異世ばと! ※スーパーなろう大戦に作者オリキャラが参戦する話です   作:笠本

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第10話 勇者Aがあらわれた

「なんで――――はこっちのセリフだってよ。なんでテメエはこのクズども逃してんだよ。犯罪者だろうがコイツらは!」

 そいつはなぜか激昂していた。

 

「は? 絡まれたけどもう済んだから」

 問いの意図が理解できず、僕は疑問顔で返す。

 

「事なかれかよ。やっぱお前、日本人だよな。ってかSPECの職員か」

 顔つきは日本人。口にするのも日本語。そいつは僕に指をつきつける。

 

「このクズ共は俺たち勇者にぶっ殺されるために絡んできてんだからよ。ならちゃんと義務果たせや。仮にも勇者で呼ばれてんならクズはきっちりお掃除するのがマナーだろが」

 

「えっ!? なにそれ……」

 引き顔でチェトさんを見ると、

 

「いやあ、まあ説明遅れましたけど実はそうなんですYO。ザゴール団はこないだ騎士団に全員捕まえられてて、今回は勇者様の腕っぷしの披露に送り込まれてたんです。殺されても文句は言わない代りに、生き残れたら刑期が減らされるんです。結構けーいち様みたいに加減してくれる方は多いですから」

 

「ああ、それで……」

 そういえば先程のやり取り、街の住人が興味深そうに見ていたな。

 普通は地元ヤクザの暴力沙汰なんて遠巻きにするものだろうに、むしろ近寄ってきた人もいた。何か期待した顔で。

 

「犯罪者が戦場で前線に押し出されるとか、危険な魔法の実験台にされる代わりに恩赦がもらえるみたいな話ですね」

 

 弓槻さんがとくに動じることもなく言う。

 たしかにMクラス(中世相当)異世界だとよくある。それと犯罪者の縛り首が娯楽(ショー)として扱われるヤツじゃないかな。

 この辺の中世感は未だに慣れないよ。

 

「じゃあ別に問題ないじゃん。その二人はリスク負ってクリアできたってことなんだから。運が良ければ許されるんだろ? 僕らはそれでいいって決めたんだから」

 

「あん? 意味わかってんのか? こいつらは犯罪者だぞ。ここの人間がどうか殺してくれって送り込んできたんだろうが。逃げてんじゃねえよ」

 

「逃げるって、なに?」

 

「どうせこいつら釈放すればまた犯罪犯すやつだろうが。ここできっちり殺しとくのが世のためってやつだろ。ビビるなっつてんだよ」

 

「なんでだよ。僕ら別に殺さなきゃいけないようなことまでされてないんだけど?」

 

「はっ、偽善者が。はい、けーいち君がここで悪人見逃したせいで将来罪のない女、子どもが殺されちゃいます。責任取れるんですか? ああん?」

 

「いや、別にいまそこまでの犯罪してないなら…………えっと、この二人、そんな凶悪なことしてるの?」

 チェトさんの方に尋ねると、「こいつら下っ端だからしょぼいことしかしてないですYO」と返答。

 

「じゃあやっぱりそのままでいいよ。ここの司法がそういう判断したんなら。そういうルールなんだろ、ここでは」

 

「ちっ、やっぱ典型的な日本人な。平和ボケすぎんだろ。俺は召喚されて異世界に来たけどよ、メシはマズイは娯楽も碌にねえ世界だけどよ、日本と違ってくだらねえ建前に縛られねえって一点だけは好みだぜ。

 

 悪人は即ぶっ殺しとけや。それが異世界(ここ)のルールなんだよ」

 

()()()()僕らの生活守るより大事には思えない」

 ちらっと横の弓槻さんとファムを見る。

 僕がリーダーとして守らなきゃいけないメンバーを。

 

「はっ。SPECなら異世界に()んのが仕事だろ。その雑魚メンタルでよくやってけんな。悪人も殺せねえヘタレじゃ即トラウマもんだろ。スラムのガキが死んでるだけで泣いちゃうタイプじゃね?」

 

「大丈夫だよ。SPECの職員は一回渡界するごとに10時間のカウンセリングが義務付けられてるから」

 

「んなこと聞いてねえよ! んなもんに頼ってんじゃねえよ!」

 

