異世ばと! ※スーパーなろう大戦に作者オリキャラが参戦する話です   作:笠本

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第11話 料理バトル

「これはもはやNAROUの前哨戦! 30名の勇者様がたによる料理バトルはド本命、『天空の守護者(スカイキーパー)』のリーダー、リューク様の優勝!」

 

 料理コンテストは抽選で選ばれた観客と地元名士だという審査員による審査により、前世が中華料理のシェフであるリュークさんの優勝となった。

 

 30人参加で25位という微妙な結果だった僕は、会場のすみで壇上にて歓声をあびるリュークさんを眺めていた。

 

「さすがにプロには勝てなかったか。まあ僕のは所詮家庭料理だからな。飽きがこないのと愛情入りが売りだから勝負の土台が違うんだよね」

 

「いえいえ、愛情なんてまったく入ってなかったですYO! これ屋台で売ってた野菜スープを鍋ごと買いとってきて香辛料ぶちこんだだけですよね!? 5分で完成とかインスタントすぎですYO」

 

 僕は鍋に残ったスープをすくい、チェトさんに差し出す。

「でもおいしいでしょ、日本産のカレースープ」

 

 僕が使ったのは地球から持ちこんだカレールウ。異世界へ行くときの必需品。みんなの夕食リクエストトップなんだ。とりあえずどの異世界に行ってもこれさえあればどんな貧相な食材もおいしくいただけるようになる魔法のアイテム。

 

 ただ米かパンなりの土台となる食材が確保できなかったのが痛かった。飛び入り参加だから調理時間に使えたのが10分しかなかったんだよな。

 

「はふ、はふ。いえ、美味しいことは美味しいですよ。他の参加者がイケメンじゃなかったらもうちょっと上にいけましたYO」

 

「味で評価してよ」

 

「とはいえたしかにあやつの評価はパフォーマンス込みじゃったからのう」

 

 さすが地球で炎の魔術師の異名をとってただけあって、リュークさんは備え付けのカマドではなくて、自分の火魔法で調理していたのだ。

 なんか炎自体が固体化して中華鍋や寸胴の支えになっていたり。

 

「あれどうやってたんでしょうか」

 弓槻さんが自分でも再現できないか必死に指をこね回してシミュレーションしてる。

 

「そもそも討伐したモンスターを観客に見えるように運んでくるとか、最初から魅せ方が違ってたもんな。あれはみんなテンション上がっちゃうよなあ」

 

「はー、けーいち様はそこはちゃんと褒めるんですねー」

 

「こやつそういう脇のとこ高評価して後方腕組みライバル顔するとこあるからの」

 

 そんなふうに皆でリュークさんを褒め称えていると「にゃははは」と笑い声。

 

 振り返ればそこにはリュークさんのパーティーメンバーの猫耳女性。たしかイーシャさんって名前だったか。

「うちのリュークに挑むのは少し早かったにゃあね。どうにゃ少年、リュークから特別に差し入れにゃ」

 

 そう言って僕らのテーブルに皿を置いた。黒色のトロ味の付いたソースがかかり、青菜が周りを囲んだ肉の角煮料理。

 主張の強いカレーにも負けない美味しそうな匂いが僕らの鼻をくすぐる。

 

「おおっ。これ、さっき審査員が絶賛してたオーク肉のですよね」

 

「そう、リュークの編み出した必殺のちゅーかコースの前菜『紅焼醤兽(ホンシャオジャンショウ)』にゃ。審査員満場一致の満点評価をくらうがいいにゃ」

 

「相変わらず翻訳スキル通しても、さっぱり分からない料理名ですね」

 弓槻さんがそう言いながらもすでに箸をスタンバイ。

 

「ありがたくいただきます」

 僕らはさっそくオークの角煮料理にとびついた。

 

 ソースが醤油ベースなのはリュークさんの持ち込みみたいだが、驚きなのは肉のとろとろ感。

 

「うわっ、肉がとろけるみたい。霜降りとかそのレベルだよこれ」

 

 調理時間としては全体で1~2時間程度だったろうに、モンスターの解体から始めてなんでここまで柔らかくできるんだろう。

 

「これはありえないですYO! こちらではオークなんて森でとれるブタの代用品なのに。キングオークならまだしも、ただのオークじゃブタより肉が筋張ってるのが当たり前なのに全っ然やわらかですYO!」

 

 さらに言えば添えられた青菜にも味が染み込み、こちらは逆に程よい噛みごたえに調整されている隙きの無さが、さすがプロの手によるもの。

 

 

「ほい、次の料理にゃ。これは『通天雛蛇炒飯(トンティエンジーシゥーチャオファン)』にゃあよ」

 

 あっという間に空になった角煮の皿と引き換えに置かれたのは、中華チャーハン。

 一粒一粒の米が金色に輝きほっくりと粒だっている。

 

「ほふっ、米がすごいふっくらしてます…………肉が二種類入ってて味が違うのが面白いですね。鶏のササミみたいのと弾力あるホルモンっぽいのと」

 

