異世ばと! ※スーパーなろう大戦に作者オリキャラが参戦する話です   作:笠本

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第4話 白銀の星――――参戦!

 

【NAROU開催の異世界:イクセール】

 

 ゲートを出るとそこは異世界の街中だった。

 石造りの土台に数階建ての木造建築が並んだ大通りを、エルフやドワーフや獣人、様々な種族の多様な格好の人たちが歩く。

 

 通りの商店の軒先には野菜や果物が山盛りに。調味料なのか魔女の鍋の具材なのか怪しげな香料やトカゲの乾物も。

 むき出しの土からの匂いと合わさり、強い異国の香りが鼻を刺激。

 

 一分前にいた現代日本の近代施設では感じなかった生活の熱量が、ここが異世界だと教えてくる。

 

 そんな周囲の雑踏を見回しているとすうっと何かが目の前に飛びこんできて、甲高い声があがった。

 

「はーい、その格好、チキュウからお越しのけーいち様ですかー?」

 

 僕らの目線の高さに浮かんでいるのは背中に蝶みたいな羽根の生えた妖精。手のひらに乗るサイズで青いワンピースを着て、金色の髪には黄色の花輪を飾り。見るからにおとぎ話の住人。

 

 愛らしい表情で陽気をふりまきながら、その妖精はもう一度僕の名を尋ねた。

 

「パーティー登録No.100番の星の白銀(シルバースター)のけーいち様?」

 

「うん、そうだよ。僕が真上圭一。えっとここに来れば案内の人が待ってるって聞いたけど君が?」

 

「ハイ! 私は皆さんの案内役(ガイド)を務めるチェトリオーロって言います! 気軽にチェトって呼んでくださいYO!」

 

「そっか、よろしくね、チェトさん」

 

 その妖精、チェトさんは僕らを見回して小さな首をかしげた。

「えっと……三名様だけ? あれ、星の白銀(シルバースター)は五名でイケメンの騎士様がいると聞いていたんですが?」

 

 なぜこっちを見て疑問顔をするのか。こいつじゃないよなあ、って表情。

 まあどういう伝わり方をしてるかはだいたい分かる。

 

「レオンのことだね。そいつ含めて後から二人来るよ」

 

 どうも分かってるのは僕の名前だけのようなので、そのまま背後の二人を紹介。

 

「こちらは弓槻さん。見ての通り魔法使い」

 お気に入りの普段使いしてる黒のブレザーは現代日本の裁縫だけど、マントと三角帽子は異世界仕立ての古めかしい魔法使いのスタイル。

 首にはマフラーみたいに黒猫が巻き付いている。

 

「弓槻です、よろしくお願いします。ところでチェトさん、ものの本によれば妖精の鱗粉には人を浮かせる力があるとか。私、飛行魔法に大変興味がありまして。ぜひその力を見せていただきたく」

 

 手をわきわきとさせながら迫る弓槻さんにチェトさんが「鱗粉ですとお!」と憤慨しながらも距離をおく。

 

「やめなさいって。それで、こっちの子供はファム」

 

 僕が引っぱる旅行用カートの上にちゃっかりと座り込んでいる銀髪の幼女。

「ふむ、妾はファムじゃよ。よろしくの。ちなみに職業(クラス)はセカの伝道師じゃよ」

 

 幼女はそういってローブの内側から黒色の携帯ゲーム機を取り出した。

 

「世界一のゲーム会社セカの素晴らしさを世に知らしめ、啓蒙する仕事をしておるんじゃ」

 そう言って誇らしげに掲げられたゲーム機の横には『SECA』の文字。僕の叔父さんが愛してやまないゲームメーカーに()()()()ロゴ。

 

「このSECA社は昔からハイセンスでとんがったゲームで人気を博しておってな。こちらの世界で業界トップシェアを誇るゲームメーカーなんじゃ。それもソフトとハードの両方がトップクラス。なんと世界の歴代ゲーム売上TOP100の内、実に73タイトルがSECAハードで生み出された名作なんじゃよ。まあまずは妾が厳選した名作アーカイブを体験してSECAの素晴らしさを知って―――もがっ」

 

「お前はいきなりMクラス(中世相当)異世界に精密機器を取り出すんじゃないよ」

 僕はいつものファムの暴走を止める。

 

