投稿頻度ちょい上がるかもっす
Case.13 にゃにゃめにゃにゃじゅうにゃにゃどのにゃらびで
街の郊外には墓場があった、そこに眠るのは多くの一般市民である。戦争で亡くなった、病で、あるいは寿命で亡くなったかはわからないが数多くの名前が墓石に刻まれている。夜に降る雨はその墓石を闇に溶かすかのように黒く濡らしていく。
その中の一つ、6人の男女の名前が刻まれた石碑の前で中性的な男性が雨のなか佇んでいた。
「せめて指だけでも入れさせてもらうよ、師匠」
そこに仕事服姿の8人の少女と一人の少年が傘をさして歩いていく。
ガルガド帝国での任務は無事に成功した。しかし、失うものもまた確かに存在していた。クラウスの師匠であるギードはクラウスの命を狙った弾丸から庇って亡くなった。狙撃場所は遠いビルの中、特徴的なキノコ頭の影が見えたが、不意打ちを庇われてしまった為かすぐに姿を消した。クラウスにとってはそれどころではなく、周囲の警戒を行いながらもギードの傷を確かめる。見るからに致命傷だった。傷からは血が絶えず流れ出しており、止血することさえ難しいものだった。ギードの最期の「今度こそ、守りぬけ、、、」という言葉と彼の指を一本ナイフで切り落とし、敵地であるガルガド帝国の工場を後にしたのだった。
クラウスが顔を上げ、少女たちと目が合うと彼女たちも黙祷を捧げていた。彼女たちが目を開けると決心したように話し出した。
「私たちでこの国を守っていきましょう」
「ボスとご一緒にこの国を支えていきます」
「給料はいいんだろ」
「このチームは好きだしね、焔の意思は受け継ぐわ」
「俺様、一緒がいいです」
「エルナも、エルナも一緒がいいの」
「なんだってさ、刺激的でしょ」
彼女たちのまっすぐな視線はクラウスの落ち込んだ心に染み込んできた
「極上だーー」
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夢を見ていた、今となっては遠い過去のように思える養成学校時代のことだ。
「おいダン、次は何をやればいい、早く指示を出せ」
ダンは同年代の少年に顎で使われていた。ダンの他の人の動きを見て、改善点を伝えるという特技は養成学校においては喉から手が出るほど欲しいものだった。
ダンと仲の良かった少年は始めは平凡な成績だった、しかしダンの指摘を実践するうちに徐々に成績が上がり、学年トップの希望株となった。しかし、二人で特別訓練に参加し、徹底的に打ちのめされた後、二人の関係に変化が起きた。ある程度能力の上がった学生はダンの変わり映えしない指示に飽き始め、だんだんと話を聞かなくなった。彼の成績はその後少しだけ伸びたが、すぐに伸び悩み、養成学校の底辺へと落ちて退学していった。その様はまるで夢が醒め色褪せていくようであった。
その後のダンの評判は落ちていった。側から見れば成績を一時だけあげ、夢を見せた後現実を突きつけたかのようだった。
ダンの指導は素晴らしいだが、自分は退学者にはならないぞと息巻いたグループによってダンへの支配が始まっていった。自分たちに逆らわないようにすれば問題はない、成績を落とすような素振りを見せれば〈指導〉を行う。そんな者たちによってダンの日中は自由時間が減っていった。
初めのうちは良かった。ダンの改善点は的を得ていたが、1ヶ月が経ち何事も起こらない様子を不安に感じたグループのメンバーが他のメンバーに相談を始める、すると不信感の勝ったメンバーはダンの話を話半分で聞くようになり、するとじきに成績が落ち出し、やがて辞めていった。他のメンバーも〈指導〉を加えながらも戦々恐々としていた。次は自分が成績を落とされるかもしれない。
短い間の素晴らしい夢を見せその後現実を突きつける。夢のような自分はそっくりそのまま夢だった。
学校側は状況を理解していたが、学生側にアドバイスをすることはなかった。曰く「自分の状況もわかっていないものは将来すぐに死ぬことになる、独り立ちしたのちはアドバイスしてやることもできない」だそうだ。
しかし、退学者は増加していった。ひと月、もってふた月でダンを支配していたグループが変わり、次のグループが支配権を得ていた。どちらにせよ、不信感から退学することにはなるのだが、、、