「コカトリスを使ってるっていってたよね。鶏の上半身と尻尾の蛇の部分と両方。米を炒めてる卵もそれだって」

 コカトリスはニワトリの身体と蛇の尻尾を持ち、石化や毒といった特殊能力を持つファンタジー世界のモンスター。

 

「うわー、毒が怖いけど止められないYO」

 

「にゃははは。食材を余すことなく使うのがちゅーか料理の真髄にゃ」

 

 またも即座に空になった大皿を引き上げ、イーシャさんが次の料理を置いていく。

 

 

「『軟包凍四宝(ルァンバオドンスーバオ)』にゃ」

 

 薄い茶色のゼリーにそぼろ肉や野菜が詰め込まれた一品。

 

「煮こごり……っぽいけどスライムなんだよな」

 

 煮こごり。魚や肉なんかの煮汁が冷えるとゼラチン質が固まる性質を利用した料理。だが目の前のこれはスライムをまるごと使った料理だ。

 審査員たちが核を失ったスライムがどうやって形を維持しているのか不思議がっていた。

 

 その辺の理屈はともかく、さっそく箸をさすと見るからに味や風味が凝縮された汁と小さく刻まれた具が熱と共に垂れだす。

 口にいれれば細かな野菜、それぞれの違う味が一噛みごとに湧き出て面白い。

 ほんのりとアルコール分を含んだよい香りも鼻をくすぐる。

 

「これはダイブ欲がそそられますYO!」

 と叫んでチェトさんがゼリーに飛び込んだ。柔らかクッションみたいに身体を埋めて周りにかぶりついてご満悦な表情。

 

 妖精族の不思議パワーで汚れがつくこともないので別にマナー違反というわけではないそうだ。実際審査員の一人にも妖精がいて、何度かダイブが飛び出て司会者が満点評価が出たぞみたいにシャウトしてたし。

 

 ちょっとバケツプリンとか作ってあげたい感があるな。

 

 もちろん僕らの手であっという間にチェトさんのクッションは剥ぎ取られる。

 

 

「『干煸煞耳絲(ガンビィアンシャーアルスゥ)』にゃ」

 

 次はカリッカリになった細切り肉と野菜の炒めもの。肉のコリコリ感が癖になりそう。

 

「野菜はこれ葉ニンニクかの。全体的にきんぴら盛り合わせっぽくて酒のつまみにしたいのう。頼んでいいかや」

 

「昼間からなに言ってんだ」

 幼女がふざけたことを言うのをはねのける。

 

「うまっ、うまっ、うまうまですYO」

 カリカリカリっとチェトさんが抱えた細切り肉を短くしていく。

 ちょっとハムスターっぽさがあって可愛らしい。

 

 流れでいうとこの料理が何のモンスターを食材にしてるかというと、ゴブリンだ。

 

「これがゴブリンの耳なんですねえ」

 と弓槻さんがしみじみ不思議そうに。外見がおぞましいモンスターがこんなにおいしくなるなんてと。

 

「そうなんだよね、意外なことに。ただの討伐証明部位だったのがいきなりお宝になったって審査員が絶賛してたけど」

 

 なんか普通に調理したんじゃ肉の臭みがとりきれないのが、リュークさんの編み出した下ごしらえの技で立派な食材に変身したのだ。

 

 思いだすなあ、初めてゴブリンを討伐して耳をギルドに持ち込んだときのこと。こちらの興奮とは裏腹に、受付のお姉さんは淡々と報酬の支払い手続きして耳はゴミ箱にポイって。

 そりゃ毎日のように持ち込まれるんだから当然なんだけどさ。

 

 でもこれからは冒険者登録したばかりの新人が初めてのゴブリン討伐を成功させ、酒場での打ち上げでこの耳料理を堪能する。そんな光景が当たり前になるんじゃないかな。

 

 感慨深く料理を味わってると、イーシャさんが次の皿を持ってきた。

 

 

「少年はゴブリンの耳炒めがお気に入りみたいにゃね。それじゃあ最後のこれは特別大サービス、審査にも出さなかったゴブリン料理。その名も『一品燴煞脳花(イーピンフイシャーナオファ)』にゃ」

 

 僕の前におかれたのは半円状のドーム型容器。その蓋がカパッと開かれれば中のゴブリンと目が合う。

 

 現れたのはゴブリンの頭部。頭頂部が切り開かれ、中から黄土色の脳みそが見える。

 うわっ……きっつ。

 

「これ……猿脳(えんのう)とかいうやつでしたっけ。」

 中国の珍味。猿の脳みそを軽く味付けしただけのゲテモノ料理。

 一応薬膳的な扱いみたいだがむろん迷信だし、都市伝説的な代物で現代で食べられてることはないはずだ。昔アクション映画で舞台の異国感を出す小道具に登場したのを見たくらい。

 

 でも目の前に置かれちゃってるんだよな…………

 

「圭一さん、これ宣戦布告ですよ。お前の首も狩ってやるぞっていう」

「ちょっ、圭一。ゴブリンの顔を向こうに向けるんじゃ」

「けーいち様、勝てない相手から逃げるのも勇気ですYO!」

 

