今回はほとんど話が進みません
一夏がDEMの上層部に学園の対応、織斑 千冬との会話を提出したことにより、IS学園は世界各国から非難を浴びた。代表候補生が避難誘導や侵入者の迎撃をし、教師が何もせずに我先にと逃げ出したことが分かり、教師の適正に問題があるのでは?という声も上がった。
「まぁ当然の結果かな」
一夏の言葉に代表候補生の全員が少し引いた。一夏を除く全員は穏便に済まそうとしたのに対して、一夏は即座に報告した。その事に全員は疑問に感じた事があった。
「一夏さんはいつ報告なさったのですか?一夏さんはずっと一緒にわたくし達と行動なさっていました。一体いつ……」
「それに会話の録音なんて……普通しないわよ?」
セシリアと鈴の疑問に一夏は当然のように
「会話の録音なんて常識じゃないの?」
そう言い切った。執行部部長補佐をしていた一夏にとって、ボイスレコーダーでの録音や話し合いの映像の記録、議事録の作成等は当たり前のことだった。商談で言った言ってないを無くし、スムーズに進める為にはうってつけの方法だからである。IS登場によって女尊男卑になったこの時代、男は女に罪をでっち上げられることが多く、不当に逮捕されるというケースもあり、ボイスレコーダーの携帯が一般的になった(最も、ボイスレコーダーの録音があるにも関わらず裁判で負けるというケースもあり、あくまで手段の一つとして持ち歩いている)。
「常識ではありませんが……確かにわたくしも重要な会議では録音や録画をしたことがありますわ……それでも相手に許可を得てからですわ」
セシリアは一夏の悪びれのない態度に呆れた。一夏はセシリアの言葉に反論しようとしてやめた。
「寮に着いたからこの話は終わりにしよ。そういえば皆は今度の休みはどうするの?」
一夏は話題をそらそうと全員に休みの予定を聞いた。IS学園では休みの日を使って実家や友人のところに顔をだす生徒が多い。しかし、それは日本の生徒だけで、海外から来ている生徒は夏休みまで学園で過ごすことになる。
「私は一夏のライブの他は特にないわね」
「……私もない」
「わたくしは学園の近辺を見て回ろうと考えていますわ」
予定を聞いた一夏はセシリアに申し訳なさそうに話を切り出した。
「私の家に遊びに来ない?琴里ちゃんにお菓子作りを約束したんだ。それとあんなことがあったけど、クラス代表戦の打ち上げもしたいんだ けど、いいかな?」
三人は一夏の申し出を承諾した。簪は本音も呼んでいいと一夏に聞き、一夏はOKをだした。そのあと、待ち合わせ場所などを話し合っていると、学内放送が流れた。
『一年一組の五河 一夏さん、理事長室まで来てください。繰り返します……』
「……私、何かしたっけ?」
「さあ?」
「ですが、行かなければなりませんわよ?」
「……分かってますよ~」
一夏は行き先を寮から理事長室に変更して歩きだした。
「ここで合ってるよね?」
一夏は時折道に迷いながら、なんとか理事長室にたどり着いた。扉をノックしようとすると、篠ノ之 箒と鉢合わせになった。
「何故貴様がここにいる!」
顔を見るなり、いきなり怒鳴った篠ノ之を一夏は無視してドアをノックした。すると中から「どうぞ」と言われたので、中に入った。
「失礼します」
中に入った一夏は既に理事長室にいた人物を見て、何故自分が呼ばれたのかを察した。中には織斑 千冬をはじめとした数名の教師がおり、千冬の近くには織斑 春彰もいてずっと一夏を睨んでいた。その他には簪によく似た人物もおり、一夏に複雑な視線を送っていた。
「さて、それでは会議を始めましょう。……っとその前に……初めまして五河 一夏さん。私がIS学園理事長の轡木 十蔵です。五河さんには代表として来ていただきました」
理事長を名乗る壮年の男性を見た一夏は驚いた。女尊男卑のこの時代に男性がIS学園のトップに立っていることが異常だからである。
「初めまして理事長。五河 一夏です」
一夏の挨拶を聞いた十蔵は笑顔を一夏に向けて会議を始めた。
「それでは今回の議題ですが……生徒会長の更識君お願いします」
更識と言われた女性は手に持っていた資料を読み始めた。内容は今回のクラス代表戦に突然乱入してきた無人機についてだった。
「ありがとうございます。……ではここからは実際に戦闘を行った五河さんに話してもらいましょう」
いきなり話を振られた一夏は一瞬嫌な顔をしたがすぐに元通りにし、戦闘中に気付いたことや無人機の挙動などを話した。
