異世ばと! ※スーパーなろう大戦に作者オリキャラが参戦する話です   作:笠本

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第5話 全パーティー入場!! ①

パーティーNo.002

 

 ザゴール団員三人の前に立つのはワンピース型の冒険者服を着た少女。だが勇ましく構えるのはナベのフタと小麦こね棒という、どうみても子供のごっこ遊びという風。冒険譚に憧れた田舎の村娘といった雰囲気。

 

「ったく、どんなバケモンが出てくるかと思ったら、どうみてもただの村人じゃねえか。おい嬢ちゃん、痛い目にあいたくなかったらさっさとお仲間を呼び出しな」

 団員は少女にあしらうように言った。

 

 屈強なヤクザ者を相手に、それでも朗らかな笑顔のまま、少女は小麦こね棒を掲げて叫んだ。

「それじゃあリクエストにお応えして。みんなー! 集合だよー!!」

 

 村人Aはなかまをよんだ!

 

「お待たせ! ボクが来たらもう安心さ!」

 幼馴染勇者があらわれた!

 幼馴染勇者のこうげき!

 ザゴール団員A、B、Cにかいしんのいちげき!

 

「許可なく私の親友に近づくのは誰?」

 ヤンデレ聖女があらわれた!

 ヤンデレ聖女はのろいをかけた!

 ザゴール団員A、B、Cはのろわれてしまった!

 

「るじゃ! お姉ちゃんにいいとこ見せるのじゃ!」

 ロリ魔王があらわれた!

 ロリ魔王はかわいいおどりをおどった!

 ザゴール団員A、B、Cはもだえじにした!

 

 ザゴール団員たちをやっつけた!

 10ポイントのけいけんちをかくとく!

 4人のかわいさがカンストした!

 

◇村人Aはなかまをよんだ! ~幼馴染勇者があらわれた! ヤンデレ聖女があらわれた! ロリ魔王があらわれた!~

 


 

パーティーNo.003

 

 ザゴール団の団員たちはその令嬢に絡んだが、すぐさま彼女を守るように四人の男たちが囲み、不埒者を睨みつける。

 

 あっ、こりゃあかんわ。男たちの殺意のこもった視線に、団員はそう覚悟した。

 

 一方、絡まれた令嬢は一瞬怯えたような表情を見せていたが、その視線はどこか明後日の方を見ているようであった。

 

 そんな令嬢に黒服の執事が声をかける。

「お嬢様、何を悩んでいるのですか? また神の試練が降されたのですか?」

 

「うーん、誰に助けを求めるかっていう選択肢が出たんだけど、四人とも強いからまあ、これは【ヒント】も【二択化】も【念話】も【モブ(オーディエンス)】も必要ないよね。誰を選んでも正解ですわ」

 ほっとしたような令嬢に、執事が迫った。

 

「いいえお嬢様。これは極めて重大な選択でございます。お嬢様の人生がかかっていると言って過言ではないかと。くれぐれもいつものように軽々に選ばないでください」

「そんなに!?」

 

 他の男たち三人が笑顔を見せ、メガネをくいっと上げ、腕をまくりアピールをしだす。

 

「ははっ、そんなのこの俺に決まりだと思うけどね」

「いいやマイレディ。あなたのそばに立つのはこの僕こそが相応しい」

「ごちゃごちゃうるせえな。もうこうしようぜ、今から殴り合って立ってた奴が正解でいいだろ。こっちで一択にしといてやるぜ」

 

 拳をパンと打ち鳴らした大男の言葉に、不敵な顔で向かい合う四人のイケメンたち。

 

 担当の妖精がテンション高く叫んだ。

「さあ、これは滾る展開だNE! 無自覚たらし令嬢のガード役に名乗りを上げた四人のイケメンズ! 私も守られたーいNE!」

  

「そんなに重要かなあ。うーん、それじゃあここは【モブ(オーディエンス)】にしてみようか。あなた達、誰にボコボコにされたい?」

 

 令嬢はヤクザ者たちに問いかける。

 

「えっ、俺たちが選んでいいんすか? じゃああの筋肉はなしで」

「いや待て。ああいうタイプは一発ぶん殴って終わりにしてくれるぞ。逆にあのひょろっとしたメガネ魔道士。ああいう根暗っぽいのはネチネチといたぶってくると見たね」

「あー、ありそう」

 

「じゃあそれでいいかな?」

「いやタンマ。もうちょっと考えさせてください」

「あと10秒以内でね」

 

 はたしてザゴール団員の選択と運命はいかに!

