異世ばと! ※スーパーなろう大戦に作者オリキャラが参戦する話です   作:笠本

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第15話 ダイジェスト:錬金術師VSオンリーワンスキル 他

 

 圭一が初戦である勇者Aとの戦いに勝利した頃、パーラム島の各所でも勇者・冒険者・令嬢たちのバトルが繰り広げられていた。

 


 

天空の城は引きこもるには意外と向いてない ~転移特典にぼっちスローライフ環境を望んだのにスライム娘や竜娘や強欲女商人に押しかけられて毎日が慌ただしい~

VS

スカイ・クローラー ―異世界の飛空艇乗り―

 

 

 九人ずつの少女を背後に並ばせ、少年二人が顔を突き合わせる。

 

「よう、お前どこ出身よ」

 

「俺は『ファイナル・フロンティア』の世界だ。そっちは?」

 

「俺は『DSQ』の世界だぜ。それじゃあ話は早いな」

 

「ああ、どっちが強いかさくっと方を付けよう」

 

 そして少年たちの鍛えあげたスキルと築いてきた仲間との絆が、いま――――ぶつかる!

 

      「「ステータスオープン!!」」

 


 

異世界サバイバルグルメ ~一口食べるとすぐ種族変化~

VS

欠陥セーブスキルの復讐者

 

 

「アオオオオオオオオン!」

 羽の生えた数メートルサイズの巨大な狼。飼い主にガウ太と呼ばれたその獣は名前に似つかわぬ荒々しい咆哮を上げた。

 その足元には少年と少女。

 

「アレス、まずいよ。ココルがさっきの二人に追い詰められたって。反攻に出るって言い張ってる」

「くそっ、戻るにはこいつをどうにかしないと。頼む、ココル持ちこたえてくれ」

 

――――彼らから数百メートル離れた草地。

 

 一人の少女を囲む数十匹のトカゲ。いや、二本脚で立ち上がり、開かれた巨大な顎部に並ぶ無数の鋸歯上の歯。その姿は小型の肉食恐竜のものであった。

 

「えっとお嬢ちゃん、ルールは分かってるのかい? オーブを持ったお仲間はガウ太と追いかけっこしてずっと遠くにいる。つまりお嬢ちゃんは持ち前の魔法もスキルも使えないってことだ」

 

 そのトカゲを尖った爪と毛皮で覆われた手を振り、舌打ち音を出して使役する男。

 統率の取れた動きでトカゲたちは少女の周囲を周り、徐々にその輪を小さくしていく。

 

 追い詰められた形の少女、ココルは首を振る。

「私はスキルには頼ってない。私が授かった天与スキルは欠陥品。それがアレスと私たちとの結びつきだから」

 

 言うや少女は剣を手に、舞うように一回転した。彼女を囲んだトカゲ数匹が同時に血を吹き出し地面に倒れた。剣さえあればオーブなど関係ないと示した。

 

「わお、すごいねお嬢ちゃん。おじさんはこれで料理研究が本職でさ。うん、剣では勝てそうにないかな。でも気をつけてな。計算上そろそろ影響が出るはずなんだ」

 

「なに?…………えっ、これは!?……なに!?」

 ココルの剣を持つ手。その甲が変質していく。白い肌が濃い緑色へと。さらに表面が硬質化して鱗状へと。

 

「さあそれじゃあルール説明の続きだ。今この100メートル圏内は俺たちの世界のシステムが機能してる。そして俺たちの世界の独特(ユニーク)は "自分より上位の獲物を殺して食べるとその因子を含んだ種族に進化する" だ。具体的に言えばこのトカゲを倒し続けるとお嬢ちゃんはリザードマンに進化するってわけだ」 

 

「うふふっ。ちなみに私のこの身体は竜蛇(メリジューヌ)っていうモンスターを喰らって手に入れたわ」

 男の隣に立つ美女。その下半身は蛇のそれ。背部には小さな竜種の翼が折りたたまれている。

 

「なぜ!? 私は倒したけど食べてないっ!」

 