 ちらっとイーシャさんの方を見るとすっと目線をそらされた。

 

「これはまた……豪快な料理ですね……」

「そっ、そうにゃ。森でゴブリンの特上品(キング)が手に入ったからリュークが特別な一品に仕上げるって言って張り切ったにゃあよ」

 

「さすがリュークさん。いまさらゴブリンの最上位種でもどうってことないんですね。どうやって倒したんです?」

 

「それはもちろん私たちの鉄壁ふぉーめーしょんで…………少年、大丈夫にゃ?」

 

「いや、これ結構イケる……いや、すごい美味しいですよ!」

 軽くさくっとすくってみたゴブリンの脳みそ料理。恐る恐る口にしてみたら意外や舌に感じるのは一瞬の苦味と相反する甘みの広がり。

 

 脳みそそのものじゃなくて、多分内蔵なんかを混ぜてパテにしたものに、薄っすらと生姜仕立てのあんかけをまぶしてるみたい。いや、だったらわざわざこんな外見に整えなくてもと思うけど。

 

「ほら、食べてみなよ。意外と食感軽くて喉越しいいし、締めの料理にぴったりだぞ」

 

 小皿に取り分け皆にも差し出す。

 

「あっ……ほんとだ弾力あるウニみたいじゃ」

「なんか薄っすら魔力が回復するような……これがキングの特色でしょうか」

「けーいち様は真の勇者でしたYO!」

 

 もちろん最後の料理も瞬く間に空となり、僕らは倒すべき目標の力量を思い知らされたのであった。

 

***

 

「ねえ、リューク。ほんとにあの子たちと戦うにゃ? 女の娘の方はとぼけた顔してかなりの魔法の素質があるのがわかるけど、少年の方はあんまり戦えそうにないにゃあ。料理バトルに負けてもニコニコしてるし、覇気がないのはいただけないにゃね」

 

「ノリで言ってただけで本気で料理対決はしてなかったと思うよ。()()()()してただけじゃないかな」

 

「そうじゃの。この馬鹿ネコはあちらで大分盛り上がっとったみたいじゃが、どうせあの童に誘導尋問されてリュークの情報をペラペラ漏らしておったんじゃろ」

 

「むっ、リュークの活躍なんて、ここの吟遊詩人が唄ってるくらいにゃ。レシピはどんどん公開してぎょーかい発展を目指すのがウチの方針にゃよ。ケチケチすることないにゃ。

 ああ、でもあの少年。一品燴煞脳花を顔色ひとつ変えずに口にしてたのはなかなかの勇者にゃあね」

 

「あれか…………主の10回に1回必ずやらかすあのゲテモノ料理をなあ」

 

「あれはあの子たちにお前の首も取ってやるぞ、という宣告ではなかったのですか?」

 姫が素で首をかしげる。

 

「ごめんなさい少年たち。あれを審査員に出すよりまかないに回そうと勧めたのは私です」

 エルフの美女がぺこりと遠くで談笑している圭一たちに頭を下げた。

 

「ええっ……アレ、俺の自信作だったのになあ」

 

「アレと比べれば騎士団の修行時代にサバイバル訓練で蛇を食べさせられたことなどカワイイものでありました。たしかにアレを平然と口にしたというのなら、なかなかの胆力でしょうな」

 女騎士が感心したように言う。

 

「それが圭一君の仕事なんだろう。彼はSPECの職員としてあちこちの異世界に出向いてるからね。出された食事を笑顔で食べるのも、相手に受け入れてもらう、交渉役として必須の能力だよ」

 

 リュークは仲間の竜人に投げかけた。

「ほら、俺たちが君の里を訪れた時、宴席でワイバーンの丸焼きで度肝を抜こうとしだだろ? 自分達は強いからこれくらい常食してるんだぞとばかりにね」

 

「そう根にもつでないぞ。そもそもあのとき里の腕自慢を力づくでねじ伏せたのは誰じゃ? 結局は武闘大会は力こそが全てであろう。あの童は商人や公司(外交員)にはなれるかもしれぬが、我らの敵になるにはちと又足らずであろうよ」

 竜人の美女は己が頭部の二又三尖の角を誇るように言った。

 

「力は否定しない。だが俺たちは前回の大会で思い知ったはずだよ。ここに集った強者はいくつもの異世界から来ているんだ。その能力は千差万別、まったく予想だにしない攻撃に幾度もピンチに陥っただろう?

 

 そして圭一君はあの早百合さんの下で働いているんだ。SPECの中でもトップクラスに多くの異世界に飛ばされているはずだよ。地球とも俺たちの世界ともまったくシステムの異なる世界をいくつも体験してるってことだ。

 

 つまり圭一君は未知に対応する能力は俺たちより遥かに長けてるとみるべきだ」

 

 ひとり真面目な表情で語ったリューク。

 彼を囲んだ女性たちは愛する男に、考えすぎだと苦笑を返した。

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