 

◇悪役令嬢ロシェルは破滅エンドを回避する

 


 

パーティーNo.004

 

 ザゴール団の男たちは自分がアタリを引いたとほくそ笑んだ。

 

 目の前には華奢な獣人の幼女と、男用の冒険者の格好をしているがどうみても年若い少女。

 その二人の背後の女性達もいずれも見栄えはよく威勢は良さそうだが、暴力を本職とする自分たちならどうとでもなるレベルと見た。

 

「こわいのじゃよ……」

 怯えるネコ耳の獣人幼女に男装少女の方が歓声を上げた。

 

「うわー、にゃこちゃん! 今の怯え方、何? もうすっごい庇護欲かきたてられちゃう! 握った拳としっぽを連動させて震えるとかさあ。もう、あ・ざ・と・す・ぎ!」

 

「えっ、そうかの。いやあ、多分使う機会はいっぱいあると思って新モーション研究してみたんじゃよ」

 

「やっぱりにゃこちゃんにはVcuver(依代)の才能があるって見抜いたボクの眼力に間違いはなかったよ。もう今夜のPastiv(パスティブ)にはにゃこちゃんがこのかませ男たちに捕まってるイラストが満載になってるよ!」

「えええっ!? わし、中身ジジイじゃよ!?」

 

 二人のやり取りにあっけに取られていた団員たちだが、自分たちがかませと扱われたことに気付き、激昂した。

「ふざけてんじゃねえぞテメエら!」

 

「おっと、それじゃあチート発揮して瞬殺のターンだね。さあ今日も課金が捗るよ!」

 

 そこで少女のそばに音もなく出現した箱。上部が透明で中に丸いものがいくつも入っているのが見える。少女がその前面にコインを投入した。

 

「すまんのじゃ……わしが時流に疎くて、ガチャスキルをワンコインでチープだけどロマンだけは溢れるアイテムが出てくるスキルと勘違いしたばかりに……」

 

「もう、神様。ボクはこのスキル、全然ハズレとは思ってないからね――――おっ、出たよ『三原の使い魔(プライマリー・サーヴァント)』だ! ボク基準でこれSRだよ!」

 

「飾り糸でできた蛇に釣り紐をつけただけのアイテムで何をするんじゃよー!?」

 

◇のじゃロリ女神様といく、ガチャ無双チーレム追放からの悪者令嬢への道

 


 

パーティーNo.005

 

 ザゴール団の男は恐怖が抑えられなかった。不意打ちは成功した。その一行の一番の力量であろう獣人の戦士を殴りつけ気絶させた。残るは子供が三人に軽装の兵士のみ。

 なのに本能が気を緩めるなと警告を発し続ける。

 

 子供の内の一人がしゃがみ込み、倒れた獣人の身体に触れて言った。

「ただ気絶しているだけですね。どうですアナタ、このままトドメをさしてみませんか?」

 そしてそれを使えとばかりに獣人の戦士が落とした剣を指差す。

 

「はっ?」

 まるで居眠りした者にこっそり落書きをしてしまおう、そんなイタズラを持ちかけたくらいの気軽な物言いに、団員は背筋が凍りついた。

 

 そうだ、さっきからこの子供はそばで振るわれた暴力をまったく意にしていなかった。むしろ興味深いという表情を見せていた。あどけない顔なのにその目はこちらを観察するようにひどく冷静であった。

 

 それが不気味で、不安をごまかすように男は脅しつける。

「ガキが生意気なこと言ってんじゃねえぞ。死にてえのか!」

 

「その死を求めてぼくたちはここに来たのですがね」

 子供はゆっくりと立ち上がる。

 

「では仕方ありません。あなたに代わりに永遠の眠りというものを見せてもらいましょうか」

 

「黙れガキが!」

 剣に手を伸ばそうとした子供に、男は殴りかかった。だがその拳は空を切った。

 

「何だ!? 何なんだよこれは!」

 避けられているとか、幻術にかかっているとかではない。

 どれだけ殴りつけようとも子供にかすることすらできないのだ。そう、まるで攻撃そのものが無かったものとされているような。

 

NPC(獲物に非ず)……なんですよ。ぼくたちは」

 

 にこにことした表情のまま、子供は剣を拾い上げた。

「さて、後学のために()()を見せていただけますか?」

 