「うん、可愛らしいお嬢ちゃんにしてみればいきなりトカゲ人間になるなんて言われたら怖いよね。実はこの独特(ユニーク)はほんとはオーブを10メートル範囲にしないとまともに働かないんだ。

 

 ならなんでオーブを100メートルに広げてるかっていうとだ。俺たちの独特(ユニーク)の再現度が下がれば当然ここのイクセール世界のシステムが入ってくることになるだろう。そしてこのイクセール世界ではモンスターを倒せば経験値としてレベルを上げることができるそうだ。

 

 つまりね。俺たちの世界のシステムと相性がいいのさ。食べずともその因子を取り込めることができるってわけ」

 

 自分たちのシステムの効きが悪くなろうと、舞台であるイクセール世界のシステムが混ざるメリットを説明した男。

 

「…………そう。さっきはアレスのオーブの圏内だった。私たちの世界のシステムも働いてたからトカゲを倒しても進化とかはなかった。そういうこと?」

 

「理解が早いわね、そうよ。ちなみに違いが分からないでしょうけど、すでにこの辺りのモンスターはあらかたテイムしてランクを上げてある。何を倒してもあなたは()()()()()()()のよ」

 

「でも心配いらないよ。その程度の変化なら進化は確定してない状態だ。今すぐ俺たちの独特(ユニーク)から離れればその内に元に戻れるだろう。だから大人しく降参――――」

 

 少女が再び剣を振るい、残ったトカゲを屠る。先程よりも俊敏な動き。

 少女の変化もまた進む。肌の色と鱗への変質が広がり、瞳は鋭く金色へと。額には小さな白い突起が生じる。ブーツの先端からは黒光りした爪が突き破った。

 

「あなた分かってるの!? 私たちみたいな進化が当たり前の世界じゃないでしょ! そっちは獣人すらいないんでしょう! そこまで姿を変えようっての!?」

 

「だってこのトカゲを倒せば私もあなたたちみたいにモンスターの力を手に入れられる。そういうことでしょ。それに私には【人化】スキルがある」

 

 少女剣士ココルは自分の所有スキルが【人化】であると口にした。

 

 彼女の世界はかつて邪神に滅ぼされかけた。それを救ったのが創造神たる女神によって異界から召喚された勇者タナカタカシ。二年間の冒険の果てに邪神を滅ぼした彼は元の世界へ帰還した。そのときに彼が所有する100のスキルは世界へと還元された。

 以来、ココルの世界では子供は成長の過程で100のスキルのいずれかを授かることになった。【片手剣】や【火魔法】などどれも有用なスキル。

 だが僅かに欠陥スキルと評されるものが存在する。それは時代や環境が整わずに効果が発揮できなかったり、単体では意味のないスキル。

 

 その代表例がココルの【人化】スキルであった。

 本来は勇者タナカタカシのように【竜化】【獣化】【TS化】スキルによって変化した身体を元に戻すためのスキル。

 

 まず変化できなければ使い所のないスキルであったのだ。

 

 だがその欠陥スキルは今、意味を持った。異なる世界の仕組みにより人外へとその身を変化させたのだ。

 

「ずっとこういうチャンスを待ってた。私を人外へと変えてくれる方法。本当はドラゴンを倒して肝を食べつもりだったの。遠い道のり。それがこんなところで叶うなんて。あなた達に感謝」

 

 少女が「人化」と唱えればすうっとその身は元の白い肌の細身の少女のものへと戻っていく。だが「解除」と少女が続ければ、またもモンスターの特徴が表に出てくる。

 

「はっ。まさかそんな相性がいい独特(ユニーク)があったとはね。まいったな。君がモンスター化を厭って逃げるもよし、完全にモンスターと化してこちらの制御化におくもよし。そういう作戦だったのにな。初戦でこれは運が悪いよまったく」

 

「そう、運命。私が欠陥スキルを授かったのも、家を追い出されたのもアレスと出会うため。あなたたちが私をモンスターに変化させてくれたのも、アレスを助けるための運命」

 

 言いながら少女は遠巻きに残るトカゲに向かっていく。男が散開を命じるが、モンスターの力を得たココルはその全てを逃さずに仕留めた。さらに獲物の力と姿を自分に取り込む少女。

 

