異世ばと! ※スーパーなろう大戦に作者オリキャラが参戦する話です   作:笠本

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第7話 全パーティー入場!! ③

 

パーティーNo.025

 

 団員に絡まれた銀髪の少女。紅い瞳を爛々と輝かせ、口元から小さな牙をのぞかせながら言った。

 

「ふうん、この私を偉大なる魔王の娘と知っての狼藉かしら。さあ我がしもべよ。この痴れ者たちに己の罪の深さを教えてやりなさい!」

 

 背後の従者がすっと前に出てきた。全身を黒いフード付きのローブで覆った不気味な姿。その者がかもすただならぬ妖気に、ザゴール団の二人は息を飲んだ。

 

 そしてローブがゆっくりと開かれると、男たちは恐れに身を震わせた。

「あっ……ああ……嘘だろ……」

 

「ふふふっ、我が眷属の恐ろしさに怯えているようね」

 

「ああ、信じられないぜ、いくら春だからってこんな真っ昼間から全裸になるなんて」

「くくっ、そう、この者こそが我がしもべにして最強の骸骨戦士(スケルトンウォーリアー)であ……全裸ッ!?」

 

 ついにはフードが全て脱ぎ捨てられれば、中から姿をあらわしたのは一糸まとわぬ完全に言い逃れできないオールヌードの青年。

 

「あああっ……このバカ……また元の身体に戻って!」

 

「そう、俺こそが混迷する魔界を統一し、魔王家復権を目指すお嬢の側近にして最強の戦士。欠陥スキルだからと王国軍に追われた俺を拾ってくれた主のため、いくぜ隠密スキル発動!」

 

 青年が叫ぶとその身体が変化した。さあっと全裸の肌が淡く光ると次には血管と筋肉がむき出しになった。地球で言えば人体模型の表皮のような状態である。

 さらに変化は続き、内臓が色鮮やかに映り、消える。そして最後には骨だけが残った形。

 

「魔王軍最強の骸骨戦士(スケルトンウォーリアー)ここに誕生!――――ふははっ! どうだ王国のやつらめ、今の俺は完全合法! 見た目がアンデッドだから全裸になっても、もう捕まらないぜ! ふははっ、みんなの恐怖の視線が気ん持ちイイー!」

 

 両手を太陽に伸ばしたり、サイドチェストを強調するポージング、足を交差させるモデル立ち。明らかな見られるためのポーズを披露する骸骨――――を殴りつける少女。

 

「この下僕が! 例え生者の道を外れようとも法と道徳からは外れるなってあれほど言っといたじゃない!」

 

 ぶしゃっと鼻血が鼻骨から少し浮いた位置に広がり、骸骨は慌てて少女を抑える。

 

「待った待ったお嬢。考えてみるんだ。ローブを取ったら何だ普通の人間じゃんって思わせてから実は恐るべきモンスターに変身って方がインパクト与えると思うんだよ。緩急つける感じで」

 

「あんたの元の姿って全裸の変態じゃん! 骸骨よりインパクト与えてんのよ! どうしてくれんの、あんたのせいで魔王軍の威厳がさらに落ちるわよ! お家復興がまた遠のくじゃない!」

 

 涙目の少女。

 顔を見合わせた団員が棒読みに言う。

「うわあーアンデッドモンスターが出たぞう、こいつはこわいよお」

 

「うわーん、チンピラに同情されたー!」

 

◇魔王様の側近はスケルトン仕様! ~欠陥『隠密』スキルだからと王国軍斥候の座を追われた俺はありのままを受け入れてくれる主に出会い新たな道を歩みだす~

 


 

パーティーNo.026

 

 ザゴール団員が少女に難癖をつければ、かばうように少年が割って入った。

「やめなさい、彼女に手をだすな!」

 

 神父の格好をした少年。小さな背を伸ばし、必死に虚勢をはっているのが分かる。

 団員が「見せつけてくれるじゃねえか」と少年の胸元を掴めば、少女が動く。いや、少女は立ったまま。だが何かの突進を受けて団員は悲鳴を上げて飛ばされていった。

 