◇この世界がゲームだとみんなが知っている

 


 

パーティーNo.006

 

「オラッ、オラッ!」

 絡んできたザゴール団員を引き倒すや、マウントをとってタコ殴りにする中年男性。

 

「ちょ、おじさん! それ以上やると死んじゃいますよ!」

 少し気弱そうな青年が必死に男を止めにかかる。

 

「ええい離せ! おじさんはな、ゴブリンやオークやチャラ男やヤクザ者は絶対許さないって決めてるんだ!」

 

「だからってやりすぎですって」

 

「いいか、こういうヤクザ者はな、借金の方に美人姉妹や美人母娘をものすごいエッチな目に合わせるって相場が決まってるんだ。おじさんはDNNのゴールド会員だからそういうの詳しいんだ!」

 

「そんな……俺たちそりゃ借金取りもやりますけど、地元密着型組織なんでそこまでひどいことはしないんすよ……」

 

「黙れオラッ! おじさんはNTRや鬱展開は絶対に許さない。そのために次元の壁を越えて異世界にやってきたんだからな。お前みたいなヤクザ者を一人見逃すと十人の美人姉妹が涙し、百人のイチャラブ大好きおじさんたちが悲しむんだよ!」

 

「ほんとです旦那。俺、これを機にヤクザから足を洗うつもりなんです。頼んます、家じゃあ小さい弟たちが待ってるんですよ」

 

「長男だと!? おじさんはな、長男と次男も絶対許さないんだ! あと叔父と校長と体育教師と用務員と部長とサーファーと人気配信者と先輩と後輩とDQNとストーカーとキモオタとテニサーとカメコとフレンドとスポンサーと他港の提督も絶対許さん!」

 

「おじさん落ち着いてー!」

 

◇ゴブリンとオークとチャラ男は絶対許さないおじさん ~異世界ボクノダイジナイモウトトオサナナジミガチャラオユウシャニネトラレタケン編~

 


 

パーティーNo.007

 

「ちくしょう、騙しやがったな!」

 

 身体を痙攣させ、地面に倒れるザゴール団員。

 彼らに憎々しげな視線を向けられたのはフード付きのゆるやかなローブ姿の美女と小柄な少女。

 

「あわあわ……」とオーブを抱えながら慌てる美女。隣の少女は逆に不敵な笑みを返す。見た目は愛らしい町娘という風なのに、今は一転、目の前の彼らを小馬鹿にする邪悪な笑顔を。

 

「えー、おじさん達ってばおっかしー。わたし名乗ったよね、錬金術師だって。わざわざ自分から詐欺師だって白状したんだよ? なのに何でそんな奴の言うこと信じちゃったの? わたしみたいな愛らしい少女に騙されるはずがないなんて思っちゃったのかな? 前世カエルなのかな?

 

 あっ、待って。もしかしてこっちの世界だとほんとに錬金の技法があったり? すごーい、その情報教えてくれる? あっ、もちろんお礼はするよ。ユニコーンの角とかどう? 人魚の肝は? ホムンクルスの幼体は? まあ、ぜーんぶ偽モンだけどね。きゃはははは!」

 

「ちっ、畜生!」

 

「はわわあ……その、あんまり追い打ちしないでえ……」

 

 動けない団員をここぞとばかりに煽る少女とおろおろするばかりの美女。

 

 そんな彼女たちの背後に立つのは生真面目そうな女騎士。額を抑え、嘆くように首をふると、懐から手帳を取り出して大きくバツを記帳した。

 

「本日の保護観察記録…………異界にても反省の色は見られずと……はあ」

 

◇小さな錬金術師の隠れ家工房 ~目立つとヤバいので王都の外れでひっそり営業中です!~

 


 

パーティーNo.008

 

 酒場のカウンターに座った三人組のドワーフ。背は低いが見るからに屈強な筋肉の三人に絡んだザゴール団員はあっさりと沈められた。

 

 だがその後の流れは意外なことに。

 痛みと情けなさに泣いていると、そのドワーフが団員に酒を吹きかけ、傷口を消毒してくれたのだ。そして空いた椅子を指差す。

 

「どうやらおめえ訳アリみてえじゃねえか。ちょいと酒のつまみに話してみな」

 

 敵うはずがないと身体で分からされた団員はとつとつと語った。

 自分がヤクザ者であり、さんざん周囲に迷惑をかけて生きてきて、その末に捕縛されて勇者の力を引き出す的として使われることになったのだと。

 