ダンとて素直に従っていただけではない、夜遅くまで自主練をしていた。その時にカフェイン製剤の飲み過ぎによる手足の軽い麻痺が起こった。そして睡眠時間を確保するためにダンは寝酒として、アルコールを摂取していた。生活習慣を崩したダンは最終的に自身の成績も落としていき退学寸前になっていたところをクラウスに拾われたのだった。
成績を落とし、クラウスのスカウトがあったタイミングで養成学校から与えられたコードネームが《夢現》
「彼の本来持っていた無限の可能性はそれ自身が夢となって消えていってしまった。しかし、あなたにあったことで再び現実となりますように、、」クラウスに対して教官はそのように話していたという。しかしこれはダンの知らないことではあるのだが、、、
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不可能任務を達成したご褒美として1週間の休暇が与えられた。そしてその休暇の始まる朝、クラウスは出発前に少女たちのみを招集した。
「さて、早速だがダンには灯から離れてもらう」
クラウスの招集により広間は一時騒然とする。用事があると言って少女達の反省会や集まりには欠席することが数多くあった。しかしクラウスの呼び出しによる重要な会議には欠席したことがない。そう思えば不自然だった。彼は最近部屋にこもって何か書いていると思えば、訓練の時間にだけ出てきて参加せずに俯瞰して見たのち、各々に一言二言アドバイスをして部屋に戻る生活を繰り返していた。
「ダンさんがなぜ辞めなきゃならないんですか‼︎」
リリィとジビアはクラウスに反抗の意思を示す。モニカでさえ驚きの表情を隠せていない。ダンのいないという現状が本当にいなくなるかもしれないという不安を引き立たせている。
「ダンは新聞社への採用が決まり、そちらで働くこととなった」
あり得ない、新聞社は仕事の厳しさではスパイと並ぶほどだが、賃金の支払いにおいては現状の半分にも満たないだろう。そして何よりも灯の存続を願っていた時との差が大きく存在していた。
「落ち着いてください、みなさん」
「なんですか、グレーテちゃん。今回ばかりは落ち着いていられませんよ!!」
リリィによりグレーテのほっぺたがつねられる。
「でしゅから、いひどはなひをひひてくだふぁい」
つねられながらのグレーテの言葉に広間が静まる。
「お前たちは何を焦っているんだ?ダンには引き続き灯で活動してもらう。ただし表向きに活動するのは僕を含めて8人だ。ダンには任務に当たる時だけ変装していてもらう」
「ダンとは別れなくていいのよね?」
「さっきからそう言っているだろう」
「「「「「「「ちょっと待てやー!!」」」」」」」
グレーテ以外の声がハモった。
「私はみなさんにこのことをきちんとお伝えしようとしただけなのですが、、、」
「あぁ、君がマスクを作ったんだよね。それで僕たちの誰に変装するの?」
「それは本人に登場して頂こうかと」
全員の視線が一斉に広間の扉へと向かう。
「ハロー
モニカだよ
モニカじゃないよ
モニカだよー」
「おい」
モニカが武器であるゴムボールを投擲する。正面から狙わずに何度か反射をつけたものだったが、ダンはそれを手のひらで受け止め笑って投げ返す。
「ごめんて、、、どうどう?声はまだイマイチなんだけど、変装に関してはすごくない?グレーテのおかげなんだけどねぇ」
「早口言葉もある程度はできるよー、いくよー
にゃにゃめにゃにゃじゅうごどのにゃらびでにゃくにゃくいにゃにゃくにゃにゃはんにゃにゃだんにゃんにゃくにゃらべてにゃがにゃがめ」
「今後、僕の格好で変なことをするな、それが条件だ」
モニカは自分の方が実力において負けていること、そして一番実力の近しい自分が変装先であることのメリットが高いと考えてダンに条件を提示した。実際に自身の影武者ができたとも考えられるわけなのであながち悪いものではない。
「りょー」
「ところで、新聞社の件は本当なんすか?先輩」
「あれはほんとだよー」
「自国の新聞社とはいえ、内部に入れるなら情報操作もしやすいしー、他国の情報操作にも敏感になれるしねー」
「お兄ちゃんが倒れちゃわないか、エルナ心配なの」
「兄貴が倒れたら俺様が看病してやります。感謝してください」
新体制になった灯の初任務はすぐそこだ
お読みいただきありがとうございます。
是非、高評価お願いします。
アネット編の「あの女は失格ですよ」すごかったすねー、原作知っていましたが、鳥肌立ちました。