「あんたバッカじゃねえの? 私がいつ守ってくれって言ったよ? あいつら程度いつでもヤれるっつうの」

「う……ごめん。でも居ても立っても居られなくて……」

「バ、バッカじゃんお前。神父見習いが私なんか守ろうとすんなよ」

 

「おお、いけませんよ迷えるこひつじよ。言葉に対し暴力で答えては神が嘆かれます」

「天使様」

 

 少年たちに近づいてきたのはローブ姿の美女。その背中には純白の羽根が広がり、頭の上に光る輪が浮いていた。

 

「羊じゃねえよ。しいていや山羊だっつうの。悪魔だっつうの。神の教えなんか従うわけないじゃん」

 歯をむき出しに少女が威嚇すれば背中の黒い小さな羽根と細い紐状の尻尾が揺れた。

 

 美しき天使は穏やかな表情で少女を諭す。

 

「いいですか、我が経典(バイブル)『私と彼の素敵なロマネスク』*1によれば、このように暴漢に絡まれたときは可憐に怯えてみせるのです。さすれば激シブなイケオジ冒険者がさっそうと現れてくれるでしょう。そう、年の頃30台後半の威厳と貫禄を備えたベテランですが、実は御髪(おぐし)に白い物が混ざり始めたのをちょっぴり気にしちゃってるタイプです。そして足を挫いてしまった私はそのまま宿へとエスコートされめくるめく禁断の一夜を…………ぐふふっ」

 

「うわあ天使様、ストップストップ!」

「バ、バカエル、またエンジェルリングが消えかかってるっつうの!」

 

◇うちの教会の天使様がすぐ駄天します

 


 

パーティーNo.027

 

 三人の団員はその一行の中で誰が真の勇者か見て取った。

 

 纏った絢爛(けんらん)衣装(ドレス)に相応しい貫禄と威圧を放つ貴人。

 作業服(つなぎ)姿で頭に保護眼鏡(ゴオグル)をまわし、巨大な(かなづち)を持った女性。

 上衣(ブラウス)と紐締めの胴衣を組み合わせた、こちらはただの町娘であろうが、その可憐さは誰にも愛されるであろう少女。

 

 そして間に挟まれた青年。羽織った真紅のマントが堂々たる以外は角笛などを手にしており、いかにも朴訥(ぼくとつ)な村人といった(てい)。だがきっとこの男が勇者に相違なかった。悪党であればこそ、彼が一番の正義を心に秘めていると分かった。

 

 事実、三人の男の悪辣顔(あくらつがお)に怯え、非力な町娘がすがりついたのは青年であった。

 

 賊どもは下卑(げび)た言葉を娘にかけ、青年をも侮辱した。

 

 だが彼が怒りを表すよりも早く、貴人の剣が振るわれた。

 ゴウッと大振りな剣の横薙ぎで悪党たちは真っ二つに。

 

「ふん、下郎が」

 貴人が剣を鞘におさめると、(とが)めるような作業服の女性の視線に気づく。

 

「どうした石工。お前も自慢の腕っぷしを披露したかったか。それは悪いことをした。だが私が友への侮辱を許すはずがないだろう。この剣を友のために振るえる私を、私自身が誇らしいのだ。許せよ」

 

 石工は肩に担いだ(かなづち)を降ろすと首を振った。

 

「女王よ。あなたのせいで私のせっかくの気遣(きづ)いが台無しとなってしまったよ。ほら見給え、あの勇者が愛する者をひしと抱きしめた姿を。あの可愛い娘さんは勇者が自分を守って颯爽(さっそう)と悪漢を倒すところを見たかったのだよ」

 

 石工がからかうように言えば、勇者と町娘が互いに顔を見合わせひどく赤面した。

 

◇勇者、異世界を走る

 


 

パーティーNo.028

 

 ザゴール団員の目の前で大柄な獣人が上着を脱ぎ捨てた。

 そして両腕を曲げてポーズをとって「ふんっ」と気合を入れれば胸の筋肉が盛り上がり、シャツのボタンが弾けとんだ。

 団員は今からこの筋肉の力で思い切り殴られるのだと覚悟したが違った。

 