「覚悟ガン決まりかい。はあ……それじゃあ仕方ないね」

 男は肩をすくめながら懐から何かの干し肉と小瓶を取り出す。だがそばの女性が彼を制して言った。

 

「その前にその乙女心にアドバイスをあげる。進化中の今って全身の血が沸騰してるみたいでしょ。そしたらその熱を胸に集中させるように意識しときなさい。そこ、かなり()()()わよ」

 

 下半身を蛇と化した女。その胸部もまた鱗が下着のように一部を覆い隠している。そのサイズはまさに全長の大きさに見合った、いやそれ以上の脅威的なものであった。

「種族がどうとかより、結局のところ男が気にするのはここよ」

 

「それ、有効と確信」

 少女がそれまでにない真剣な表情で意識を集中させれば、身体の進化は一気に進行した。その結果を見て触れて、少女は歓声を上げる。

 

「う、うわあ……なにこれ、まさに超絶進化!……アレスはむっつりだからこれはとても有効じゃん。すっげー! おしゃべりメガネにも勝てる! ひゃほー! まさに運命の出会い! あなた達に感謝、感謝!」

 

「なんかこの娘、キャラ変わってない?」

 

「そんじゃ男の俺からもアドバイスだ。女はやっぱか弱い方がグッとくる。間違いないね。隙あらば男に喰い付こうとする女は頂けねえ。だからさ、ここはおじさんに倒されとこう。そうすりゃさっきの少年が優しく慰めてくれるだろ。そこに涙の一つも浮かべて縋り付く。男はそういうのにコロっときちゃうんだぜ」

 

「だめ。アレスはそんなに強くないから。私があなたを倒さないと」

 

「ああ、あなた男は囲ってあげたいって思うタイプ? 気が合うわね」

 

「爬虫類系の女ってこれだから怖いぜ…………あんっ?」

 

 視線を足元に落とす男。黒い鉤爪ががっしりと掴んでいた地面。たった今まで固かったそれがぬかるみ、男の身体が沈んでいこうとしていた。

 

「あんた! 逃げ――――」

 叫んだ女性。だが次には彼女自身がバランスを崩し、地に倒れる。

 

「おいっ!?」

 伸ばした手を互いに掴んだ二人だが、そのまま土の中に呑み込まれていく。必死に態勢を直そうと足掻くが、逆に沈降が進んでしまう。

「がっ……くそっ!? 何だこいつは――――」

 

 彼らが倒れるやすぐさま数メートルを跳躍してそばの岩山の上に逃げた少女、ココル。

「これは…………泥……沼?……に呑まれた?」

 

 眼下の地面は彼女がいま立っていた場所を含めて沼となり、二人の男女のみならず、そこにあった草から石から全てを地中に納めていた。

 だが地面のぬかるみはまたたく間に乾き、水分を失っていく。

 そこにはまるで最初からそうであったように、円状に何もないスポットが残った。

 

 いったい何が起こったのか分からずに首をかしげた少女。だが遠くから仲間たちの戦いの音が聞こえてきた。

 

「えっと……合掌」

 少女は手を合わせて一礼をすると、自身の変化したボディラインに触れて満足げな笑みを浮かべると、遠方の仲間たちに向けて跳躍した。

 


 

曹操の六十四男です この度はクソ親父の後始末のため皇位簒奪を決意しました

VS

工業高校生は異世界でも技術チートで突き進む ~美味しいパンが無ければ窒素固定と顕微鏡とあと諸々作っちゃえばいいじゃない?~

VS

田中帝国興亡史 女帝アナスタシアの章

 

 

「全砲門一斉掃射!」

「はあ? 薫子、これ主砲しか使え無いじゃん!」

「ノリだよノリ!」

 

 ジャージ着の少女たちが乗り込んだ車体。上部から生える人型の石像。あるいは鉄像か。その腹部に据え付けられた大砲が衝撃すら感じられる轟音を響かせた。

 

 少し離れて少女たちの右側に並んだのは揃いの軍服を着た一団。彼らを率いるのは長い金髪をベレー帽に収めた愛菜星幸(アナスタシア)姫。

 彼女は大砲が打ち込まれた方向に指揮棒を向けて叫んだ。

 