 そうでもないんだけどなカウンセリングって。異世界ってとにかく人命が軽いけど、そこでのショックよりもむしろ日本との落差で自分の基盤が揺らぐ方が危ないんだって。

 もう何回もカウンセリングを受けて、ただあちらで起きたことを話してるだけで心が柔らぐのが分かる。

 

「分かった分かった。コワイならこっちでやっといてやるからよ」

 さっきからこいつは怒りをあらわにしているけど、ついには明確な殺意をあらわにモーブル団の二人に手を向けた。

 

「レイゼ様」

 レイゼの背後にいた女性が咎めるような言い方で名前を呼んだ。僕らより少し上くらいに見える、神官っぽい服装の人。

 

「あー、しゃあねえじゃん。こいつ俺のいた国の人間なんだよね。前に言ったろ、俺の故郷は平和ぼけしたヌルい世界だって。同じとこの出身者としては責任とらねえといけないじゃん?」

 

「ですが、あちらもこの大会に招かれた方。相応の力量をお持ちのはず。不用意な挑発は危険かと」

 

「はっ、んなわけあるか。見りゃ分かる。どうせ見かけどうりの雑魚…………」

 と、目を凝らす仕草をしたレイゼは突然叫んだ。

 

「てめえなんだそのステータスは! HPは120、MPは0、てか魔法は使えねえ。称号もなにもねえ。そんでユニークスキルの一つも無い。ガチの雑魚じゃねえか! よくそれで俺に偉そうこきやがったなあ!」

 

 鑑定ってやつか。僕のステータスを見たらしい。

 うん……僕の低スペックを知ったんだな。

 

「あー、やっぱりそうなんですねえ~」

 とチェトさんがふわふわと浮かびながら。

 

 レイゼは握った拳を開き、こちらに向ける。

 その前に弓槻さんが立ち塞がった。

 

「圭一さん、やりますか?」

 

「へえ、こっちのはどうだ? …………すげえな、MPはそこそこにしても火の精霊の加護がレベル7、風もレベル6があるじゃねえか。俺の精霊王の加護レベル10には及ばないにしてもな。

 

 んで他は……まあ当然、五系魔法はあるよな。身体強化魔法、古代刻印魔法…………それと聖鈴教呼び響みの呪歌? 聖鈴教ってエルフ共が石ころ拝んでたしょぼいやつか? 

 

 そんで称号が『セ犸nタ喇討伐者』?。なんか知らねえが相当なもんだろ。

 

 おい、お前、こっちに移籍しねえか。んなしょぼいリーダーの下にいるのもムカつくだろ。これからバトるんだからよ、俺ならきっちり守ってやれるぜ」

 

「私の方が強いですから必要ないと思いますが?」

 

「ああ悪い。んだな、元から圭一君には頼ってなかったわな。守ってあげてる方だったな。………………そんで圭一君よ、ゴメンな。殺さないとかイキってたけどよ。正確には殺せねえだけだったんだな。だってこのクズの方がよっぽどHPも高いしよ。だから安心しな。俺が代りにやっといてやるからよ」

 

 そしてレイゼはザゴール団の二人に再び手を突きつけた。手のひらに赤い炎が生まれたのを見て悲鳴が混ざったうめき声をあげる二人。

 

「この二人、そっちには何もしてないだろ。やるにしてもその権利あるのは僕なんだから、手を出さないでくれ」

 

「だから雑魚がイキってんじゃねえよ! 力ないやつがキレイゴトぬかすのはホント、ムカツクぜ! このクズ守りてえなら自分で止めてみろや! それとも女にやってもらうかあ?」

 

「分かった。弓槻さん、僕がやる」

 杖を構えた弓槻さんを手で制すると無言でこくんと頷き、下がる。

 

 僕は代りにファムに目を向けて言う。

「ファム、行くよ」

 

「おう圭一、みせたれやお主の力を」

 

 僕はレイゼに手を向ける。

「MPがなきゃ魔法が使えないわけじゃないよ――――不可視(インバイオリビティ)の盾(・シールド)、発動」

 

 各地の異世界で僕の命を守った魔法を展開する。山賊や悪徳貴族に捕らわれたとき、攻撃力のない僕が生き抜けた秘訣。

 

「不可視の絶対防御の盾を展開した。あらゆる魔法も伝説の剣であろうともこの盾を破ることは不可能!」

 

「はあ?」

 

「そこへ悪の魔道士が登場じゃよー」

 