 獣人は団員をおいて跳んだボタンを拾い上げた。それを近寄ってきたメイドが手早く繕う。

 そしてシャツを整えるともう一度「ふんっむ」と力む。またも弾けるボタン。

 

 困惑する団員に獣人は言った。

「すまんが俺の主人に用があるのならもう少し付き合ってくれ。こうして威圧することでボタンとしての経験値が稼げるらしくてな。そのうちにこのボタンと会話できるようになるはずなんだ…………いや、何を言っているか分からんだろうが…………」

 

「いえ、なんとなく分かります。もしかしてそのボタンが勇者様なのですか?」

 今までの大会でも魂を武器や日用品に宿した勇者が好成績を収めていることを団員は知っていた。

 

「まあ、そんなところだ」

 

 納得した団員はボタンの経験値稼ぎとやらに付き合う。弾けとんだら怯えて、拾って。

 すると何度目かで手にしたボタンが安物の木製から鮮やかな蝶貝製に変化していた。

 

「ほう、レベルが上がったようだな」

 獣人がそう言い、団員はそれは良かったとボタンを渡そうとして、ふとメイドを見た。

 はち切れんばかりの豊かな胸部には同じ蝶貝の同じデザインのボタン。

 

 なるほど。

 

 勇者の意志を理解した団員はメイドにボタンを差し出した。殴られた。

 

「おっと御主人様、手がすべりましたあ!」

 

 バンッとメイドがボタンを地面に叩きつける。跳ね上がったのを靴で踏みつけぐりぐりと磨り潰す。

 後には粉々になったボタンの破片。

 

「あの、いいんですか? 勇者様がこなごなに……」

「いや、ポイントを無駄にしたという意味ではマズイが、まあ主人自身はどうにでもなるんだが」

 獣人は苦み走った顔。

 

「よっしゃ、ここはウチの出番ですな」

 

 遠巻きにしていた街の住人をかきわけてきたのは女商人。

 残骸のそばにしゃがみ込むと、行商カバンから明らかに大きさ以上の商品をいくつも取り出していく。

 

 剣、盾、フラスコに入った人形、金塊、サイコロ、ポーションの瓶、etc…………

 地面に雑多な商品が並ぶ。

 

 いったい何が始まるのか、近づこうとした団員は商人にどやされる。

 

「ちょお、触らんでください! これ全部ウチの私物なんで。ウチの所・有・物。ちゃんと名前書いてあるでしょお!」

 

 見れば剣から小さなサイコロに至るまで、全てに名前が記されている。

 なんてきちょうめんなんだろうと思っていると、商人はそれらアイテムに対し祈りを捧げ出した。

「そんじゃ今日の転生がちゃ、期待してますよお。えすあーる商品がっつり揃えましたからね。来い来い来い来い」

 

 真剣な祈りを邪魔してはいけないと団員は少し離れて見守る。だが彼はそこでむず痒さを感じていた。

 どうも自分の下半身が落ち着かないのだ。なにかパンツに違和感があるのだ。

 ずれたとか紐が緩んだではないが、とにかくなにかが違う感触がするのだ。

 

 そう、それは例えるならパンツに転生した勇者がここから逃れようと布の身体を必死に動かそうとして叶わずにいるような感触であった。

 

◇転生したら○○だった ~気まぐれ女神の日替わり転生 チートを添えて~

 


 

パーティーNo.029 & No.030

 

 女騎士の繰り出す細剣の素早い刺突がザゴール団員を追い詰める。

 最小限の動きだけで団員を叩き伏せた金髪のエルフの少女は、剣を鞘に収めると大げさにふうと息をついた。

 

 女騎士はそばに控えていたメイドから革製のかばんを受け取り、恭しく口をあけて中に手を入れる。

「まったく、暴漢に襲われたせいで手の筋を痛めてしまいましたわ。これはポーションを飲まなくては。そう、アキラ様がわたくしの、このわたくしのためだけに調合してくださったポーションを!」

 