「どうした、貴様らは偉大なる始祖皇帝陛下が設立した田中帝国陸軍第一空挺部隊であるぞ。民間人に負けることなど許さぬ!」 

 

 将の激に部下たちは手にした短槍を掲げ応える。

 

 彼らが手から放出する魔力が、杖に螺旋状に配された細粒状のクリスタルを巡り、先端に取り付けられた刃先で結実する。膨らんだ火球が拭きガラスのように杖の先に生み出された。

 

「目標、友軍の弾着位置より三時にポイント5ずらせ! 退路を塞ぐ。私に続け! 切り離し(パージ)!」

 小隊のリーダーたる短髪の女性が叫び、槍の向けられた先に向けて火球が連発される。

 

 両陣からの雨あられの攻撃。対象がいまだ健在なのは彼らが逃げ込んだ先にたまたま空いていた地割れがあったこと。いわば天然の塹壕に身を潜めているのは、わずか三名。

 

 その一人、黄金色のチャイナドレス黒髪美少女がけらけらと笑う。

「いやあ開始早々やられちゃったね☆ まあお姫様とゴーレムタンクにタッグを組まれたらしょうがないよね☆」

 

「若、申し訳ございません。我らが揃って露払いすら果たせぬなど」

 歴戦の戦士という感の髭面と顔傷の男が悔しそうに言う。六人いた彼の仲間たちは守るべき長と美少女皇帝を残し、早々と砲弾と火魔法に討ち果たされていた。

 

 対してリーダーたる2メートルになる長身体躯の青年、永淳(えいじゅん)は歯をむき出しの笑顔。興奮に身を震わせていた。

 

「くっくくく。いや、そうか。あの火砲という武器の前には密集隊形なんて的にしかならないんだな。ああ、そうか、これがあんたが孔明ママと開発を進めてる木獣兵団。その到達点なんだな」

 

「若?」

 木獣と聞き、部下は脳裏に思い浮かべる。かつて戦場で目撃したグロリアル帝国軍師たる孔明が開発した木製の獣の張り型。

 先年に攻めてきた木鹿女王(褐色アマゾネス)との戦いに投入され、敵も味方も困惑するなか、車輪で移動し火を吹くことで女王が飼いなら(テイム)した魔獣を威嚇し撃退した秘密兵器。

 

 だが所詮は奇計の一つ。火計にしては手間がかかりすぎて、魔獣だけならばともかく、人を相手に二度も通用する手ではない。部下はそう捉えていたが、永淳の親である曹操・ノ・グロリアル皇帝の反応は違った。

 

「おやあ、何で極秘計画を知ってるのかな? ジュンちゃんってば、もしかしてパパの書斎に入り込んだのかな? さてはエッチな艶本でも探してたなあ☆」

 

「種馬が今更んなモン持ってないでしょうが。それよりもだ、あんたはあの両軍を見たときから、こうなることを分かっていたな。あれの前に俺たちの戦い方など通用しないと」

 

「んっふー、そうだよ☆ タンク娘ちゃんの大砲とアナスタシアちゃんの用兵術がパパが孔明ちゃんにおねだりしたものさ☆」

 

「若、いったいあの獣の張り型がなんだと言うのですか?」

 

「獣は関係ないな。肝心なのは火薬だ。ただの火の何倍もの力を生み出す丹薬。

それを使えば石人形のように直進して爆発する投石機になる。小さくすればアナスタシア姫さんの仙術団だ。

 そしてだ。その威力は純粋に武器の力だってことだ。これがどんな意味か分かるか?」

 

「若っ!? まさか、あの火筒の強さは紋章の有無に左右されないということですか!」

 

「そうだ。将が持つ紋章は兵の膂力や脚力を上げることができるが、武器そのものが強化されるわけじゃない。つまり祝星(しゅくせい)が降らない俺たち平民でも紋章持ちに対抗できるってことだ。それが五年後の戦いの主流になるはずだ。」

 永淳は父親の手の甲に浮かんだ赤い紋章を見ながら言った。

 