「いえ、以前の参加勇者の方々からそういうものがあると話は聞いておりますので」

 

 たしかに起動させて音や映像が流れれば目をひくだろうけど、電源を切っている今はただの金属の箱。妖精さんはさらっと流した。

 

「ところでリーダーのけーいち様が騎士でないのでしたら、ご職業(クラス)は?」

 

「雑用係だね。派遣された異世界で宿の手配から掃除洗濯に料理まで。時には辻小話で路銀を稼いだりもするよ」

 

「えっ、あの? これから一騎当千の無双者によるバトルロイヤルが開かれるのですが? ああ、ニホン出身の方が得意の謙遜というものですね。ほんとはドラゴンとかフェンリルとかさくっと倒して『えっ、こんなの雑用でしょ』とか言っちゃうんでしょう?」

 

「最近ようやくゴブリンなら一人で倒せるようになったとこ」

 そう告げると、こいつ何しに来たんだ? ってな表情が返ってきた。僕もそれは思う。

 

「…………あっ、なーんだ。けーいち様、そのゴブリンって将軍(ジェネラル)ゴブリンとか(キング)ゴブリンだったってオチですね」

 

「普通の、ノーマルの、駆け出し冒険者が倒すゴブリン」

 

「その最弱のゴブリンが1000匹くらいスタンピってきたのを一人で無双しちゃう系?」

 

「二体までならなんとか同時に戦えるかなあ」

 

「はーん、さてはそのゴブリンを仲間にしちゃって可愛くって強いモン娘に進化させちゃうんだ。なんだもー、けーいち様ってばそんな美少女連れといてさらに取り巻き増やしちゃ……うんだよ……ね?」

 

「………………」

 そんなわけない。

 

「何しに来たんだYOー!」

 

「僕が聞きたいよ! 普通そういう反応だよね。なんでバトルロイヤルに魔法もユニークスキルも持ってない一般人の僕を放り込もうとするんだよ早百合さんは。あの人いかにも教師みたいな格好しといて、絶対教育とか向いてないよ。窮地に追い込めば人間成長するでしょとか暴論すぎるんだよあの人! 玲和(れいわ)だよ今!」

 

 今まで早百合さんに受けた仕打ちの数々が浮かんできて、思わず叫んでしまった。すると妖精さんが反応。

 

「えっ、けーいち様。そのさゆりさんとは、もしかしてあのさゆり様のことで?」

 

「どの早百合さんか分かんないけど、金髪メガネ美人のトラブルメーカーなら早百合さんのことだよ」

 

「ええええっ!?」

 何に驚いたのかチェトさんが8の字に飛んで衝撃を表現。

 そこへ横合いから声がかけられる。

 

「おい、お前たち。見ない顔だがよそ者だよな。だったら俺たちに挨拶するのが筋だぜ」

「そうさ、モーブル団なめんなっす」

 

 なんだこいつら。

 そこに居たのは僕と同じくらいの年頃の少年少女。ガタイはいいが目つきが悪い不良めいた少年と、細身で短髪の少女。

 

「きゃー、けーいち様。こいつらこの街を仕切ってるヤクザものですYO。ザゴール団っていう恐喝から盗みに殺人までなんでもありの悪の朝市。こわーい」

 

 チェトさんが僕の頭の後ろに隠れる。

 

 異世界に着くなりいきなりチンピラに絡まれてしまった。

 

 助けを求めて周囲を見回すと、道行く人達はこちらの様子を伺っているけど止めようとか、騎士団とかに通報しようという動きすらない。

 むしろこちらを興味深げに見てる感じ。

 

 よくあることなのか。

 

「仕方ないな。僕がでるよ。こういう時のために準備はしてたんだ」

 

「おおっ、頼もしい言葉! けーいち様ってば実はあれですね。普段は弱いけどピンチになると秘めた力が解放される系だったんですね。やったれやったれ!」

 

 シュッシュッとパンチを繰り出してるチェトさんを置いて不良の二人に近づく。身構えた彼らの手を握る。

 

「いやあはじめましてー。ここを仕切ってるザゴール団の方ですね。これ、お近づきの印です。何かあったら頼らせていただきますね。それじゃあ」

 と、渡す物を渡して、にこやかに挨拶をしてすぐに離れる。

 