 離れた所でそれを見ていた獣人の少女二人。片方がやれやれと手を広げた。

 

「まったく。回復魔法が特定の職業の人間しか取得できないなんて、あちらの世界は非合理で不便なのです、にゃあ。アキラ師匠が私たちの回復魔法を褒めてくれるわけです、にゃ」

 

 向けられたその言葉に悔しさが滲んでいることに、騎士は得意げな顔。

「さあポーション、ポーションっと……えっ、アイテムボックスの中にさっきまで無かった女性服がある!?」

 

 慌てて引いた手にはセーラ服の上着。

「ななな……なんですか、この服は……そ、そうですわ。きっとアキラ様がわたくしへのサプライズプレゼントに用意してくれたのですわ」

 

「はあ? どうみてもその無駄にデカイ胸を納めるサイズの服じゃないだろが、くそがあ! つまり私へのプレゼントってことだあ!」

「お姉さま、語尾忘れてますワン、語尾。っと、それよりこちらも……イベントリオープンだワン」

 獣人姉妹の妹が手をかざすと、その先に黒いもやもやとした穴が開く。手を入れて引き抜くと黒いセーラー服のスカート。

 

「この小ささ、まさに私達のために用意されたに違いありませんワン。って、尻尾穴が無い! 私達のじゃない!」

 

 騎士と姉妹ががくがくと震えだす。

 

「アキラはどうやってかボックス内に入れた家に住んどるんじゃろ。前に元の世界で幼馴染が待っとる言っとったから、その子のなんじゃろ」

 そう言ったのは騎士の背後に控えていた従士であるドワーフの老人。

 

 やはり姉妹の背後にいた、狼人の少年も口にする。

 

「というかその上下、今着てましたって感じだよね。多分その人もイベントリの中に入ってて、それをはぎとった形になると思うけど、そうなると師匠の前に裸の女の人がいるってことにならない?」

 

「「「ぎゃああああ!」」」

 

「わたくしも、わたくしもこの中に入りますわああ!」

「お嬢様、それができるのはアキラ様だけだと……」

 

「すぐ服を戻せえええ! いいや、それだけじゃダメだ。万一おかしなムードになってた時のために何かぶち壊すものを入れないと…………はっ、そうだ。例えばチンピラの死体とか」

 

 三人の少女たちの視線が集中したことに気づき、ザゴール団員は悲鳴を上げた。

 

◇もう二つも世界を救ったから余生はアイテムボックスの中で引きこもります ※但しかつての仲間と共有仕様 Side:エルフ女騎士 / Side:獣人子弟

 


 

パーティーNo.031

 

 周囲を威圧するような石造りの堅牢な建物。その中の一室で執務机に座る凛々しくも強面な女性と、妖精が対面していた。

 

「必要な書類はすべてここに揃ってますNO。早く勇者様を釈放するですNO」

 

「はっ、我ら騎士団が総出でようやく捕らえたテロリストを勇者様ですと? 釈放しろと?」

 

「あれはただの不幸な事故ですNO。NAROUが始まったときから想定されていた事態。すでに上の方では対策が進んでいます。心配はいりませんNO。それにあの方がその気になっていればあなた方では指一本触れることはできませんでしたよ。それはそちらも分かっているはずですNO」

 

「ちっ、いまいましい。あのようなテロリストを勇者と崇めて、すがらねばならないなどと。…………ええ、分かっておりますよ。どのみち王女殿下のサインまで用意されたのではしがない宮仕えには従うしかありませんな。こちらへ」

 

 そして強面の女―――王都の一角の治安を預かる女性騎士団団長の案内で建物の地下、薄暗い通路を進む。

 

 いくつかの扉と鍵を開ければ最奥にある留置所につく。

 太い鉄格子で閉ざされた牢がいくつも並ぶ。手前の牢から二人に向かい叫ぶのはザゴール団員たち。

 

「お願い! 余罪でもなんでも吐くからあの女とは離してちょうだい!」

「ええい、騒ぐなクズどもが!」

 

 鉄格子の間から必死に訴えるザゴールの女たちに騎士団長が怒鳴りつけるが、彼女らが指差し訴える奥の牢を見て声をあげた。

 

