもらう。
で、適宜ホールの人出が余ったらバーベキューコンロの方を手伝うという事に。幸いして料理をできるメンツがオカ研メンバーは多い。イリナとゼノヴィア以外はなんやかんや料理ができる。
因みに男性陣も何かしら従業員と言うのが分かるようにした方が良いだろう、と言うことで全員が天祢さんと同様の緑色の前掛けを着用している。で、俺と芦屋さんはさらに頭にバンダナを巻いて髪を上げている。
女性陣の方はさっきのパーカーに追加で、天祢さんが奥から『大黒屋』と書かれたシールを持ってきてくれたので、パーカーに全員がつけた。ミラとアーシアはカレーが水着などに付かないようにエプロンも着用している。
そして、一番恐れている部署である漆原、ギャスパーコンビは二台のかき氷機の前に待機して、その横には氷水を張った子供用のビニールプールがある。その中には無作為に缶ジュースが浮かべられていて、プールの前には『一本120円』と書かれた看板が立っている。
こちらは、カキ氷を好きなだけ削れるようにして、シロップも自由に選んで好きなだけ使えるというシステムにした。これなら、あの2人でも実質やることはお金を受け取るだけなので簡単なはず。あとはカキ氷機の中に氷を入れる仕事だけだ。かなり鷹揚な経営システムの大黒屋ならではの戦法だ。真奥もカキ氷の方はどちらかと言うと、客引きの目的の方が強いって言ってたし。
それに客引きに関しては既に目に着くものが大黒屋の入り口の隣にできている。いつの間に作られていたのか知らないが、鎌月さんが『砂楼・蒼天蓋』なる立派な砂の城を作ってくれていた。高さは鎌月さんの身長と同じくらいだろうか。立派な天守閣に、お堀まで作っている凝りようには感嘆の声しか上がらない。しかも、お堀の部分を少し深くする事で、『これ以上入らないで下さい』というアピールにもなっている。念のため周りにはビニールテープを張って一般客が壊せないようにはしている。
で、他の業務に当たるビールサーバーやドリンクの方は天祢さんと真奥が捌くことになった。
さて、ここまで準備万端にしたはいいけど、客って来るのかなぁ?昨日まで全然人が居なかったし。改めて一抹の不安を感じる。
そして、俺たちによって改造された新生大黒屋がオープンする!
で、天祢さん?その張り紙は何ですか?『ナンパ等の迷惑行為禁止』は分かります。ただ、その横には書いてある文句が気になります。『独占欲のチョー強い男の子が鉄拳制裁を加えて、強制的に退店して頂きます』って何ですか?嘘ですよね?そんな張り紙貼りませんよね?あと、そこに書かれてる人物は俺じゃないですよね?
………俺は痛くなる胃を抑えながらオープンに臨むことになる。
……ぐす。
今回はこんな感じでした。
この章は予告した通り、短期間で一気に投稿します。