 ファムが杖をふりふりと掲げながら言う。

「その不可視(インバイオリビティ)の盾(・シールド)で、この妾の極大魔法を防げるのかや?」

 

「当然。そんなもの何発撃ったって僕のバリアはびくともしないよ」

 

「ふむ、じゃが反対側から攻撃すればどうかの?」

 タタタッと駆け出したファムが反対側へと移動。

 

「なっ、まさか! やめろお!」

 

「はっ? てめえら何やってる!?」

 

「超すごい風魔法をくらうのじゃよ!」

「うわあぁ!」

 ファムが杖を大きく振れば、見えない暴風が発生。僕は自分の生み出した不可視の盾に叩きつけられた。風圧に抵抗しようと何もない空間に手をつくが、吹きつける暴風に勝てずに、顔が盾に押しつけられて歪む。

 

「ひゃっほう! おかしな顔じゃよー」

 悪の魔道士と、周囲の観客たちから笑いが起こる。

 

「くそう!」

 ようやく暴風が収まり、僕は盾から顔を引き剥がす。糊付けされたみたいに顔が盾にくっついてしまい、苦労する仕草。痛そうに頬をさする。

 

「そして不可視(インバイオリビティ)の盾(・シールド)を使えるのはお主だけではないのじゃよ。ちちんぷい」

 ファムが再び杖を振るう。

 

「まさか!」

 盾の反対側、ファムの方へと走ろうとした僕は見えない壁にぶち当たり、頭をおさえる。

「いったあー」

 

「さらにその盾を動かしてくっつけたらどうなるのかやあ?」

 

「おいおい、そんなことされたら僕は雨の日の馬車に轢き潰されるカエルみたいになっちゃうよ…………やめろ、こら、このおお…………うわああ」

 

 迫る透明な盾を必死に押し留めようと、体当たりしたり、殴ったり、背中で抑えつけたり。必死に抵抗するがついに僕は二枚の盾に挟まれぺしゃんこに。

 

「きゅううう……苦しい……」

 

 ファムが杖を振るうと盾が消え、僕は地面に倒れ込んだ。

 

「なに遊んでんだてめえら! パントマイムじゃねえかそりゃああ!」

 

 そこまで終えたところでレイゼが一際大きな声をあげた。

 

「ああん! これが遊びじゃとお! 妾たちはこの芸で今まで生き抜いてきとんじゃあ! 舐めたったら承知せんぞおらあ!」

 

「そうだよ。見なよあのお客さんの反応を」

 

 弓槻さんがひっくり返した帽子に次々と街の人達からおひねりが投げ入れられていく。さらに拍手と喝采も。

 ひょっとしたらこの世界で初めて披露されたであろうパントマイム。狙い通りレイゼと皆の注目を集めることができたようだ。

 

 パーティーメンバーの中でまともに戦う術のない僕とファムであるが、二人で異世界に取り残されても―――悲しいかな他のメンバーがトラブルに巻き込まれてくので結構あるのだが―――なんとか生き抜いてこれたのがこういった芸事(ショー)である。

 

 山賊団に捕まったとき。敵対した貴族の配下に拘束されたとき。殺されてもおかしくない状況でもう少し生かしておこう、相手にそう思わせるだけのメリットが娯楽の提供なのだ。

 テレビやゲームどころか、下手すると小説すらないのが中世相当(Mクラス)異世界なのだから。

 

 それこそこの世界でも、酒場にいけばその日の夕食くらいは小話(すべらない話)の披露で稼ぐ自信はあるよ。

 

「殺す!」

 

 なのにレイゼはお気に召さなかったのか、手を向けてくる。

 

「レイゼ様! お止めください!」

「黙ってろ!」

 

「うわああ! けーいち様、あの二人は逃しましたYO! 早くけーいち様も逃げましょう!」

 

 チェトさんが目の前に飛びこんできて、僕の頬に取りつく。

 チェトさんにはボコられてたモーブル団の二人を逃がすように目線で伝えていたのだが、ちゃんとやってくれたみたいだ。

 

「死ねや!」

 ただ自分がショーに夢中になってる間に標的を取り逃したと気づいたレイゼは、さらに激怒。手の表面に球体の赤い光が灯り、その光度が増していく。

 

「うおああああ! けーいち様早くう!」

 