「斧の試し割りってわけかよ。どおりでブルってるくせに威勢のいいこと言ってたわけだぜ。んで、俺たちにぶっとばされたんだから、ちったあ早く娑婆に出れるんだろ。さっさと女房と子供に頭下げて真っ当な生き方をするんだな」

 

 ドワーフにそう言われたが、団員は顔を曇らせる。

「いえ、自分のようなクズはもう家族には合わない方がいいんです。俺は自分が信じられないんです。きっとまた身を崩して迷惑かけるに決まってんでさあ」

 

「だったらこいつの出番だな」

 ドワーフは腰の布袋から取り出した小さな酒樽から中身を手元のカップに注いだ。

 

「こいつは俺の地元で作った麦酒(エール)でな。エールには【精神回復(エール)】や【消毒(エール)】や【浄化(エール)】って具合に酒の精霊の加護がいっぺえ詰まってるんだ。だからよ、こいつに【誓酒(エール)】しな。お前さんの人生を今度こそやり直すってな」

 

 ひょいとカップを渡され、ザゴール団員は戸惑いながらも口をつける。甘さの中に薄っすらと苦味が混ざるどこにでもある麦酒(エール)。上等な代物ではなかったが、久方ぶりの酒は団員の身体に染み渡るようだった。

 

「あっ……あっ……ありがとう……ございます……俺、誓います。次こそ真っ当に生きるって……家族に償うって…………」

 

 日頃は人の情などありえないと馬鹿にしていた団員だが、エールによって【共感性向上(エール)】した今はドワーフの言葉を素直に信じることができた。自分が口にした誓いもくさすことなく己自身が受け入れることができた。

 

 団員はしばし嗚咽と共に酒の味を噛みしめ、やがて頭を下げて酒場を出ていった。今はいち早く刑期をつとめあげて家族の元へと帰りたくて。

 

 その姿を見送り、ドワーフたちはつかの間の縁の男に【乾杯(エール)】した。

 

 そこへカウンターから女将が声をかける。

「それにしても、あんたらいい呑みっぷりだね。あたしも酒場やって長いけどさ、あんたらほどのいい呑み方する男はそうはいないよ」

 

「嬉しいこと言ってくれるじゃねえか。まあ俺たちドワーフってのは酒の精霊の加護を持った種族だからな。ちょいと酒にはうるさいのさ。そうさな、例えばエールは【食欲増進(エール)】や【調味料(エール)】に使えるのは知ってるだろうがよ、こんなこともできるんだぜ」

 

 ドワーフがカウンターから手を伸ばし、彼らの注文のために出されていた肉に酒をかけた。

「【お肉が柔らかくなる(エール)】!」

 

 女将は怪訝な顔をするが、言われるがままに調理を進めると驚きに声をあげた。

 

「ええっ!? なんだいこりゃあ。安くて固いオーク肉がまるでキングオークみたいな柔らかさになっちまったよ!」

 

「そういうこった。エールには無限の可能性があるんだぜ」

 髭面のドワーフはにやりと笑うとカップのエールを一息に飲み干した。

 

◇酔いどれドワーフ兄弟(ブラザーズ)ぶらり旅 ~素面になったら呑み直し~(めざせ9999pt! 冒険者は神々へ叙事詩を奉ぐスピンオフ)

 


 

パーティーNo.009

 

 多くの客で賑わう酒場。

 少女と二人の男が座る四人掛けのテーブルに、離れていたもう一人の男が戻ってくる。男たちの方は揃ってどこかくたびれた様子も入る中年である。

 

「おかえり、リーダー。遅かったじゃん。年取るとトイレも時間かかって大変だね」

「うるせえぞ小娘。ちょいと俺のファンとお話してたんだよ」

「どうだった?」

「ああ、あいつらやっぱ俺達を狙ってたわ」

「そういやあの妖精が囚人による腕試しがあるみたいなこと言ってたがそれか?」

「ああ、そんで適当にボコって解放することで手を打ったわ」

「それですませんのか?」

 

「聞けば下っ端で残りの刑期も短かかったからな。親の死に目に会いたくて志願したんだとさ。クランの運営資金をギャンブルで溶かしたお前よりまともだろ」

 

「いっとくが俺達が追放されたのって、お前が酒場の女に手を出したのがクランマスターにばれたって方が大きいからな」

「うん、うん」

 