「なっ、貴様! なにをしている! どこからそんなものを持ち込んだ!」

 騎士団長が見とがめたのは牢内に散らばる雑多なアイテム。本や楽器やゲーム盤。留置所にあるはずのない物品。

 さらに牢内に収監された女性はカップに入れたエールを気ままに飲み、つまみを口にしていたのだ。

 

「ふへっ!? いやあ、私っていつでもどこでも全力ゆるやかスローライフが信条ですから、美味しい物とゲームは欠かせないですよね? また、このオーク肉のベーコンが塩気が効いてて止まらないこと。うまー。いやあ実は私の家のお隣ってオークさん一家なんでこれからどんな顔見せればいいのか困っちゃいますよね――――あっ、妖精さんお久しぶり。元気でした?」

 

「なっ……なっ……こいつ……」

「勇者様もお元気そうで。お寛ぎのところすみませんが、そろそろ出番ですNO」

 

「そっか、もうそんな頃合いかー。うん、いいね。そろそろ身体がいい感じになまってきたからベストタイミングだよ。なんせ適度なバトルはスローライフのスパイスだからね」

 

 女性はドヤアと得意げな顔を見せた。

 

◇異世界ハーブ農家のゆるやか最強スローライフ ~私の身体に付着していたミントが魔族領域で大繁殖して領地専有ボーナスが止まりません~

 


 

パーティーNo.032

 

 団員たちのそばで炎の柱が高く立ち上がった。

 内部では石ですら溶けだした圧倒的な熱量。だが数センチずれた団員に伝わるのは沸かしたてのお茶程度の温かさ。杖をこちらに向けた老魔道士の圧倒的な魔法の制御力と温情が理解できた。

 

 白髪の老人が言う。

「去ねい。我が師をこれ以上侮辱するのであれば、次はその身を焼き尽くすぞ」

「はっ、はいいいい!」

 

 もはや興味はないとばかりに団員から視線を外した老人に、あどけない外見のエルフの少年が話しかけた。

 

「さすがは王立魔導学院の学長だね。火属性魔法を完全制御している」

「おお、師よ。もったいなきお言葉。これも師のお導きあればこそです」

 

「魔法はイメージ。まさか学長がツンデレヒロインに続いてクーデレヒロインの概念まで、こんなに早く会得するとは思わなかったよ」

 

「内心は私へのラブラブな想いを燃え滾らせているのに表面上は冷たく振る舞ってしまう。そんなクーデレ*2メイドのミレイちゃん*3。このイメージによりこの歳で限界を越えることができるとは。ああ、叶うならもっと早くに師にお会いしとうございました」

 

「だめだ。学長が完全にエロガキに汚染されてしまった……」

 

 彼らの背後で嘆きの声をあげる少女。それを老人が聞き咎める。

 

「黙らっしゃい! 我が孫ながら、なぜ師の教えの素晴らしさが分からないのです!」

 

「はっはっはっ。学長、ちゃんと彼女も理解してくれてるさ。いま彼女が取り組んでいる熱血直上型騎士団長とクールで冷血漢な副団長のカップリングイメージが完全なものになれば、不可能とされた火と氷の反極魔法の融合という奇跡を成し遂げ、きっと歴史に名を残せるはずさ。あとはこれで年齢に見合った包容力があれば言うことなかったのになー」

 

「縺翫∪縺」縲√◎繧檎ァ√′貂ゥ繧√※縺阪◆!?!? なんで知ってんだよこのエロガキがあああ!」

 

◇エルフ転生なりあがりRTA:おねショタルート一択 【悲報】長命種のくせに成人までは普通に成長するクソシステムだった【残りタイム僅か】

 


 

パーティーNo.033

 

「どっせえい!」

「ぐはっ!?」

 

 ザゴール団員を体術のみで地面に叩きつけたのはワインレッド色のジャージを着た少女。勇者の正装を纏うにふさわしい技の冴えであった。

 

 手をパンパンと叩きながら団員を見下ろす少女に背後から声がかけられる。

 