「……このくらいでいいでしょうか?」
「はい、ありがとうございました……それでは何か質問や意見はありますか?」
一夏の話しが終わると、理事長は集まっている全員に質問があるかを聞いた。すると、千冬が手をあげた。
「理事長、あの無人機の性能は平均的な第三世代のISを上回っています。それを容易く撃破した五河の機体を没収して唯一の男性操縦者である織斑に渡すか制限をかけるべきだと思います」
千冬の言葉を聞いた一夏と十蔵は心底うんざりした表情をうかべた。それに呼応して千冬の信者達が声をあげた。十蔵は一夏の方を見て一夏の意見を聞いた。
「……と言っていますが、五河さんは何かありますか?」
一夏は周りを見た。教師達は渡すべきだという顔をしている千冬の信者が半数いて、残りは何言ってんだこいつ?という顔をしてきた。
「……でははっきり言わせていただきます」
一夏は一旦言葉を切って
「教師には無能しかいないんですか?」
思い切り侮蔑の表情で千冬の信者の教師達に言い切った。その瞬間、理事長室の空気が凍りついた。
「……どういうことだ?」
凍りついた空気の中、千冬が一夏に尋ねた。その目は一夏を睨み付けており、周りの教師も同様に一夏を睨み付けた。
「生徒を見捨てて我先にと逃げた人達を教師と呼べますか?それに有事の際の対応が出来ない総司令、侵入者が簡単に入れてしまうセキュリティ、作戦の伝達も出来ない指揮系統、他にもありますが……まぁこんなところですかね。これを聞いてまだ無能ではないと?」
一夏の言葉を聞いた教師達は何も言えなくなった。しかし、一夏は止まらず、さらに言葉を続けた。
「それに企業の許可も無しに専用機の譲渡なんて出来るわけないでしょう。前も学園に抗議しましたよね?忘れたんですか?」
一夏は一旦言葉を切った。
「そもそも侵入してきた無人機のことについての会議ですよね、織斑と篠ノ之のうち、織斑はほぼ関係ないじゃないですか。二人は場を混乱させただけで、篠ノ之さんにいたっては放送室の占拠、その過程で生徒を数名気絶させて避難誘導の妨害を行いました。それに対する処罰はどうなんですか?」
一夏は一通り言いたいことをいうと席に座った。しばらく理事長室は沈黙に包まれたが、十蔵が話はじめた。
「……あの場にいたにも関わらず、避難誘導をしなかった教師に対しては減給3ヶ月を言い渡します。セキュリティに関しては随時対応していきます。……織斑先生」
十蔵は千冬の方を見て
「貴女の有事の際の指揮権を一時的に凍結します。そしてその指揮権は」
十蔵は次に楯無を見た。
「更識さんに移したいと思います。異存はありますか?」
十蔵の決定に反対の声は出てこなかった。
「織斑 春彰と篠ノ之 箒の両名には自室謹慎二週間と反省文百枚を言い渡します。また、今学期中は教室の清掃などの奉仕活動をしてもらいます」
十蔵の決定に春彰と箒が反対の声をあげたが、それは黙殺された。
「……以上で会議を終了します。……あと五河さんは残ってください」
十蔵の一言で会議は終わった。織斑姉弟と箒は退室する際、恨めしそうに一夏を睨み付けたが、一夏は一切無視した。そして、理事長室には一夏と生徒会長である楯無と理事長の十蔵だけが残った。
「……理事長、なぜ私は残されたのでしょうか?」
「私ではなく更識さんが貴女に言いたいことがあるそうです」
今まで黙っていた楯無は一夏を見て頭を下げた。
「簪ちゃんの専用機の組み立てを手伝ってくれてありがとう」
「いえいえ、話を聞いたら手伝いたくなったんですよ」
「そう……それで何が目的なの?」
楯無はISの槍を展開して一夏に突きつけた。その目は一夏に嫉妬しているように見えた。
「簪さんが姉と周囲を見返したいと仰ったので」
「……どういうこと?」
「『あなたは無能のままでいなさい』……貴女が簪さんに言った言葉ですよね?」
一夏の言葉に楯無は動揺した。まさか自分の一言が簪を追い詰めていたとは思っていなかったのだ。
「……まぁ貴女の言葉は到底許されるものではないですけど……まだ仲直りの機会はありますよ」
私と違って……一夏の呟きは楯無には聞こえなかった。
「どうしたらいいのかな?」
楯無は一夏にすがり付くような気持ちで仲直りの方法を聞いた。
「簡単ですよ……全力で戦えばいいんですよ♪」
一夏は笑顔で言い切った。
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