「おっ、おう。そうか、分かってくれるか」

「へへっ、ありがとっす兄さん」

 

 手を振って返す二人。

 

「まあざっとこんなもんだよ」

 と、皆のところに戻れば。

 

「なにやってんのけーいち様! なに普通に守料(付け届け)渡してんだYO!」

 

 妖精さんに鱗粉で攻撃された。

 

「うわっぶ。…………いやだって、僕の仕事がそれだからね」

 

「悪に屈する仕事なんてないですYO! 悪党はぼっこぼこにするのが勇者様でしょー」

 

「けっこう大事な仕事なんだけどなあ……」

 

 僕が受け持つのは異世界で初めての土地に行ったら(まあほとんどの場所がそうなんだけど)、地元のヤクザ組織に金を渡して身の安全を保証してもらう交渉。

 

 中世相当の異世界では警察みたいな組織がない土地が多く、治安維持をヤクザが担ってたりする。あるいは門番とか衛兵がちゃんといる場合でも、彼らが普通に賄賂を要求してくるのだ。

 

 そういう異世界に冒険者とか旅人とか巡礼者とか、それっぽい身分で訪れる僕たちは地元のヤクザとか顔役とか悪徳衛兵に挨拶しとかないと身の危険があるのだ。

 

 というよりも、どうせ早百合さんとか何かしらトラブル発生させるんだから、こうして地元のルールに従いますよってアピールしとかないといざという時に土地の人間が即、敵に回るからね。

 

「だいたいソロのチンピラならともかく、ヤクザだと後から上の人間が出てきて厄介なことになるから、その場でやり合うようなことはしないよ。潰すなら地元の人にバレないようにしとかないと後々しつこいしね。まあこれが弓槻さんとか女性陣が絡まれたんならすぐにボコるけどさ。弓槻さんが」

 

 相手したのが僕で命拾いしたね、アイツら。

 

「あれ、待ってけーいち様。いまあいつらに渡したのって100マトル硬貨?」

 

 彼らが手にしているのは小さな銅貨。

「そうだよ。あらかじめここのお金はちゃんと用意しといたから」

 

「あんなんパン一個も買えませんよ!?  酒場の給仕じゃないんだから、ヤクザものにあんな小銭でごまかそうなんて、ブチ切れてきますYO!」

 

「大丈夫でしょ」

 ほら、あの二人。なんか安心した顔で去ってこうとしてる。

 

「僕らの格好見れば他所から来たこのバトルロイヤルの参加者だって分かるよね。あの二人、僕程度に怯えてたからね。普通にいけば参加者には勝てないって思ってるんだよ」

 

 僕が例外的なだけで、仮にもバトルロイヤルの参加者が弱いはずないもんな。

 

「明らかにいまの二人はザゴール団の下っ端でしょ。ヤクザ者としてよそ者に舐められる訳にはいかないから、内心イヤイヤで絡んできただけだよ。

 

 街の人の前で顔だけ立ててあげたら、見るからにほっとしてたもの。まあ戻ったらボスに叱られるかもしれないけど、その頃には僕らもう大会参加者用の宿とかにいるんだから大丈夫だよ」

 

 さすがにこっちは招待された側なんだから、ちゃんと安全なところに泊めてくれるはず。

 

「ええっ…………」

 

「どうです。これが圭一さんの特技ですよ。毎回限られた予算でちゃんと保証を取り付けてきますからね」

 

「ほんにな。ほら、妾たちだと隠しきれん高貴さが邪魔して『ほんとはもっと金あるんだろ』とかしつこくせびられるとこじゃが、圭一だとしょぼすぎて逆にメシご馳走になって帰ってきたりするからの。あれは他のメンバーでは真似できんのじゃよ」

 

「君たち……」

 弓槻さんとファムが僕を称賛? まあそんなんやっても、ぶち壊してトラブル引き起こすんだけどな、君たち。

 

「ええ……勇者様のお披露目があ……ほらほら、他の参加パーティーなんかはもっと華麗にさくっと片付けてますYO」

 妖精さんが離れた所を指差す。そちらでも何やら騒ぎが起こっていた。いや、また反対側の方でも。

 

 現代地球の服装をした青年が柄の悪い男を蹴り飛ばしてる。

 別のとこではドレスの女性を囲む騎士たちが剣をヤクザに突きつけてる。

 

「なんだ? 服からすると参加者っぽいけど…………あっ、騎士にボコボコにされた。あれ、あっちでも何か土下座させてるし……どうなってんだ?」

 

 もしかしてこのザゴール団って律儀に参加者みんなに絡んでってるのか。いくら地元を仕切ってるからって、見境なさすぎない?