「あらあら薫子お姉さま。ここは私たちの試作型汎用人型作業機械:ゴレイムのお披露目の機会ではなくって?」

 

 振り返れば彼女と同じ服装の数名の少女たち。そして民家の屋根にも迫らんとする巨大な人型の像。その身体は石なのか土なのか、あるいは金属か。表面はレンガ壁のようであったが、実際の材質はそのどれとも判定し難かった。

 

 薫子と呼ばれた少女は像の肩に足を揃えて座る長髪の少女を見上げ、返答する。

 

「おう千尋。しゃーねーじゃん。ゴレイムで手加減とか無理っしょ。早く制御システム完成させてくれよな」

「まずは動かしてから何で動くのかを探る。それが制御情報学科のセオリーですわ」

 

「これは……石人形(ゴーレム)!?」

 

 背中をうった衝撃からようやく身を起こしたザゴール団員。近づいてきた人間の数倍ものサイズのゴーレムに、必死に距離をとろうとあがく。

 

「おう、まだ動いてるやん? 薫子、やっぱゴレイムで踏み潰しちまおうぜ!」

 黒髪の少女は直前までの楚々とした雰囲気をかなぐり捨て、ザゴール団員をねめつける。

 

「おーい千尋、お嬢様仕様のメッキ剥がれてんぞー」

「あらあら? てめえ様こそ騎士道キャラ目指すとか言っといて素のまんま。バリデーション完全アウトでございますけど?」

「はーん?」

 

 そのまま口喧嘩をする二人。放っておかれた団員はふとこぼした。

 

「踏み潰すっつうけど足はないんだな……」

 人型を取るゴーレムであるが、その下半身は見慣れぬ金属の車に置きかわっていた。馬車の車輪よりもはるかに太い、材質不明の黒い車輪がいくつもついた台車。誰も押してはいないのにそろそろとこちらに近づいてくる、不可思議な機構。

 

 だからただ素朴な疑問を口にしただけであったが、一瞬にして少女たち全員の視線が険しいものになった。

 薫子という少女が団員に迫る。

 

「あーん? 何が言いてえ! んじゃここであるなしクーイズ。人型ロボに足は必要ある? なし? どっちだ!?」

 

 周囲の少女たちも団員に近づいてきた。野球バットや竹刀を肩にかついだり、防塵マスクで口元を覆ったりの少女。可愛らしい外見を帳消しにしてしまう荒々しさで団員に圧をかける。

 

「えっ……あの、なしでいいかなって思います」

 彼女たちの迫力に押され、現状肯定を正解だと考えた団員。だが少女たちの反応は。

 

「あるに決まってんじゃねえか! あれだろ? 重機や兵器には必要ないってんだろ? そりゃコストの話だろが! つまりゴレイムの完全解析出来りゃ足付きもプライスダウンで選定こえられるってことだ! はーん?」

 

「こいつは古代文明の遺物なんだからさー、上半身だけでもリビルドできりゃ上出来って分かんないかなー?」

 

「ぶっちゃけ上の方も何で動いてるか分かんねーしな」

 

「我ら統京都立第一工技専門高校のスローガン! 無ければ作れ、生み出せ、工夫しろ! まずは稼働を優先。足がなければタンクをつければいいんだよ!」

 

 はたしてゴーレムに足の必要性があるのか無いのか。結局どっちなんだよ、何で自分は責められているんだ。困惑する団員に次の質問が。

 

「んじゃ次のクイズだ! 私ら可憐な乙女に絡んできたチンピラに人権はある? なし? どっちだ!?」

 

「あるあるあるあるあるあるある!」

 ゴーレムの腹部にある大砲の筒。それがゆっくりと自分の方を向き出したことに気づき、団員は必死に主張した。

 

◇工業高校生は異世界でも技術チートで突き進む ~美味しいパンが無ければ窒素固定と顕微鏡とあと諸々作っちゃえばいいじゃない?~

 


 

パーティーNo.034

 

「くそっ、情けねえ……」

 