「そうだよ。しかもあの店主さんって叔母さんとたいして年変わんないじゃん。遊ぶならもっと若いのしとくべきでしょー。あの人に手を出しといて叔母さん放っとくとかそりゃキレるじゃん?」

 

「ああん? なんで結婚してるわけでもねえ女に操たてないといけねえんだよ。それよりあいつらが絡んでくるのは30分後だ。つまりは……」

 

「どさくさまぎれに払いはそいつらに押し付けられるってことか!」

 

「そういうこった。おーい、姉ちゃん! ここの酒、上等なやつからありったけ持ってきてくれ!」

 

◇一流クランを追放されたけどわりと自業自得なのでどうしよう

 


 

パーティーNo.010

 

 その男女は地面に座り込み、涙を流しながら食事をしていた――――その辺りの草や虫を素焼きにして。

 

「ねえ、これマズイよ」

「いやあ、ほんとマズイよな」

「でもマズイだけってほんと幸せね」

「おお、この花食べても手がツルになったりしないもんな」

「このバッタだって羽生えたりしないわよ」

 

 そんな二人の背後に禍々しいモンスターの姿。

 グルウウゥウといううなり声に男が振り返った。

「おお、ガウ太。ご苦労さん」

 

 その愛らしい名前で呼ばれたモンスターは足元の獲物をぽんぽんと前足で叩いた。

「食っていいかって?」

 

「だめえええええ!」

 地面に押さえつけられていたザゴール団の団員が悲鳴を上げた。

 

「だめに決まってんだろ」

 男のセリフに団員はほっとするが、すぐにひいっと顔を引きつらせた。

 男の目がぐるりと反転して、裏側から複眼が表れ、団員に焦点を合わせたのだ。

 

 そして、続く男の言葉にもう一度悲鳴を上げた。

 

「進化系統に袋になったら、最悪ソイツ食って人間形態に戻るんだからよ」

 

◇異世界サバイバルグルメ ~一口食べるとすぐ進化~

 


 

パーティーNo.011

 

 ザゴール団の団員は裏道を歩くその少年に近づいていく。

 顔の見える距離になれば少年はポケットから取り出した小石を放り上げ、掴む。その動作を繰り返しだした。

 

 だが手慰みなどしながらも表情はつまらそうな。

 

 いや違うな、あれは復讐者だと団員は内心でつぶやく。

 

 あの顔は胸の内の怒りを押し殺したがゆえの無表情だ。

 誰かを憎み、その激情の炎に身を焦がし続けた者が纏う仮初の凪。

 敵を討ち果たすまではきっと自分の人生に喜びも幸せもないのだと、頬の緩め方など忘れてしまったのだろう。

 

 己の稼業ではときおりそんな顔をした者が立ちふさがることがある。かつて殺めた相手の親族であるとか。

 そういうヤツを殺してやるのも救いってものだろう。団員はそう(うそぶ)いて袖の中の武器に触れる。

 

 昔の伝手でこっそり入手した暗器。生贄の身に許されているのはせいぜいが勇者に殴りかかることまでだが、男はここで最後の殺人に手を染めるつもりだった。

 男が裏の稼業になったのは人の血が見たかったからだ。なのにお上に捕まり、どうせ減刑されたところでまともに身体が動く間は娑婆には出られない。ならば最後に味わう血は極上の物にしたかった。全ての幸いを捨てた復讐者の人生を砕くなど最高の御馳走だ。

 

――――コツン

 と少年が掴みそこねた小石が地面に転がった。拾い上げようと身をかがめ、さらされた首筋。

 

 団員は袖口から釘状の暗器を引き出しながら腕を伸ばすが、

 

「がっ!?」

 それよりも早く少年の剣が己の腹に突き刺さった。

 

「えっ……な、なぜ……分かった……」

 状況を理解できないまま倒れる男の言葉に、少年が短く反応する。

 

()()()()()()()()()()()からだろうね」

 

 少年の言葉を聞くことができたのかどうか、団員は絶命した。

 

 何の感情を浮かべることなく、足元の死体を見下ろす少年。

 耳をおさえ、誰もいない空へと言葉をかける。

 

「いま男に襲われた。…………ああ、()()()()()よ。暗器を持っているから俺を殺したのはこの男で間違いないだろう…………んっ、いま衛兵がこっちに向かってきた。…………ああ、一応備えはするさ」

 