「はーん、これは孔明ちゃんが探ってた火薬盗難の犯人が分かっちゃったね☆」

 子供のつまみ食いを見つけたかのような父親の苦笑い。息子は何ら悪びれることなく続けた。

 

「いいか、俺たちがここですべきことは試合に勝つことじゃない。このくそ親父から皇位を簒奪するための力を得ることだ。だからこそあの姫様と姑娘たちを()()()()。彼女らのこれからの戦いを観察しろ。あれが紋章を持たずに生まれてきた俺達が目指す道になる」

 

 目の前で口にされた反意。だがグロリアル帝国初代皇帝たるチャイナドレス美少女はケラケラと笑う。

 

「もー、ジュンちゃんてば反抗期が過激だなあ☆ まあパパも嫁取りがかかってないバトルだとあんまり真剣になれないからねー。ここはひとつアナスタシアちゃんたちの好感度稼いどこっか」

 

 そこで攻撃が止んだ。敵が次なる攻勢に移るであろう証。

 その間隙をつき、彼らは武器を構え地の割れ目から飛び出した。

 

 


 

皇帝ハルトの理想都市 ~大陸統一のご褒美に全種族をあつめて街まるごとハーレム築いてみた~

VS

外れスキル『努力』はひらめき一つでチートへと昇華する!

 

 

「フレー! フレー! ハルト陛下ー!」

 ケンタウロスの少女が馬体を後ろ足で立ち上げて、ボンボンを高く突き上げた。その横にいる狼人女騎士やラミアや痴女メイドたちも声援を送る。

 

 それを手を振り応えるのは彼女たちをハーレムに囲うガエリル帝国第13代皇帝ハルト・シュヴァルツ。

 

 対するは剣を構えた少年カッセル。その背後に立つ彼の仲間の少女たちも相手パーティーに負けじと声を張り上げた。

 

「ご主人ー! そんなハーレム野郎に負けるなっす! ハーレムとかクズのやることっすよ。ご主人わかってるっすかー! 反省するっすよー!」

 と豹の獣人少女。

 

「カッセル様ー! ハーレムは数ではなく質です。我が両翼のふあっと柔らか至高の包まれ感はオンリーワン。すなわち我らの勝利!」

 そう言って背中の純白の羽を広げた翼人の少女。

 

「認識エラー。応援とは対象の精神状態を高揚させるためのリズムの発生及び声かけ。君and貴様のフレーズはマスターの1:N関係に対しての自論をオープンしている」

 無表情に、首を動かすことなく頭部だけをかしげてみせた女性型のゴーレム。

 

 少女たちの声援に苦笑を漏らした少年は目の前の男を見上げる。

 すでに一当てした二人。少年の攻撃は皇帝にはまったく通用しなかった。必死に剣と魔法を放ち、周囲を駆けずり回り土にまみれた少年。対して皇帝ハルトはここまで剣を抜くことすらしていなかった。

 

「剣も魔法も話にならんな。だがまさかそれだけの美少女を連れた男がその程度ではあるまい? さっさと切り札なりを出してこい」

 

 セリフだけなら格上感を出しながら、視線はさきから少年の背後の美少女たちに向けていて、口元をニヤつかせている皇帝ハルト。

 

「ご主人! アイツ目がイヤラシイっす。さっさと倒してくださいっす!」

 

 仲間の声に応えたのか、少年は改めて剣を構えると言った。

 

「ああ、それじゃあ見せるとしよう。俺のとびっきり。【努力】スキルを」

 

「努力? それは聞き慣れんスキルだな」

 

 そこへ皇帝の陣営から金髪褐色ギャルが叫んだ。

 

「ハルっち、私 知ってるよ! そういうのほんとはスゴい強いスキルなんだよ。例えば努力をし続けられるスキルとかでさ、結局すごいレベルになっちゃたりするんだよ。あっ、あと努力の効果が100倍になっちゃうとか。絶対舐めない方がいいよ!」

 

「へえ、よその世界の努力スキルはそんなに恵まれてるのか。心配しなくても俺の努力スキルの効果は常時発動(パッシブ)で『あらゆる努力の取得経験値が1/10になる』だ。努力を強いられるスキルさ。実際俺の剣術も魔法も10年かけてるが大したことはなかっただろ?」