 膝をついてがっくりと項垂れるモーブル団員たち。

 彼らは数人の少女たちに絡み、あっさり返り討ちにされたのだ。見たことのない魔法を使われてろくに抵抗もできなかった。

 

 少女たちの態度からして命を取られるような追い討ちはなさそうだが、ヤクザ者として己の無様さにいっそ殺してほしいくらいであった。

 

「ようよう、みんなご苦労さ~ん」

 

「うん? なんだこの動物は……」

 

 そこへ人語をしゃべる白い毛並みの獣がとことこと近づいてきた。

 少女たちの活躍を一人一人を称賛してまわる白い獣。犬かイタチか、四本脚の動物であることはたしかだが種別は不明である。

 

 ともあれ少女とモフモフとした白い動物となれば絵になる構図であるが、妙に顔がおやじくささがあって、団員は一言入れざるをえなかった。

 

「せめて普通の犬ならキモカワ路線でいけたかもしれないけど、人語しゃべるせいで普通にキモいおっさんが犬になりました感あるな」

 

「うるせえ!」

 白い動物はさくっと団員にパンチをくらわせたが、肉球のクッションで大したダメージはなし。

 それでもその獣は気を落とすようでもなく、そんなものは言われなれてるのだとばかりの軽い調子。

 そして団員に笑顔さえ見せて口にする。

 

「お前たち、俺と契約して名誉お兄さんにならないかい?」

 

「なんだそりゃ?」

 

「あん? うちのイチオシ魔女っ子を陰ながら応援する権利をくれてやろうってんだよ。おら、金だしな!」

 すっと、今度は前脚から爪を伸ばしての連続パンチの仕草をするモフモフ。

 

◇異世界で謎の白いモフモフになったので魔法少女パーティー結成してみた

 


 

パーティーNo.035

 

「ありゃー、これまたひどくやられたもんだね」

 

 黒マントに身を包み、棺桶を背におった30歳ほどの男。彼の足元には地面に倒れたザゴール団員。その右腕と左足はあらぬ方向に曲げられていた。

 

 彼らのそばには「シャー」と鷹のポーズをとる細身の少女。無表情だが口の端だけはやや笑みを浮かべて。

 

 団員が痛みに表情を歪ませながら言う。

「こっちはヤクザ者だぜ。この程度、教会にかけこむ必要もねえ。まあ、これで許してもらえるってんならな」

 

「あー、いいよねそちらの世界じゃ回復魔法が一般に許可されてて。でもおたくを解放するわけにはいかないかな」

 

「ははっ、そうか。勇者様に絡んだんだ。この程度で許されるわけねえよな」

 

 ため息をつきながら気を落としたようにこぼす団員。

 それに対して男は首をふり、オールバックに固めた髪をかいた。今は蹴り足を高くあげた少女を横目に言った。

 

「この子は嘆きの妖精(バンシー)だ。おたくの死を予告した。何もしなければおたくは明日の朝には棺桶の中だ」

 

 嘆きの妖精(バンシー)。イクセール世界にも伝承として伝わる、間近に迫った人の死を泣き声で告げるという妖精。黒マントの男の世界ではこうして実在しているという。

 

「ああ……、妖精に告げられたんなら逃げようがねえか。まあいいさ。勇者様にやられて命を落とすってならよ、母ちゃんに少しくらいは金も残せるだろうしな」

 

「僕は勇者でもないし、そちらの事情に立ち入るつもりはないけどね、あいにくとバンシーちゃんの予告はおたくを見てすぐの時だ。つまり死因は別。この子の何とか拳法は関係ないよ」

 

 男の言葉に団員は青ざめる。勇者パーティーに殺されたならば遺族に多少の報奨金も出るであろうが、関係なく死ぬのならただの無駄死にになってしまう。

 そんな彼に男が身体のあちこちに触れだし、質問をする。身体の不調の有無や便通の具合や親族の死因であるとか。

 戸惑いながらも団員は答える。このところ不意の動悸に襲われていること。親族には胸の痛みに苦しんでの突然死したものが多いこと。

 

 