「大丈夫だよチェトさん」

 弓槻さんはレイゼの魔法を興味深げに見ているだけだが、僕も逃げずに待ち構える。

 レイゼが口の端をゆがめ笑う。同時に手の平の赤い光が膨張。炎となってこちらへ向かってくる。

 

 火炎放射器みたいな業火が僕の顔を焼き尽くす寸前。

 圧倒的な熱量の火炎は素手で掴まれた。

 

 その大きな右手がひょいとひねられ、炎は真上(まうえ)に放られる。家の屋根くらいにまで登った炎は落ちてくるともう片方の手でキャッチされる。と思えば元の右にパスされ、また放りあげられ。

 

 レイゼとの距離2メートルがそのまま炎の全長。それが今は両手を介して空中で火の輪のように繋がり回り続ける。

 まるで高温に蒸された生地を平然と素手で掴んで成形する料理人みたいに。

 

 周囲の人びとが「おおっ」と驚きの声をあげると、今度は片手だけでそのサイクルを維持。空いた左手を横から差し伸べれば円が縮まり、代りに横に膨らみだした。

 やがて火輪は球体へと変化する。それを一度高く放りあげ、落ちてきた炎を両手でパンと叩く。そして開かれた両手には何もなし。

 

 目の前で手品か魔術かという妙技を披露したその人は――――

 

「やあ、久しぶり圭一君。相変わらず愉快なことをしているね」

「お久しぶりです、リュークさん。いやあ助かりました。ありがとうございます!」

 

「ほわああ! ピンチに颯爽と現れたこの余裕しゃっくしゃくのスマートな態度に甘いマスク。イケメン細マッチョ! けーいち様、この方はまさかですYO!」

 

 興奮するチェトさんは置いといて、僕は顔を正面に戻す。

 自分の生み出した炎が素手で遊ばれて、口を開けたまま身動きすらできずにいたレイゼに言った。

 

「この人はリュークさんさ。知ってる? 前回大会の優勝者。鑑定スキルがあるんなら見てみなよ。このハイスペックぶりをね。絶対勝てないってのが分かるはずだよ」

 

「うわあ堂々と敵を擦り付けてるんだYO!」

「これも圭一の特技なんじゃよ」

 ファムが隣の屋台の店主に杖として借りてたホウキを返しながら言った。

 

「レイゼ様、鑑定はまずいです。どうかおやめください」

「くっ……くそ、行くぞ!」

 

 目を凝らしかけたレイゼは仲間に止められると、悔しそうに歯ぎしりしていたが、やがて舌打ちをして去っていった。

 まあ鑑定するまでもなく、軽々と自分の魔法を散らした力量を見せられた上に余裕のある態度を見ればリュークさんが格上だってのは分かるよね。

 

 よかった。

 観客の中にリュークさんの姿を見つけて勝利を確信してたとはいえ、今日のトラブルも無事に乗り切ったことに僕は胸を撫でおろした。

 

「けーいち様、前回大会優勝のイケメンとお知り合いだったんですね」

 早百合さんのおまけで名前を覚えられてる程度だけどね。

 

「リュークさん、ほんと助かりました。変な奴に絡まれちゃってて困ってたんですよ。それでリュークさん達もいまこの世界に来たところなんですか?」

 

 リュークさんの背後にはエルフとネコ耳と竜人とお姫様と騎士の美女5人。

 

「いや俺たちは3日前に来てた。ちょっといままで外に狩りにでていたんだ。実はそこの広場で武闘大会(バトルロイヤル)の選手も参加できる料理コンテストが開かれるんでね、その準備をしてたんだ」

 

「へえ、そんなイベントが。そっか、それはちょうどいい機会かも」

 

「あっ、もしかしてけーいち様も飛び入りで参加しちゃったり?」

 

「ああ、そうさせてもらおうかな。あくまで僕のは家庭料理レベルだけど、日本の家庭料理自体がかなりレベル高いから期待してくれていいよ」

 

「ははっ、それは楽しみだ。それじゃあ俺たちは準備があるから、また会場で会おう」

 リュークさんは爽やかに言って去っていった。

 

「うわー、やった! けーいち様は自分自身は弱いけど手料理でS級冒険者や神獣たちを虜にして戦わせる系のお料理テイマーだったんだ! 楽しみだYO!」

 チェトさんがクルクルと舞いながら光の鱗粉を放出。

 

「この妖精(フェアリー)も学習せんのお」

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