 

「なにそれ、外れスキルじゃん」

「ほう、それは()()()スキルだな」

 

 ギャルと皇帝が真逆の評価。

 

 少年はその評価を聞いて、少し驚いたような顔でにやりと笑った。

 


 

小さな錬金術師の隠れ家工房 ~目立つとヤバいので王都の外れでひっそり営業中です!~

VS

オンリーワンスキルの創造主

 

 数人の少女に取り囲まれ、膝をついてシクシクと泣き声を上げる少女。

 敵対する多数と一人。一見するとすでに勝敗がついているようだが、表情を歪ませ、青ざめさせ、慌てふためかせるのは取り囲んだ少女たちの方。

 

「うわーん妖精さーん、このお姉ちゃんひどいんだよ! 私の召換オーブを割っちゃったのー」

 

 周りの数名と比べるといくらか幼い少女が、そばに転がる破壊された召換オーブを指差し担当の妖精に訴える。

 

「たしかに、これはNAROU規定 第一条【相手パーティーのオーブを破壊した者は失格となる】に該当するんだYA」

 

 妖精の判定に一人の少女が一歩前に出て反論する。

 

「違います! このガキは偽物のオーブをいくつも用意したりして! こんな悪質な挑発行為は無効でしょうが!」

 

「ええー、違うよねお姉ちゃん、私はどっちが本物のオーブか分かるかなゲームを持ちかけただけだよ。わざわざ外れだと思ったほう壊さなきゃペナルティだけですんだのにね。そんなにドヤ顔を披露したかったのかな? 前世カエルなのかな?」

 少女が泣き顔から一瞬で相手を小馬鹿にする邪悪な笑顔へと変化する。

 

「くっ……」

 だが周囲の少女たちの方は何も言い返せずに唇を噛むだけ。

 

「直してやろうか? そうすりゃ第一条は無効だろ」

「えっ? お兄様?……」

 その輪を割って入ってきたのはそれまで静観していた彼女たちのリーダーたる少年。

 

「あれ? そんなスキルも生み出せるんだ?」

 

「まあそのオーブくらいなら可能だろうな。…………話が違うか?」

 

「んー、何のことかなお兄さん」

 

「お前は俺の『我が右手に世界は宿る(ウェルト・イスト・アイン)』が使い捨てのスキルを生み出すスキルってことを知っていたな。それはいいんだ。そう広めていたからな。だけどお前は例外事項まで把握した上でこの状況に持ち込んだ。()()()()()?」

 

「ええー、ただの山勘だよお…………ってのは通じないか。でもごめんね、クラアントの情報は流せないかな。ほら、わたしって錬金術師だから。この稼業って誠実がモットーなんだよね」

 

「まあいい。お前の要求を言え。何のスキルが欲しい?」

「お兄様! こんな小娘になんで!」

 

「それじゃ遠慮なく。オーダーはずばり『****』、能力は――――――で」

 

「はっ、レシピまで用意済みか。とはいえそのセンスは好きだぜ。お前さんの趣味じゃないよな…………クライアントって奴に会ってみたくなったな」

 

「うーん、それはどうかな。少しだけ漏らしちゃうけど、あちらはお兄さんと戦ったら負けるって確信してたみたいだから逃げちゃうんじゃないかな」

 

「そうか」

 と答えながら少年は右手を錬金術師の少女に頭部にのせる。淡く光だす右手。

 

 やがてその光が収まれば、少女はまるでおやつでも貰ったような朗らかな顔を見せる。

「うわーい、お兄さんありがとー。――――ってことで妖精さん、私のオーブは実は自分で壊しちゃったの。ごめんね、てへっ」

 

「えっ、あっ、はいですYA」

 

 周りからの憎々しげな視線などものともせず、錬金術師の少女はあざとい笑顔。

 

 その背後で占い師装束、ゆるやかなローブ姿の美女が泣き声をあげた。

「うちの子がずみまぜええん」




 歴史と技術チートと戦記にはここで相打ちで退場して欲しかったのですが。うまくいかないものですね。
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