 少年は道に落としていた小石を拾い上げ、再び放り投げ、空中でそれを掴むという動作をしながら唱えた。

 

「セーブスキル発動。【クイックセーブ】」

 

 そして少年は表情を変えることなく、だが眼に決意の炎を灯しながら口にした。

「待ってて、姉さん。必ず助けてみせるから」 

 

◇欠陥セーブスキルの復讐者

 


 

パーティーNo.012

 

 道路の真ん中に横たわった巨大なサメ。

 ザゴール団の男たちはそのサメを遠巻きにして困惑していた。

 

「えっと、勇者様に絡みに来たんだけど、これどうすりゃいいんだ」

 

「くそう、陸の上じゃあサメは手も足もでないぜ! このままヤクザに刺し身にされちゃうんだ! うおー、どうすればいいんだああ!」

 魚類なのに表情を豊かに自分の窮状を訴えるサメ。

 

「いや、普通に怖くて近寄れねえよ」

「なんか喋ってるし。ビッタンビッタンはねてるし」

 

 そこへ近づいてくる二人の女性。大きな白いローブで身を包むが、のぞかせる見目麗しい顔が道行く人々の視線を捉えて離さない。

 

 ウサギ耳の愛らしい美少女とタヌキ耳に丸メガネのおっとり型の美女。

 

 少女の方が小走りに。サメとザゴール団員の間に割って入った。

 

「罪なきサメをいじめようという暴虐。聖女としてこれを見逃すことはできません。ここは私がひと肌脱ぎましょう……ハッ!」

 そしてバッとローブを脱ぎはらった。

 

 あらわになったのは少女の健康的な肢体。そして胸部と腰部、脚部を覆う赤い光沢が眩しいその装いは――――

 

「「ビ、ビキニアーマー!?」」

 

 それは防御性の高い金属製でありながら軽量性をも両立した女性用の鎧。すなわちビキニアーマーであった!

 

「水着美少女キター! サメと水着美少女はゴールデンコンビ! うおおー力が湧いてきた! もうこれでヤクザになんかまけないぜ!」

 水を得た魚のようにイキイキと飛び跳ねだしたサメ。

 

 少女の方も人々の視線を集めながらも、堂々としたモデルポーズでサメのそばに立つ。

 

 反対にぎゅっとローブを絞って中身を絶対に見せまいとするタヌキ耳の美女。

 

「ラビィちゃん、あなた最近その姿にまったく羞恥しなくなりましたね!?」

 

◆さめ!サメ!鮫!? -魚類最強は異世界でも最強だった-

 


 

パーティーNo.013

 

 勇者たる一人の少女とその仲間たち五人と一匹。

 

 路地裏に入った彼女たちをザゴール団の下っ端三人が追えば、その当人が腕を組んで構えて待っていた。

 小柄だがアンバランスに大きな剣を背負った金髪の少女。

 

 ニコニコとした表情で「あなた達はチンピラだね」と確認してきた彼女に、三人が恫喝すれば、軍師がどうの陣形がどうのと何やらワケの分からないことをノリノリで口にした。

 

 何いってんだこの少女は。そんな思いで少女の背後のメンバーに視線を向けると。

 

「あー、うん。ほらこの子、アレなんだよね」

 そう言ったのは黒髪に灰色の巻角を生やす人ならざる青年。

 

 そして「まあ頑張れ」と言い残すと彼ら五人と一匹はダッシュで路地を抜けていった。

 不穏なものを感じてその後を追おうとしたザゴール団員たちの前に巨大な炎の壁が立ち上って足を阻む。

 

「えっ……これは……?」

「フッフッフッ。これから古式ゆかしい火魔背(かませ)を始めるよ!」

 

 振り返ればそれはもうにこやかな笑顔で少女が剣を抜いた。 

 

火魔背(かませ)

 異界ニホンの西方にある中国地方。前漢時代においてこの地に陳平(ちんぺい)という著名な軍師がいた。

 彼が主から任せられる戦いは常に劣勢で、はるか格上の敵を相手取るものばかりであったが、その全てに勝利したという。

 その秘訣は火魔背(かませ)という独自の陣形にあった。彼は火属性の魔道士を敵軍への攻撃に回さず、巨大なファイヤーウォールを自陣の背後に展開させたのである。こうして自ら退路を断つことで兵の逃亡を防ぎ、強大な敵に対して決死の覚悟で攻め込むことができるようになるのであった。

 