「――――なるほどね。どうやら心臓で間違いなさそうだ。こっちの回復魔法も病気は治せないんだろう? うん、それじゃあ緊急手術といこうか。僕は勇者ではなくて治癒師でね。もっとも免許は無いんだけど……腕の方は信じてくれていい」

 

 社会の爪弾き者である自分を癒そうという男の言葉。団員は信じられない思いで男を見上げた。

「勇者様……?」

 

「感謝するならバンシーちゃんにね。あの子がボコりすぎたせいで代償を払う必要が生まれたわけだから」

 

「ヤー」

 嘆きの妖精である少女はゆるゆるな正拳突きをしながら掛け声。 

 

 そして手早く手術の準備が整えられる。

 担当の妖精に願い、近くの倉庫を借り受け、家主に湯を用意させ。

 男が持ち込んだ台の上に団員が寝かせられる。

 

 青い手術衣に着替えた男。横には嘆きの妖精(バンシー)。背後には若い男女が数人並ぶ。

 彼らが着るのは緑色の手術衣。だが手には場違いに思える水晶や杖。

 

「あの、勇者様、これは一体?」

「これから君の身体を切って患部を直接治療する。魔法で処置はするけど少しばかりの痛みは覚悟してほしい」

 

「どうせ死ぬはずの身だ。お願いしますぜ」

 

 頷いた男は背後に声をかける。

「それじゃあオペ開始だ。麻痺(パラライズ)投与」

 男の言葉に青年の一人が呪文を唱える。杖から発せられた淡い緑色の光が団員を包むと、緊張にこわばった身体が力を失った。

 

「完了。四肢弛緩確認しましたね」

 妖精の少女が団員の手足を確認して言った。

 

「続いて狂化(バーサク)

 

 杖からの淡い赤の光が収まれば男の顔がこわばる。その目は白目になったかと思えば、充血の赤に染まる。雄叫びをあげ、必死に首を動かそうとするが麻痺の魔法によりかなわずにいる。

 

「完了。眼球血管拡張確認。心拍数上昇確認したね」

「続いて沈黙(サイレンス)

 

 室内に響き渡っていた団員の叫び声が消える。

 

「続いて行動遅延(スロウ)

 

「完了。心拍数基準値未達、確認したね」

「もう一回」

「完了。心拍数基準値まで低下を確認したね」

 

 男は頷くと手にしたメスを団員の腹部に当て、軽く切りつける。団員の表情を観察。

 

「――――――よし、痛覚耐性はクリア。このままいくよ、執刀開始――――――――ああ……これは……完全に詰まってる。血管バイバスじゃだめだ。心臓を取り替えないと」

 

「先生……」

 

 少女が無表情のまま、だが目にわずかに不安の色をのせて男を見つめる。

 

「大丈夫。僕の闇魔法を信じなさい」

 

 男が指をはじくと部屋のすみに置かれていた棺桶のフタが開きだした。

 中から出てきたのは一体のアンデット。生気のない目で近づいてくると団員の首筋に歯を突き立てた。

 それを黙ってみている男。周囲をかこむ青年たちに指示をする。

 

「この患者(クランケ)を一旦アンデット化する。心停止まで進行したらすぐに二人の心臓を交換する。時間はさらにシビアになったが、みんな、気合を入れていくよ」

 

「はいっ、先生!」

 

 そして男はいまも無言で叫び続ける団員に語りかける。

 

「諦めなさんなよ。僕は神より死霊術師の(クラス)を授かって生まれたんだ。死を操るのが仕事だよ。僕の前で簡単に死ねると思わないでくれよ」

 

◇神の手をもつドクター、異世界で闇治癒師になる ~回復魔法が使えないなら代替医療で救います~

 

*1
(ローレンシウム文庫)

*2
※諸説あります

*3
名前と外見イメージは実家で幼い頃を世話してくれた親戚のお姉さん(17歳)を採用




 アンデットは腐ってそうで腐りきってはいない。つまり腐敗の進行が停止していると考えると、死霊術は菌の命も奪えるんじゃないかと解釈。
 なろうには細菌やウィルスに転生する作品があるので、当然あれらも命があるとみていいでしょう。
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