 

 

***

 

 

パーティーNo.001

 

 椅子に両手足を縛りつけられ目隠しをされたザゴール団の団員。

 

「ふむ、つまりあなたがお嬢様に絡んできたのは、あえて反撃されるためであったと。それであっていますか? イエス、ノーで答えなさい」

 

 団員を囲むのは執事とその孫であるヤンキーメイド。

 

「イエス! そうだ、ここがNAROUの舞台になったから、浄化作戦だって俺たちは捕まって。それで命じられたんだ。あんたら勇者に絡んでってその力試しの的になる仕事……というか一種の儀式なんだよ。勇者の規格外の実力を披露するっていうな。それで生き残ることができた奴は減刑してもらえるんだ。なあ、頼む。車椅子を壊しちまったのは謝る。どうか命だけは!」

 

 団員の言葉と共に椅子の横についたモニターに表示された波形が波打つ。

 

「ふん。イスミ様の判定では嘘は言っていないようですね。ですがお嬢様を怯えさせた罪は万死に値します。イスミ様、次はデンキ椅子をお願いいたします」

 

「あー、それよかいいのがあるぜ爺ちゃん。おう、イスミ。まえ私が虫歯になったときのあの拷問椅子におなりませよ。私がじきじきにこいつにお仕置きしてやっからよ」

 

 そして瞬時に尋問用の椅子が白い大きな革張りに変化する。

 目隠しをされたまま。背もたれが水平に下げられた椅子に寝そべった形のザゴール団員。

 金髪メイドが椅子からコードが繋がった金属のドリルを作動させた。

 

「ブィィィーン」と小さくも高い音が発生する。

 

「何をするんですかーー!」

 徐々に近づいてくる根源的な恐怖を呼びさますその回転音。ザゴール団の男は恥も外聞もなく悲鳴を上げた。

 

「いきますぜオラ! 口開けろお!」

 

 

 

――――それは邪神が今際の際に発した呪い。己に剣を突き立てた勇者への最後の卑劣。

 

 だが呪いの矛先は勇者ではない。もとより彼らの一撃は命を昇華させた捨て身のもの。呪いなどいまさら恐れはしない。

 

 ならば邪悪が向かうのは彼らが愛する者へと。

 

『我を滅ぼす者、子孫七代においてその足が地を踏みしめることは許さぬ』

 

 そして勇者と仲間である聖女の血を受け継いだ少女。田舎街で両親の帰還を待ち望んでいた彼女に届いたのは愛する人の訃報と歩く力を失うという悲劇。

 

 勇者の仲間の老剣士。娘を託され独り生き残った彼。残された生涯を少女の足となり支えとなろうと剣を捨てた。

 

 少女と老人とその孫娘との生活。

 諦念と寂寥に覆われた無為なる日々が続く。

 

 だがあるとき古道具屋で仕入れた見慣れぬ椅子が少女たちの運命を大きく変える。

 

 その身に人の魂を宿すという椅子は彼らに伝えた。

 椅子は身体を休めるもの。やがて立ち上がるための意気を養うためのものだと。

 

 ならばと、少女と彼らの心は再び立ち上がる。

 呪いを打ち払う術を求め故郷を後にした。

 たとえ足が動かずとも椅子が車輪と回りだす。母の形見の杖が生み出す奇跡が道を切り開く。

 

 やがて少女たちは邪神復活をもくろむ魔族の暗躍に気づくことになるだろう。解呪の手が邪神の完全なる消滅にあることを知るだろう。

 それは両親が成した冒険よりもはるかに過酷な道のりである。

 

 だが彼女たちは進む。時折その身を椅子に休めながら少しずつ。だが着実に前へと。

 

 もしもそんな彼らの歩みを物語るのならば、題するのならば――――

 

 

◇椅子職人、異世界に立つ ~そこのお嬢さん、ちょっと私に腰かけてみませんか~

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