 現代において血の気が多く自分よりも強者に挑む不良をチンピラと呼ぶのはこの軍師にちなんでのことである。

 

蘭花書房『古代中国地方陣形辞典』より

 

 

◆クククッ、勇者よ。ヤツは我らの中で(あみだくじ)最弱よ ~魔王と四天王のサバイバル戦略~

 


 

パーティーNo.014

 

 冒険者ギルドにやってきた青年と五人の美女。

 

「これはリューク様、お早いお帰りですね。まさかもうジェネラルオークの討伐が完了したんですか?」

 

 受付嬢に問われた青年は首をふった。

 

「残念ながら目当てのオークの営巣地は壊滅しててね、普通のオーク数体しか手に入らなかったよ。どうも誰かに先をこされたようだ。ただ帰りに寄り道したらゴブリンの群れがいたから代わりに狩ってきたよ」

 

「そうでしたか。それでは討伐証明部位をお見せください」

 

 青年が手を向けるとカウンターのトレイの上に出現したゴブリンの耳の山。

 

「ええっ!? こんなたくさん。群れっていったいどれくらいいたんですか?」

「1000体ぐらいいたかな。ほとんど焼けてしまったから残ったのがこれだけだけど」

 

「そんな……スタンピードの寸前だったってことですか。ほんとにリューク様がこのタイミングで依頼に出てくださって助かりました。でもその数となるとジェネラルゴブリンくらいの上位個体が生まれてると思うんですが?」

 

「ああ、これのことかな。使い道があるからこっちで引き取るつもりだったんだけど」

 

 パッとカウンターの上に置かれたのはゴブリンの頭部。

 

「この赤色に変色した菱形角……これ、ジェネラルじゃなくてキングゴブリンじゃないですか!?」

 

「そうなんだ。どうりで焼け跡でちゃんと身体が残ってるなと思ったんだ」

 

「はっ……はは、それ明らかに上位種を普通のゴブリンと一緒くたに倒してますよね。さすがはリューク様です。ええ、規則でFランクからのスタートでしたけど、これは文句なしにAランクに昇格ですよ!」

 

「ははっ、それは良かった。これで格好がついたかな――――だからさ、もしかして俺たちの力量をはかるつもりならもう必要ないんじゃないかな?」

 

 首だけまわせば、そこには青年の背後に迫っていたザゴール団の男たち十名。

 

「あー、いや、バレとりましたか」

 その中で一番年嵩(としかさ)の男がばつが悪そうに言う。

 

「不思議と絡まれやすい身でね。そういうのは慣れてるんだ。それに前回の大会でも似たようなサプライズがあったからね」

 

「んー、こういうのも懐かしいにゃあ」

「さすがにBランク辺りからは名前が広まって少なくなりましたからね」

「我たちを愛人によこせとか抜かした王都の馬鹿王子以来かの」

「あの節は兄が申し訳ありませんでした」

「私は初対面で無謀にもリューク殿に腕試しを挑んだ身でありますから何も言いますまい」

 そばの女性たちも緊張感なくお喋りする。

 

「そんなわけでそちらも訳アリみたいだけど、ここは引いてくれるかな?」

 

「いやあ、それが私らはヤクザもんでしかも幹部やっとりまして。お上にも堅気の衆へのケジメにも無罪放免ってのもまずいんですわ。それに腕っぷしで生きてきた身としちゃあ最後くらいは本物の最強に挑んで泊をつけたいって思いがありまして。ひとつお相手しちゃあくれませんか」

 

 男たち十名が揃って頭を下げた。リュークは頬をかきながら言った。 

 

「分かった。ただ俺たちはこのあと料理コンテストに出るつもりであまり時間がないから、全員一緒でいいかな?」

 

 自分一人で屈強なヤクザ者十人を相手取ってみせる。

特に煽るつもりもなく当然のことを言ったまでという青年の態度に、団員たちは苦笑し再度頭を下げた。

 

「それじゃあすぐ準備しますね!」

 受付嬢がタタッと駆け出し、壁の掲示板の訓練所予約覧に大きく貸し切りの札を貼った。

  

◇《歓迎光臨》異世界中華料理店 ~はいお客さま、ご注文のドラゴンの丸焼きはただいま討伐中です! 

 




 各パーティーの冒険譚のタイトル頭に ◆ が付いているものは既に先行スピンオフ扱いで作品化しています。以下のリンクからお楽しみください。

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